THE DEAD DAISIES『HOLY GROUND』(2021)
2021年1月22日にリリースされたTHE DEAD DAISIESの5thアルバム。
前作『BURN IT DOWN』(2018年)から約3年ぶり、それまでに発表したカバー曲を集めたコンピレーションアルバム『LOCKED AND LOADED: THE COVERS ALBUM』(2019年)から数えても1年半ぶりということになりますが、特にこの1〜2年はバンドにとって大きな転換期となりました。まず、ボーカリストがジョン・コラビからグレン・ヒューズ(ex. DEEP PURPLEなど)に交代。グレンはベースも兼任するため、同時にマルコ・メンドーザも脱退せざるを得ませんでした。
このアルバムのレコーディングメンバーはグレン(Vo, B)、ダグ・アルドリッチ(G)、デヴィッド・ローウィー(G)、ディーン・カストロノヴォ(Dr)という布陣。オリジナルメンバーはすでにデヴィッドのみというのは置いておいて、日本で彼らが知られるようになってから現在までバンドに残るのはダグのみというのも……まあいいでしょう。
『BURN IT DOWN』はディーンの特徴を活かしてか、それ以前のルーズなロックンロール/ハードロック路線からヘヴィなリズムを強調した硬質なサウンドへと変化を遂げましたが、この新作も基本路線は『BURN IT DOWN』に近いのかな。ただ、グレンが加わったことでメロディラインや歌、節回しにソウルフルさが加わり、若干アンバランスさが気になった前作よりもまとまりが良くなった印象を受けます。
ぶっちゃけ、カッコいいです。しっかり歌えるシンガーによるクールなHR/HM。「My Fate」のようなヘヴィなノリでもソウル&ブルースフィーリングを感じさせるグレンの歌があれば、非常に聴きやすいものに昇華されている。また、そんなグレンに引っ張られるように、ダグもブルージーさの強いソロプレイを乗せてくる。いい相乗効果じゃないですか。個人的にはこういった曲や、「Far Away」みたいにソウルフルさを打ち出したスローナンバーに惹かれてしまいます。この曲もグレンの特性を活かしており、良い出来です。
お約束となったカバー曲は今回も用意されており、MR. BIGなどでおなじみの「30 Days In The Hole」(原曲はHUMBLE PIE)を“らしく”味付けしております。こういった楽曲を歌うグレンは最高以外の何ものでもなく、全体的にタイトな印象を受ける本作の中でちょうど良い息抜きポイントとなっています(もちろん良い意味ですよ、この息抜きは)。
アルバム1枚通して非常によく作り込まれたハードロックアルバムですが、正直これをTHE DEAD DAISIESという名前で制作する必要があったのかな……という疑問もゼロではありません。グレンの前にジョン・スティーヴンス(ex. INXS)、ジョン・コラビという2人のシンガーが存在しているわけで、それぞれが在籍した時代の音/曲というのもあるわけで、特にこのバンドの場合はその前任2名が在籍した時代こそバンドのアイデンティティを確立させる上で重要だったと認識しているだけに、前作から今作へのシフトは素直に受け入れられないものもあります。もっと言えば、「これ、グレンのソロアルバム(もしくはグレン&ダグのプロジェクト)として出せば、もっと正統な評価を受けたんじゃないかな?」とも。もちろん、内容の良さがすべてだとは思うんですが、どうにもこうにも……難しいなあ。
なお、本作リリースと同タイミングにディーンの脱退も発表に。新たに末期BLACK SABBATHのツアーなどに参加したトミー・クルフェストがツアーでプレイするとのことです。相変わらず人の出入りの激しいバンドだなあ……。
▼THE DEAD DAISIES『HOLY GROUND』
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