カテゴリー「David Lee Roth」の15件の記事

2020年4月20日 (月)

VAN HALEN『TOKYO DOME LIVE IN CONCERT』(2015)

2015年3月末にリリースされた、VAN HALENにとって2作目となるライブアルバム。コンピやボックスセットを除く公式作品としては2020年4月現在、本作がバンドにとって最新かつ最後のアイテムです。

タイトルからもおわかりのとおり、本作は2013年6月21日に実施された東京ドーム公演から、(映像を使ったインターバルなどを除いて)当日披露された全25曲を完全収録したもの。なぜライブから2年近くも経ち、しかもこの日本公演の音源をリリースすることになったのかは諸説ありますが、恐らく同年夏に予定されていた最新ツアーを前に新しいアイテムを発表しようとした結果、一番手軽に発表できる音源がこれだったというのが本当のところみたいですね(当初は未公開のデモ音源をリマスタリングして発表する予定もあったようですが、元音源の紛失が発覚したという話もありましたし)。

このライブには僕も足を運んでいますが、初めて観る「デヴィッド・リー・ロスが在籍するVAN HALEN」に会場でめちゃめちゃ興奮した記憶があります。行く前は「マイケル・アンソニー(B)いないし、完全な形じゃないのでテンション下がるわー」とか言ってたくせに、ステージで見せるデイヴの完璧なパフォーマンスに圧倒され、溜飲が下がったわけですよ。

サミー・ヘイガー在籍時唯一のライブアルバム『LIVE: RIGHT HERE, RIGHT NOW』(1993年)では大半がスタジオで再録音されたという話ですが、本作はどうなんでしょう。上記のような事情を考えれば、そこまで大きな“修正”は行われていないのではないかと思いますが……。

選曲自体は、当時の最新作『A DIFFERENT KIND OF TRUTH』(2012年)からの楽曲は3曲に抑え、『VAN HALEN』(1978年)から『1984』(1984年)までの6作からの代表曲をバランスよく選出た印象。CDで冷静に聴いてみても、構成もそこまで悪くないかなと感じます。日本でのライブらしく、というか日本での生活がそこそこあるデイヴらしく、曲中の煽りがイミフなカタコト日本語なのもご愛嬌。とはいえ、「Everybody Wants Some!!」での緊張感ある演奏の合間に「ニホンゴガヘタデスミマセン。ニホンゴガヘタクソデスミマセン。デモ……ナニヲカンガエテイタンダ?」なんて素っ頓狂な日本語が飛び込んでくると、思いっきりズッコケてしまいますけどね(笑)。

このアルバムを評するに当たって、デイヴのボーカルの関して「昔より歌えていない」とか「衰えた」なんて声も多いですが、それに対しては反論を。当日のライブを観た人ならおわかりのとおり、当時すでに60歳に近づいていたデイヴはこの日も2時間フルで動いていましたし、そのパフォーマンスは圧巻の一言。それをこなしながら20曲以上も歌っているわけですから、そこを差し引いても大健闘だと思いますけどね。つうか還暦間近のお爺ちゃんに何を求めているんだよ。そんなんだったら昔のブートレグ聴いていろよ、と。

……おっと、言葉が荒くなってしまいましたね。何はともあれ、デイヴ在籍時唯一のライブ作品ですし、もはや復活も望めそうがない今はこれをありがたく楽しませていただきたいと思います。リリースから5年経ちましたが、無心で楽しめる最高の「デイヴ期グレイテストヒッツ・アルバム」ですので。

 


▼VAN HALEN『TOKYO DOME LIVE IN CONCERT』
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2020年4月19日 (日)

VAN HALEN『THE BEST OF BOTH WORLDS』(2004)

2004年7月にリリースされた、VAN HALENにとって2作目のベストアルバム。

初のグレイテストヒッツ・アルバムとなった『BEST OF VOLUME 1』(1996年)から8年ぶりのベスト盤ですが、その間にバンドが発表した新作は三代目ボーカルのゲイリー・シェローン(EXTREME)が参加した『VAN HALEN III』(1998年)のみ。しかも、ゲイリーはその後しばらくして脱退しております。どうしてそんなタイミングにまたベスト?という経緯は、実は2004年当時に書いた『5150』(1986年)レビューに記されております。

つまり、ゲイリー脱退→ボーカル不在時にエディ・ヴァン・ヘイレンの舌癌発覚で活動休止→サミー・ヘイガー復帰&ツアー実施→ツアーに向けた新しいアイテムが必要→新曲作ろうぜ、ということでこのお手軽ベストが用意されたわけです。なので、同じベストでも『VOLUME 2』にはならなかったわけですね。

とはいえ、その内容はCD2枚組ということもあり全キャリアを網羅するような大ボリューム。デビュー作『VAN HALEN』(1978年)からサミー在籍時ラスト作となった10thアルバム『BALANCE』(1995年)までのオリジナル作に、当時バンド唯一のライブアルバムだった『LIVE: RIGHT HERE, RIGHT NOW』(1993年)からのテイクも含む全36曲で構成されています。

あれ、『VAN HALEN III』の楽曲は……って、ツアーでサミーがこの作品からの楽曲を歌うとは思えませんしね。あと、『BEST OF VOLUME 1』に収録された「Humans Being」やデヴィッド・リー・ロスとの12年ぶり新曲も未収録。ここまで入れてしまったら、全米1位まで獲得した『BEST OF VOLUME 1』がカタログとして意味を持たなくなってしまうので、あえて差別化したんでしょうか。

アルバムは『BEST OF VOLUME 1』同様に、デビュー作収録のインスト「Eruption」からスタート。“2つの世界(デイヴ期、サミー期)のベスト”といいながらも、結局はエディのバンドなんだっていう象徴的なオープニングですよね。で、そのあとにサミー歌唱の新曲3曲が続くのですが、『VAN HALEN III』からの続きというよりは、サミーが参加した『BALANCE』からの続いという印象が強い作風かな。ダウンチューニングでヘヴィさを強調していますが、芯にあるのは開放的なアメリカン・ハードロック。アレンジには随所にサミーー在籍時の名曲群を彷彿とさせる味付けが、豊富に用意されています。シングル向けな突出した魅力こそ薄いものの、おまけとしては十分な役割を果たしているです。

以降はデイヴ期/サミー期、リリースされた時期関係なく、ご機嫌なナンバーが目白押し。「You Really Got Me」や「(Oh) Pretty Woman」「Dancing In The Street」など『BEST OF VOLUME 1』からは外されたカバー曲も含まれており、まさにキャリアを総括するような“ベスト of ベスト”と断言できる内容です。シングル曲だけを楽しみたければ、本作だけ持っていれば十分っていう作品集ですね(むしろ、チャートインしたシングル曲でここに収録されていないのは「So This Is Love?」くらいかな? ラジオヒットした「Somebody Get Me A Doctor」や「Mean Street」「Don't Tell Me (What Love Can Do)」あたりも収録容量の関係で外れているけど)。

可能性は薄いけど、もし今後VAN HALENが再び表舞台に舞い戻り、ツアーを行うようなことがあれば……デイヴが歌う新曲を含む“3つめのベスト盤”が生まれる可能性がありますが、その可能性はゼロに近いのかな。

 


▼VAN HALEN『THE BEST OF BOTH WORLDS』
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VAN HALEN『BEST OF VOLUME 1』(1996)

1996年10月にリリースされた、VAN HALEN初のベストアルバム。

デビューアルバム『VAN HALEN』(1978年)から直近の最新オリジナルアルバム『BALANCE』(1995年)までの10作から、厳選されたヒットシングルの数々とアルバム未収録のサントラ提供曲、そしてデヴィッド・リー・ロスと12年ぶりに制作した新曲2曲を含む全17曲で構成。「なんであの曲がないの?」とツッコミたく気持ちを抑えつつ、CD1枚に収めるならこれがベストかな?というコンパクトな1枚に仕上がっています。

デビュー作収録の衝撃的なインスト「Eruption」からスタートする構成は素晴らしいと思うのですが、本来ならそこに続くはずの「You Really Got Me」は未収録で、代わりに「Ain't Talkin' 'Bout Love」が並ぶという選曲には当時ひっくり返ったものですが、おそらくオリジナル曲にこだわった結果こういう選曲になったんでしょうね。なので、カバー曲ばかりがシングルカットされた5thアルバム『DIVER DOWN』(1982年)からは1曲もセレクトされておらず。そういった点では若干消化不良気味かもしれません。

また、基本的に各アルバムから代表的ヒット曲を1曲セレクトしている形ですが、アルバム自体がバカ売れした作品からは複数ピックアップしているのも、まあ納得の範疇。ちなみに『VAN HALEN』(「Eruption」含め3曲)、『1984』(1984年/「Jump」と「Panama」。日本盤はボートラとして「Hot For Teacher」追加の3曲)、『5150』(1986年/「Why Can't This Be Love」「Dreams」)、『FOR UNLAWFUL CARNAL KNOWLEDGE』(1991年/「Poundcake」「Right Now」)の4作品がそれで、デイヴ時代とサミー・ヘイガー時代半々といったところでしょうか(選曲的にはトータルでデイヴ歌唱曲が多めですけどね)。

気になる初収録曲3曲についても。サミー在籍時最後の楽曲となった「Humans Being」は映画『ツイスター』提供曲。1996年前半にシングルリリースもされましたが、楽曲としては『BALANCE』からの流れを組むモノトーンなヘヴィ路線。サビ以外はパッとしない印象で、アルバムの中に入っていたら“流して”しまいそうな1曲かもしれません。

で、デイヴが参加した新録2曲もその傾向が強い“普通の曲”。「Can't Get This Stuff No More」は初期デイヴ参加作にありそうなノリですが、5分以上もあると間延びした感が否めず。「Me Wise Magic」は序盤の低音ボーカルに違和感を覚えますが、サビでの“開ける”感はさすがかなと。「第1期VAN HALEN復活!」と過剰に期待しすぎたせいか、その期待を裏切られた感は否めません。とはいえ、彼らのヒット曲を手軽に楽しみたいという点においては、本作は非常に重宝する1枚ではないかと思います。入門編としても最適ですしね。

タイトルにあるとおり、本来ならこのあと『VOLUME 2』も計画していたんでしょうけど、ご存知のとおりバンドは本作のあとにオリジナルアルバムを2枚しか発表していませんし、ヒット曲にも恵まれず。結果、別の形でベストアルバムを制作することになるのでした。

 


▼VAN HALEN『BEST OF VOLUME 1』
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2020年4月18日 (土)

VAN HALEN『DIVER DOWN』(1982)

1982年4月にリリースされたVAN HALENの5thアルバム。

3rdアルバム『WOMEN AND CHILDREN FIRST』(1980年)、4thアルバム『FAIR WARNING』(1981年)とオリジナル曲のみで勝負した作品を連発したVAN HALENですが、セールスは下がる一方。年に1枚というな創作ペースも災いし、ここでいわゆる“マンネリ感”が強く表出してしまます。

全12曲と一見すると今までで一番楽曲が多い印象を受けますが、内訳的には3曲がインスト/インタールードで、そのうち2つは次の曲の前奏的な役割。さらにカバー曲が過去最多の5曲と、歌モノ・オリジナル曲は実質4曲という体たらく。完全に過渡期中の過渡期やん。

ですが、本作は「(Oh) Pretty Woman」(全米12位)や「Dancing In The Street」(同38位)と、カバー曲ながらもヒットシングルが続出。アルバム自体も全米3位と過去最高順位を打ち出し、セールス面でもダブルミリオン達成と息を吹き返すきっかけを与えてくれます(最終的に、現在までに400万枚以上を売り上げています)。

また、エディ・ヴァン・ヘイレン(G)のギターも前作『FAIR WARNING』から引き続き水を得た魚のように、変幻自在なプレイで我々を楽しませてくれます。「Hang 'Em High」での難易度高めなリフ、「Cathedral」でのバイオリン風ボリュームコントロール、「Dancing In The Street」でのディレイを用いたダンサブルな味付けなど、インパクトは強めかと。

カバー曲中心なので、楽曲自体は悪いわけがない。また、アレンジ的にも至るところから“らしさ”が感じられる。バンドの創作面でのマンネリ感は否めないものの、プレイヤビリティにおいてはさらに高まっていることが伺えるはずです。

なお、「Big Bad Bill (Is Sweet Wlliam Now)」ではアレックス(Dr)&エディ兄弟の実父ジャン・ヴァン・ヘイレンがクラリネットで参加。そういうお遊び感もあってか、“ユルさ”が印象に残る1枚。だからこそ、次に『1984』(1984年)や「Jump」という傑作が産み落とされるなんて、誰も想像できなかったのではないでしょうか。

 


▼VAN HALEN『DIVER DOWN』
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VAN HALEN『FAIR WARNING』(1981)

1981年4月に発売されたVAN HALENの4thアルバム。

前作『WOMEN AND CHILDREN FIRST』(1980年)はチャートアクション的にはそれ以前の『VAN HALEN II』(1979年)と同じ全米6位まで上昇するものの、セールス的には若干落としてしまう結果に。また、シングルも「And The Cradle Will Rock...」(全米55位)と低調&1枚しかカットされていないことから、なんとなく地味な印象を残す作品となってしまいました。

エディ・ヴァン・ヘイレン(G)のギタープレイ的にも最初の2枚と比べてインパクトに欠ける印象があり、それも前作のインパクトの薄さにつながっているのかもしれません。が、しかし。続く今作ではオープニングナンバー「Mean Street」の冒頭でタッピングとスラップをミックスした強烈なプレイをかまし、続く「"Dirty Movies"」でも派手なプレイで聴き手に衝撃を与えてくれる。作風的には前作でのシリアス&ダーク路線の延長線上なのですが、音の粒がより細かく感じられ、かつヘヴィな作風に合わせた歪み方などすべてにおいてバージョンアップしていることが伺えます。

本作もすべてバンドのオリジナル曲。しかし、過去3作と大きく異なるのはエディのギターをフィーチャーしたインストが含まれていないこと。その要素が歌モノナンバーの中にミックスされることで、1曲の尺が若干長めになった印象もあります。

が、ラストの2曲。「Sunday Afternoon In The Park」と「One Foot Out The Door」はいわゆる組曲的な構成で、前者がエディの弾くシンセとドラムによるセッション的なインストで、その流れでファストチューンの後者へと流れていくという。手法としては新しい可能性を感じさせます。

セールス的にはデヴィッド・リー・ロス(Vo)在籍時の初期6枚中もっとも低いといううれしくない記録を残していますが、超名曲「Unchained」やソウルフルな異色作「Push Comes To Shove」、軽やかな「So This Is Love?」など良曲もそれなりに用意された、過渡期の1枚です。

 


▼VAN HALEN『FAIR WARNING』
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VAN HALEN『WOMEN AND CHILDREN FIRST』(1980)

1980年3月にリリースされたVAN HALENの3rdアルバム。

デビューアルバム『VAN HALEN』(1978年)、次作『VAN HALEN II』(1979年)とミュージシャン/ソングライターとして、そしてチャートアクション的にも着実にステップアップを重ねてきたVAN HALEN。本作ではバンドとして“ホンモノ”であることを証明するため、いよいよオリジナル曲のみで構成されたアルバム作りに挑みます。

全9曲中、エディ・ヴァン・ヘイレン(G)によるテクニカルなインストは「Tora! Tora!」1曲のみという構成はこれまで同様。ですが、本来だったらインタールード的ギタープレイから楽曲本編と2曲に分けていたところを「Fools」のようにひとまとめにする構成/アレンジも目立ち始めます。それによって、同曲は6分近い長尺ナンバーに。

また、「Everybody Wants Some!!」のように従来の彼ららしい、キャッチーなパーティロックは比較的抑えめで、全体的にヘヴィでダークなテイストでまとめられているのも本作の特徴。これこそ、先に挙げた「“ホンモノ”であることを証明」したいがあまりに、肩の力が入りまくった表れかもしれませんね。

ダークグリーンにモノトーンのアー写をあしらったジャケット同様、アルバム通して地味な印象が強い1枚ですが、アナログA面(M-1〜M-4)の流れは過去イチの完成度。ブルージーな色合いが強まった後半のインパクトがちょっと弱めなのが玉に瑕ですが、個人的には次の大きなブレイクへと向けた助走期のはじまりと捉えておきたいと思います。

 


▼VAN HALEN『WOMEN AND CHILDREN FIRST』
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VAN HALEN『VAN HALEN II』(1979)

1979年3月リリースの、VAN HALENの2ndアルバム。

全米19位とデビュー作ながらも大健闘となった『VAN HALEN』(1978年)から1年1ヶ月とハイペースで届けられた本作は、そのヒット作を踏襲しつつも、オリジナル曲のバリエーションを少しずつ広げようとする努力が垣間見れる意欲的内容。

前作では2曲用意されたカバー曲(デビューヒットとなったTHE KINKS「You Really Got Me」含む)は、オープニングの「You're No Good」のみに抑え、バンドとしてのアイデンティティを自作曲に見出してもらおうとする意欲も伺え、実は前作よりも粒ぞろいな1枚という印象を受けます。実際、本作からは「Dance The Night Away」(全米15位)という初のシングルTOP20入りも実現。同曲をはじめ「Somebody Get Me A Doctor」や「Beautiful Girls」(全米84位)など、キャッチーさが際立ちます。

かと思えば、「Bottoms Up!」や「Light Up The Sky」のような攻めの楽曲も用意。エディ・ヴァン・ヘイレン(G)のギターテクを存分に味わえる短尺インスト「Spanish Fly」もあり、実は本作と前作の2枚で初期VAN HALENのベースは固まったと断言できます。

チャートアクション的にも、前作を上回る全米6位と好成績を残していますし、セールス面でも現在までに500万枚を超える売り上げ、キャリア的にはデビュー作、『1984』(1984年)『5150』(1986年)に次ぐヒットアルバムになっています。

 


▼VAN HALEN『VAN HALEN II』
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2019年1月19日 (土)

DAVID LEE ROTH『YOUR FILTHY LITTLE MOUTH』(1994)

デヴィッド・リー・ロスが1994年3月に発表した、通算4作目のソロアルバム。前作『A LITTLE AIN'T ENOUGH』(1991年)から3年ぶりの新作で、プロデュースを手掛けたのは“かの”ナイル・ロジャース。CHICのメンバーであり、デヴィッド・ボウイ『LET'S DANCE』(1983年)やマドンナ『LIKE A VIRGIN』(1984年)を筆頭に、DURAN DURANINXSミック・ジャガーなどをヒットに導いた立役者で、正直それまでデイヴが築き上げてきたソロの方向性すべてに当てはまる人でもないので、このタッグを知ったときは正直不安を強く感じたことをよく覚えています。

ただ、デイヴは単なるハードロックシンガーではなく、もっと広い意味でのエンターテイナーであるため、あながち間違いでもないのかな、とも思うようにもなったわけで。そんな不安定な気持ちの中、本作からのリードシングル「She's My Machine」が公開されると……「あれ、意外と悪くないかも?」という感情が。確かにそれ以前にあった“ダイヤモンド・デイヴ”感……カリフォルニアの燦々と輝く太陽のもと、はっちゃける曲とは一線を画するものの、このクールでスマートなハードロックも悪くないぞ、と。そこでようやく、アルバムに対して前向きな気持ちが勝るようになりました。

いざ届けられたアルバムを聴くと、なるほど、これはハードロックとは若干異なるものの、大人になったダイヤモンド・デイヴがハリウッドからニューヨークに舞台を移したような、そんな作品ではないかと捉えることができたわけです。変なこだわりや固定観念され捨てされたら、純粋に楽しめるぞ、と。

スティーヴ・ヴァイ、ジェイソン・ベッカーと過去のアルバムでは凄腕ギタリストと組んできたデイヴですが、本作ではテリー・キルゴアとタッグ。デイヴとは古い付き合いで、LA界隈では古くからその才能を評価されてきたギタリストなんだとか。ヴァイやジェイソンと比較したら派手さは皆無だし、特別光るものも感じられませんが、大人びた楽曲の世界観を的確なプレイで表現していることからも、その腕前は確かなものなんだってことが伺えます。

アルバム自体も、先述の「She's My Machine」や「Everybody's Got The Monkey」「Big Train」のようなハードロック寄りの楽曲もあるものの、それ以上に耳に残るのがスローブルース「Experience」やソウルフルな「A Little Luck」、レゲエ調の「No Big 'Ting」、ブルージーなロッカバラード「Night Life」といった非ハードロック曲。デイヴのボーカルも冴え渡っています。また、ブギーテイストのタイトルトラックやシンプルなロックンロール「Hey, You Never Know」など、地味ながらもしっかり作り込まれたロックナンバーも多数含まれており、決して非ロック作品ではないのでご安心を。

チャート的には全米78位、セールス面でも10万枚に満たない売り上げで、デイヴはそれまで所属したWarner Bros. Recordsから離れることになるのでした。

いかにもショービズの世界の人が作ったアルバム、と揶揄することもできますが、そもそもグランジ全盛のあの時代に、地味ながらもここまでどストレートにショービズ臭プンプンのアルバムをメジャーレーベルから発表した、デイヴの男気もなかなかのものじゃないか、という気がするのですが。それもまあ、今となっては……ですけどね。



▼DAVID LEE ROTH『YOUR FILTHY LITTLE MOUTH』
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2018年7月 5日 (木)

DAVID LEE ROTH『A LITTLE AIN'T ENOUGH』(1991)

海外では1991年1月中旬、ここ日本では同年2月下旬にリリースされた、デヴィッド・リー・ロスの3rdフルアルバム。プロデュースを手がけたのはBON JOVIAEROSMITHMOTLEY CRUEなどでおなじみのボブ・ロック。チャート的にも全米18位まで上昇し、50万枚以上を売り上げるスマッシュヒットとなりました。が、残念ながら過去のようなシングルヒットは誕生せず。このへん、リリース時に勃発した湾岸戦争やその後の不況なども影響しているのかもしれませんね。

前作『SKYSCRAPER』(1988年)完成後にビリー・シーン(B)がバンドを離れ、同作のツアー終了後にはスティーヴ・ヴァイ(G)も脱退と、バンドの鍵を握るプレイヤーたちが相次いでいなくなってしまいますが、ダイヤモンド・デイヴはグレッグ(Dr)&マット(B)のビソネット兄弟、ブレット・タグル(Key)はそのままに、新たにジェイソン・ベッカー(G)とスティーヴ・ハンター(G)を迎えてレコーディングに突入。ボブ・ロックの手腕もあり、派手でポップで豪快なハードロックアルバムを完成させます。

良くも悪くもチープさを伴うデイヴの過去作(VAN HALEN時代含む)でしたが、時代の寵児(ボブ・ロック)を迎えたことでここまで現代的な音に生まれ変わるか!と、リリース当時はずいぶん驚いたことを今でもよく覚えています。楽曲自体は良い意味でのB級感が薄れ、無理してマッチョしてる(笑)感が強まっています。それまでビールばかり飲んでたところに、急にプロテインばかりガブ飲みした結果、たるんだ腹が一気にシェイプアップ……そんな音/楽曲なんですよね(笑)。

僕の中でのイメージとしては、AEROSMITH『PERMANENT VACATION』(1987年)とBON JOVI『NEW JERSEY』(1988年)の質感と世界観をダイヤモンド・デイヴ流に料理した結果がこれ、という感じ。伝わるでしょうか?

大きなヒットにはつながらなかったけど、タイトルトラックや「Shoot It」「Hammerhead Shark」などのキャッチーさ、「Sensible Shoes」に漂ういかがわしさ、そしてデイヴといえばこれ!と言いたくなるハードブギー「It's Showtime!」のカッコよさ……どれも水準以上の完成度。1991年という時代もあってか、“見過ごされた1枚”かもしれませんね。改めて再評価してほしい作品集だと思っています。

あと、本作の何が不幸かって、ジェイソン・ベッカーですよ。彼は本作のレコーディングに関わるものの、ツアーには参加できず……理由はご存知かと思いますが、本作のレコーディング中に筋萎縮性側索硬化症が発症して表舞台から去ることに。もし彼があのまま健康体でツアーに参加していたら、ポール・ギルバートやマーティ・フリードマンのようになれていたのかもしれませんね。そういった点でも不幸さが伴う1枚ですが、しのごの言わず「It's Showtime!」や「Drop In The Bucket」のギタープレイなどを聴いてジェイソン・ベッカーの素晴らしさに触れてみてください。

 


▼DAVID LEE ROTH『A LITTLE AIN'T ENOUGH』
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2018年2月 9日 (金)

DAVID LEE ROTH『SKYSCRAPER』(1988)

1988年1月にリリースされた、デヴィッド・リー・ロスの2ndアルバム。VAN HALEN脱退後に発表された初のソロアルバム『EAT 'EM AND SMILE』(1986年)は同作の数ヶ月前に発表されたサミー・ヘイガー初参加アルバム『5150』(1986年)には及ばなかったものの、全米4位/100万枚という結果を残しました。

ただ、『EAT 'EM AND SMILE』からは全米トップ10に入るようなキャッチーなシングルが生まれなかったのも事実。スティーヴ・ヴァイ(G)やビリー・シーン(B)といった凄腕ストリングス隊のテクニックを活かしたハードロックナンバーと、“ダイヤモンド・デイヴ”の愛称にふさわしいジョービズ臭プンプンのスタンダードナンバーを並列させたことで、VAN HALENの大ヒット曲「Jump」のようなポップ色の強い楽曲が入る余地がなかったのです。

となると、続く2枚目のアルバムでの命題は必然的に「『Jump』にも匹敵するヒットシングルを生み出すこと」となるわけです。それが、今作における「Just Like Paradise」(全米6位)だったんでしょうね。

また、今作からバンドにはブレット・タグルというキーボーディストが正式参加。「The Bottom Line」のような前作の延長線上にあるアップテンポなハードロックも少なからず収録されているものの、どの曲にもキーボードが加えられており、全体的にソフトな印象を受けます。ステーヴ・ヴァイのギターは相変わらず暴れまくっているように聴こえるものの、前作と比較したら若干落ち着いたように受け取れる。ビリー・シーンのベースに至っては曲のボトムを支えることに終始し、テクニカルなソロプレイは一瞬フィーチャーされるのみ。そういった状況にストレスを感じたビリーは、本作完成後にバンドを脱退しています。結局、ビリーを含む編成での来日公演は実現しなかったんですよね(まあこの脱退があったおかげで、MR. BIGが結成されるわけですが)。

ポップで軽やかなロックナンバー「Knucklebones」からスタートする本作は、前作における「Yankee Rose」と比較してしまうと肩透かしを食らうかもしれません。が、全編キャッチーで親しみやすいオリジナル曲でまとめられた作風は、あの当時デイヴが目指した「ヒット曲でもVAN HALENに勝つ」という目標を達成させるためには必要な方向性だったんでしょうね。小ヒットに終わったダンサブルな「Stand Up」やスティーヴのギターアレンジが素晴らしいバラード「Damn Good」、地味でダークだけどこの編成じゃなければ生まれなかった隠れた名曲「Hina」など、異色ながらも聴きどころの多い作品ではないでしょうか。初期衝動がすべてだった『EAT 'EM AND SMILE』とは別ベクトルで、いかにもデイヴらしいアルバムだと思いますし、今でも嫌いになれない1枚です。



▼DAVID LEE ROTH『SKYSCRAPER』
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