BRIAN MAY『BACK TO THE LIGHT: DELUXE EDITION』(2021)
2021年8月6日にリリースされたブライアン・メイの1stソロアルバム復刻盤。日本盤は同年8月11日発売予定。
本作は1992年9月にイギリスでリリースされたQUEENのブライアン・メイによるソロデビューアルバム『BACK TO THE LIGHT』をボブ・ラドウィックが最新リマスタリングを施したアルバム本編に、ブライアン監修による別バージョン、シングルC/W曲、ライブテイクなどをまとめたボーナスディスク『OUT OF THE LIGHT』を付属した2枚組仕様。アルバム本編のみの単体ディスクも発売されていますが、今回は主に『OUT OF THE LIGHT』を軸に話を進めていきたいと思います。
アルバム本編は、フレディ・マーキュリーの死後から1年経たずして届けられた、前を向こうとするポジティブな姿勢がダイレクトに伝わる良質なロックアルバム。レコーディングにはコージー・パウエル(Dr)やニール・マーレイ(B)といったのちのツアーに参加する布陣のほか、ドン・エイリー(Key/現DEEP PURPLE)やQUEEN時代の盟友ジョン・ディーコン(B)もゲスト参加。コージーのパワフルなプレイが楽しめる「Resurrection」(全英23位)や、のちにQUEENバージョンも公開されることになる「Too Much Love Will Kill You」(同5位)、シングルヒットも飛ばした「Driven By You」(同6位)や「Back To The Light」(同19位)など良曲目白押しで、QUEENファンのみならず楽しめる内容だと断言しておきます(詳しくは2004年に執筆した、こちらレビューをご確認ください)。
さて、気になるボーナスディスクですが、ファンならばすでに耳にしたことがある音源が豊富で、当時シングルまでこまめにチェックしていた方ならどれも聞き覚えがあるのではないでしょうか。まず、“Guitar Version”と銘打った3曲(「Nothin' But Blue」「Too Much Love Will Kill You」「Just One Life」)はブライアンのボーカルに代わり自身がギターソロを弾きたおすテイク。特に後者2曲は1992年当時の日本盤ボーナストラックとして追加収録されていたので、知っている方も多いことでしょう。いかにも“ギタリストのソロ活動”といった内容ですが、これはこれで味わい深いのではないでしょうか。
また、「Driven By You」は別テイクが3曲用意され、中でも貴重なのが「Driven By You (Ford Ad Version)」ではないでしょうか。これは同曲がリリースされた当時、自動車メーカーのフォードがCMソングとして起用した際の別バージョン。歌詞が当時のキャンペーンにあわせたものに変更されており、こういうこともやっていたんだなあ……とジワジワ響いてくるものがあります。
そして、ライブテイクについて。1993年6月のThe Brixton Academyでのテイクはすべて、ライブアルバム『LIVE AT THE BRIXTON ACADEMY』(1994年)からのテイクで、それ以外はシングルのカップリングで発表されたもの。スラッシュ(G/GUNS N' ROSES)をフィーチャーした「Tie Your Mother Down」のような貴重な音源も改めて楽しめることになり、うれしい復刻と言えるのではないでしょうか。
今回の復刻は、ブライアンが現在進めている企画「Brian May Gold Series」の一環として用意されたもの。つまり、現在廃盤状態である2ndソロアルバム『ANOTHER WORLD』(1998年)を含むソロ音源が新たな形で復刻される可能性もあるようです。できることなら映像作品を含む『LIVE AT THE BRIXTON ACADEMY』の完全版リリースにも期待したいところです。
まあ何はともあれ、しばらく配信で聴くことができなかったブライアンの初ソロアルバム、この機会に思う存分楽しみましょう。
▼BRIAN MAY『BACK TO THE LIGHT: DELUXE EDITION』
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