BERLIN『COUNT THREE & PRAY』(1986)
1986年10月13日にリリースされたBERLINの4thアルバム。テリー・ナン(Vo)を要する布陣での『PLEASURE VICTIM』(1982年)を正式な1作目とカウントするならは、本作は3作目に当たります(当時の日本盤には3rdアルバムとの表記あり)。日本盤は同年11月25日発売。
「No More Words」(米23位)というキャリア最大のヒット曲を生み出した前作『LOVE LIFE』(1984年)から2年半ぶりの新作。同アルバムは50万枚を超えるスマッシュヒットを記録しましたが、その後映画『トップガン』のサウンドトラックに参加したことを機に、その人気は最高潮に達します。同映画サントラからの2ndシングル「Take My Breath Away」は初の全米&全英1位を獲得。そんな高状況の中ドロップされたのが、このオリジナルアルバムとなります。
新たなプロデューサーとしてボブ・エズリン(ALICE COOPER、KISS、PINK FLOYDなど)を迎えた肝入りの本作。レコーディングはテリー、ジョン・クロフォード(B)、ロブ・ブリル(Dr)の3人にサポートメンバーを加えた形で制作されます。ギタリストとしてはデヴィッド・ギルモア(PINK FLOYD)やケイン・ロバーツ(当時ALICE COOPER BAND)のボブ・エズリン界隈に加え、テッド・ニュージェント(DAMN YANKEESなど)やエリオット・イーストン(THE CARS)などの個性的な面々が参加していますが、アルバムのクレジットには誰がどの曲に参加しているかまでは記されておらず。
ボーカル&リズム隊というアンバランスなメンバーが残ったこともあってか、アルバム冒頭を飾る「Will I Ever Understand You」や「Tras」、リードシングル「Like Flames」(米82位/英47位)はニューウェイヴを通過したハードロック的な、ビートの強い1曲に。特に「Will I Ever Understand You」ではタイトなドラムソロもフィーチャーされており、あくまで“テリー・ナン with リズム隊”ではないことを強くアピールします。
かと思えば、尺八や琴、琵琶といった和楽器がフィーチャーされた浮遊感の強い「You Don't Know」(英39位)、クラシカルなピアノフレーズが耳に残る「When Love Goes To War」などニューウェイヴ側に振った楽曲、前作の流れを汲むダンサブルなシンセポップ「Sex Me, Talk Me」なども含まれている。そんな中に、ジョルジオ・モロダーが手掛けた大ヒット曲「Take My Breath Away」まで収録されているもんだから、アルバムを通してやりたかったであろうハード&タイトな側面がぼんやりしてしまい、全体的にどっちつかずな方向性で終わってしまいます。
1986年後半というと、まもなくBON JOVIが「You Give Love A Bad Name」で大ヒットを果たし、翌1987年にはハードロック新世代を迎えようとする過渡期。そんな来たる新世紀を予見したかのようなハードエッジなテイストを導入しつつも、それ以前のシンセポップやニューウェイヴも捨てきれない。さらにレーベル側のゴリ押しであろう「Take My Breath Away」という色の異なる異物まで打ち込む。そりゃ評価も分かれるわけで、大したヒットシングルも生まれず、アルバムは米61位/英32位(実はイギリスでは初のチャートイン)という結果で終わるわけです。
結局、バンドは1987年3月の初来日公演を含むワールドツアー終了後、解散することに。その10年後の1997年にテリー・ナンを中心に再結成を果たし、現在も細々と活動は続いているようです。本作を含むGeffen Records時代のアルバムはサブスクでは聴くことができませんが、MVなどはYouTubeでも視聴可能です。
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