DASHBOARD CONFESSIONAL『THE SHADE OF POISON TREES』(2007)
前作「DUSK AND SUMMER」から1年4ヶ月という短いスパンで届けられた、待望のニューアルバム。その前が3年近いインターバルがあったので、これはかなり勢いで作られたんだろうなぁと思います。前作がメジャーから配給され、全米チャートでも大健闘したじゃないですか。そんな大躍進の後にリリースされる作品ということで、作り手側も聴き手側もかなり構えてたんじゃないかと思うんです。いや、ぶっちゃけ相当プレッシャーだったと想像するんですよ。
ところが。いざ出来上がった新作を聴いてみると、あっさりと聴けてしまう。前作でのエモ路線から一転して、アコースティック主体の作風。ほぼ全編弾き語りがメインで、そこにいろいろなバックトラック(ときにそれがリズム隊であり、ときにそれがピアノやシンセになる)が被さる。でも、前作での主軸になっていたような路線とはちょっとズレる。いや、前作のタイトルトラックがまさにこの路線だったんですよね。そういう意味では、彼の中にあるスタイルのひとつを特化させたアルバムということもできるわけです。
確かに前作までの疾走感あふれるエモロック路線を好んでいた人からすれば、ちょっと敬遠したくなるような落ち着いた作風なわけで、正直ガッカリしたという人もいるかもしれません。が、この人のメロディメイカーぶりは一切スケールダウンしているわけではなく、むしろより深みが加わったと個人的には思ってます。よくエモ系のバンド/アーティストが作品を重ねるごとに落ち着いた路線だったりアコースティックを多用した作風に移行していくことはあると思いますが、彼の場合もまさにそこですよね。それに、この人ってもともとはアコギ1本からスタートした人じゃないですか。原点に戻った、自分のルーツを見つめ直した1枚ともいえるし、「このメロディには、このアレンジが必要」と実感したからこそ、こういう内容になったと思うんですよね。僕自身はそこは一切否定するつもりはないです。だって、むしろ前作以上に気に入っているから。
それにしても、このクリス・キャラバという男は心底面白い男ですね。ソロユニットだからこそなんでも自由自在なわけで、それこそ前作みたいなバンド路線でパワーポップ/エモロック的なこともできるし、その後に今回みたいなギター1本を軸にした落ち着いたアルバムも発表できる。ファンにっては振り幅の大きいアーティストなのかもしれないけど、僕からすれば「毎回まったく飽きさせないアーティスト」のひとりであり、今回は予想外のアルバムが届いたのでちょっと驚いたけど、聴いてるうちにだんだん体になじんでいって……今はかなりのお気に入りです。
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