DECKARD『DREAMS OF DYNAMITE AND DIVINITY』(2003)
2003年に発表されたDECKARDの2ndアルバムにして最終作。日本盤未発売。
本作は当初、オフィシャルサイトから購入可能な限定商品でしたが、2004〜5年頃から一般流通が開始。現在は各デジタル音源販売サイトおよびストリーミングサービスにて手軽に聴くことができます。
BABY CHAOSからDECKARDへと改名し、満を辞してのデビューアルバム『STEREODREAMSCENE』(2000年)をメジャーのReprise Recordsから発表したものの、大したプロモーションを受けることもなくすぐに契約終了。それからしばらくしてこの2作目の制作に取り掛かったものの、バンドは本作をリリースすることなく2002年に活動休止。メンバーはそれぞれの道を歩むことになります。
この2作目のプロデュースを手がけたのは、メンバーのクリス・ゴードン(Vo, G)。基本的な作風は前作の延長線上にある、良い意味でアメリカナイズされたパワーポップ。ですが、穏やかさの中にもキラキラしたメジャー感がにじみ出ていた前作とは異なり、全体的にどことなくダークさが漂っているのが大きな特徴かもしれません。
もちろんどの曲も非常に練り込まれた、完成度の高いナンバーばかりなのですが、なんとなく“突き抜け”感が足りないような……良い意味で受け取れば、BABY CHAOS時代の魅力が復調していると見ることもでき、「Holy Rolling」を筆頭に(アレンジや演奏面で)ハードロック的な色合いが戻ってきているのはその影響もあるのかなと思いました。
一方で、悪い意味で受け取るとならば……せっかくアメリカに渡ったのに、レーベルからは思ったようなサポートを受けられず、あげくリリースから間もなく契約解除。そういったネガティブな要素が作品にも暗い影を落とした……そう考えられなくもないのかなと。
本来彼らが持ち合わせていた要素の復活と、状況がままならない不安。これらが複合的に作用して、この空気感を生み出した……だとしたら、こういう作品こそ多くのリスナーのもとに行き届くようにして「ダークだけどカッコいいじゃん。あれ、前にも1枚出してるの? だったら聴いてみようかな?」と思わせることもできたはずなのに。悪い状況はいつになっても復調することなく、結果としてバンドは事実上の解散へと向かうわけです。
事実、僕自身このアルバムがリリースされていることを知ったのはかなりあとになってからで、当時まだ生きていたDECKARDのオフィシャルサイトでダウンロード購入して「もっと早くに聴いておくべきだった!」と思ったくらいですから。
結果として、2013年にBABY CHAOSが再結成したおかげで、DECKARD時代の2作品も「歴史のひとつ」として受け取れるようになりましたので、あのまま埋もれずに本当によかったです。『STEREODREAMSCENE』ほどの鉄壁さはないものの、影の要素を強めたこの作風もかなりクセになるはず。『STEREODREAMSCENE』を気に入った方、BABY CHAOSの近作から彼らを知ったというリスナーにもぜひ触れてもらいたい1枚です。
▼DECKARD『DREAMS OF DYNAMITE AND DIVINITY』
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