2003/10/02

BABY CHAOS『LOVE YOUR SELF ABUSE』(1996)

先日紹介したDECKARDというバンドが以前、BABY CHAOSという名前でイギリスにて活動してた時代のセカンドアルバムに当たるのが、この「LOVE YOUR SELF ABUSE」という作品集なんですが‥‥これがちと厄介な作品でして。最初は96年春に同タイトルでリリースされたこのアルバム、翌97年にはアメリカの「Atlantic Records」とのワールドワイド契約も決まり(それ以前は「East West UK」。レーベルメイトはTHE WiLDHEARTSでした)、収録曲を若干変更してアメリカやここ日本で再リリースされたのが今回紹介するフォーマット。とりあえず一番手に入れやすいのがこの再発盤だと思うので、まずはこっちから紹介してみようかと思ってます(ま、基本的にはどれも素晴らしいアルバムだと思うので、どれから聴いてもいいんですけどね)。

このアルバムは彼等が唯一ここ日本で発表することのできた作品で、結局DECKARD『STEREODREAMSCENE』に関しては日本はおろか本国イギリスでさえもリリースされなかったんだから‥‥そう考えるとこの『LOVE YOUR SELF ABUSE』という作品、非常に貴重なものとなるわけですが‥‥何でこれが当時大騒ぎされなかったのかが不思議で仕方ないんですよ。俺は彼等がTHE WiLDHEARTSと当時(97年頃)ツアーをしていたことからその名前を知ったんですが‥‥実はその音と接することになるのはもっと後で、彼等がDECKARDに改名してから暫く経った後。ずっとアルバムを探してはいたんだけど、なかなか見つからなくて。いや、俺の見つけ方が悪かっただけなんですが。唯一リリースされていたこの日本盤の中古を地元のCDショップで見つけた時の歓喜といったら。と同時に「こんな片田舎にも、俺と同じような音を求めてる奴が、少なくともひとりはいるんだ」と判ったのが大きな収穫だったわけで。ま、その辺の話はこっちの置いといて‥‥

DECKARDで彼等に魅了された人がそれと同じモノを期待するとちょっと肩透かしを食らうかもしれませんが、そのポップセンスは間違いなくDECKARDのそれと同等、あるいはそれ以上ではないかと個人的には思ってます。単純に趣味の問題になりますが、DECKARD以上にハードでパンキッシュな要素も含まれたBABY CHAOS時代の方が好みなんですね。特にこのセカンドアルバムではTHE WiLDHEARTSやTERRORVISIONといった同系統で括られることの多いバンド達とのツアー経験が良い方向に作用し、それらのバンドにも匹敵する内容になったのではないかと思っています。テンポ的にもアッパーな「She's In Pain」からスタートする点、そしてそれぞれの楽曲のエンディングと次の曲の頭の音がクロスフェードするという連続性、それによって伴う小気味良さ、DECKARDとは方向性の違った「モダンさ」等々、特筆すべき点は多いと思うんですが、やはり何よりも優れたメロディセンスと、それに乗せるボーカルの荒々しさ、ギターもDECKARD以上に暴れまくっている等、とにかく飽きさせずにガガーッと最後まで聴けてしまう内容。DECKARDがどこかじっくりと聴き込む的な要素を強く感じさせていたのと対照的に、こっちはより大音量で、大勢で騒ぐ為のアルバムといった印象を受けます。いや、だからこっちの方が荒くて劣るという意味ではなくて、より若々しいというか‥‥ま、THE WiLDHEARTS好きやパンキッシュなパワーポップ好きに大いにアピールする作品という意味ですよ。

このアルバムのリリースから既に6年、オリジナルバージョンから7年以上もの月日が経つわけですが、あの当時冷遇されたこの作品、THE WiLDHEARTSが再結成してウケる現在ならもっと高く評価されるんじゃないでしょうか。もし今、DECKARDがこのタイプのアルバムを発表したなら‥‥その彼等が今、この頃に比較的近い作風のアルバムを作っているという噂があります。この波に乗り遅れない内にリリースにこぎ着けて欲しいなぁ。だってこれだけの作品を作れる才能を持ったバンドなんだからさ。



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投稿: 2003 10 02 12:00 午前 [1996年の作品, Baby Chaos, Deckard] | 固定リンク

2003/09/22

DECKARD『STEREODREAMSCENE』(2000)

イギリスのギターロック/パワーポップ・バンド、DECKARDが00年夏にアメリカでリリースしたファーストアルバム、それが今回紹介する『STEREODREAMSCENE』という作品。何故「アメリカでリリース」と書いたかというと、このバンドの当時の活動状況が影響してるんですね‥‥

元々はこのバンド、90年代中盤にBABY CHAOSという名前で活動していたんですよ。インディーズからアルバムを1枚リリースした後にドラムが現在のGEN(元JESUS JONES)に交代、その後メジャーから1枚アルバムをリリース後、バンド名を今のDECKARDに変えて渡米、活動の拠点をイギリスからアメリカへと移すわけです。本国イギリスでもそんなに売れていたというわけでもなく、THE WiLDHEARTSなんかと一緒にツアーしてたので俺もこのバンドのことを知ったわけです。

イギリスでのレコード契約を破棄され、渡米後にインディーレーベルからEP『DECKARD EP』を発表、そこに収録された「What Reason」という曲がアメリカで大人気のテレビドラマ「フレンズ」劇中歌に起用され、サントラ第二弾にも収録され、それが切っ掛けだったのか現地のメジャーレーベル「Reprise」と契約、00年夏にこのアルバムをアメリカでリリースしたのでした。

しかし、このアルバムは日本はおろか本国イギリスでもリリースされることはありませんでした。何故なら、リリースから数ヶ月後には早くもバンドは契約解消されてしまうのです。

BABY CHAOSがバンド名を変え、DECKARDという名前で活動していたことは事前に知っていましたが、何時アルバムがリリースされるなんて情報、全く知らなかったんですね。だって日本盤が出る予定もないアーティストだもん、雑誌メディアにも取り上げれれる機会なんて皆無でしたしね。しかし00年夏頃、たまたま入ったCDショップでこのアルバムを見つけたんですよ。銀座のHMVだったかと記憶してます。しかもかなりプッシュされてたんですよ。「パワーポップの隠れた名盤」なんてポップが付けられて。当然このバンド名にピンときた俺は、試聴もせずにCDを手にレジへ進んだのでした。

内容的には文句なし。BABY CHAOSにあったパンク色や疾走感は完全に後退し、よりモダンな味付けが強調された完成度の高い作品に仕上がってます。上記のEPに収録されていた曲も4曲中3曲(「What Reason」「Still」「Sycamore」)が再収録され、その他の新曲8曲もいろんな要素を含んだ、非常に興味深い楽曲ばかり。例えばFOO FIGHTERSが持つパワフルさ、SMASHING PUMPKINSが持つモダンなポピュラリティ等、このアルバムでの彼等がそういったバンド達と肩を並べるべき存在であったことが伺えます。

個人的には特に「What Reason」をまず聴いて欲しいんですよ。これ1曲で完全にノックアウトされるはずですから。例えばこの曲には上記のTHE WiLDHEARTSにも通ずるようなモダンなパワーポップの要素を持ちつつ、QUEENの名曲「Under Pressure」にも通ずる美しいメロディの上にCHEAP TRICKのロビン・ザンダーにも匹敵するボーカルが乗るんですね。もうこれだけで文句なしでしょ?

勿論、それ以外の10曲も全てどこか引っかかる箇所のある素晴らしい楽曲ばかり。滅茶苦茶ポップなメロディを盛った楽曲なんだけど、演奏自体は意外と重かったり、また所々にデジタルな要素があったり(そういえばボーカルのクリス・ゴードンはDECKARDとは別に、ディスコ/ダンスミュージック・ユニット・REGENCY BUCKなんてのもやってたっけ)、聴かせる長いギターソロがあったり。ストレートなロック・チューンあり、ヘヴィなバラードあり‥‥という点では大先輩であるCHEAP TRICKに通ずる点も非常に多いバンド。ラストのバラード2曲("Sycamore"と"Bear")、特にエンディング間際の「Sycamore」での盛り上がり方は尋常じゃないですからね。ある種、セカンド辺りのRADIOHEADすら彷彿させますからね!

以上、ここまで読んで興味を持った人、絶対に損はしないはずだから‥‥まずはCD探して聴いてみて! 絶対に名盤だから。特にパワーポップ系が好きでまだこのバンドを知らなかった人は、これを聴いた後にBABY CHAOSのセカンド(アメリカ盤と日本盤は内容一緒ですが、イギリス盤は収録曲が若干異なります。オススメはイギリス盤!)も聴いてね。ファーストは現在品薄で見つかり難いと思いますが、可能なら探し出してください。とにかくまずは聴いて!絶対に!気に入る!から!

最後に。現在はイギリスに戻り、未だに契約先を探しているDECKARD。オフィシャルサイトでは完全未発表に新曲が2曲、ダウンロードできます。音質的にはデモ段階ですが、更に魅力に磨きがかかってるように感じました。この夏には本国でのフェス(T IN THE PARK)にも出演したようですし‥‥リリースから早3年、そろそろ大きな二発目を期待したいところです。



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投稿: 2003 09 22 12:00 午前 [2000年の作品, Baby Chaos, Deckard] | 固定リンク