2017/01/10

TIN MACHINE『TIN MACHINE』(1989)

デヴィッド・ボウイが初めてバンドを組む、という話題だけが先行し、その音楽性自体は二の次だったような記憶が残るTIN MACHINE。思えば80年代に入ってから以前の“ペルソナ”をすべて剥ぎ取り、『LET'S DANCE』で大ヒットを収めたものの、そこから状況は尻すぼみに。新たな鍵を手にするため、現状打破を考えてのバンド結成だったのかなと思うわけです。

ボウイ(Vo, G)、リーヴス・ガブレルス(G)、トニー・セイルス(B)、ハント・セイルス(Dr)という4人で制作された1stアルバム『TIN MACHINE』は、過去のボウイのカラーを覆すような、ボウイのみならず他の3人のカラーも見事に入り混じった、真の意味でのバンド作品。どこかブルージーで変態的な「Heaven's In Here」からゆったりとスタートするアルバムは、続くタイトルトラック「Tin Machine」を起点に熱量が上がっていきます。全体の印象としてはギター主体の古き良き時代のハードロック的手法がベースで、そこにボウイらしい翳りと湿り気のある歌声&歌メロが加わることで既存のハードロックとは異なるスタイルを確立。3曲目「Prisoner Of Love」なんて、まさにその好例だと思います。

たぶん時代だったんでしょうね。世の中的にロックバンドが世界を席巻し、それまでの数年間動くことのなかったROLLING STONESまでレコーディング&ツアーを開始したのが1989年だし。ボウイにしても何か新しいことをすべきだと感じていたでしょうし、それがたまたまバンドだったと。世が世だったら、これがヒップホップやテクノだった可能性もあるし。それはそれで聴いてみたかったですけどね。

ヘヴィにアレンジされたジョン・レノンのカバー「Working Class Hero」やストレートな「Under The God」「Sacrifice Yourself」あたりを聴くと、もう一度くらいステージでこれらの楽曲を歌ってもよかったんじゃないか、なんて思ったり。もはやそれすら叶わぬ夢ですが。1991年に発表された2ndアルバム『TIN MACHINE II』がもし失敗していなかったら、このバンドがどこまで続いていたのかな……とはいっても、きっと短命で終わったんでしょうけどね。



▼TIN MACHINE『TIN MACHINE』
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投稿: 2017 01 10 12:00 午前 [1989年の作品, David Bowie, Tin Machine] | 固定リンク

2016/12/31

DAVID BOWIE『★(BLACKSTAR)』(2016)

2016年1月8日(金)。午前中から乃木坂46の取材を行い、午後遅くまで作業を続けてから帰り道で購入したのが、この日世界同時リリースとなったデヴィッド・ボウイ3年ぶりの新作『★』と、ちょっと前にリリースされたボックスセット『FIVE YEARS 1969-1973』でした。

前年秋に先行公開されたMV「Blackstar」を観て聴いて、「これは間違いなく傑作だ!」と多くの音楽ファンが思ったことでしょう。派手なボウイではない、穏やかなボウイ。90年代以降の作品では『BLACK TIE WHITE NOISE』(1993年)や『HOURS…』(1999年)が好きな自分としては「これはど真ん中な作品になるかも…」と、そういう期待感でいっぱいでした。その思いはアルバムリリース直前に公開された「Lazarus」を聴いても、変わることはありませんでした。

2013年に突如発表された復活作『THE NEXT DAY』も、もちろん大好きでした。しかし、特に日本盤はボーナストラック含め18曲入りということでたくさん詰め込みすぎた感が強く、すべてを理解するまでにはかなりの時間を要した記憶があります。あと、10年ぶりということで、期待が大きすぎたのもあって、ほんのちょっとだけ「ああ、こんな感じか……」とちょっとだけ思ったりもして。

ところが『★』は全7曲、オープニングの「Blackstar」こそ10分前後の大作ですが、トータルで41分程度と非常に聴きやすい内容。人力ドラムンベース的な雰囲気のある前半から、ドリーミーなミドルテンポのパートへと展開する流れなど、クラブミュージックとジャズとサイケデリックロックを掛け合わせたかのようなこの世界観に惹きつけられない人はいないと思います。続く、ジャズファンク的な「'Tis A Pity She Was A Whore」は『BLACK TIE WHITE NOISE』からの流れにある1曲で、ひたすらカッコいい。そこから再びダークな「Lazarus」へと流れる、いわゆるアナログA面の流れは圧巻です。

4曲目(いわゆるアナログB面)は「Sue (Or In A Season Of Crime)」は、2014年に発売されたベスト盤『NOTHING HAS CHANGE』に収録されたジャズアレンジの同名曲を、人力ドラムンベース+ロッキンにリアレンジしたもの。よくぞ『★』の世界観に合ったリアレンジを施したなと、関心させられます。その後も「Girl Loves Me」「Dollar Days」と雰囲気モノの良曲が続き、最後は90年代以降のボウイのカラーが色濃く表れた「I Can't Give Everything Away」で締めくくり。ただただすごいアルバムができたな。70歳目前にまた新しいキャリアが始まるとか、どういうことだよ……と聴き終えた直後にため息をついたことをよく覚えています。

それから3日後の1月11日(月・祝)。午後からSKE48の取材を終え、遅い昼食を取っていると、Twitter上に悪い冗談が次々とアップされる。えっ……それが事実だと気づくまでに、そう時間はかかりませんでした。その日の夜に予定していたライブに足を運ぶ気力が一気に失せ、帰宅してそのままこの『★』や往年の代表作を明け方まで聴き返すことを数日にわたり繰り返しました。

正直、上に書いた『★』の感想は、1月8日に感じたものとは正確には異なるかもしれません。ボウイの死により、すでに思い出補正もかかっているでしょうし。でも、彼の死を知るほんの数日前に発売されたこのアルバムを、リリース日に聴けたことだけは間違いない事実だし、あのときに感じた衝撃も間違いない事実。それを急逝による補正でねじ曲げられる前に感じられた、そこだけは良かったな、幸せだったなと1年近く経った今、より強く思うわけです。

この思い出補正がなかったら、2016年の年間ベストアルバム1位に選んでいただろうか……いや、選んでいたよね。自分のこの気持ちを信じることにします。



▼DAVID BOWIE『★(BLACKSTAR)』
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投稿: 2016 12 31 12:00 午前 [2016年の作品, David Bowie, 「R.I.P.」] | 固定リンク

2016/01/12

デヴィッド・ボウイ逝去に寄せて──ボウイとゾウイ、母と僕。

僕は『Let's Dance』世代だ。だから70年代の偉業なんて当時は知らない。「どうやら、そんな偉大な人だ」ってことぐらい。初めてレンタルでちゃんと聴いたアルバムは『Tonight』だし、初めて買ったCDは『Never Let Me Down』だし、Tin Machineなんてバンドを結成されても時代は80年代末のハードロック全盛期だから夢中になれるわけもなく。

80年代、つまり中高生だった僕にとってボウイは「『Let's Dance』や『Blue Jean』の人」「お酒のCMの人」「『戦メリ』や『ラビリンス』の役者」程度でしかなかったのだ。


そして1990年。上京した僕は東京ドームで初めてボウイを生で観た。と同時に、当時再発された初期作品CDに手を出し、ベスト盤『Changesbowie』を聴いて、初めてその功績に触れた。なんで誰も教えてくれなかったんだと。いや、自分が聴こうとしなかったくせに。そこからの僕は「グラム時代のボウイこそ正義。80年代以降はクソ」という、いわゆる頭でっかちなリスナーとして、90年代以降の作品を否定し続けた。『Black Tie White Noise』を「バンドで失敗した奴の出戻り」、『Outside』や『Earthling』を「時代に迎合しやがって」と貶し、『'Hours…'』にいたってはリリース当時購入さえしなかった。そして90年代前半に活動していたバンドではライブのたび毎回「Suffragette City」を演奏した。1996年の『Outside』でのツアーも、昔の曲にしか反応しなかった。本当に嫌な客だったと思う。

でも僕も大人になり。おそらく30代に入ってからだろうか、素直に80年代、90年代の作品も受け入れられるようになった。きっかけは2000年代にリリースされた2枚のオリジナルアルバム『Heathen』と『Reality』だったか。そこから『'Hours…'』にようやくたどり着き、個人的に大切な1枚へと化す。2004年春から3年ほど配信した、著作権的に合法で音楽を流すネットラジオ『RADIO TMQ』(覚えてる人がどれだけいることやら)の初代エンディングテーマは、このアルバムの中の1曲「Seven」だった。きっと番組を始める直前の3月、武道館で『Reality』ツアーを観たから「ボウイの曲をエンディングテーマにしよう!」と意気込んだのかもしれない。とはいえ「Seven」はライブでもやっていなかったし、今となってはなぜこの曲をセレクトしたのかも覚えていないのだが。

……と、僕にとってのデヴィッド・ボウイはそういう存在。いや、伝わらないか。今では『Never Let Me Down』もTin Machineのアルバムも「しょうがねえなあ」と言いながら年に1、2度は手に取るし、グラム時代以上にプラスティックソウル時代やベルリン三部作時代が好きだし、『Black Tie White Noise』は今でも死ぬほど愛聴しているし。そんな存在。

でも、それ以上にボウイに対してシンパシーを感じるのは、ボウイが僕の母親と同い年(生まれた日も1ヶ月ちょっと違い)で、ボウイの息子ダンカン・ジョーンズと僕が同い年だから。だから、今回の件は自分が思っていた以上に堪えた。音楽的損失という意味でも、『★』という名盤発表2日後という突然の訃報という意味でも、もちろんショックだった。しかし、個人的には上のような理由で自分の境遇と重なってしまったがために、必要以上のショックを受けたんだ。

この年末、1年ぶりに実家に帰った。うちは片親なのもあり、わりと頻繁に母親と連絡を取っている。電話のたびに、体の不調であったり親戚や知人の訃報を聞かされる。当の母も2009年に甲状腺に腫瘍が見つかり(幸い初期段階で軽く済んだが)、現在も定期検診を続けている。この年の夏、フジロックなどの夏フェス参加を一切キャンセルしたのは、実はこれが理由だ。そして2011年秋に、長らく入院していた祖父も大往生。この頃から「あと何回、実家に帰って、こうやって母親と話すことができるのか」と漠然と考えるようになっていた。

2006年からの9年間、WEBのニュースサイトで働いていたこともあってか、正月も3が日帰省するのみ。タイミングが合えばお盆か夏フェスシーズンが終わってから帰省するくらいだった。だからフリーになった2014年末からはもっと肉親との時間を大切にしようと考えていた。しかし、幸運にもと言うべきか、フリーになってすぐに大きな仕事を受け持ち、年末年始も元日明け方まで仕事、新年も4日から稼働という状況で、ゴールデンウィークも仕事、7〜9月も毎週末フェスやイベントで稼働。そんなこともあり、2015年末は少しゆっくりしようと考え、12月31日から1月4日までの5日間を実家で過ごした。おかげで久しぶりにじっくりといろんな話ができた。実際、フリーになって不安を与えていたと思うし、WEBなんて見ない人だから自分が日々どういう仕事をしているかなんて理解してもらえていない。そんな母に昨年執筆・編集した書籍や雑誌の記事を手渡したことで、少しは安心してもらえたのではないかと思っている。

そんな矢先のボウイ訃報。そういえばボウイの誕生日に定期検診だったな、とかいろいろ思い出してしまい、なんとも言えない気持ちになった。出先でこの情報を知り、食事中だったにも関わらず周りを気にせずに泣いた。客こそ少なかったが、店員に不審がられたはずだ。その後、どうやって自宅までたどり着いたかの記憶はほとんどない。気付いたら自宅のPCでボウイの音源を再生し、YouTubeで動画を観ていた。多少アルコールも手にしていたのもあって、気がついたら寝落ちていたくらいだ。

正直、まだ気持ちの整理はついていない。今日もボウイの音源をずっと聴き続き、さっきまで『地球に落ちて来た男』を観ていたくらいだ。もはやボウイという才能の損失を悲しんでいるのか、自身の肉親に対する思いを憂いているのか、自分でもわからない。ただ、ボウイの曲を聴き続けていると不思議と何も考えずに済むのも事実。曲が途切れると同時に、現実に引き戻される。それが怖いから再び再生する。そんな日常が昨日からずっと続いている。

今は彼が最後に遺した『★』というアルバムを、音だけでなく言葉としても反芻しているところだ。きっとしばらくこの行為を繰り返しながら、自分の中で折り合いをつけるんだと思う。ボウイの死にも、そして迫りくる肉親の死に対しても。

投稿: 2016 01 12 07:33 午後 [David Bowie, 「R.I.P.」] | 固定リンク

David Bowie『A REALITY TOUR』日本武道館公演(2004年3月8日/再掲)

※このライブレポートは2004年3月11日に「とみぃの宮殿」に掲載されたものを、加筆修正したものです。最後のジャパンツアーの模様を伝えたいと思い、またデヴィッド・ボウイ追悼の意味を込めて再掲載したいと思います。


8年ぶりに来日したデヴィッド・ボウイのジャパンツアー初日、3月8日の武道館公演に行ってきました。前回('96年6月だっけ?)観たのもここ武道館。あのときは布袋寅泰がオープニングアクトとして出演してたっけ。今回行われる来日公演3本のうち、オープニングアクトが付かないのがこの初日のみ。そういう意味では損したような気がしないでもないけど……ま、ここ数日ボウイが観れるって考えただけでドキドキしてたし、正直ボウイばかり聴いてたから、余計なモノを観なくても(聴かなくても)済んだ、という意味では得したのかも……要はボウイさえ観れればいいわけ。

この日は2階席西側の最前列。ステージにかなり近いポジションだったこともあり、本当にドキドキもんでした。そのステージは比較的シンプルで、ドラムやキーボードの後方に数段高いステージ(踊り場?)があったり、その上からススキの穂みたいなのがぶら下がってたり、そのさらに後方には大きなスクリーンがあったり、ステージ前方には2メートル程度の花道があったり。過去のボウイと比べれば明らかに地味なわけ。今回の『A REALITY TOUR』、すでに行われた全米公演のセットリストとか見ると、過去の封印が何のそのって感じの選曲なわけですよ。とはいえ完全な1990年の『SOUND+VISION TOUR』みたいなヒットメドレーというわけではなく、意外な曲、地味な曲、そして過去2作の新譜からの曲をふんだんに取り入れ、明らかに「21世紀のデヴィッド・ボウイ」を提示した内容。新作『Reality』はなかなかの力作だっただけに、ライブでの披露もかなり楽しみなわけで。観る前からこんなにワクワクしたボウイの来日公演って、もしかしたら初めて観たドーム公演以来じゃないかな? その後も『Outside』でのツアーで観てるけど、今回の比じゃなかったもんな。

ほぼ定刻どおりにライブはスタート。まずオープニングSEが流れ出すのと同時に、会場が暗転。バックのスクリーンに都会の映像が流れ、SEは生バンドによるインストへ。途中から映像がボウイ・バンドのメンバーをコラージュしたアニメーションに切り替わり、これがボウイ・バンドの演奏によるものだと判明するのですが。アニメーションのボウイはハーモニカを吹いています。で、映像がアニメからリアルな姿に変わり、実際のバンドメンバーがひとり、またひとりとステージに登場します。会場はスクリーンの灯りのみで、最後にボウイが現れ、あの印象的なリフが会場に鳴り響く。全米ツアー同様、1曲目は「Rebel Rebel」。イントロ部はオリジナルバージョンに忠実で、歌に入る直前に2003バージョンに変わるというアレンジ。うん、やっぱりロックンロールを歌うボウイは単純にカッコいい。その佇まいがさまになるし。サビに突入して、会場がパッと明るくなり、初めてボウイがきらびやかな衣装を着ていることに気づきます。なんだかなぁ……57才なのに、この王子ぶり。ここまで圧倒的にカッコいい57才、他にいる!? ったく……うちのオフクロと同い年ってのがね……そんな自分の親父と呼んでも差し支えない年齢のオッサンに向かって、目を輝かせてる自分って一体……ま、気にしない気にしない。実際カッコいいんだからさ。

1曲終えて一息つくボウイ。以前からは考えられないほどに話す話す。かなりアットホームな雰囲気の中、新作から「New Killer Star」を。ここでボウイ、ギターも弾くんだけど、あんまり音が出てないような気が。ま、気にしない気にしない。残念ながらお客のリアクションは明らかに薄かった。それだけは事実。畜生、ここに集まってきた中年連中は、ここ数作の新作は完全無視してるようですぜ? だって、その後に演奏された「Fame」と比べればその差は歴然でしたからね。

旧曲のライブアレンジ自体は2000年のツアー以降、ほとんど一緒みたい。比較的カッチリした演奏ながらも、適度にルーズで適度にファンキー。特にドラムのスターリング・キャンベルのプレイがハンパなくすごかった。時にチャーリー・ワッツみたいな「ロールする」ロックンロールプレイを、時にNine Inch Nailsばりに「人間ドラムンベース」していたりするんだから。あとベースのゲイル・アン・ドロシー。ルックスだけで一人勝ちなのに、ベースだけでなく歌も相当うまい。コーラス要員としてシンセ&パーカッション&ギターを担当していた黒人女性(キャサリン・ラッセル)とともにいい仕事をしてました。

その後、Pixiesのカバーだと多くの人が気づいてないであろうシンプルなロックンロール「Cactus」で徐々に盛り上がりつつ、この日最初のピークが「All The Young Dudes」で訪れます。名曲すぎ。イントロのフレーズを聴いただけで鳥肌。サビでは大合唱……のはずなんだけど、キーが若干高かったせいもあり男性には厳しく、思ったほど大きな合唱にはならず。まあそれでもかなり歌えてた方だと思いますけど。曲が終わると、また一緒に歌ってくれというようなコメントの後、印象深いギターフレーズが。「China Girl」だ。イントロ部でのコーラスでゲイルがトチってやり直しになったのはある意味貴重かも。

ていうかさ、ホントにみんな歌わなすぎ! 知らないの? 何しに来たの!?なんて考えながらこの曲を聴いてると、今度は「Hallo Spaceboy」。とにかくこの曲はライブがカッコいいん。ボウイは後方の高台に昇って歌う。この曲でバンドの音量が一気に大きくなった印象。とにかくラウド(特にドラム、すごすぎ)。そういえば昔、ボウイの50才記念ライブで、この曲をデイヴ・グロールが叩いてたっけ。ふとそれを思い出させるほどにパワフルなドラミングで圧倒されっぱなし。もちろん、ボウイのカッコよさが大前提としてあるわけですけどね。

最初のピークで大きな拍手を受けた後、今度はまったりモードに。メンバーのほとんどが袖に引っ込み、スクリーンにはMVっぽい映像が。キーボードとギターで幻想的な演奏を始め、それがそのまま『Heathen』1曲目の「Sunday」へとつながっていく。曲が進むに連れてひとり、またひとりとメンバーがステージに戻ってきて、クライマックスのバンド演奏へ……CDだと盛り上がったところでフェードアウトという尻切れトンボ状態だったんですが、ライブではさすがにそれはなし。ギターソロ弾きまくり、ドラムもパワフルに叩きまくり。アルバムテイクが嘘みたいな名曲ぶり(いや、名曲は言いすぎか)。続いて新作からの「The Loneliest Guy」、Nirvanaのアンプラグドでおなじみ「The Man Who Sold The World」とまったり三昧。派手な盛り上がりはないけど、とにかくこれもボウイの持ち味のひとつ。

一息ついて、ゲイルのボーカルをフィーチャーした「Under Pressure」。ご存知のとおり、原曲はQUEENとのコラボ作。演奏自体は原曲どおりで、ゲイルはフレディ・マーキュリーのパートを一生懸命にこなしているんですが、ある意味ではフレディを超えていた気が。とにかくうまいシンガーだな、と。ボウイは10数年前にフレディの追悼ライブでアニー・レノックスと一緒にこの曲を歌っていたけど、あのときよりはるかに良かった。タイミング的にもちょうど日本でQueen再評価の時期だけに、この選曲は大成功。ボウイというよりもQueenの曲なんだけどね。そしてその盛り上がりを引き継ぐように、名曲「Life On Mars?」へ。ボウイ、かなり歌えてたほうだと思いますよ。さすがにちょっとウルッときた。すげえ良かった、うん。

この後、『Low』からの三連発(「Sound And Vision」「Be My Wife」「A New Career In A New Town」)に失禁しそうに。特に後者2曲は意外な選曲だっただけに、腰抜かしそうになりました。だって「A New Career In A New Town」って……ボウイ、ハーモニカ吹いてるだけだし。もうね、カッコよすぎ。ニューシングルかつミネラルウォーターのCMソングの「Never Get Old」は、どことなく「Fame」や「Young American」にも通ずる“黒っぽさ”を持った1曲。女性コーラスがいい味出してるね。その後に、確か前回の来日時にもやってたような記憶がある「Quicksand」、再び新作から「Days」というアコースティック楽曲が続き、さらにギターのエフェクトが気持ちいい「Heathen (The Rays)」、新作のからのLooking For Waters」と、後半になっても比較的新しめの曲が続くのが正直以外。全米ツアーよりも新曲増えてるんじゃない? 日本で久々のヒットを記録したから、気をよくしたとか? まあここ最近、旧譜よりも新作をよく聴いてたので、個人的にはありがたかったんですが(古い曲はありがたみが大きい反面、変わり果てたときは受けるショックも大きいから諸刃の剣なんですよね)。

エンディングが近づき、最後の盛り上げパートに。まずは「Ashes To Ashes」。大好きな1曲で、一時期バンドでコピーしてたことがあるほど。原曲とキーが変わってるので、慣れないと違和感が残るんだけどね。原曲にあった浮遊感/ニューウェイヴっぽさが薄れて、ポップ色の強いロックナンバーに様変わりしてるのが気になるけど、この際良しとしよう。そして『Earthling』から唯一披露された「I'm Afraid Of Americans」。本当は「Little Wonder」を聴きたかったんだけど、この曲がとにかくファンキーかつつヘヴィで、それこそNine Inch Nailsっぽくもあり、先の「Fame」あたりにも通ずる色もあり。この曲だよ、とにかくドラムがすごかったのは。ラストでのドラミングは神業で、ハイハットとリムショットを使用した、正しく人間ドラムンベースといったプレイ。そりゃ終わった後、この日一番の拍手を受けるわけだ。本編最後は名曲中の名曲「Heroes」。1コーラス目はギターのバッキングのみで歌われ、歌い終えるとおなじみのフレーズとともにバンドが加わるといったアレンジ。ちょっともどかしくもあったんだけど、じらされただけにあのギターフレーズが聴こえてきた瞬間、鳥肌が……やっぱりカッコいいわ、うん。曲も、ボウイも、バンドも、とにかくすべてが最高にカッコよすぎ。

アンコールでは、ドラムの印象的なフレーズとともにあの曲が……『Ziggy Stardust』1曲目、「Five Years」……最初のフレーズをボウイが歌い出した瞬間、思わず涙がこぼれそうに。いやあ、参った。まさか本当に泣きそうになるとは。まさかこの曲をここでこうやって聴ける日がくるとは……すでにアメリカ等で披露されていると知っていながらも、いざ実際に耳にするとね……こらえきれなくなるんですわ。もうね、終始歌いっぱなし。さらにこの流れで「Suffragette City」ですよ!? 10数年前、初めてボウイを生で観て、どうしてもこの曲を自分のバンドでやりたくなって。その後数年間、この曲を何百回と歌ってきたもんだから、そりゃそらで歌えますわ。後半のサビ繰り返しはさすがのボウイも厳しそうで、高いキーが全然出てなかったですが、そんなの気にしない気にしない。キメの「Ah, Wham bam thank you mom!」も一緒に叫びましたよ、ええ。

そんな、完全に心酔し切った状態の中、アルバム『Ziggy Stardust』曲3連発のラストを飾る「Ziggy Stardust」。あのリフを聴いた瞬間、全身に鳥肌立ちまくり。当然この曲もそらで歌えるわけですが‥‥泣いた、マジで。実際に涙は流れなかったかもしれないけど、心で号泣。ありがとうって言いながらボウイに抱きつきたい心境。2時間10数分がアッという間で、まさか26曲もやったなんて思ってもみなかった。

間違いなく、90年以降の来日公演で一番の内容でした。「今のボウイ」もちゃんと垣間みれたし、いろんな意味で吹っ切れたかのような初期代表曲のオンパレードといい、とにかく完璧すぎる内容でした。選曲的にも申し分ないと思うし(そりゃ言い出したらキリがない)、ボウイの状態もかなり良かったと思うし、何よりも今のバンドが素晴らしい。個性的なメンバーが集まった今のバンドで、2枚のアルバムのツアーを長期間過ごしてきたこともあり、かなり息が合った演奏を聴くことができました。どうせならまた観たいよ、次のツアーでも。

正直なところ、観る前は結構不安になってたのね。先日観たKraftwerkが「過去」と「今」をつなげた、ある意味集大成的な素晴らしいステージだっただけに、ボウイは一体どうなるんだろうと。開き直って過去の曲を多くやってくれるのは嬉しいんだけど、でもなぁ……って。けど、実際には違った。いや、もちろん過去の曲をたくさんやってくれたんだから違ってはないんだけど、根本の部分では違ってた。今回はツアータイトルどおり、『Reality』という自信作を引っ提げたツアーなんだなと。観客の新曲に対するリアクションは薄かったし、あのリアクションがすべて正しいとは思わないけど、僕は今のボウイを支持したいな、うん。そして……できることなら、夏にもう一回、野外で観たいよね。

セットリスト
01. Rebel Rebel
02. New Killer Star
03. Fame
04. Cactus
05. All The Young Dudes
06. China Girl
07. Hallo Spaceboy
08. Sunday
09. The Loneliest Guy
10. The Man Who Sold The World
11. Under Pressure
12. Life on Mars?
13. Sound and Vision
14. Be My Wife
15. A New Career In A New Town
16. Never Get Old
17. Quicksand
18. Days
19. Heathen (The Rays)
20. Looking For Water
21. Ashes To Ashes
22. I'm Afraid Of Americans
23. Heroes
<アンコール>
24. Five Years
25. Suffragette City
26. Ziggy Stardust



▼David Bowie『Reality』
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投稿: 2016 01 12 07:15 午後 [2004年のライブ, David Bowie, 「R.I.P.」] | 固定リンク

Cybernauts日本公演(2000年1月8日/再掲)

※このライブレポートは2000年1月13日に「とみぃの宮殿」に掲載されたものを、加筆修正したものです。デヴィッド・ボウイ追悼の意味を込めて、再掲載したいと思います。


新世紀1発目となるライブが、後ろ向きとも言えるトリビュートバンドというのも何だかな。しかも相手はかのDef Leppardのフロントマン2人と、歴史的なバンドThe Spiders From Marsのリズム隊。70〜80年代の英国を代表する面々による、デヴィッド・ボウイ&ミック・ロンソンのトリビュートバンドだ。そして会場となるのは、一昨年10月に憧れのCheap Trickを観たあの忌まわしい横浜ベイホール……いい意味で解釈すれば「あんな小さい会場で憧れの人たちを観られる!」、悪く解釈すれば「またあそこまで行くのか……」という思いがよぎるわけだが。しかも当日、体調が悪いときたもんだ。正直、朝起きたときはどうしようか?と思ったものの、今思えば本当に行ってよかったと思えるだけの内容だった。そしてLeppsを切っ掛けにハードロックに目覚めた自分にとって、忘れられない1日にもなった。

当日は祝日ということもあって、普段より1時間早い開場/開演だった。僕は16時半過ぎに会場に着いたのだが、海の近くということもあって寒いのなんの。しかも前夜から当日朝にかけて初雪が降ったもんだから、余計に寒い。微熱を伴う僕にとってキツ過ぎる状況。そして217番というまずまずの整理番号だったのだが、ふと並んだ後ろを見ると……せいぜい50人程度といったところだろうか。しかも前にも明らかに200人は並んでいない。アルバムが年末リリースだったこともあって、それほど大々的にはプロモーションされなかったのだろうか。まあ翌日には東京公演があるのだから、こっちに来る人は余程のファンか、それとも平日公演が観られない地方の方々といったところだろう(自分含む)。トータルで300人前後。天下のDef Leppardのメンバーがいるにも関わらず……いや、ここ日本では彼らは英米での人気と比べたらそれほどでもないし。過去にも武道館追加公演で2階席が解放されなかったりなんてこともあったくらいだから。

会場に入ると、3列目前後真正面のポジションを確保。どうせ始まれば後ろから押されてより前に行けるだろう、そう思ったのだが……これは間違いだった。押されるほど、後ろに人がいない。せいぜい10列前後しかできていないのだ。フロア後方に行くくらいなら、一段高くなった柵より後ろに行けばいいという人が多かったようだ。結局ライブが始まっても後ろから押されることもなく、最後までそのポジションで快適に楽しめた。しかもステージから1メートルちょっとといった距離で、天下のLeppsのメンバーを観られるのだから……。

BGMのTeenage Fanclubで会場の空気が和む中、スタッフがステージに登場。「Pleaese welcome!~」っていう例のアナウンスを始め、その後に続々とメンバーが登場する。ボーカルのジョー・エリオットは黒のTシャツに牛柄のシャツ、黒のパンツというLeppsでのライブと何ら変わらぬ格好。ギターのフィル・コリンも基本的には普段と何ら変わらぬ格好だ。ウッディーは白い帽子を被っている以外には特に目立たない格好。というか、よく見えない。トレヴァーもシャツにジーンズという、アルバム内の写真と同じ服装で、キーボードのディックは見た目が「スキンヘッドのクラプトン」で思わず二度見。

そしてライブはスタート。選曲・曲順については最後のセットリストを確認してもらうとして……それにしても、この客席の“寒さ”は何なんだろう? いや、盛り上がってはいるんだけど、いかんせん客が少なすぎる。翌日のSHIBUYA-AXは結構な数入ったと聞くから、やっぱり場所的な問題なんだろう。見渡す限りではでデヴィッド・ボウイのファンやグラムロックファンは見受けられない。ということは、やはりここにいるほぼ全員がLeppsファンということになるのだけど……口をパクパク動かしてるわりには、歌声が聞こえてこないのが不思議だ。

ライブアルバムと違った点をいくつか挙げると‥‥①ミック・ロンソンのソロ曲が削られ、ボウイの曲が増えていた(『Aladdin Sane』から2〜3曲)、②完全にこの5人だけで再現しているため、ライブアルバムで聴かれたハーモニカ等は一切なし、③アルバムでは曲間を編集して短くしてるが、実際のライブでは曲間が結構空いたりして、ダラダラした印象を受けた。まあそこがクラブギグっぽくていいんだけど。逆に、思ってたのと違った(驚いた)点は、①Leppsではコーラスの要となっているフィルが、完全にギターに専念していたこと。彼の前にはマイクすらなかった(ただしお約束ともいえる上半身裸は、中盤で早くも登場)、②そのぶん、トレヴァーとディックがナイスなコーラスを聞かせてくれたこと、③そのディックがフィル並、いや、それ以上の仕事をしていたこと。「Moonage Daydream」ラストのギターソロに被さる高音コーラスなど、本当にすごいと思う瞬間が多々あった。またキーボードのパートがない曲ではタンバリンを持ってステージ前方まで飛び出し、フィルに絡んだりもした。

アルバム以上に素晴らしかった曲。まず前半のハイライトともいえる先の「Moonage Daydream」のギターソロ。ミック・ロンソンというよりも、完全にフィル・コリンしていた。フィルのギタープレイはピッキングやストローク時の腕に特徴があって、一度観たら忘れられないのだけど、それを目の前で間近に観られたのはある意味貴重だった。あまり速弾きギタリストには興味がないが、この人とブラッド・ギリス(Night Ranger)、ニール・ショーン(Journey)、そしてスティーヴ・ヴァイだけは別格。続いて、アルバム未収録で今回初めてプレイされた「Lady Grinning Soul」。イントロでのディックのピアノプレイが素晴らしく、さらにLeppsではほとんど聴くことのできないジョーのファルセットが堪能できた。さらににエンディング前の「The Width of a Circle」。この10分以上もあるライブバージョンがもうすごすぎ。中盤にウッディーのドラムソロが挿入されているんだけど、とても50歳を越えた人間のドラムソロとは思えなかいほど圧巻だった。

ライブ本編はVelvet Undergroundのカバー「White Light White Heat」で一旦終了。アンコールはすぐに始まった。ディック、ウッディー、トレヴァーが現れ、続いてフィルが登場し、最後にシャツを脱いだジョーがアコギを抱えて登場。ここで神妙な顔つきでMC。

「今日、1月8日はデヴィッド・ボウイの54回目の誕生日だ。そして、もうひとつは‥‥」

そう言いかけた瞬間、ハっと我に返った自分。そしてジョーはギターで隠していたTシャツの胸のプリントを見せた。そこには「STEVE CLARK / 1960-1991」の文字とともに、亡きスティーヴの笑顔が。そう、この日のためにジョーはこんな粋なものを作っていた。泣くに泣けないよ……隣にいた、ほぼ僕と同年代と思わしき女性は、そのTシャツの絵柄を見た瞬間に号泣。ジョーは続けた。

「もう彼がいなくなって10年も経ったんだよ。いつまでも彼のことを忘れないでほしい。僕らの大切な友達、スティーヴのことを……次の曲をスティーヴに捧げます」

そう言って彼は『Ziggy Stardust』の最終曲「Rock'n'Roll Suicide」をアコギ1本で歌いだした。スティーヴはLeppsのほとんどの曲で作曲者としてクレジットされている、結成当時からのギタリスト。僕が浪人中だった1991年1月8日に亡くなった。このニュースを当時の友人から知らされたんだった。丁度その日は土曜で、センター試験初日。当日深夜には伊藤政則のラジオを、結局最後まで聴いてしまった。4時間ぶっ続けでスティーヴに関する情報を、ロンドンと電話でやりとりしていた。彼が大好きだったLed Zeppelinの「Stairway To Heaven」で番組は締めくくられ、僕はそのまま眠れずにLeppsのアルバムを聴きまくってから試験会場に向かった……そんな10年前の記憶がよみがえってきた……そうそう、あの日も確か雪が降ったんだよなぁ……。

珍しく、あのフィルまでもが神妙な顔つきでギターを弾きまくる。他のメンバーも特に面識があったわけではないだろうが、スティーヴに敬意を表して真剣にプレイに取り組む。そして曲が終了すると盛大な拍手。妙にしんみりしてしまった中、そのまま「Suffragette City」に突入したのだが、ここでもいい仕事をしていたのは、ディックだった。笑顔で他のメンバーとアイコンタクトを取る。するとつられて他のメンバーも笑顔に。こうして最後には満面の笑みで最初のアンコールは幕を下ろした。そして2回目のアンコールはお約束ともいえる「All The Young Dudes」であっさりと終了。ライブ全体のトータル時間は1時間40分程度で、アルバムよりもちょっと長いくらいか。ALLボウイだったにも関わらず、Leppsファンを最後まで飽きさせなかった点はさすがだなと思う。

個人的にはボウイを聴きにいったのに、最後にはLeppsを観たような錯覚に陥ってしまったが、僕自身忘れてしまっていた初心(そう、僕はLeppsを切っ掛けに洋楽にのめり込み、バンドやりたいギター弾きたいって思ったんだ)を思い出させてくれた。21世紀の最初に初心を再確認できたという意味でも、このライブは(少なくとも自分にとって)意味のあるものだった。

最後に。会場内で「やっぱりデフレパ(やめろよ、この呼び方)の曲、やらないのかな?」「やらなきゃ意味ないでしょ?」といった方々。君たちがここにいることの方が意味ないと思うのだけど……横浜に向かう帰りのバスの車中では「Leppsの曲、やらないで正解だったね?」と会話していたカップルがいたけど、本当そのとおり。

セットリスト
01. Watch That Man
02. Hang on to Yourself
03. Changes
04. The Superman
05. Five Years
06. Cracked Actor
07. Moonage Daydream
08. Lady Grinning Soul
09. The Jean Genie
10. Life on Mars
11. The Man Who Sold The World
12. Starman
13. The Width of a Circle (feat. Drum Solo)
14. Ziggy Stardust
15. Panic in Detroit
16. White Light White Heat
<アンコール>
17. Rock'n'Roll Suicide
18. Suffragette City
<ダブルアンコール>
19. All The Young Dudes



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投稿: 2016 01 12 07:00 午後 [2000年のライブ, David Bowie, Def Leppard, 「R.I.P.」] | 固定リンク

2004/10/22

とみぃ洋楽100番勝負(65)

●第65回:「Ashes To Ashes」 DAVID BOWIE ('80)

 自分にとって、それまでデヴィッド・ボウイという存在は、歌も歌って適度に役者もやってという、マルチプレイヤー的な存在であって、そこまで惹かれる存在ではなかったんですよ。過去の偉業は知ってましたけど(「ZIGGY STARDUST」とかね)、それを聴く機会もあまりなかったし(当時は廃盤になってたアルバムが多かったり、アナログ→CDの移行でCD化が遅れる旧譜が多々あったりしたからね)。

 ところが'90年になって、ボウイが来日すると。しかも「これまでのソロキャリアを一時封印するために、グレイテストヒッツ・ライヴをやる」と。おお、それは観ておかなくちゃ‥‥と思い、当時リリーすされた「CHANGES BOWIE」っつーベスト盤に手を出したんですよ。

 ‥‥ここが人生の分かれ道っつうか。あの時、これ聴いてなかったら、ボウイに傾倒することもなかったんだろうなぁ、と。

 初期のグラム路線にまず鳥肌立てて、中期のプラスチックソウル路線に驚き、続くベルリン三部作は当時の俺には「?」だったりするんですが、その後‥‥「LET'S DANCE」との間のエアポケットといえる「SCARY MONSTERS」というアルバムからの曲に、何故か心ときめいて。特に "Ashes To Ashes" という曲にね。あ、これ聴いたことある!って。

 多分、氷室京介が当時やってたラジオ番組でかけたから、それで耳に残ってたんですね。ヒムロックが語るわけですよ、自分達のやってたバンドの名前の由来となってるオッサンがライヴやる、って。それに影響されたのも大きかったのかな。

 数ヶ月前にROLLING STONESを観た東京ドームで、俺はまた歴史のひとつを目撃するわけですよ‥‥そう、"Rock'n'Roll Suicide" をやらない、体調最悪だった日にぶち当たってね。まぁそれは別にどうでもいいんですよ。とにかく‥‥ああ、こんなにカッコいい人なんだ、って初めて気づいて。単なる伊達男じゃなかったんだなって。

 その後、「ZIGGY STARDUST」にまで遡って、ようやく自分の高校時代のルーツ(HANOI ROCKSやMOTT THE HOOPLE等)に繋がるわけですよ、ここで。あー成る程って。と同時に、こんなにいろんなことをやれる才能と嗅覚を持ったボウイって、やっぱりスゲーっていう結論に達して。んで、低迷状態にある'90年代も熱心に追っかけて。今に至ると。

 そういう意味では、今年はボウイファンにとっては、本当に素晴らしい、充実した1年だったんじゃないですかね。

 最近のボウイはトニー・ヴィスコンティと一緒にアルバムを作ってるからってことで、どうしてもベルリン三部作時代と比較されがちですが、個人的にはこの「SCARY MONSTERS」の頃と比較すべきなんじゃないか、って勝手に思ってるんですよね。いや、何となくだけどさ‥‥



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投稿: 2004 10 22 12:00 午前 [1980年の作品, David Bowie, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004/03/09

DAVID BOWIE『BOWIE AT THE BEEB』(2000)

'90年代の、いや、'80年代後半からのデヴィッド・ボウイがとことんツイてなかったということを「'hours...'」のレビューで書きましたが、そのアルバムを境にボウイは再び上向きになります。過去の貴重なBBCラジオでのスタジオライヴ音源をCD2枚にタップリと収めた「BOWIE AT THE BEEB」の発表により、ボウイの現在/過去/そして未来に注目が集まるようになります。トニー・ヴィスコンティとの新作製作の話題で持ち切りだったのも、その一環でしょう。

今回紹介するライヴアルバム「BBC RADIO THEATRE, LONDON, JUNE 27, 2000」はそのタイトル通り、2000年6月27日、ロンドンにあるBBCラジオの劇場にて、ほんの一握りのファンを前にして、非常にリラックスした雰囲気の中行われたスペシャルライヴを収録したものです。当時、日本でもWOWOWでその模様が放送されたので、映像で観たという人もいるかもしれませんが、正式な単独作品としてリリースされたことはなく、実は先述の「BOWIE AT THE BEEB」初回限定盤にボーナスディスクとして付属していた1枚なんですね。だから、このアルバムを聴きたかったら「BOWIE AT THE BEEB」初回盤を探さなければならい。が、ここからが厄介でして‥‥このアルバム、リリース後暫くして「予定していた楽曲("Ziggy Stardust")のふたつの別テイクが、実は同一テイクだった」という凡ミスが発覚し、回収~生産一時中止になっているんですね。翌2001年初頭に再びボーナスディスクを含む形で再発されたようですが、海外盤を含めてもプレス数がそんなに多くないようで、更に現在ではこの「BOWIE AT THE BEEB」自体が日本盤は生産中止状態なようで‥‥とにかく見つけたら即買いの1枚(ボックスセット)です。

「'hours...'」リリース後のライヴということで、ボウイの「老い」「枯れ」具合が気になるところですが、ここで聴けるボウイのパフォーマンスは‥‥往年のベストには及ばないものの、それでもかなりいい状態であることが伺えます。まずボウイ自身が肩の力が抜けていて、いい具合に「楽しんで」歌っているんですね。アルバム全体の三分の一以上が'90年代の楽曲ということで「どうなのよ!?」という不安もあるかと思うんですが、なんのなんの、下手したら'70年代の楽曲以上にハマっていてカッコいいテイクすらあるんですから、この辺が「蘇生」しつつあるな、というのが伺えて嬉しいですよね。

'70年代初期、中後期、'80年代、そして'90年代の楽曲をランダムに演奏しているんですが、意外と違和感がないのが不思議というか。以前‥‥'90年代半ばに来日した時も感じたことですけど、特にその特色が顕著になってますね。当時の新作「'hours...'」からも "Survive" や "Seven" といった名曲の予備軍が選曲されている他、"Hallo Spaceboy"、"Little Wonder"、"I'm Afraid Of America" といった'90年代の代表曲達、"Let's Dance"、"Ashes To Ashes" といった'80年代の代表曲達、更には "This Is Not America" や "Absolute Beginners" といった'80年代に埋もれた地味渋な楽曲達、そして "Man Who Sold The World" から "Cracked Actor"、"Fame" や "Wild Is The Wind"、"Stay"、"Always Crashing In The Same Car" といった'70年代の代表曲/隠れた名曲達。最近でこそヒットメドレーが復活してますが、この頃はまだこだわりを捨てきれなかった時期なんですよね‥‥けど悪くない。いや、彼が過去残してきたどのライヴ盤よりも素晴らしいと思います。音質的なことはさておき、とにかく演奏のクオリティーも高いし。実はこの時のバンドメンバーと今現在のバンドメンバーって殆ど一緒なんですよね。だからってこともあるのかな‥‥最近のライヴ、非常に評判が良いですよね? そりゃレコーディングにも参加させたくなるわな、うん。

ROLLING STONESやAEROSMITHのような生き方も素晴らしいと思うし、実際尊敬している。KISSみたいにはなりたくないとは思いながらも、やはり一度心を許した弱みか、最終的には憎めない。けど、やっぱり俺はボウイみたいな生き方を支持したいな‥‥矛盾しててもいいから。だってそれこそが最も「人間らしい」と感じられるんだからさ。ま、最も「人間らしくない」存在だったあのボウイが、その後こういう生き方をするとは、当時のファンは思ってもみなかっただろうけどね。



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投稿: 2004 03 09 07:40 午前 [2000年の作品, David Bowie] | 固定リンク

2004/03/08

DAVID BOWIE『'hours…’』(1999)

'90年代の、いや、'80年代後半からのデヴィッド・ボウイは、とことんツイてなかったと思う。'80年代前半、特にアルバム「LET'S DANCE」とそのツアー、映画「戦場のメリークリスマス」での成功がもたらしたもの、それはボウイをスーパースターの座に押し上げたのと同時に、'70年代に自分がしてきたことと対峙すること、そして新しい「ボウイ像」を作り上げる為の葛藤との戦いだったように思います。「TONIGHT」や「NEVER LET ME DOWN」といったアルバムが思った以上のセールスを挙げられなかったこと、TIN MACHINEというロックバンドを組んで初期衝動を取り戻そうとしたものの短命だったこと、新しいレーベルに移籍して「BLACK TIE WHITE NOISE」というアルバムをリリースするもののレーベルが倒産してしまったこと、「OUTSIDE」や「EARTHLING」という「攻め」の作品を発表したものの古くからのファンには好意的に受け入れられなかったこと、等々。そして映画の世界でも大成功を収めるような作品には巡り会えず、とにかく「自分vs自分」というあり得ない戦いを10年以上に渡って繰り広げてきたのでした。

しかし、時代が彼に再び傾き始めます。「ヴェルヴェット・ゴールドマイン」という'70年代のグラムロックをテーマにしたセミ・ドキュメンタリー映画にボウイの楽曲を使わせて欲しいという依頼があったのです。この映画は明らかに'70年代前半のボウイとイギー・ポップのことを題材にした映画でした(その映画タイトルからしてモロですしね)。が、ボウイはこれを拒否しました。自身が過去の自分を切り売り(=過去の作品のリイシューや度重なるベスト盤の連発)する分にはいい、けど他人がそれを食い物にするのは断固として拒否する‥‥真実はどうだったのか判りませんが、とにかくこの映画にボウイの楽曲が使われることはありませんでした。

その映画が公開された頃、ボウイはこの「'hours...'」という作品作りに没頭していたようです。一部では「トニー・ヴィスコンティ(初期ボウイの作品を手掛けた名プロデューサー)がプロデュースする」「「HUNKY DORY」の頃のような作品になる」といった噂が出回り、かなり期待されていたこの作品、いざ世に出てみると一部噂とは違っていたものの、ある意味期待以上のアルバムだったのでした。

とはいっても俺、このアルバムをちゃんと聴いたの、つい最近なんですよ‥‥自称「ボウイ大好き」なくせに‥‥どうにも印象が薄かったんですよね、当時聴いたシングル曲が(多分 "Survive" だったのかな。よく覚えてないや)メチャクチャ地味で、本当に記憶に残らないような曲で‥‥それまでの'90年代の作品集3枚が非常に個性的で、現役感であったり同時代性なんかをヒシヒシと感じる傑作だと個人的に思っていたので、この酷く地味なアルバムは「多分、駄作とまではいかないけど、評判悪いんだろうなぁ‥‥」と勝手に判断して、4年近く手にすることはありませんでした。つうかそもそも、その後彼の「新作」を手にするまで本当に4年以上もの歳月を要することになるんですが‥‥

'03年秋に「REALITY」という「新作」がリリースされ、また久し振りの来日公演もあるってことで、思い切って買ってみたらこれがかなり良くてビックリで。思わず「HEATHEN」とこの「'hours...'」を買い揃えちゃいましたからね。特にこの後者(このアルバム)なんて、近所の中古屋で50円で売られてた程でして‥‥まぁどんなに酷くても、50円なら許せるか、ボウイだしな‥‥って納得して。

ところがね、これが50円どころじゃないんですよ。ちゃんと定価相応の内容だったと。確かに1曲目 "Thursday's Child" の歌い出しでの、完全に枯れ切ったボウイの声にはちょっとショックを受けましたが(その後の作品が生き生きとしてるだけに、余計ね)、ここに収められている楽曲には合ってるんですよね、この感じが。

「'hours...'」という時間をテーマにしたタイトル、若き日のボウイが年老いたボウイを優しく抱きかかえているかのようなジャケット、別れや旅立ちといった「区切り」についての内容が多い楽曲達。かつて、何度も過去と決別しようとしたボウイ。今までのボウイはそれを皮肉っぽく、そして時には苛立ちながら実行してきたけど、このアルバムではそういった自虐さは感じられる、むしろそれを全面的に、体全体で受け止めようとしているような印象が強く、更に楽曲のタイプが前述の「HUNKY DORY」期‥‥グラム前夜‥‥を思わせるような作風のため、余計に温かみを感じるんですね。

当初はゲームのサントラとなるはずだった楽曲群が、作っていくうちにドンドンいい曲が出来上がっていったため、急遽オリジナルアルバムへと変更になった、というのがこのアルバム制作のいきさつらしく(実際、同時期にヴィスコンティとも仕事をしていたという話だし)、その割りには想像以上にオーガニックなサウンドで構成されているんだよね。中には前作までのテクノロジー路線を彷彿させる "The Pretty Things Are Going To Hell" なんて曲もあるんだけど、基本はミドルテンポでじっくりと歌を聴かすタイプがメイン。頭2曲("Thursday's Child" と "Something In The Air")が非常にムーディーでどことなくソウルフルな印象だったり、"Survive" や "Seven" といった楽曲ではアコースティックを基調としながらも力強くロックしているイメージがあったり、7分もある "If I'm Dreaming My Life" はムーディーなスタートを切りながらも途中でストレートなロックチューンへと展開していったり、"The Man Who Sold The World" を現代的にしたかのような "What's Really Happening?"、オリエンタルな雰囲気のインスト "Brilliant Adventure"、どことなく前作までのイメージを引きずってるかのようなストレートなロックチューン "The Dreamers" 等。全体的にストレートな印象が強くて、そこがイマイチって人が多いらしく、まぁ確かにこれまで‥‥特に前作までの作り込みを考えれば、ここにある楽曲はシンプル且つストレート、聴く人によってはそのまま聴き流してしまいそうな作風であるのも確か。けど、ここで自分を見つめ直したからこそ、続く「HEATHEN」や「REALITY」があるんだよな、とさえ思える今日この頃。いやいや、このアルバムは「'90年代のデヴィッド・ボウイ」を語る上で、なくてはならない1枚ですよ。むしろ、「OUTSIDE」や「EARTHLING」以上にね。

個人的には "Seven" という1曲のためだけに買っても損はしない1枚だと思ってます。歌詞のテーマといい、シンプルな構成といい、全体の雰囲気といい、全てが特別なものであり、聴く人によっては「最高に輝いている1曲」であり、またある人にとっては「あるアーティストの『本当の』死を実感させる1曲」なんだろうな、と‥‥残念ながら現在行われているツアーでは、このアルバムからは1曲も演奏されていないようですが‥‥それでいいんだと思います。多分、二度と演奏されることのない楽曲ばかりだと思いますが、だからこそ意味を持つんですからね‥‥



▼DAVID BOWIE『'hours…’』
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投稿: 2004 03 08 07:35 午前 [1999年の作品, David Bowie] | 固定リンク

2003/11/18

DAVID BOWIE『REALITY』(2003)

ええ、今度の1月8日で57歳ですよ、デヴィッド・ボウイ翁は‥‥ったく、何なんだよ、このジイサマは‥‥通算26作目となるオリジナルアルバム「REALITY」。前作「HEATHEN」リリースからたったの15ヶ月しか経ってないっていうんだから、驚きというか何というか‥‥'70年代の『ベルリン3部作』と呼ばれるアルバムの内、「LOW」と「HEROES」の2枚がたった9ヶ月の間に作られたというのに何となく似てますよね。ただ大きな違いは、あの頃のボウイは30代で脂が乗りきった時期、そして今は還暦間近のジイサマという現実。ま、こればっかりはどうしようもないですけどね。特にこの2枚ってボウイのディスコブラフィーの中でも特殊且つ名盤と呼ばれることの多い作品ですし、それと比べること自体が間違ってるのは承知してるんですが、それでもこの「1年3ヶ月というインターバル」、しかも56歳のオヤジが成し遂げたという事実は称賛に値すると思うのですよ。

ご存じの通り、前作「HEATHEN」以降ボウイは再びトニー・ヴィスコンティと手を組んでアルバム制作に当たっています。当然今回の「REALITY」もヴィスコンティとの共同プロデュースなのですが‥‥これがね、悪くない。いや、いいんですよ。俺ね、周りの評価に反して'90年代の作品‥‥特にブライアン・イーノと共に制作した「OUTSIDE」と、ボウイなりの「インダストリアル」アルバムである「EARTHLINK」の2枚、大好きなんですよ。この人って結局、如何に周りの期待を裏切り続けるか、そしてそれが上手く機能するのか?って人だったわけでしょ。'70年代、少なくとも'80年代初頭まではそうあり続けたわけですよ。ところが「LET'S DANCE」での大成功以降、その成功を維持しようっていう魂胆が見え見えで、そういった冒険心が薄れていったように感じるんですね。確かに'80年代末にTIN MACHINEというバンドを組んでみたものの、話題性は十分ながらもやってる音楽は「LET'S DANCE」以降の延長線上でしたよね、良くも悪くも。で、「BLACK TIE WHITE NOISE」でちょっと持ち返しつつ、「OUTSIDE」と「EARTHLING」で完全に吹っ切れた‥‥と俺は解釈してたんですね。だからこそ、'96年の来日公演も楽しめたわけですよ。

でも、多くのボウイ・ファンからすると、完全に逆みたいなんですね。特に古くからのファンだと論外らしく‥‥頭硬いんじゃねぇの!?とか神経を疑ったものの、まぁ気持ちも判らないでもないんだけどね。実際、俺も'70年代のボウイを最も愛しているわけだし、やはりあの頃の幻影を追ってしまうわけですよ(リアルタイムで体験してないから、余計にね)。

'99年にリリースされた「HOURS...」というアルバムは、そういう意味では従来のボウイ・ファンが唸りそうな「地味渋ボウイ」を再現した、非常にアーティスティックで深い作品だったと思うんですが、どうしても決定打に欠けた1枚だったように思うんですね(個人的には好きですよ。一般論としての話ですからね)。で、「HEATHEN」‥‥ここでも「あと一歩」という感じだったんじゃないですかね、古き良き時代のボウイを求めるファンからすると。

そして短期間で登場したこの「REALITY」。俺はこれ、本当にいい意味での「開き直り」が感じられる作品集だと思うんですよ。だけど、決して下世話な感じがしない。深さという意味では「HOURS...」よりも深い。だけど派手さという意味ではここ数作で一番なんですね。アッパーでウルサイ曲があるってのもあるんですが、徹底的にバンドサウンドに拘って鳴らされる「音」がちゃんと主張してる。そういう意味で「派手」だと思うわけですよ。多分これは前作を制作してツアーも一緒に回ったメンツでの制作というのも大いに影響してるんでしょうね。それと楽曲の幅が前作よりも広がったという意味でも派手さを感じますね。シングルにもなった "New Killer Star" や "Looking For Water"、"Reality" のような攻めの曲もあれば、ジャズかと錯覚する "The Loneliest Guy" や "Bring Me The Disco King" という地味目な曲もある。そして "Pablo Picasso" や "Try Some, Buy Some" というようなカバー曲まである(前者がジョナサン・リッチマン、後者がジョージ・ハリスンの曲。日本盤には更にTHE KINKSの "Waterloo Sunset" がボーナストラックとして追加収録されています。個人的にはアルバムの流れを断ち切るかのようで蛇足に感じるんですけどね)。「HOURS...」や「HEATHEN」が全体的に統一されたトーンのアルバムだったのに対し、この「REALITY」ってもっと多彩で、そして明るいトーンのアルバムに感じられるんですよね、サウンドだけ聴いてると。

ところが、歌詞を読んでしまうと印象が一変します。というのも、このアルバムで歌われている新曲の殆どが「9・11」以降に書かれた曲‥‥ニューヨークに住むボウイにとって、いや、例えニューヨークに住んでいなかったとしても彼が(意識的にだろうが無意識にだろうが)そういった現実から影響を受けるのは必然であり、それが直接的表現ではなくても聴き手の我々は彼の歌からいろいろと感じ取っていくわけです。そしてそれは「REALITY」というアルバムタイトルに端的に表れているのではないでしょうか。

そういったポリティカルな側面がこのアルバムをより「強い」ものにしてるのかもしれませんね。だからこそボウイの歌やひとつひとつの「音」が「派手」に鳴っている。そして我々は(その歌詞の意味が判ろうが判るまいが)新しいボウイに惹かれていく。取っ掛かりはそれで十分じゃないでしょうか?

いよいよ正式発表になったボウイ8年振りの来日公演。前回は布袋寅泰と武道館で共演したんだっけ。さてさて、今回はどういったステージを見せてくれるのか‥‥そしてこの新曲達をどんな風に鳴らすのか。非常に楽しみですね!



▼DAVID BOWIE『REALITY』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2003 11 18 07:44 午前 [2003年の作品, David Bowie] | 固定リンク

2000/01/06

CYBERNAUTS『LIVE』(2000)

現在第一線で活躍する、所謂ビッグネームと呼ばれるアーティストにも、子供の頃憧れたアーティストがいる。そういう人達やその音楽と出会った事によって、そのアーティストのコピーをするためにバンドを始めたり、それを切っ掛けにオリジナルの楽曲を書き始めたり‥‥そう、「影響を受けたのは○×です」みたいな発言をよくインタビュー等で見かける、あれだ。しかし、ある程度プロのミュージシャンとして成功を収めると、急にその「影響」を隠してしまったり封印してしまう人も多い。自身のオリジナリティーのようなものがある程度完成してしまう事により、パクる必要がなくなるわけだ。良く言えば「独自の音楽に拘る」と言えるが、その反面「遊び心がなくなってしまった」という声も聞こえてきたりして‥‥ライヴやシングルのカップリングにカヴァー曲を入れる事はあっても、そういう直球型のカヴァー(所謂元ネタ)はなかなかやってくれない。
  ところが、ここに紹介するCYBERNAUTSというバンド(というユニット)は、その「子供の頃に憧れた存在になりきってしまう」という、究極の遊びバンドだったりする。しかもそのバンドのメンバーが、世界的大ヒットを飛ばし続けるビッググループのメンバーと、そのカヴァーされる側のメンバーの組み合わせというのだから、ある意味反則ともいえる。というか‥‥羨ましいぞ、このヤロー!(笑)

ご存じの通り、このCYBERNAUTSはあのDEF LEPPARDのボーカルであるジョー・エリオットとギタリストのフィル・コリンが中心となって結成されている。ガキの頃に憧れたデヴィッド・ボウイの、しかもTHE SPIDERS FROM MARSを率いていた時代の楽曲に限定されたトリビュートバンドなのだ。そこに加わるリズム隊というのが、そのカヴァーされる側‥‥つまりTHE SPIDERS FROM MARSのベース、トレヴァー・ボールダーとドラマーのウッディ・ウッドマンゼイなのだ。そこにサポートメンバーとしてキーボーディストのディック・ディーセントが加わった5人。これがCYBERNAUTSの正体だ。

事の始まりは、1993年4月30日にガンの為他界した、THE SPIDERS FROM MARS~MOTT THE HOOPLEのギタリストでるミック・ロンソンの追悼コンサートの為に'94年にTHE SPIDERS FROM MARSが1日だけの再結成をした事だった。当然デヴィッド・ボウイは参加するはずもなく、ボーカルとギタリストがいない状態だったところに、当日ゲストとしてジョーとフィルが参加する事を知ったトレヴァーは、旧知の仲である彼らに「一緒にやらないか?」と声をかける。当然2人は大喜びで参加するわけだ。

それから3年後に、今度はミック・ロンソンの地元であるハルでSPIDERS~としてライヴをやらないか、とオフォーが来る。そこで先の4人にキーボーディストのディックが加わったこの5人でショート・ツアーを行った、というわけだ。このライヴアルバムはその時のライヴの模様を完全収録したものなのである。

ここで多くのボウイファンに疑問が湧くと思う。大別して2つ。ひとつは「DEF LEPPARDとミック・ロンソンとの関係、及びSPIDERS~とは彼らにとってどういう存在なのか?」、そして「何故この時期にこんなものをリリースするのか?」。この辺について語っていこうと思う。

まず、DEF LEPPARDの音楽性について。現在の彼らのオリジナリティー溢れる存在からは想像出来ないだろが、彼らは間違いなくグラムロックの影響を受けている。その片鱗は彼らの楽曲からも伺い知る事ができるだろう。数々のヒット曲からT-REX、SPIDERS~時代のボウイ、更にはSLADEやSWEET、ゲイリー・グリッターといったアーティストからの影響が見え隠れするし、インタビューでも普段からそれらのアーティストに影響を受けたと発言している。特にQUEENとボウイというのは、ボーカルのジョー・エリオットが幼少期に最も影響を受けたアーティストだそうだ。

そのLEPPSが'92年4月、その前年に亡くなったQUEENのフレディ・マーキュリー追悼ライヴに出演した際に、かのデヴィッド・ボウイとミック・ロンソンも同ライヴに出演していたのだ。この時を切っ掛けに、ジョーとミックは親しくなり、ミックが当時制作中だったソロアルバムにジョーはゲスト参加する事となった。

しかし、翌年の同時期にミック・ロンソンは亡くなる。アルバムは未完のままだった。そこでジョー・エリオットが立ち上がり、彼がエグゼクティヴ・プロデューサーとなって様々なゲストを迎えて、ミックの遺作を完成させるのだった。それが彼の死後から1年経った日に発売された「HEAVEN AND HULL」だ。

更にLEPPSのメンバーはミック以外にも、トレヴァー・ボールダーとも交流があった。'83年の「PYROMANIA」に伴うツアーで、当時トレヴァーが参加していたURIAH HEEPと一緒にツアーしていたのだ。その時にジョー達はトレヴァーと仲良くなったそうだ。憧れの存在と毎晩のように飲みあかし、SPIDERS~時代の逸話に耳を傾けたそうだ。

以上の事から、何故DEF LEPPARDのメンバーがSPIDERS~トリビュートバンドをやったのかがご理解いただけると思う。残念ながら、当のボウイ本人とLEPPSとの交流については俺は何も知らなかったりする。まぁ現在のボウイから考えれば、何となく想像は出来るが‥‥(苦笑)

さて、第2の疑問点。何故この時期にこういうアルバムをリリースする事にしたのだろうか? 実はこれについては俺も詳しい事は知らなかったりする(笑)。最近の雑誌のジョー・エリオットのインタビューが載っていたそうだが、まぁ早い話が「LEPPSのツアーが終わったので、次のアルバム制作までのお遊び」のつもりなのだろう。そもそもこのアルバムがレコード会社を通して正式にリリースされるのは、ここ日本だけなのだから。

本来、このアルバムはLEPPSのオフィシャルサイトで、インターネット上のみでのリリースという形をとるものなのだ。しかし、海外と比べて日本ではまだインターネットがそれ程普及していない点、いざオフィシャルサイトを覗いてみても英語に弱いので取引しにくい点等々を考慮した日本のレコード会社がジョーに是非日本では一般流通させてくれ、と直訴したそうだ。日本だけなら、という事でメンバーは承諾し、更にアルバムリリースと同時期に日本でライヴもやりたいとも言ってくれたそうだ。やはり一般流通させる以上はプロモーションしなければならない。これはレコード会社にとっても好都合だし、LEPPSファンにとっても貴重な機会になる。噂が噂を呼んだ。2000年9月でバンドとしてのツアーを終えたにも関わらず、年末にLEPPS再来日の噂が急浮上する。カウントダウンなのか?と。それが別プロジェクトだという事が知れ渡るのに、そう時間はかからなかった。彼らのオフィシャルサイトで、CYBERNAUTSのライヴアルバムをインターネット流通する事が発表されたからだ。

現在特に定職(というかバンド)を持たないウッディーとトレヴァーにとっても、この話は好条件だったに違いない。何せ来日も出来るのだから。後ろ向きと言われてしまえばそれまでだが、これは「おもいっきり豪華な遊び」だと割り切ってしまえばいいのだから。自身の次の仕事の為のプロモーションの場と考えれば、これ程オイシイ話はないわけだし。

というわけで、当初の予定より1ヶ月送れてアルバムは日本リリースされ、その10日後には来日を果たすわけだ。

そういうわけだ。納得しただろうか。殆どアルバムの内容について説明していないが‥‥説明するまでもないだろう。ボウイの、最も輝いていた時代の名曲がギッシリ詰まっていて、それをオリジナルメンバーを含むラインアップで演奏している。ジョーはボウイを意識した唄い方をしているし、フィルもミックのプレイを意識しながら、独自のプレイをこれでもか!?と披露するのだから。LEPPSファンにも十分にアピールする作りとなっているし、若いボウイファンにも受け入れられると思う。

けど、最後にひとつ。これだけは大きな声で言っておきたい。これはボウイトリビュートはなく、あくまでミック・ロンソンのトリビュートだという事。それは収録曲の中に唯一収録されている非ボウイ曲、"Angel No.9"(ミック・ロンソンの2ndソロ「PLAY DON'T WORRY」収録)からも伺えると思う。ジョーやフィルにとってミック・ロンソンはヒーローだったのだ。グラム時代のボウイを影ながら支えていたのは、間違いなくこのミック・ロンソンなのだから。彼のファンは英米のみならず、ここ日本にも多い。代表的なところでTHE YELLOW MONKEYの吉井和哉。彼は先のミックのソロアルバム再発の際には、ライナーノーツも書いていた。

特にここ日本では過小評価をされる事の多いミック・ロンソン。これを機にDEF LEPPARDのファンは初期のデヴィッド・ボウイのアルバムに手を出して欲しいし、逆にボウイに興味を持つファンにはDEF LEPPARDの音楽に改めて触れ、そこからボウイ色を感じ取って欲しい。そして、ミック・ロンソンという偉大なギタリストがいたことを認識して欲しい。プロだからこそ出来る、正にプロの仕事。そして本当の遊び心というのはこういう事を示すのだという、素晴らしいアルバムだ。20世紀最後に届いた贈り物。そして20世紀最後に買ったのがこのアルバムだという事を、俺は決して忘れないだろう。



▼CYBERNAUTS『LIVE』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2000 01 06 07:20 午前 [2000年の作品, Cybernauts, David Bowie, Def Leppard] | 固定リンク