カテゴリー「David Lee Roth」の5件の記事

2019年1月19日 (土)

DAVID LEE ROTH『YOUR FILTHY LITTLE MOUTH』(1994)

デヴィッド・リー・ロスが1994年3月に発表した、通算4作目のソロアルバム。前作『A LITTLE AIN'T ENOUGH』(1991年)から3年ぶりの新作で、プロデュースを手掛けたのは“かの”ナイル・ロジャース。CHICのメンバーであり、デヴィッド・ボウイ『LET'S DANCE』(1983年)やマドンナ『LIKE A VIRGIN』(1984年)を筆頭に、DURAN DURANINXSミック・ジャガーなどをヒットに導いた立役者で、正直それまでデイヴが築き上げてきたソロの方向性すべてに当てはまる人でもないので、このタッグを知ったときは正直不安を強く感じたことをよく覚えています。

ただ、デイヴは単なるハードロックシンガーではなく、もっと広い意味でのエンターテイナーであるため、あながち間違いでもないのかな、とも思うようにもなったわけで。そんな不安定な気持ちの中、本作からのリードシングル「She's My Machine」が公開されると……「あれ、意外と悪くないかも?」という感情が。確かにそれ以前にあった“ダイヤモンド・デイヴ”感……カリフォルニアの燦々と輝く太陽のもと、はっちゃける曲とは一線を画するものの、このクールでスマートなハードロックも悪くないぞ、と。そこでようやく、アルバムに対して前向きな気持ちが勝るようになりました。

いざ届けられたアルバムを聴くと、なるほど、これはハードロックとは若干異なるものの、大人になったダイヤモンド・デイヴがハリウッドからニューヨークに舞台を移したような、そんな作品ではないかと捉えることができたわけです。変なこだわりや固定観念され捨てされたら、純粋に楽しめるぞ、と。

スティーヴ・ヴァイ、ジェイソン・ベッカーと過去のアルバムでは凄腕ギタリストと組んできたデイヴですが、本作ではテリー・キルゴアとタッグ。デイヴとは古い付き合いで、LA界隈では古くからその才能を評価されてきたギタリストなんだとか。ヴァイやジェイソンと比較したら派手さは皆無だし、特別光るものも感じられませんが、大人びた楽曲の世界観を的確なプレイで表現していることからも、その腕前は確かなものなんだってことが伺えます。

アルバム自体も、先述の「She's My Machine」や「Everybody's Got The Monkey」「Big Train」のようなハードロック寄りの楽曲もあるものの、それ以上に耳に残るのがスローブルース「Experience」やソウルフルな「A Little Luck」、レゲエ調の「No Big 'Ting」、ブルージーなロッカバラード「Night Life」といった非ハードロック曲。デイヴのボーカルも冴え渡っています。また、ブギーテイストのタイトルトラックやシンプルなロックンロール「Hey, You Never Know」など、地味ながらもしっかり作り込まれたロックナンバーも多数含まれており、決して非ロック作品ではないのでご安心を。

チャート的には全米78位、セールス面でも10万枚に満たない売り上げで、デイヴはそれまで所属したWarner Bros. Recordsから離れることになるのでした。

いかにもショービズの世界の人が作ったアルバム、と揶揄することもできますが、そもそもグランジ全盛のあの時代に、地味ながらもここまでどストレートにショービズ臭プンプンのアルバムをメジャーレーベルから発表した、デイヴの男気もなかなかのものじゃないか、という気がするのですが。それもまあ、今となっては……ですけどね。



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2018年7月 5日 (木)

DAVID LEE ROTH『A LITTLE AIN'T ENOUGH』(1991)

海外では1991年1月中旬、ここ日本では同年2月下旬にリリースされた、デヴィッド・リー・ロスの3rdフルアルバム。プロデュースを手がけたのはBON JOVIAEROSMITHMOTLEY CRUEなどでおなじみのボブ・ロック。チャート的にも全米18位まで上昇し、50万枚以上を売り上げるスマッシュヒットとなりました。が、残念ながら過去のようなシングルヒットは誕生せず。このへん、リリース時に勃発した湾岸戦争やその後の不況なども影響しているのかもしれませんね。

前作『SKYSCRAPER』(1988年)完成後にビリー・シーン(B)がバンドを離れ、同作のツアー終了後にはスティーヴ・ヴァイ(G)も脱退と、バンドの鍵を握るプレイヤーたちが相次いでいなくなってしまいますが、ダイヤモンド・デイヴはグレッグ(Dr)&マット(B)のビソネット兄弟、ブレット・タグル(Key)はそのままに、新たにジェイソン・ベッカー(G)とスティーヴ・ハンター(G)を迎えてレコーディングに突入。ボブ・ロックの手腕もあり、派手でポップで豪快なハードロックアルバムを完成させます。

良くも悪くもチープさを伴うデイヴの過去作(VAN HALEN時代含む)でしたが、時代の寵児(ボブ・ロック)を迎えたことでここまで現代的な音に生まれ変わるか!と、リリース当時はずいぶん驚いたことを今でもよく覚えています。楽曲自体は良い意味でのB級感が薄れ、無理してマッチョしてる(笑)感が強まっています。それまでビールばかり飲んでたところに、急にプロテインばかりガブ飲みした結果、たるんだ腹が一気にシェイプアップ……そんな音/楽曲なんですよね(笑)。

僕の中でのイメージとしては、AEROSMITH『PERMANENT VACATION』(1987年)とBON JOVI『NEW JERSEY』(1988年)の質感と世界観をダイヤモンド・デイヴ流に料理した結果がこれ、という感じ。伝わるでしょうか?

大きなヒットにはつながらなかったけど、タイトルトラックや「Shoot It」「Hammerhead Shark」などのキャッチーさ、「Sensible Shoes」に漂ういかがわしさ、そしてデイヴといえばこれ!と言いたくなるハードブギー「It's Showtime!」のカッコよさ……どれも水準以上の完成度。1991年という時代もあってか、“見過ごされた1枚”かもしれませんね。改めて再評価してほしい作品集だと思っています。

あと、本作の何が不幸かって、ジェイソン・ベッカーですよ。彼は本作のレコーディングに関わるものの、ツアーには参加できず……理由はご存知かと思いますが、本作のレコーディング中に筋萎縮性側索硬化症が発症して表舞台から去ることに。もし彼があのまま健康体でツアーに参加していたら、ポール・ギルバートやマーティ・フリードマンのようになれていたのかもしれませんね。そういった点でも不幸さが伴う1枚ですが、しのごの言わず「It's Showtime!」や「Drop In The Bucket」のギタープレイなどを聴いてジェイソン・ベッカーの素晴らしさに触れてみてください。



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2018年2月 9日 (金)

DAVID LEE ROTH『SKYSCRAPER』(1988)

1988年1月にリリースされた、デヴィッド・リー・ロスの2ndアルバム。VAN HALEN脱退後に発表された初のソロアルバム『EAT 'EM AND SMILE』(1986年)は同作の数ヶ月前に発表されたサミー・ヘイガー初参加アルバム『5150』(1986年)には及ばなかったものの、全米4位/100万枚という結果を残しました。

ただ、『EAT 'EM AND SMILE』からは全米トップ10に入るようなキャッチーなシングルが生まれなかったのも事実。スティーヴ・ヴァイ(G)やビリー・シーン(B)といった凄腕ストリングス隊のテクニックを活かしたハードロックナンバーと、“ダイヤモンド・デイヴ”の愛称にふさわしいジョービズ臭プンプンのスタンダードナンバーを並列させたことで、VAN HALENの大ヒット曲「Jump」のようなポップ色の強い楽曲が入る余地がなかったのです。

となると、続く2枚目のアルバムでの命題は必然的に「『Jump』にも匹敵するヒットシングルを生み出すこと」となるわけです。それが、今作における「Just Like Paradise」(全米6位)だったんでしょうね。

また、今作からバンドにはブレット・タグルというキーボーディストが正式参加。「The Bottom Line」のような前作の延長線上にあるアップテンポなハードロックも少なからず収録されているものの、どの曲にもキーボードが加えられており、全体的にソフトな印象を受けます。ステーヴ・ヴァイのギターは相変わらず暴れまくっているように聴こえるものの、前作と比較したら若干落ち着いたように受け取れる。ビリー・シーンのベースに至っては曲のボトムを支えることに終始し、テクニカルなソロプレイは一瞬フィーチャーされるのみ。そういった状況にストレスを感じたビリーは、本作完成後にバンドを脱退しています。結局、ビリーを含む編成での来日公演は実現しなかったんですよね(まあこの脱退があったおかげで、MR. BIGが結成されるわけですが)。

ポップで軽やかなロックナンバー「Knucklebones」からスタートする本作は、前作における「Yankee Rose」と比較してしまうと肩透かしを食らうかもしれません。が、全編キャッチーで親しみやすいオリジナル曲でまとめられた作風は、あの当時デイヴが目指した「ヒット曲でもVAN HALENに勝つ」という目標を達成させるためには必要な方向性だったんでしょうね。小ヒットに終わったダンサブルな「Stand Up」やスティーヴのギターアレンジが素晴らしいバラード「Damn Good」、地味でダークだけどこの編成じゃなければ生まれなかった隠れた名曲「Hina」など、異色ながらも聴きどころの多い作品ではないでしょうか。初期衝動がすべてだった『EAT 'EM AND SMILE』とは別ベクトルで、いかにもデイヴらしいアルバムだと思いますし、今でも嫌いになれない1枚です。



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2017年4月 3日 (月)

DAVID LEE ROTH『EAT 'EM AND SMILE』(1986)

VAN HALENを脱退したデヴィッド・リー・ロスが1986年に発表した、ソロとして初のフルアルバム。バンド在籍中に発表された『CRAZY FROM THE HEAT』(1985年)は4曲入りのEPだったこと、そのすべてがカバー曲だったことから当時は“遊び”と解釈することができましたが、バンドを脱退した後の『EAT 'EM AND SMILE』ではいよいよ本領発揮……といわんばかりのフルスロットルぶりが楽しめます。

アルバムおよび当時のツアーに参加したメンツはスティーヴ・ヴァイ(G)、ビリー・シーン(B)、グレッグ・ビソネット(Dr)という錚々たる面々……というのは、当時は一部のメタルファンの間でのみ。今でこそヴァイもビリーもロックファンなら誰もが知っている名プレイヤーですが、実は2人ともデイヴとの共演により知名度をグンと上げたというのが事実なのです。

アルバムはエイドリアン・ブリュー並みに“しゃべる”ギタープレイを披露する「Yankee Rose」からスタート。ヴァイの縦横無尽に暴れまくるギタープレイと、そのギターをボトムで支えているようで実はフレーズが暴れまくっているベース、その上でひたすら“ダイヤモンド・デイヴ”を演じまくるデイヴ。もちろん的確なビートで土台を支えるグレッグのプレイも欠かせません。同曲は全米16位まで上昇するヒットシングルとなっています。

そして2曲目はビリーが過去に在籍したバンド、TALASの楽曲「Shyboy」のカバー(というかリメイク)。高速ビートの上で披露される、ギターとベースによる超絶ユニゾンプレイに誰もが感嘆のため息をついたはずです。このユニゾンプレイが、のちにビリーが結成するMR.BIGにつながっていくわけですから(しかもMR.BIGでも再びカバーされてるし)、その後のHR/HMシーンにとって非常な重要な1曲と言えるかもしれません。

そして、本作には先のソロEP同様に数々のオールディーズカバーが収録されています。「I'm Easy」「That's Life」といったラウンジミュージックの名曲、60年代のガレージロックナンバー「Tabacco Road」の3曲がそれで、「Shyboy」を含めたら計4曲がカバーというわけです。そこを物足りないと感じるか、原曲を知らないしオリジナルとして聴いてもなんら違和感ないしと感じるかは聴き手次第かなと。ちなみにリリース時中学生だった僕は当然カバーの原曲を知らなかったので、完全に後者でした。

テクニカルで派手なプレイを含みつつも、楽曲時代はポップでブルージーでソウルフル。これって結局、デイヴがVAN HALEN時代にやっていたことと一緒なんですよね。全10曲で30分強というランニングタイムも、初期VAN HALENと一緒。ただ、このバンドにはエディ・ヴァン・ヘイレンが2人いる(ヴァイとビリー)のが大きな違いだったと。この編成が復活することは今や不可能に近いけど(一度だけデイヴ抜きでライブをやったこと、ありましたっけ)、一度は生で観たかったなぁ。この編成での来日は結局実現しなかったしね。

策士デイヴはこのアルバムでVAN HALENというバンドのスタイルをソロでも再現させ、続く2ndアルバム『SKYSCRAPER』(1988年)では「俺にだって『Jump』は作れる」と言わんばかりにポップな「Just Like Paradise」を大ヒットさせる。この2作で彼のVAN HALENに対する復讐は(形としては)完結するわけです。

そういえば、上に貼り付けた「Yankee Rose」含め、当時のデイヴはMVも凝った作品が多かったなぁ。どれもコミカルで、人を食ったかのような内容ばかり。あ……それで『EAT 'EM AND SMILE』なのか!(違います)



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2004年9月17日 (金)

とみぃ洋楽100番勝負(29)

●第29回:「Yankee Rose」 DAVID LEE ROTH ('86)

サミー・ヘイガーを迎えた新生VAN HALENに感激&感動した俺は、正直「デイヴ・リー・ロスはもう(ハードロックの世界では)ダメだろうなぁ‥‥」とずっと思ってたんですね。だってVAN HALEN辞める前に彼がやったソロ活動がBEACH BOYSやスタンダードナンバーのカバーですからね。で、それが大ヒットしちゃったもんだから‥‥どう考えても "Jump" や "Panama" みたいな曲は彼に求めるのも酷だろうな‥‥と。きっと俺以外の多くの人達がそう思ってたでしょうね。

 けど、実際には違った。彼はスティーヴ・ヴァイ(Gt)、ビリー・シーン(Ba)、グレッグ・ビソネット(Dr)という「その筋」では知らない者はいないという名手を揃えて、まるでVAN HALENの1stを'86年に蘇らせたかのような名盤「EAT'EM AND SMILE」を引っ提げてシーンに戻ってくるわけですよ。

 アルバム1曲目の "Yankee Rose" のイントロでやられちゃうわけですよ。だって、ギターが喋るんですよ! ボーカルとギターで掛け合いしちゃうんですよ、喋りで! もうね、笑うのを通り越して感動したもの、中3の俺は!

 ブリブリして暴れまくり、ギターとの高速ユニゾンをいとも簡単にひけらかすビリー・シーンのベースにも失禁寸前だったし、手堅いながらも聴いてて気持ちいいグレッグのドラムも文句無し。VAN HALENにあった「軽さ」が一切ないんですよね。

 アルバムだと続く "Shyboy" が最も好きなんですが、これ、正確にはデイヴのオリジナルじゃなくてビリーが以前やってたバンド、TALASの曲なんで、やっぱり一番最初に聴いて衝撃を受けた "Yankee Rose" かなぁ。

 その後のデイヴの落ちぶれっぷりには目を覆いたくなりますが‥‥やはりこの時の勢いはね。是非この目で実際に目撃したかったですね。残念ながらこの時のメンツ、このアルバムでのツアーでは来日してないんですね‥‥ここで完全にVAN HALENと差がついちゃったな、と‥‥



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