2017/03/07

TOKYO MOTOR FIST『TOKYO MOTOR FIST』(2017)

80年代末にシーンに登場しながらも中ヒット止まりだった2つのアメリカンHRバンド、DANGER DANGERとTRIXTER。両者は解散やメンバーチェンジなどを経て、2017年現在も存続しており、前者は2014年9月にデビュー25周年記念の来日公演を行い、後者は2015年にアルバム『HUMAN ERA』を発表しています。

そんな2バンドから、DANGER DANGERのフロントマンであるテッド・ポーリー(Vo)と、TRIXTERのメインソングライター兼プロデューサーでもあるスティーヴ・ブラウン(G)が、90年代にRAINBOWに在籍したグレッグ・スミス(B)とチャック・バーギー(Dr)と新バンドTOKYO MOTOR FISTを結成。2017年2月に待望の1stアルバム『TOKYO MOTOR FIST』をリリースしました。

80年代末から90年代初頭にデビューしたUSバンドの中では印象的な美メロ楽曲が多かったTRIXTER。個人的にも彼らの1枚目(1990年の『TRIXTER』)と2枚目(1992年の『HEAR!』)は今でも気に入っている作品です。このTOKYO MOTOR FISTでは楽曲のソングライティングのみならず、プロデュースからミックス、エンジニアリングまですべての制作作業をスティーヴが担当。楽曲の軸のみなら“TRIXTERの新作”と呼んでも差し支えない内容かと思います。しかし、そこに“いかにもアメリカン”な適度に枯れて適度に湿り気のある声を持つテッドのボーカルが加わることで、TRIXTERはもちろんDANGER DANGERとも違う別のバンドとして成立するわけです。

派手ではないもののどっしりとボトムを支えるリズム隊のプレイ、能天気なアメリカ人というよりはどこか影のあるメロとアレンジ、そして重厚なコーラスワークと、ここで聴けるのはDEF LEPPARDやFIREHOUSEにも通ずる正統派ハードロックサウンドそのもの。「Pickin' Up The Pieces」「Love Me Insane」「Shameless」の頭3曲なんてまさにそれなんだけど、かといってボーカルがハイトーンすぎずに程よい温度感を保っている。バラードナンバー「Don't Let Me Go」も歌い上げすぎていないから、気持ち良く聴けてしまうんです。

かと思うと、「Put Me To Shame」みたいにマイナーキーの泣きメロHRもあれば、引きずるようなヘヴィさを持つ「Done To Me」もあるし、AOR調のミディアムナンバー「Get You Off My Mind」もある。そして最後はアップテンポの美メロナンバー「Fallin' Apart」で幕を降ろすわけです。どの曲も3〜4分程度でコンパクト、ひたすらメロディの気持ちよさにヤられて、気がついたら11曲41分があっという間に終わっている。で、また最初から聴き返しているという、そんなスルメ的魅力の1枚です。

聴く人によっては「ボーカルはもっと声を張り上げてないと」と難をつけるかもしれませんが、僕としてはこれくらいの温度感がちょうどよく感じられる。むしろ、これくらいだから何度も何度もリピートしたくなってしまうんです。決して2017年的な作品ではないけど、逆にこの時代にこういったサウンドと真正面から向き合ったテッド&スティーヴの2人に賞賛を送りたいくらい。それぞれのメインバンドとうまく並行して、2枚目3枚目と良質な作品を発表し続けてほしいものです。



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投稿: 2017 03 07 12:00 午前 [2017年の作品, Danger Danger, Tokyo Motor Fist, Trixter] | 固定リンク

2006/02/06

DANGER DANGER『SCREW IT!』(1991)

 DANGER DANGERって名前を覚えてる人が果たしてどれくらいいるのか判りませんが、とにかく未だに現役な彼等、今週末に来日公演を行うそうでして。ちなみにどれくらい振りかというと、今回紹介する2ndアルバム「SCREW IT!」に伴うツアー(1991年末)以来なので、約14年振りってことになりますね‥‥凄いなそれ。

 オフィシャルサイトを観ると、このアルバム以降も結構な枚数出してることが判るんですが‥‥自分の覚えてる記憶だと、このアルバムをリリースした後、時流に乗ったヘヴィなアルバムをレコーディングしたもののメンバー同士で衝突し、結果ボーカルのテッド・ポーリーとギターのアンディ・ティモンズが脱退、ソロシンガーとして活躍してきたポール・レインが加入して2003年頃まで活動してきたようです(「ようです」というのは、今回そこまで彼が在籍していたことを初めて知ったから)。そして2004年にテッド・ポーリーが出戻り、今回はテッドを含む編成での来日となるわけです。現在はキーボードのいない4人編成で、ギターもアンディ・ティモンズではありません。だから‥‥最初はちょっと行きたいなーって思ったんですが、やっぱりテッドがいた時代の初期2作を演奏するにしても、アンディのギターがないとなぁ、とか、やっぱりこのバンドはキーボードが入らないと味気ないよなー、とかいろいろ思うことがあるわけですよ。そういう意味では‥‥3rdアルバム以降の楽曲も沢山やるってことなのかもしれませんけどね。

 さて。先日たまたま店頭でこのアルバムと再会しまして。1stアルバムは昨年末に入手してたんですが(その頃はライヴ行く気になってたので)、2ndだけなかなかお目にかかる機会がなくて。ま、中古盤目当てだから余計ですけどね。リリース当時、買っていたんですが‥‥どうにも散漫な印象があったんですよ、あの頃聴いた時は。曲数が異常に多い(インターミッションやインスト併せて17曲)こともあって、当時はそんなに進んで聴く作品じゃなかったんですね。あと、1991年9月というタイミングも悪かったんだよなぁ‥‥その前後にSKID ROW、METALLICA、GUNS N'ROSESといったバンドが軒並みヒットチャートのトップを飾り、更にそれに代わるかのようにNIRVANA、PEARL JAM、SOUNDGARDENといったバンド達が台頭し始め‥‥FIREHOUSEやNELSONといったバンド達にとって非常に苦しい時代に突入してったわけ。勿論このDANGER DANGERもその仲間なんだけど(だから彼等が次作でヘヴィ路線に移行してったのも判らないではない)。

 で、14年振りにこのアルバムを聴いてみた感想ですが‥‥

 これがね、「あれっ、こんなに良いアルバムだっけ!?」っていう。ホント、よく出来たハードポップ/ポップメタルですよね。特に有名なプロデューサー/エンジニアを使ったわけでもなく、メンバー主導で制作された、いわば「エゴの塊」的な作品とも言えるんですが(だからギターのインスト曲もあれば、最後にラップ調の変な曲も入ってる)、当時散漫と感じたそういう要素も時代が1周以上したせいか、非常に新鮮で、尚かつ素直に受け入れられるんですよ。逆に‥‥今のこの時代に、ここまで素直に「良い曲」をカッコ良く聴かせてくれるハードロックバンドって少ないじゃないですか。上に挙げたようなハードロックバンドは現在も活動してたりしますが、既に音楽性は当時と今とでは比較しようがない程に変化してしまってるバンドもいますし(特にSKID ROWな‥‥)。そういう意味で、やっぱり懐かしさを越えて新鮮に聴こえるんですよね。

 タイミングがあと1年早かったら、"Monkey Business" や "Beat The Bullet"、"Crazy Nites" のようなロックナンバー、そして "I Still Think About You" や "Find Your Way Back Home" のようなパワーバラードが全米シングルチャートの上位入りしてたはずなんですよね‥‥それこそFIREHOUSEやSLAUGHTER、WARRANTのように。レコード会社のプロモーションが中途半端になってしまったことも大きいし。何せ湾岸戦争の後でツアーを縮小されたり、こういう類のロックよりもよりストリート感覚の強いサウンドの方が受け入れられやすい状況に変化していく過程でリリースされてますからね、このアルバム。ホント、勿体ない‥‥

 日本では一時期、"Crazy Nites" がバラエティー番組やスポーツ番組で頻繁に使われてたし、某女性シンガーがまんまパクったりする程人気があったりするんで、もしかしたら聴いてみたら「‥‥あ、知ってるかも?」ってなるかもしれませんね。BON JOVIの「SLIPPERY WHEN WET」や「NEW JERSEY」、FIREHOUSEの初期3作、NELSONの1st、WARRANTの初期2枚をこのご時世に楽しんで聴けるって人、オススメですよ。そういうアルバムです。



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投稿: 2006 02 06 01:26 午前 [1991年の作品, Danger Danger] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック