2003/09/24

DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN『MUSICAL FROM CHAOS』(2003)

  菊地成孔率いる大所帯のファンク/ジャズ/ダンス・バンド、DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN。間もなく第二期メンバー編成によるスタジオ新作が発表されますが、これはそれに先駆けてリリースされた「第一期メンバー編成による集大成」と呼べる2枚組ライヴアルバム。しかもこれがただのライヴアルバムじゃないのね‥‥ディスク1には同じ曲("CATCH22")のいろんなライヴ会場でのテイク5種類が、ディスク2には「IRON MOUNTAIN MENU」と題された「アイアンマウンテン報告」のショートバージョンといえる6曲が収められています。

  つうかディスク1‥‥ジャズなんかにはこういう「同じ楽曲のテイク違い」を集めた作品ってよくあるんですか? いや、俺はジャズに疎いんでアレなんですけど。クラブ系‥‥ダンスミュージックだったら、こういったバージョン違いを集めたEPなんてのはよく見かけますよね。リミックス違いみたいなのを集めたやつ。けどさ、リミックスって曲によって編集する人が違ったりするじゃない。DCPRGの場合は同じメンツで同じ曲を演奏してるんだけど、その日その日で導入部が全然違ってたり、メインとなるリフだけが一緒で後は全てその場でのアドリブだったり。ま、これは指揮する菊地氏によって全て構成等が変わってくるんでしょうけどね。

  これだけ同じ曲を5回も、しかも70分強も聴き続けて飽きないか?と思われるでしょうが、実際聴いてみると「オープニングで脳がグラグラして悪酔いしそうになる」けど(変拍子とツインドラムによるポリリズムが原因でね)、5曲どれもが同じ曲には聞こえないんですよね。多分知らないで聴いたら全部別の曲だと認識しちゃうんじゃないでしょうか。各楽器のソロパートにしろ決して同じ場所に同じ楽器がソロを取るわけじゃないし、例えばブラスがユニゾンになるパートなんてのも何度か登場するんだけど、それすら時々お決まりのフレーズが登場するくらいで、後は完全にその場でのアドリブといった印象が強いですしね。菊地氏のCD-Jを使ったサンプリング・ネタも毎回違ってますし。

  毎回決まったセットリスト・同じソロ・同じ決めフレーズ。そういったライヴもエンターテイメント面からすれば楽しいですよね。実際、そういったアーティストのライヴに求められるのって、そういう「ある種マンネリともいえるお約束」かもしれないし。でも、それとは対極にいるDCPRGのようなバンドも俺は素晴らしいと思うし、楽しいと感じるんです。いわば「器だけ一緒で、中身は毎回何が入ってるか判らない」びっくり箱的ライヴ。全編新曲を演奏する実験的なライヴと読んでもいいかもしれませんね。これを先のようなエンターテイメント性豊かなバンドがやったとしたら‥‥どうなるんでしょうね? ま、結局は個人個人の楽しみ方であったり価値観であったり、そういった要素が関係してくるでしょうから一概にどうとか決められませんけどね。DCPRGだって、そういうバンドだっていう認識が観る/聴く側にあるから楽しめるのかもしれませんしね(それを求めて楽しみに行ってるわけだし)。苦手な人はとことん苦手でしょうけど。

  ディスク2の方の話題も少し。DCPRGは単独ライヴ以外、イベント等に出演する時はよく「アイアンマウンテン定食」と呼ばれる「アイアンマウンテン報告」アルバムのソートバージョン的内容のライヴをします。このディスク2に収められたライヴは曲によって収録場所が異なりますし、ワンマンライヴで録音されたものが殆どなのですが、こういう形で編集されると正しく「アイアンマウンテン定食」といった流れになってますよね。まぁライヴ盤というと昨年暮れに「DCPRG3/GRPCD2」というリミックスアルバムの初回盤に、6曲入りライヴアルバムがボーナスディスクとして付いてましたが、若干曲目は被るものの、あっちと合わせて聴くと‥‥本来の単独ライヴみたいな流れが掴めるんじゃないでしょうか。ま、本当はもっと1曲1曲のアドリブが長かったり、菊地氏の饒舌振りが味わえたりするんでしょうけどね。

  そうそう、このアルバムにはもうひとつ売りがあって、それは菊地氏が所属するもうひとつのユニット、SPANK HAPPYで発表された曲、"ホー・チ・ミン市のミラーボール"のDCPRGバージョンが収録されていることでしょう。本来はDCPRGのセカンドアルバム用の曲として用意されたこの曲、結局当時(2001年後半~2002年)起こったいろんな出来事が原因でレコーディングは中止され、この曲はSPANK HAPPY用にリアレンジされて発表されることになるのでした。恐らく菊地氏のファンなら両方聴いてるでしょうから、その違い・各ユニットの持ち味を活かしたアレンジにニンマリすることでしょうね。俺ですか? どっちが好きとか比べられないって。エレポップ・ユニットとファンク・ジャズ・ダンス・ビッグバンドだよ!? 全くの別物として楽しむことにしてます。

  というわけで、約2年に及んだ第一期編成による「アイアンマウンテン報告」に伴う一連のリリースは、リミックス盤「DCPRG3/GRPCD2」(現在は「DCPRG3/GRPCD1」というタイトルで、1枚モノとして流通してます)とこの「MUSICAL FROM CHAOS」の発表をもって一応の完結となります。さぁ、第二幕はもう今週末スタートですよ!



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投稿: 2003 09 24 12:00 午前 [2003年の作品, DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN, 菊地成孔] | 固定リンク

2002/12/30

DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN『DCPRG3/GRPCD2』(2002)

  「次世代ダンスミュージック」と絶賛されることの多いDATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN(通称「デトコペ」)ですが、今回リリースされたのは、そのジャズとも人力テクノとも人力エレクトロニカともいえるようなサウンドを国内の有名DJ/サウンドクリエイターによってリミックス/再構築したディスク1に、初回限定盤にのみ付いてくる2002年4月のライヴを収めたディスク2からなる2枚組作品集。リミックスという「人工的」な音源と、殆ど手を加えていないであろう「生」のライヴ音源という対照的な2枚からなるアルバムですが、これが全く違和感なく楽しめる作品集なんですね。

  とみ宮、あるいはエスロピIIを通して菊地成孔ワークスに興味を持った人、又はデトコペというバンドの出すサウンドに興味がある人なら言うまでもありませんが、この11人による風変わりなバンドが出すサウンドはそれこそジャズとも呼べるし人力テクノとも呼べるしエレクトロニカともソウルミュージックとも、もっと言ってしまえばロックと呼ぶこともできるわけですよ。けど、そうはいいながらも実際にはそのどこにも属さないのがデトコペという集合体の出すサウンドなんですね。そういった点が特徴ともいえるわけですが、そんなデトコペの音をTatsuya Oe(Captain Funk)、bayaka、DJ Quietstorm、大友良英、dj me dj you、永田一直、レイハラカミといった人達がぶっ壊して、それを自分の音として組み立て直すわけですよ。ただでさえ弄り難そうな音をしてるのに、いざ出来上がった音源は元の楽曲にも引けを取らない‥‥完全に別物になってしまっているものもあれば、原曲の空気を残しつつもDJ/サウンドクリエイター自身の特徴もちゃんと取り入れたサウンドになっている。これはやっぱりスゲェなぁとマジで思うわけですよ。

  完全にエレクトロニカと化してしまってるTatsuya Oeによる"CATCH 44.1 OE Reconstraction"みたいなのもあれば、DJ Quietstormによる"Play Mate at Hanoi -Inu ni kirawareta-"なんてソウルミュージック風になってるし、そのDJ Quietstormと同じ原曲なのに完全に別物となってる大友良英(デトコペのギタリスト。2002年12月をもって脱退)による"Play Mate at Hanoi -OLATUNJI MIX-"はもっとガチャガチャしたイメージになってるし。ホント、やる人が変わるとこうも違うもんなのかねぇと溜息混じりに感心してしまいますよね。

  7名のクリエイター中、6名がアルバム「REPORT FROM IRON MOUNTAIN」からの曲を使ってますが、ただひとりレイハラカミのみROVOとのスプリット音源としてリリースされた「PAN-AMERICAN BEEF STAKE ART FEDERATIONS」(1曲32分もある、所謂サウンドコラージュ的楽曲)を再構築(というよりも、完全に自分のモノにしちまってるような)。ここまでくると、ダンスミュージックというよりは、正にアブストラクトなフリージャズ‥‥というか、人によっては「サウンドコラージュによるジャンクミュージック」なんて呼んでしまうかも。それくらいぶっ飛んでます。

  殆どのリミックスが10分を軽く越える長尺さだけど、これが原曲もそうだったように、全然飽きがこない。むしろ、フロアでこれらがかかったら絶対に気持ちいいはず。現場の人間が再構築したものだもん、現場で鳴らされることを前提でリミックスしただろうしね(だからアナログ盤も出たわけだし)。いや、これはデトコペ本来の味とは別のものかもしれないけど、かなり楽しめる1枚だと思います。クラブミュージック/新しモノ好きにはオススメ。

  一方、今年4月のライヴを収めたボーナスディスクの方は‥‥もう圧巻。スタジオ盤を聴いただけでも「ライヴ凄そうだよね?」と想像がついたものの、やはり実際のライヴは想像以上でしたよ。俺は実際にこの7月にフジロックでのステージを観てるわけですが(「アイアンマウンテン定食」と呼ばれる、所謂アルバムのショートバージョン的内容でした)、あの1時間だけでも相当な濃さだったのに、通常のライヴでは軽く3時間とかやってしまうんですからねぇ‥‥ここに収められたライヴ音源は70分少々‥‥実際の3分の1程度でしかないですが、それでもその凄さは十分に伝わってくると思います。けど、やっぱりこのバンドはライヴを観て欲しいな。視覚が伴うと、やっぱり更に呆気にとられること必至。俺が2002年に観た30数本のライヴの中でも最も記憶に残る1本でしたから。

  ちなみにこのライヴディスクは初回限定盤のみに付いてくるもので、現在店頭に並んでいるものがなくなり次第、リミックス集のみの1枚ものとして流通されるとのことですので、値段的にも普通のアルバムと400円くらいしか変わらないので、俺の「デトコペすげぇ!」って言葉がずっと気になってる人でまだファースト聴いてない人は、まずこの初回盤から聴くことをオススメします。あ、逆にこっちから聴いたら「スタジオ盤のファースト、ライヴ盤よりも迫力が‥‥」とかなったりしないかなぁ‥‥いや、スタジオ盤にはスタジオ盤の凄みが、そしてリミックスにはリミックスの良さが、更にはライヴ盤にはライヴという空間でしか生み出せない特殊なものがあるので、それぞれにそれぞれの良さが必ずあるはず。この手のサウンドに興味がある人、ROVO等のバンドに興味がある人、是非聴いてみてください。



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投稿: 2002 12 30 12:00 午前 [2002年の作品, DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN, 菊地成孔] | 固定リンク

2002/07/07

DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN『REPORT FORM IRON MOUNTAIN(アイアンマウンテン報告)』(2001)

  とみ宮的にはテクノ以外でインストアルバムを取り上げるのは多分初めてのことだと思うし、こういったカテゴライズし難い内容の作品をオススメ盤に選ぶことも初めての試みだ。今年の初めから「とみ宮は今後、ロックに拘らずに、いろんなジャンルの面白い作品を取り上げていく」と発言していたが、ここにきてようやくその第一歩が踏み出せた気がする。

  さて、今回オススメするのは2002年のフジロックにも出演が決まったDATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN(DCPRG)が2001年8月にリリースしたファーストアルバム「REPORT FROM IRON MOUNTAIN」(邦題「アイアンマウンテン報告」)だ。メンバー構成は、以下の通り。

  ・菊地成孔(Vox-Jagar, CD-J, Keybord)
  ・大友良英(Guitar)
  ・高井康生(Guitar, Filter)
  ・芳垣安洋(Drums)
  ・藤井信夫(Drums)
  ・栗原正巳(Bass)
  ・津上研太(S.Sax)
  ・後関好宏(T.Sax)
  ・坪口昌恭(Shynthesizers, Electric Piano, Clavinett)
  ・大儀見元(Parcussion)
  ・吉見征樹(Tabla)

基本構成は上記の11人。当然ながら、毎回全員が揃うとは限らない(その為のツインドラム、ツインギターという噂もあるが、それは冗談だろう)し、11人以上の時もあるので、その時々でライヴの構成だったり曲の長さだったり、そういった決まり事がどんどん変わっていく。というよりも、決まり事なんて存在しないのではないだろうか? それくらいに自由度の高い、ある意味「ジャムバンド」だと思う。

  結成は1999年、菊地成孔が中心となって結成。'70年代のマイルス・デイヴィス的アプローチで、ロック、ポップ、ジャズ、ファンク、ソウル、クラブミュージック等を融合させたビッグバンドとして、ライヴを中心に活動。2001年夏にROVOとのスプリットシングル(とはいいながら、両バンド1曲ずつ、各曲が30分を越える、とてもシングルとは言い難い濃い内容となっている)リリース後、発表されたのが今回のアルバム。当時、外資系CDショップでもイチオシされていたので、覚えている人もいることだろう。

  ツインドラム構成ということで、ポリリズム(ふたつ以上の異なるリズムを同時に使うこと。それぞれのリズムは異なる拍子でプレイされることが多い)を駆使した楽曲が多く、何だか難解なイメージを受けるかもしれないが、いざ聴いてみると、これが意外とポップだったりする。それはギターや管楽器、シンセ等のキーボード類が多用されていることが大きな要因として挙げられる。また、パーカッションやタブラといった打楽器類が、複雑に絡み合う2つのリズムの隙間を縫うように自己主張する。こういった個性的な上モノ楽器が主メロディーを奏でたり、またリズムを引き立てたりしている。

  モロにポリリズムを取り入れた"CATCH 22"はまるでダブルトリオ編成時代のKING CRIMSONみたいだし(あそこまでドロドロしてなくて、こっちの方が聴きやすいが)、アフロチックな"PLAY MATE AT HANOI"、フュージョン的心地よさがある"S"、ジミヘンで有名なあの曲を独自の解釈でプレイしたヘヴィナンバー"HEY JOE"等、それぞれの曲が10分を軽く越えるのに、どれも飽きさせないだけの緊張感を持った魅力的なプレイを味わうことができる。

  時に狂おしい程にファンキー、そして時にアブストラクト。メロウなポップさを持ち、ロック的な重さも持ち、ジャズやフュージョンの要素も持ち、アフロチックなファンキーさも持ち、テクノに代表されるような現代クラブミュージック的要素も兼ね備えた、ある意味これこそが「ミクスチャー」といえるだろう。こういったバンドの生演奏を聴きながら気持ちよく踊ることは、この上なき幸せだろう。そして、それをフジロックのような大自然の中で体験することができる。または、武尊山でのレイヴイベントで体験することができる。日本人として生まれたことを誇りに思いたくなる程だ。

  ジャズやフュージョン、インストバンドというイメージに偏見がある人も多いと思うが、先鋭的なクラブミュージックに興味がある人は、聴いて損はしないはず。是非大音量で、身体を揺すりながら(踊りながら)聴いて欲しい1枚だ。



▼DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN『REPORT FORM IRON MOUNTAIN(アイアンマウンテン報告)』
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投稿: 2002 07 07 12:00 午前 [2001年の作品, DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN, 菊地成孔] | 固定リンク