IMPERIAL STATE ELECTRIC『IMPERIAL STATE ELECTRIC』(2010)
2008年にTHE HELLACOTERSを解散させたニッケ・アンダーソン(Vo, G)が新たに結成したバンド、IMPERIAL STATE ELECTRICの2010年発表の1stアルバム。
当初はバンド解散後にたくさん曲を書き溜めたニッケがスタジオに入り、自身がほとんどの楽器を演奏しつつアルバムを制作していたのですが、そこにいろんな仲間が加わり、気づけばバンドスタイルになっていた……ということで、本作では1曲(「Together In The Darkness」)だけニッケのほかにトビアス・エッジ(G, Vo)、ドルフ・デ・ボースト(B, Vo / THE DATSUNS)、トーマス・エリクソン(Dr)という現在まで続く布陣でレコーディングされています。
THE HELLACOTERSという究極のロックンロールバンドを終了させたニッケが、次にどんなアクションを起こすのか。ロックファンならきっと誰もが注目したはずです。多くのリスナーは“第二のTHE HELLACOTERS”の登場を望んだことでしょう。
しかし、ニッケはTHE HELLACOTERS的でありながらも、さらに自身のルーツのひとつ……KISSやRAMONESなどといったポップサイドの色合いが強い作風に取り組みます。そもそもバンド形態やのちのライブ演奏を想定せずに、好き勝手に作り込んだのが本作であって、そりゃあTHE HELLACOTERSみたいになるわけがない。バンドマジックだとかそういったことよりも、ソングライターとして高みを目指した……そんな心算で制作していたのに、気づけば「やっぱりバンド、楽しーっ!」っていう事実に気づかされる。そういった意味では、本作はIMPERIAL STATE ELECTRICというバンドのプレデビュー作、あるいはプロトタイプ的作品かもしれません。
冒頭の「A Holiday From My Vacation」や「Lord Knows I Know That It Ain't Right」「Resign」で聴けるポップネスに、きっと誰もが驚くことでしょう。しかし、このカラーもニッケがTHE HELLACOTERSで表出させていたものであり、ここではその一面を特化させただけ。「Throwing Stones」のような疾走感の強いロックチューンも存在するものの、全体的にはテンポを抑えめにして、良質のメロディとアレンジの妙で聴かせる技術に磨きをかけている。そんな印象を受けます。
前のバンドのイメージが強いからこそ、新たな挑戦に対して最初は拒否反応が生じてしまうのは仕方ないことかもしれません。しかし、これが出来の悪いアルバムかと問われると、まったくそんなことはなく。むしろ聴きやすくて、あっという間に最後まで聴けてしまう、そんな1枚ではないでしょうか。
なお、日本盤のみボーナストラックとしKISS「All American Man」のカバーを追加。この曲をセレクトするあたりからも、ニッケがここで何をやりたかったのかが伺えるはずです。アーシーなアレンジを施したこのカバーバージョンも、なかなか素敵です。
▼IMPERIAL STATE ELECTRIC『IMPERIAL STATE ELECTRIC』
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