カテゴリー「David Bowie」の17件の記事

2019年6月 8日 (土)

DAVID BOWIE『DAVID BOWIE (SPACE ODDITY)』(1969)

1969年11月にリリースされたデヴィッド・ボウイ通算2作目のオリジナルアルバム。本作、僕ら世代は髪がツンツンに立ったボウイの顔を捉えたジャケットに『SPACE ODDITY』というタイトルが付けられた1枚として馴染んできましたが、実は本来のタイトルは『DAVID BOWIE』と非常にシンプルなもの。ジャケットもカーリーヘアのボウイを収めたものでした。実は僕らが知る『SPACE ODDITY』というアルバムタイトル&ジャケットは1972年の再発時から続いていたもので、現在は本来のジャケット&ジャケットに戻っています。

この時期はグラムロック期前夜で、ボブ・ディランからの影響濃厚のフォーキーなスタイル。アコギを軸にしたアンサンブルは、時にフルートなどを用いることでのちのスタイルに通ずる耽美さを醸し出しています。

そんな中、オープニングを飾るヒットシングル「Space Oddity」(全英5位/1972年に全米15位、1975年には全英1位)ではサイケデリック/アシッド感満載のフォークロックに仕上げられています。まさに歌詞にある宇宙空間にひとり取り残された男のように、異空間での浮遊感と不安感が同時に押し寄せてくるこのアレンジ&サウンドは決してハッピーなものではないものの、何度も聴きたくなるようなフックがたくさん用意されたスルメものの1曲です。

また、「Wild Eyed Boy From Freecloud」はグラムロック期にもメドレー内で披露されており、耽美かつドラマチックなアレンジのスローナンバーはグラム期のそれともまた異なる(しかし、ボウイのそれとわかる)魅力を堪能することができるはずです。

「Letter To Hermione」や「An Occasional Dram」「God Knows I'm Good」などの内向的なフォークナンバーからは、ディランのみならずサイモン&ガーファンクルあたりからの影響も見え隠れする穏やかなノリで、ボウイの歌い方も時に力みゼロの脱力感で、また時に悲壮感漂うほど悲しげなもので、のちの彼から感じる爬虫類的(というか異星人のよう)な独特感は皆無。これもまたボウイなわけです。

個人的なクライマックスは、アナログ各面のエンディングを飾る「Cygnet Committee」と「Memory Of A Free Festival」の2曲。ともに9分半、7分強という大作ですが、すでに本作以降に展開されていくボウイ独自のスタイルが完成しているんじゃないか、と思わせるほどの内容なのです。歌詞のテーマ的にも個と社会という対比が感じられますし、次作『THE MAN WHO SOLD THE WORLD』(1970年)以降の活動を考える上でも重要な2曲ではないかと思います。

ボウイビギナーが最初に聴くべき1枚ではないものの、初期の『THE MAN WHO SOLD THE WORLD』が気に入った人なら確実に引っかかる、地味ながらもスルメな楽曲集ではないかと。最近、この時期の作品をやたらと聴きまくっているのですが、今の自分のモード的に非常にしっくりくるんですよね。

 


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2019年1月10日 (木)

DAVID BOWIE『THE MAN WHO SOLD THE WORLD』(1970)

デヴィッド・ボウイ通算3作目のオリジナルアルバム。本作はまず、アメリカで1970年11月に先行発売され、その5ヶ月後の1971年4月に本国イギリスでリリースされています。ちなみに、ロックファンの間でよく知られるあの麗しのアートワークは先行発売のアメリカ盤では採用されておらず、なんともチープなオッサンのイラストが使われております。このへんはWikipediaを見ると詳しく載っております。

自分にとってのデヴィッド・ボウイって、いわゆる“ジギー・スターダスト”よりも本作のジャケットのイメージなんですよね。高校生の頃、すでに『LET'S DANCE』(1983年)や『TONIGHT』(1984年)を聴いてはいたものの(それこそ、映画『戦場のメリークリスマス』などで動くボウイを目にしていたものの)、それでも脳裏に思う浮かべるのは『世界を売った男』と題されたこのアルバムの美しい姿なのです。

とはいえ、ちゃんとアルバム自体を聴いたのはそれからさらに数年後。たぶん18〜9歳の頃に東京ドームで初めてボウイのライブを観て、それから1、2年は経っていたと思います。まだNIRVANA『MTV UNPLUGGED IN NEW YORK』(1994年)で「The Man Who Sold The World」をカバーする、ちょっと前のことです。

もう、このアルバムに関してはアートワークと邦題の勝利ですよね。直訳ではあるんだけど、『世界を売った男』というタイトルにこの英国盤アートワークですから。しかも、アルバムのオープニングを飾るのが「円軌道の幅」と邦題が付けられた、8分を超える大作「The Width Of A Circle」ですから。悪いわけがない。

それ以前のフォーキーな要素も残しつつ、ミック・ロンソン(G)が加わったことにより、ロックバンド色がどんどん強くなっている。グラムロックというよりは、ハードロックやプログレッシヴロック的解釈も至るところに見受けられ、そこが個人的にもツボだったりします。頭3曲(「The Width Of A Circle」「All The Madman」「Black Country Rock」)はまさにそれで、ストレートなハードロックをボウイ流に噛み砕くことで、のちのグラムロック路線への布石が見え隠れする。

で、アナログ後半(M-5「Running Gun Blues」以降)の流れも素晴らしいし、「She Shook Me Cold」冒頭で聴けるミック・ロンソンのギタープレイにはゾクゾクしてしまう。そこからの「The Man Who Sold The World」ですから。ラストの「The Supermen」からもその後の片鱗が感じられるし。このヘヴィなテイストは次作以降どんどん薄まっていくわけですが、そういう意味でも本作は絶妙なバランスで成り立つ1枚と言えるでしょう。実はハードロックファンにこそ聴いてほしい、ボウイの傑作アルバムのひとつです。



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2018年11月22日 (木)

QUEEN『HOT SPACE』(1982)

1982年5月に発売されたQUEEN通算10作目のスタジオアルバム。前作『FLASH GORDON』(1980年)が同名映画のサウンドトラック盤だったこともあり、全英10位/全米23位と、前々作『THE GAME』(1980年)の英米1位と比べて低調な結果で終わっていました。それもあり、続くこの『HOT SPACE』に対する期待は相当大きなものがあったと思われますが、誰もがそのサウンドの変貌ぶりに腰を抜かした……のではないかと想像します(なにせこのへんはリアルタム組ではないので)。

『THE GAME』でシンセサイザーを解禁し、続く『FLASH GORDON』では全面的にフィーチャーした彼ら。この『HOT SPACE』ではその路線を踏まえつつ、当時のヒットチャートを賑わせていたダンスビートやディスコサウンドを軸に楽曲制作を敢行するのです。

「Another One Bites The Dust」の大成功がバンドにどれだけの影響を及ぼしたのかわかりませんが、彼らはこのアルバムで(それまでも随所から感じられた)ブラックミュージックへと本格的に傾倒します。オープニングの「Staying Power」なんてブラスをフィーチャーした、これぞファンクミュージック!と言いたくなるファンキーな楽曲で、ドラムは打ち込み、ベースもシンセベースを導入するなど、とても70年代のQUEENとは比べようがないほどの変貌を遂げています。

その後も「Dancer」「Back Chat」「Body Language」と、時代を感じさせる黒っぽいダンスミュージックが満載。「Dancer」のサビ後ろで鳴っているブライアン・メイ(G, Vo)のディストーションギターを聴いて、ようやく「自分はQUEENのアルバムを聴いているんだ」と思い出すくらい、しばらくQUEENという存在を忘れさせてくれる。そんな1枚です(笑)。

ところが、アルバム後半に入ると突如従来のQUEENがよみがえってきます。「Put Out The Fire」のようなハードロックチューンを聴くと、彼らは自分たちがどんなバンドであったか決して忘れたわけではないことに気づかされるし、ジョン・レノンを追悼するピアノバラード「Life Is Real (Song For Lennon)」も我々がよく知るQUEENが表現されているのですから。

「Calling All Girls」のようなポップロックも『THE GAME』の流れを組む良曲ですし、シンセが全面フィーチャーされているものの「Las Palabras De Amor (The Words of Love)」だってコーラスを聴けばQUEENそのもの。フレディ・マーキュリー(Vo, Piano)のファルセットがセクシーなソウルバラード「Cool Cat」なんて、アルバム前半の打ち込みサウンドと比べたら全然受け入れられるし、アルバムのラストはデヴィッド・ボウイとのデュエット曲「Under Pressure」ですから。あれ、これ完全にQUEENじゃん。俺、QUEENのアルバム聴いてたわ!って、最後の最後でしっかり満足させてくれるのですよ。

序盤で濃厚な実験作を並べてリスナーを引かせてしまう本作ですが、通して聴くと実はちゃんと“QUEENらしい”内容だって気づかされる。「Action This Day」でロジャー・テイラー(Dr, Vo)が、「Las Palabras De Amor (The Words of Love)」でブライアンがそれぞれ一部歌唱していますが、メインボーカルを務めるのはほぼフレディのみというのも、バンドの作品というよりものちにリリースされることになるフレディのソロアルバム『MR. BAD GUY』(1985年)に通ずるものがあるなと、今聴くと思うわけです。

QUEENの歴史上、どうしても駄作だとか失敗作だとかそういうネガティブな印象の強い1枚ですが(チャート的には全英4位、全米22位。シングルも全英1位の「Under Pressure」を除けば、「Body Language」が全英25位/全米11位、「Las Palabras De Amor (The Words of Love)」が全英17位、「Back Chat」が全英40位と低調な結果に)、本作があったからこそ80年代後半以降の“マジック”が確立するわけですから。80年代のQUEENを語る上では欠かせない1枚であることは間違いありません。



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2018年9月 6日 (木)

PLACEBO『WITHOUT YOU I'M NOTHING』(1998)

1998年10月発売の、PLACEBOにとって2作目のオリジナルアルバム。デビューアルバム『PLACEBO』(1996年)も全英5位と大成功を収めていますが、続く本作のほうが“ここでブレイクした”というイメージが強いかもしれませんね。チャート上では今作、全英7位なんですが、前作がイギリスとフランス(50位)でチャートインした程度だったところ、今作はフランス(7位)、オーストラリア(14位)、ニュージーランド(15位)、ノルウェー(31位)、オーストリア(43位)、ドイツ(55位)、オランダ(64位)、スイス(95位)とヨーロッパを中心にスマッシュヒットを記録。これが“ブレイクした”というイメージにつながったんでしょうね。

それに、前作は「Nancy Boy」の印象が強かったけど、今作はオープニングトラック「Pure Morning」(全英4位)のほか、「You Don't Care About Us」(同5位)、「Every You Every Me」(同11位)といったヒットシングルが多数生まれ、さらにアルバムタイトルトラック「WITHOUT YOU I'M NOTHING」に関してはシングル化の際にデヴィッド・ボウイとのデュエットバージョンまで制作されているのですから……そりゃあこのアルバムの印象、強いわな。

本作は結成初期のドラマー、スティーヴ・ヒューイットが復帰してから初のアルバムということもあり、リズム面でかなり強化された印象があります。特に「Pure Morning」でのカッチリとしながらもダンサブルなビートは、以降このバンドのひとつの持ち味になったと思います。

また、前作が90年代初頭のオルタナティヴロック/グランジ以降の影響下にある作品だとしたら、今作はブライアン・モルコ(Vo, G)のルーツであるグラムロックと向き合った1枚と言えるでしょう。ボウイとの共演もその一環でしょうし、そういった耽美な色合いはこのアルバムの至るところから感じられるはずです。

そういったサウンドと甘美な恋愛ソングの数々が、ブライアンの特徴的な歌声で表現されることにより、90年代半ば以降のブリットポップとは一線を画する、“古くも新しい”個性的なものへと昇華されたわけです。デビューアルバムのときはそこまでのめり込まなかった自分も、このアルバムで一気に引き込まれたのは、そういった要因も大きいと思います。

あと、このアルバム発売タイミングにグラムロック映画『ヴェルヴェット・ゴールドマイン』が公開されたのも大きかったなと。ブライアンとスティーヴは映画にも出演しているし、サントラにT. REX「20th Century Boy」のカバーも提供していますし。この曲、日本盤のみのボーナストラックとして追加収録されているので、気になる人はあわせてチェックしてみてください。ま、原曲まんまのコピーなんですけど、どハマりしてますので。



▼PLACEBO『WITHOUT YOU I'M NOTHING』
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2018年7月28日 (土)

DAVID BOWIE『1. OUTSIDE』(1995)

1995年9月に発表された、デヴィッド・ボウイ通算19枚目のスタジオアルバム。TIN MACHINEでの失敗を経て、前作『BLACK TIE WHITE NOISE』(1993年)で再びソロアーティストとして活動再開したボウイは、早くも多作モードに突入。70年代後半のベルリン三部作(『LOW』『HEROES』『LODGER』)で共作したブライアン・イーノと18年ぶりにタッグを組み、コンセプチュアルかつモダンな作品を完成させます。

全19曲で75分という収録内容は、アナログ時代なら2枚組の大作と受け取られましたが、CD主流の90年代半ばではこのボリュームすらもどこか「当たり前」と思わされてしまうところがあったり、なかったり。まあこういったストーリー性の高い作品も、盤を裏返したり取り替えたりしなくても80分近くぶっ通し再生できてしまうCDならではと言えるでしょう。時代の恩恵受けまくりです。

前作でみせたジャジーなテイストを残しつつも、ここで全体を覆うのはエレクトリックでインダストリアルで不穏な空気感。NINE INCH NAILSのようなアーティストがもてはやされていた中では、この取捨選択は“流行りに乗っかった”と言われてしまいがちですが、じっくり腰を据えて聴くと流行りの一言では済まされない、徹底的に作り込まれたディープな世界観を楽しむことができます。

そういえば、この頃のボウイは海外ドラマ『ツイン・ピークス』の劇場版『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間』に出演するなど、役者としても活躍していた時代。また、そういったダークでサイコな作品が世界的にウケている、そういうものが求められていることを考えると、ボウイがこのコンセプトアルバムの世界に飛び込んだのは納得できるものがあるのではないでしょうか。そういえば、本作からのシングル「The Hearts Filthy Lesson」が映画『セブン』のエンディングテーマに採用されたのも、今となってはなるほどと思ってしまいます。

のちにPET SHOP BOYSがリミックスしたダンスバージョンがヒットした「Hallo Spaceboy」は、ヘヴィな原曲もカッコいいですし、前作の延長線上にある「A Small Plot Of Land」や「The Motel」にもゾクゾクさせられる。かと思えばデジロック調の「No Control」があったり、ベルリン三部作にも通ずるスペーシーな「Wishful Beginning」もあるし、まんまNINな「I'm Deranged」もあり、最後はどこかピースフルな「Strangers When We Meet」で幕を降ろす……いや、本当はここで終わらず、このコンセプト作品は5部作となるはずだったんですけどね。アルバムタイトルのナンバリングはその名残り。でも、本作が思うほどヒットしなかったことから、続編は後回しに。結果、次章となるはずだった『2. INSIDE』は制作されることなく、ボウイはこの世を去るのでした。

ボウイ亡き今、このアルバムを冷静に語ることは難しいのかもしれませんが、個人的にはリリース当時から大好きでした。何も彼が時代に擦り寄るのは今に始まったことでもないですしね。それに、このダークさは今みたいな時代こそ評価されるべきとも思うのですが、いかがでしょう。



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2018年1月10日 (水)

DAVID BOWIE『BLACK TIE WHITE NOISE』(1993)

今から25年前の1993年春にリリースされた、デヴィッド・ボウイ通算18枚目のスタジオアルバム。80年代末から自身がフロントマンを務める4人組バンドTIN MACHINEでの活動を中心に、1990年にはソロ曲を封印するために大々的なソロライブをここ日本でも東京ドームで実施しましたが、結局TIN MACHINEの2枚目『TIN MACHINE II』(1991年)が大コケしたことで、ボウイは再びソロに戻らざるをえない状況に追いつめられるのでした。

とはいえ、当時のボウイは私生活では1992年にイマンと結婚して順風満帆。商業的に失敗作と捉えられてしまったTIN MACHINEから再びソロに戻れたのも、こうした好状況が後押ししたのかもしれませんね。

アルバムは『LET'S DANCE』(1983年)を手がけたナイル・ロジャースが再びプロデュースを担当。レコーディングにはかつてSPIDERS FROM THE MARSでの盟友ミック・ロンソン(G)がゲスト参加し、CREAM「I Feel Free」やモリッシー「I Know It's Gonna Happn Someday」、THE WALKER BROTHERS「Nite Flights」のカバーを収録など、話題に事欠かない1枚となっています。

実際、本作は56分という長尺ながらも非常にノリが良く、コンパクトで聴きやすい印象なんです。80年代中盤から後半のボウイ的なノリも残しつつ、それが悪い方向に進むことなく90年代前半当時の音楽シーンと見事にシンクロしている。そして、ブラックミュージックのテイストとジャズのフィーリングが至るところに散りばめられており、それによって全体がボウイらしい大人のサウンドへと昇華されている。このバランス感はぶっちゃけ、『LET'S DANCE』以降でもっとも優れているのではないでしょうか。

アルバム中随所に登場するインストナンバーも実験的な要素よりも、モダンなテイストのほうが強く、しっかり時代に寄り添っている。かといって、それが売れ線にどっぷり浸かったものでもない。このさじ加減が絶妙なのが、本作の魅力だと思います。だからこそ、本作は『TONIGHT』(1984年)以来となる全英1位を獲得できたんでしょうね。

この好調ぶりが、『OUTSIDE』(1995年)以降の諸作品へと続いていくと考えると、ボウイに再びメジャーのど真ん中で好き放題やることの楽しさを思い出させてくれた重要作品と受け取ることもできます。実際、僕は90年代のボウイ作品の中では本作と『HOURS...』(1999年)がめちゃめちゃ好きなんですよ。まったくタイプは異なるんですけど、ボウイ“らしさ”という意味では実験的な『OUTSIDE』や『EARTHLING』(1997年)よりも“らしい”内容ですものね。



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2017年7月26日 (水)

DAVID BOWIE『CRACKED ACTOR (LIVE LOS ANGELES '74)』(2017)

これは歴史的価値の高い音源のCD化だと、ファンならずとも歓喜したのではないでしょうか。

本作はデヴィッド・ボウイが1974年9月、『DIAMOND DOGS』を携えて実施したアメリカツアーのライブ音源。ソウルフルに変貌を遂げる次作『YOUNG AMERICANS』の制作直後に行ったツアーだけに、音やアレンジにもその変化の片鱗が随所から感じられます。

また、6人編成のバックコーラスの中には、かのルーサー・ヴァンドロスの名も。同時期録音の『DAVID BOWIE LIVE』とニュアンスの違いを比べても面白いかもしれません。

※このレビューは本作リリース時、『TV BROS.』に掲載されものを加筆・修正して掲載しています。



▼DAVID BOWIE『CRACKED ACTOR (LIVE LOS ANGELES '74)』
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2017年1月10日 (火)

TIN MACHINE『TIN MACHINE』(1989)

デヴィッド・ボウイが初めてバンドを組む、という話題だけが先行し、その音楽性自体は二の次だったような記憶が残るTIN MACHINE。思えば80年代に入ってから以前の“ペルソナ”をすべて剥ぎ取り、『LET'S DANCE』(1983年)で大ヒットを収めたものの、そこから状況は尻すぼみに。新たな鍵を手にするため、現状打破を考えてのバンド結成だったのかなと思うわけです。

ボウイ(Vo, G)、リーヴス・ガブレルス(G)、トニー・セイルス(B)、ハント・セイルス(Dr)という4人で制作された1stアルバム『TIN MACHINE』は、過去のボウイのカラーを覆すような、ボウイのみならず他の3人のカラーも見事に入り混じった、真の意味でのバンド作品。どこかブルージーで変態的な「Heaven's In Here」からゆったりとスタートするアルバムは、続くタイトルトラック「Tin Machine」を起点に熱量が上がっていきます。全体の印象としてはギター主体の古き良き時代のハードロック的手法がベースで、そこにボウイらしい翳りと湿り気のある歌声&歌メロが加わることで既存のハードロックとは異なるスタイルを確立。3曲目「Prisoner Of Love」なんて、まさにその好例だと思います。

たぶん時代だったんでしょうね。世の中的にロックバンドが世界を席巻し、それまでの数年間動くことのなかったROLLING STONESまでレコーディング&ツアーを開始したのが1989年だし。ボウイにしても何か新しいことをすべきだと感じていたでしょうし、それがたまたまバンドだったと。世が世だったら、これがヒップホップやテクノだった可能性もあるし。それはそれで聴いてみたかったですけどね。

ヘヴィにアレンジされたジョン・レノンのカバー「Working Class Hero」やストレートな「Under The God」「Sacrifice Yourself」あたりを聴くと、もう一度くらいステージでこれらの楽曲を歌ってもよかったんじゃないか、なんて思ったり。もはやそれすら叶わぬ夢ですが。1991年に発表された2ndアルバム『TIN MACHINE II』がもし失敗していなかったら、このバンドがどこまで続いていたのかな……とはいっても、きっと短命で終わったんでしょうけどね。



▼TIN MACHINE『TIN MACHINE』
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2016年12月31日 (土)

DAVID BOWIE『★(BLACKSTAR)』(2016)

2016年1月8日(金)。午前中から乃木坂46の取材を行い、午後遅くまで作業を続けてから帰り道で購入したのが、この日世界同時リリースとなったデヴィッド・ボウイ3年ぶりの新作『★』と、ちょっと前にリリースされたボックスセット『FIVE YEARS 1969-1973』でした。

前年秋に先行公開されたMV「Blackstar」を観て聴いて、「これは間違いなく傑作だ!」と多くの音楽ファンが思ったことでしょう。派手なボウイではない、穏やかなボウイ。90年代以降の作品では『BLACK TIE WHITE NOISE』(1993年)『HOURS…』(1999年)が好きな自分としては「これはど真ん中な作品になるかも…」と、そういう期待感でいっぱいでした。その思いはアルバムリリース直前に公開された「Lazarus」を聴いても、変わることはありませんでした。

2013年に突如発表された復活作『THE NEXT DAY』も、もちろん大好きでした。しかし、特に日本盤はボーナストラック含め18曲入りということでたくさん詰め込みすぎた感が強く、すべてを理解するまでにはかなりの時間を要した記憶があります。あと、10年ぶりということで、期待が大きすぎたのもあって、ほんのちょっとだけ「ああ、こんな感じか……」とちょっとだけ思ったりもして。

ところが『★』は全7曲、オープニングの「Blackstar」こそ10分前後の大作ですが、トータルで41分程度と非常に聴きやすい内容。人力ドラムンベース的な雰囲気のある前半から、ドリーミーなミドルテンポのパートへと展開する流れなど、クラブミュージックとジャズとサイケデリックロックを掛け合わせたかのようなこの世界観に惹きつけられない人はいないと思います。続く、ジャズファンク的な「'Tis A Pity She Was A Whore」は『BLACK TIE WHITE NOISE』からの流れにある1曲で、ひたすらカッコいい。そこから再びダークな「Lazarus」へと流れる、いわゆるアナログA面の流れは圧巻です。

4曲目(いわゆるアナログB面)は「Sue (Or In A Season Of Crime)」は、2014年に発売されたベスト盤『NOTHING HAS CHANGE』に収録されたジャズアレンジの同名曲を、人力ドラムンベース+ロッキンにリアレンジしたもの。よくぞ『★』の世界観に合ったリアレンジを施したなと、関心させられます。その後も「Girl Loves Me」「Dollar Days」と雰囲気モノの良曲が続き、最後は90年代以降のボウイのカラーが色濃く表れた「I Can't Give Everything Away」で締めくくり。ただただすごいアルバムができたな。70歳目前にまた新しいキャリアが始まるとか、どういうことだよ……と聴き終えた直後にため息をついたことをよく覚えています。

それから3日後の1月11日(月・祝)。午後からSKE48の取材を終え、遅い昼食を取っていると、Twitter上に悪い冗談が次々とアップされる。えっ……それが事実だと気づくまでに、そう時間はかかりませんでした。その日の夜に予定していたライブに足を運ぶ気力が一気に失せ、帰宅してそのままこの『★』や往年の代表作を明け方まで聴き返すことを数日にわたり繰り返しました。

正直、上に書いた『★』の感想は、1月8日に感じたものとは正確には異なるかもしれません。ボウイの死により、すでに思い出補正もかかっているでしょうし。でも、彼の死を知るほんの数日前に発売されたこのアルバムを、リリース日に聴けたことだけは間違いない事実だし、あのときに感じた衝撃も間違いない事実。それを急逝による補正でねじ曲げられる前に感じられた、そこだけは良かったな、幸せだったなと1年近く経った今、より強く思うわけです。

この思い出補正がなかったら、2016年の年間ベストアルバム1位に選んでいただろうか……いや、選んでいたよね。自分のこの気持ちを信じることにします。



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2016年1月12日 (火)

デヴィッド・ボウイ逝去に寄せて──ボウイとゾウイ、母と僕。

僕は『Let's Dance』世代だ。だから70年代の偉業なんて当時は知らない。「どうやら、そんな偉大な人だ」ってことぐらい。初めてレンタルでちゃんと聴いたアルバムは『Tonight』だし、初めて買ったCDは『Never Let Me Down』だし、Tin Machineなんてバンドを結成されても時代は80年代末のハードロック全盛期だから夢中になれるわけもなく。

80年代、つまり中高生だった僕にとってボウイは「『Let's Dance』や『Blue Jean』の人」「お酒のCMの人」「『戦メリ』や『ラビリンス』の役者」程度でしかなかったのだ。


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