2018年11月 2日 (金)

DEF LEPPARD『HYSTERIA』PERFORMED IN ITS ENTIRETY & MORE@日本武道館(2018年10月24日)

Img_3716もう1週間経ってしまいましたが、いまだに余韻が抜けないので改めて記録として残しておきます(ベビメタやらポール・マッカートニーやらで記憶が薄まる前に)。

DEF LEPPARD、3年ぶりの来日公演。前回は久しぶりのニューアルバム『DEF LEPPARD』(2015年)発売直後でしたが、今回は傑作『HYSTERIA』(1987年)完全再現+αというHR/HMファン歓喜の内容。そりゃ行かない理由はないですよね。

しかも、前回の来日時は自身の体調が万全ではなく(耳を患い長時間大音量が厳しい状態)、しかもライブ当日に名古屋で取材。開演に20分以上遅れるという失態を犯したこともあり、今回は最初から最後までまるまる堪能したいなと。30分前には武道館入りし、場内で延々流れるブリティッシュロック/ハードロックの名曲群に浸っておりました(ラジオDJ風で、途中「あと◯◯分でライブだよ」みたいな英語アナウンスが入る)。

ステージは非常にシンプル。後方に巨大LEDスクリーン、その前の一段高い位置にドラムセット。ステージ上にはギターアンプの類は一切なし。そういえば、前回の来日時も同じようなことで驚いた記憶が。あと、DURAN DURANのときも同じようなステージセットだったような。最近はこういう形が増えているんですかね。

予定時間から10分ほど遅れて暗転(そういえば、暗転前最後に流れたのはDEPECHE MODE「Personal Jesus」のDEF LEPPARDカバー。自分たちの曲を流すのは斬新でしたね。笑)。『HYSTERIA』収録曲をコラージュしたSEが流れる中、メンバーがステージに登場し、最後にジョー・エリオット(Vo)が現れたところでフィル・コリン(G)が「Women」のギターフレーズを奏でライブ開始。キーは半音下げでしょうか。ライブアルバム&映像作品『VIVA! HYSTERIA』(2013年)と同じキーだったと記憶しています。全体的に音量が抑えめで、ジョーの声も若干聞こえにくいような。高音が厳しいのは今に始まった話じゃないですが、こういった音響のせいもあってサビではジョーの声が聞き取りにくいったらありゃしない。まあそこは、観客の大合唱でフォローするわけですが。

ライブで久しぶりに耳にする「Women」からアルバムテイクの「Rocket」、ポップで小気味良い「Animal」へと順調に流れていき、MCは極力控えめ。4曲目「Love Bites」はさすがに半音下げでも厳しかったのか、1音下げだったのでは?(もっとかも) それでも違和感なく楽しめましたが。そしてライブ終盤の定番曲「Pour Some Sugar On Me」と、5曲立て続けにヒットシングルを演奏……冷静に考えて、なんて豪華なアルバム/ライブなんでしょう。普通のバンドだったら、ヒット曲はライブ全編に散りばめるのに、MCを挟んでさらに続く「Armageddon It」と、ここまでシングル6連発。アナログA面全曲がシングルナンバーって、それどこの『THRILLER』だよ!?って話ですよね。

ここまではライブで耳にする機会が比較的多い楽曲が続きましたが、個人的にはこれ以降が本番。マニアックな楽曲が並ぶアナログB面(M-7〜12)ゾーンに突入です。

Img_3714「Gods Of War」の前にはスティーヴ・クラーク(G/1991年死去)の在りし日の姿がスクリーンに映し出され、涙腺が刺激されます。この頃から演奏全体のボリュームが安定し、大きめになったような記憶があります。フィル・コリンやヴィヴィアン・キャンベル(G)がクールなギタープレイを披露し、リック・アレン(Dr)とリック・サヴェージ(B)がヘヴィなビートでボトムを固める。アルバムで聴ける人工的なサウンドとは異なる、生々しさがむき出しになったライブでのアレンジ、本当に良いです。

そして「Don't Shoot Shotgun」「Run Riot」と久しぶりにライブで演奏される楽曲が続くのですが……残念ながら、序盤と比べると観客のテンションが少しだけ落ちたような気が。シングル曲ではサビでシンガロングが続きましたが、このへんでは(主に自分の周りでは)ほとんどなかったような。が、「Hysteria」では会場の熱量も復活。スクリーンに映し出される過去の写真に、再び胸が締め付けられるのでした。

ライブで聴くと意外と楽しかったダンスチューン「Excitable」を経て、感動のラストナンバー「Love And Affection」へ。「Hysteria」とテンポ感が似ており、かつ曲の並びが近かったのはライブとしては残念だったかもしれません(アルバムで聴くと違和感ないんだけど)。けど、良い曲であることには違いなく、結局70分近くにおよぶ完全再現を経て、バンドは一度ステージを後にします。

12曲で本編終了と、ライブとしては若干物足りなさが残りますが、ここからは「+α」パート。つまり、『HYSTERIA』以外の代表曲のパートになるわけですが、まずいきなり「Let It Go」(2ndアルバム『HIGH 'N' DRY』収録曲)から始まるとは! これにはさすがに驚かされました(大阪や名古屋では「Action」や「Wasted」が演奏されたようですね。これも聴きたかった!)。そこから、この日演奏された楽曲の中でもっとも最新ナンバー(笑。1995年作)「When Love & Hate Collide」へと続き、「Let’s Get Rocked」「Rock Of Ages」「Photograph」と定番ナンバー連発でアンコールを締めくくりました。

全17曲、正味95分程度と最近のライブとしては比較的短いほうかもしれませんが、ヒット曲満載でこのボリュームなら納得がいくといいますか。腹八分目で「また観たい!」と思えるくらいの長さが、実はちょうどいいのかもしれません。2時間半から3時間のライブが当たり前となっていた時代もありますが、アーティストのエゴで(ファン的には不人気な)レア曲にて水増しされるよりはこれでいい気がしました。

バンドは間もなく新たなグレイテスト・ヒッツアルバム『THE STORY SO FAR: THE BEST OF』をリリースしますが、できることなら同作を携え、また来年も来日してほしいな。今回ライブに足を運んだ人は間違いなく、次も行くはずですから。


[SETLIST]
01. Women
02. Rocket
03. Animal
04. Love Bites
05. Pour Some Sugar On Me
06. Armageddon It
07. Gods Of War
08. Don't Shoot Shotgun
09. Run Riot
10. Hysteria
11. Excitable
12. Love And Affection
<ENCORE>
13. Let It Go
14. When Love & Hate Collide
15. Let's Get Rocked
16. Rock Of Ages
17. Photograph




▼DEF LEPPARD『VIVA! HYSTERIA』
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投稿: 2018 11 02 12:00 午後 [2018年のライブ, Def Leppard] | 固定リンク

2018年11月 1日 (木)

DEF LEPPARD『RETRO ACTIVE』(1993)

1993年10月にリリースされた、DEF LEPPARD初のコンピレーションアルバム。1991年1月にスティーヴ・クラーク(G)を失い、残されたメンバー4人で5thアルバム『ADRENALIZE』(1992年)を完成させたバンドは、その直後に新メンバーとしてヴィヴィアン・キャンベル(G)を迎えます。そこでバンドは、スティーヴ・クラーク在籍時にひと区切りつけるために、過去のアルバム未収録曲や未発表曲をひとまとめにしたアルバムを作る計画を立てます。

ちょうどそんなタイミングに、映画『ラスト・アクション・ヒーロー』(1993年公開)のサウンドトラックに提供した「Two Steps Behind」がシングルヒット(全米12位)。もともとこの曲も『ADRENALIZE』からのシングル「Make Love Like A Man」に収められていたものに手を加えたもので、当然この『RETRO ACTIVE』に収録。そういう良き流れもあり、アルバム自体も純粋な新作ではないものの全米9位、全英6位という好成績を残しています。

収録曲の大半は『HYSTERIA』(1987年)および『ADRENALIZE』のレコーディングセッションから生まれたものばかりで、アルバム冒頭を飾る「Desert Song」と「Fractured Love」は『HYSTERIA』セッション時に生まれたアウトテイク。スティーヴ在籍時の貴重な音源で、『HYSTERIA』に入れるにはちょっとヘヴィ&シリアスすぎたのかなと。決して悪くはない出来で、普通にアルバムに入っていても違和感はないかも。

3曲目「Action」(ご存知SWEETのカバーで、今ではライブ定番の1曲)以降は、ヴィヴィアン加入後の音源やこのアルバム用にレコーディングされたテイクも混在。同じ曲の別テイクも複数含まれており、「Two Steps Behind」「Miss You In A Heartbeat」はそれぞれ2 バージョン、3バージョン(うち1バージョンはシークレットトラック)と「ちょっと余計じゃない?」と若干のクドさも。とはいえ、それぞれアコースティックバージョンとエレクトリックバージョンでカラーが異なるので、ファンなら楽しめるんじゃないかなと。

のちに発売された『HYSTERIA』30周年盤にも含まれている「Ride Into The Sun」「Ring Of Fire」「I Wanna Be Your Hero」は、本作収録バージョンとは若干ミックスが異なります。また、『ADRENALIZE』日本盤にボーナストラックとして収められた「She's Too Tough」と「Miss You In A Heartbeat」(エレクトリックバージョン)も新たにリミックスが加えられているので、マニアはその違いを聴き比べるのも面白いかもしれませんね。あ、「Ride Into The Sun」は『THE DEF LEPPARD E.P.』(1979年)が初出なので、聴き比べの際にはそちらもお忘れなく。

純然たるシングルコレクションとは異なり、あくまでオリジナルアルバムのアウトテイクやお遊び的楽曲が中心なので、バンドの本筋とは若干異なりますが、逆に軸にあるものがより見えやすい1枚かもしれません。そういう意味では、本作はDEF LEPPARDを語る上で欠かせないアルバムと言えるでしょう。個人的にもお気に入りの上位に入る作品集です。



▼DEF LEPPARD『RETRO ACTIVE』
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投稿: 2018 11 01 12:00 午前 [1993年の作品, Def Leppard] | 固定リンク

2018年10月21日 (日)

DEF LEPPARD『VIVA! HYSTERIA』(2013)

2013年10月に発売された、DEF LEPPARD通算2作目のライブアルバム(およびライブ映像作品)。前作『MIRROR BALL: LIVE & MORE』(2011年)は直近のオリジナルアルバム『SONGS FROM THE SPARKLE LOUNGE』(2008年)を携えたワールドツアー音源に3曲の新曲を追加した作品でしたが、今作はそのタイトルからもわかるようにバンド史上最大のヒット作『HYSTERIA』(1987年)を完全再現した、ラスベガスのHard Rock Hotel And Casinoでのライブを収めたものです。

ライブは『HYSTERIA』収録曲全12曲を、アルバムの曲順どおりに演奏した本編に加え、「Rock Of Ages」「Photograph」のヒットシングル2曲を披露したアンコール2曲の全14曲。2枚組CDのうち、ディスク1にこの模様がまるまる収録されています。

そして、ディスク2には近年あまりライブで演奏される機会の少なかった楽曲群……1stアルバム『ON THROUGH THE NIGHT』(1980年)期の「Good Morning Freedom」や「Wasted」「Rock Brigade」、2ndアルバム『HIGH 'N' DRY』(1981年)から「Mirror, Mirror (Look Into My Eyes)」や「Another Hit And Run」、さらに「Stagefright」や「Action」「Slang」「Promises」などを演奏した、同ライブのオープニングアクト(DEF LEPPARDがDED FLATBIRD名義で登場)のライブ音源も収録。日本盤のみ、「Now」や「When Love & Hate Collide」「Two Steps Behind」など計5曲を約8分のメドレーで披露したアコースティックセットが追加されています。

リック・アレン(Dr)が交通事故で片腕を失い、それに合わせて制作されたスペシャルなドラムセットを用いてレコーディングされた最初のアルバム『HYSTERIA』。その特徴的なドラムサウンドのみならず、何十、何百にもおよぶオーバーダビングによる重厚なサウンドがあのアルバムの特徴でしたが、ライブではそのマジックが完全再現されるわけではありません。ステージにいる5人だけで表現される『HYSTERIA』の楽曲群は、聴く人が聴けばオリジナル盤よりも薄っぺらくて、迫力が弱いものに成り下がっていると感じるかもしれません。

しかし、あの完璧に作り込まれた作品をここまで生々しくよみがえらせたという点においては、オリジナルとはまた違った楽しみ方ができるというのもあります。ドラムサウンドも1987年当時より技術的に向上しており、幾多のライブを重ねてきた彼ららしいアレンジとプレイの妙技もこの作品ならでは。2本のみで再現されるフィル・コリン(G)&ヴィヴィアン・キャンベル(G)のギターアンサンブルと、キーを半音下げながらもなるべく原曲に忠実に歌おうとするジョー・エリオット(Vo)のボーカル、さらに少ないメンバーで再現しようとするコーラスワークは、そりゃあスタジオワークの重厚さには敵いませんが、この隙間のあるアンサンブルも“ザ・ロックバンド”然としていてカッコいいではありませんか。

個人的に印象に残るのは、実はリック・サヴェージ(B)のベースプレイ。アルバムだとシンセベースに置き換えていたりするものも、ここではベースギターで演奏されているので、この低音が気持ち良かったりするんですよね。

間もなく3年ぶりの来日を果たすDEF LEPPARD。ここ日本でも『HYSTERIA』完全再現が実施されるわけですが、まずはこのライブ作品で予習するもよし。ライブを観た人はここで思い出に浸りつつ、復習するのもよし。スタジオ版とは異なるライブバンドならではの魅力を、ここから感じ取ってもらいたいです。



▼DEF LEPPARD『VIVA! HYSTERIA』
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投稿: 2018 10 21 12:00 午前 [2013年の作品, Def Leppard] | 固定リンク

2018年7月25日 (水)

DEF LEPPARD『SPOTIFY SINGLES』(2018)

今年10月に名盤『HYSTERIA』(1987年)再現ライブで3年ぶりの来日を果たすDEF LEPPARD。彼らの動向が今年に入ってから、かなり活発化しているのはご存知のとおりでしょう。1月にUniversal Records時代のカタログがすべてデジタルリリース&ストリーミング配信開始、6月には初期4作にボーナスディスクをつけたボックスセットを発売。そして今回、「Spotify」限定でEPをリリース。それが今回紹介する『SPOTIFY SINGLES』です。

この『SPOTIFY SINGLES』は2016年頃から始まったサービスで、ニューヨークにあるSpotify Studioでさまざまなアーティストが自身の楽曲とカバー曲を1曲ずつレコーディングするという企画。過去にはテイラー・スウィフトやエド・シーラン、CHVRCHES、SUPERORGANISMなどが参加し、最近も日本からもCorneliusが参加して話題を集めたばかりです。

この企画にHR/HM系バンドが参加することは珍しく、調べてみたらGRETA VAN FLEETくらいしか見当たりませんでした。なので、積極的にこういった企画に加わることを考えると、今のDEF LEPPARDのスタンスがある程度見えてくるのではないでしょうか。

DEF LEPPARDがレコーディングしたのは、『HYSTERIA』からタイトルトラックの「Hysteria」と、同郷イギリスのDEPECHE MODEのヒット曲「Personal Jesus」という意外なセレクト。前者はアルバム再現ライブをやっていること、代表曲のひとつということを考えれば頷ける話で、アレンジ的にもダウンチューニングされた現在のライブバージョンをそのままレコーディングしています。

で、問題は後者。DEF LEPPARDが取り上げるカバー曲といえば、過去に発表したカバーアルバム『YEAH!』(2006年)では自身のルーツに当たるアーティストばかりで、同時代に活躍する世代の近いアーティストの曲はあまり音源に残していないはず。ライブではOASISNIRVANAなどをワンフレーズだけカバーすることもありましたけどね。そういった意味でも、この音源は非常に貴重なものと言えるでしょう。

過去にはMARILYN MANSONカバーしたこの曲。DEF LEPPARDバージョンのアレンジも比較的原曲に忠実で、コーラスの入れ方含め同曲に対する愛情が感じられるものになっています。もともと半分電子ドラムのような編成のバンドということもあり、こういったエレクトロ調の楽曲をカバーするのはDEF LEPPARDに合っているのかもしれません。終盤のギターソロの応酬のみ、彼らなりのこだわりが見え隠れし、そこも微笑ましいかな。

こういった選曲ができるのも、90年代半ばに周りから迷作、駄作と叩かれた『SLANG』(1996年)を経験したからこそ。そう思えば、あれも重要な歴史だと言えるのではないでしょうか(僕は彼らの歴史に欠かせない重要作だと思っていますが)。

たった2曲という物足りなさこそあるものの、こういった企画ならぜひほかのバンドにも挑戦してもらいたいところ。どんなカバー曲を取り上げ、どんなアレンジを施すのか、センスが試されますしね(そもそもDEF LEPPARDのカバーアレンジにセンスがあるのかという問題もあるけど、それは見なかったことにします)。



▼DEF LEPPARD『HYSTERIA』
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投稿: 2018 07 25 12:00 午前 [2018年の作品, Def Leppard] | 固定リンク

2018年1月20日 (土)

DEF LEPPARD『ON THROUGH THE NIGHT』(1980)

DEF LEPPARDの過去のカタログが昨日1月19日から、デジタルデータでの販売およびサブスクリクションサービスでのストリーミング配信が開始されました。(参照:こちら

1980年のメジャーデビューから30年近く在籍したMercury/Island Records時代の音源に関しては、しばらくバンドのコントロールが効かない状況で、手元に取り戻した『SLANG』(1996年)以外は配信で手軽に聴くこともできず、バンドは苦肉の策として「Pour Some Sugar On Me」などいくつかの音源を再レコーディングして配信するなどしてファンのニーズに応え続けてきました。10年以上にわたり動いてきたこの件も、昨日で一件落着。個人的にもCDラックやハードディスクから彼らの音源を引っ張り出す手間が省けてありがたいですし、何よりも彼らの黄金期をリアルタイムで知らない若いリスナーにも手軽にDEF LEPPARDのカタログが楽しめるのは非常に大きな一歩だと思うのです。

ということで、今回は当初計画していた更新予定から、今月2枚目のDEF LEPPARDのアルバム紹介に変更することにしました。

今回紹介するのは、1980年3月に本国イギリスでリリースされたDEF LEPPARDのメジャー1stアルバム。彼らは前年の1979年1月に3曲入りEP『THE DEF LEPPARD E.P.』を自主レーベルから発売。同年にメジャー契約を果たすと、11月にはシングル「Wasted」でメジャーデビュー。当時はIRON MAIDENSAXONなどをはじめとする、イギリス出身の若手HR/HMバンドたちによる新たなムーブメント=New Wave Of British Heavy Metal(NWOBHM)が勃発し始めたタイミングで、サウンドのテイスト的にはヘヴィメタルとは異なるものの、DEF LEPPARDもこの流れに取り込まれて紹介される機会が増えていきました。

今このアルバムを聴き返すと、『HYSTERIA』(1987年)以降のデジタル色の強いポップなハードロックサウンドとは一線を画する、生々しくてアグレッシヴな印象を受けます。そりゃあリック・アレン(Dr)も健康体でしたし、当時はまだ16歳そこそこでしたし。メンバーの多くが20歳前後だったことを考えれば、この躍動感とフレッシュさは納得のいくものです。

また、王道ブリティッシュハードロックのスタンスを保ちながらも、「Rock Brigade」や「Hello America」などではアメリカナイズされた(と言われた)ポップさも積極的に導入している。もちろんこのへんもブリティッシュっちゃあブリティッシュなんですが、あの当時はこういったメジャー感に対して「アメリカかぶれ」なんて揶揄されたのかもしれませんね。今聴くとそんなにアメリカンな印象も受けないのですが。

上記のポップなハードロックはのちの彼らのヒット曲につながっていくと思うのですが、と同時に「It Could Be You」や「Wasted」「Rocks Off」のようなストレートなハードロックもあれば、「Sorrow Is A Woman」みたいに叙情的な楽曲、「When The Walls Came Tumbling Down」「Overture」といったプログレッシヴなハードロックも存在する。結局、次作以降の“らしさ”の原点がぎっしり詰まった、原点と呼ぶにふさわしい1枚なんですよね。彼らの代表作をすべて聴き終えてから本作に戻ると、非常に納得できる内容/作風なんじゃないかと思います。

今の彼らのこの勢いを求めようとは思いませんが、もしできることなら……今の彼らが表現する『ON THROUGH THE NIGHT』完全再現ライブというのも観てみたい気がします。実現しないものですかね?



▼DEF LEPPARD『ON THROUGH THE NIGHT』
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投稿: 2018 01 20 12:00 午前 [1980年の作品, Def Leppard] | 固定リンク

2018年1月 7日 (日)

DEF LEPPARD『SONGS FROM THE SPARKLE LOUNGE』(2008)

2008年春にリリースされた、DEF LEPPARD通算9枚目のオリジナルアルバム(カバーアルバム『YEAH!』を含めると10枚目のスタジオ作)。『YEAH!』から2年ぶりと短期間で発表された印象がありますが、オリジナル作品となると『X』(2002年)から6年ぶりと、80年代半ばから続いた3〜4年間隔を大幅に塗り替える長期ブランクなんですよね。もっとも、『X』での迷走ぶりを考えればこれだけのブランクが必要だったのかもしれませんが。

『YEAH!』で自身のルーツを振り返ったバンドは、この新作で非常にシンプルな視点に立ち返ります。それはつまり、「DEF LEPPARDらしさ」を踏まえつつも「ブリティッシュロックとは何か? 自分たちは何が好きでロックバンドを始めたのか?」という原点だったわけです。そうした結果、『HYSTERIA』(1987年)的な人工感や作り込みとは真逆の、オーガニックでシンプルな作風へと回帰したのです。

実際、本作に収録されている楽曲はすべて3〜4分台。長くても4:17ですし、全11曲でトータル39分というのも彼らの全キャリアで最短。そもそも、曲名からして「Go」とか「Love」とか「Tomorrow」とかシンプルなものばかり。時代的にもそういったサウンドに回帰しつつあったタイミングだったのかな、今振り返ってみると。

楽曲自体は、『YEAH!』の流れで聴くと非常に合点のいく作風。いわゆるHR/HMというよりは、70年代のブリティッシュロックを軸にしながら彼ららしいフレーバーを振りまいたブリティッシュ“ハード”ロック。カントリーシンガーのティム・マッグロウをフィーチャーしたロックンロール「Nine Lives」みたいなアメリカンなものもありますが、基本的には「Love」で示した方向性が本当にやりたいことなのかなと。もちろん、「Go」にしろ「Nine Lives」にしろ「C'mon C'mon」にしろ、従来の彼ららしさがにじみ出た楽曲もありますが、それらですらよりシンプルにすることで以前とは違うカラーを持ち始めているし。そういう意味では、『SLANG』(1996年)から装飾を剥ぎ取った姿と言えなくもないかも。

「Bad Actress」のようなファストナンバーでさえ、ハードロックというよりはグラムポップ的なカラーが強まっているし、比較的モダンな「Gotta Let It Go」もこのアルバムに入ると不思議と70年代的な香りが感じられる。また、彼ら特有のパワーバラードが皆無で、バラードらしいバラードが先の「Love」程度というのも本作の特徴といえるでしょう。DEF LEPPARDがロックバンドとして起死回生を目指した結果、こういう作品にたどり着いたという事実はすでに面白いですし、出来上がったアルバムのユニークさもまた面白い。そして本作が久しぶりに全米TOP10入り(5位)を果たしたという事実も、実に興味深い。

ただ、残念ながら彼らはこのアルバムを最後にメジャーレーベルから離脱。以降は自分たちのレーベルからリリースを続けています。結果、さまざまな権利関係で彼らの諸作品がデジタル配信されていないという事実を考えると、非常に残念でなりません。本作こそ、もっと多くの人に聴かれて再評価されるべき1枚なのに……。

P.S.
1月19日からDEF LEPPARDのカタログ一式のデジタル配信およびストリーイング配信がスタート。これにより、名盤の数々を手軽に楽しめるようになりました。メンバーも喜んでいるようで、本当によかった。



▼DEF LEPPARD『SONGS FROM THE SPARKLE LOUNGE』
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投稿: 2018 01 07 12:00 午前 [2008年の作品, Def Leppard] | 固定リンク

2017年12月 7日 (木)

DEF LEPPARD『SLANG: DELUXE EDITION』(2014)

というわけで、昨日のDEF LEPPARD 『SLANG』(1996年)レビューからの続きとなります。今回は前回以上に長いテキストとなっておりますので、そのつもりでお読みください。

本作は2014年初頭、バンドが自身のレーベルから発表した2枚組アルバム。当時はすでに、それまで在籍していたメジャーレーベルの「Mercury / Island」から離れており、彼らの旧譜をバンドが思ったような形で再発できない(例えばiTunes StoreやSpotifyなどの配信/ストリーミングサービスに、自由に提供できないなど)という問題が生じていた時期で、そんな中2012年後半にこの『SLANG』のマスター音源および当時録音したアウトテイクが彼らの手元に戻ることになった。そういう紆余曲折を経て、オリジナル盤発売から18年を経て『SLANG』セッションの全貌がここに明らかにされたわけです(ちなみに、今年リリース30周年を迎えた名盤『HYSTERIA』のデラックス盤は、原盤権を持つUniversalからのリリース。要はカタログとして売れる/売れないかの判断で『SLANG』を手放したんでしょうね)。

上記のような経緯を経て、バンドとしては久しくオリジナルアルバムがリリースされない時期に突如発表された『SLANG』のデラックスエディション。当然、発売されてすぐに手に入れましたが、いやぁこれが……聴き応えたっぷりで、オリジナル盤を持っている人でも間違いなく楽しめる1作なのです。

ディスク1にはリマスタリングされた『SLANG』本編に、1996年当時の日本盤ボーナストラックだった「Move With Me Slowly」、『SLANG』からのシングルにも収められた「Truth? (Original Version)」や「Burn Out」、ベストアルバム『VAULT: DEF LEPPARD GREATEST HITS (1980-1995)』(1995年)のボーナストラック「Can't Keep Away From The Flame」、7thアルバム『EUPHORIA』(1999年)からのシングルに収められた「World Collide」を追加収録。本編以降の楽曲はすべて『SLANG』セッションから生まれたもので、特に「Truth? (Original Version)」はデジタルテイストの強いアルバム本編の「Truth?」とは異なり、よりグランジ色が強い作風であることに驚かされます。また「Burn Out」は演奏スタイルこそ『SLANG』的ですが、楽曲の持つテイストは『ADRENALIZE』(1992年)以前の作風に近い。かと思えば、「World Collide」は変拍子を用いたミディアムスローのヘヴィチューンで、SOUNDGARDENあたりからの影響が伺えます。「Can't Keep Away From The Flame」はギター弾き語りの小楽曲なので、これは90年代前半にヒットしたシングル曲「Two Steps Behind」の延長線上で制作したものなんでしょう。

で、問題はディスク2。こちらには『SLANG』オリジナル盤収録曲のデモバージョンが満載なのです。「Turn to Dust (Phil Verse Vocal)」はデジタル的な味付けを省いた、より生々しさが前面に打ち出されたバージョン。歌詞や節回しが一部異なっているほか、ボーカルの一部をフィル・コリン(G)が担当しています。普通にロックバンドの楽曲としてカッコイイと思いませんが、この曲?

続く「Raise Your Love」はタイトルだけでは気づきませんが、これこそアルバムタイトル曲「Slang」のデモバージョン。ヒップホップ的手法のアレンジが施される前の、ワイルドなロックアレンジもこれはこれでカッコ良いし、何よりもサビがまったく異なる。正式発表された「Slang」はタイトさが目立ちますが、この緩やかさとダイナミックさを兼ね備えたアレンジも悪くないのですよ。

「All I Want Is Everything (1st Draft)」は比較的原曲に近く、初期の段階からほぼ完成形だったことが伺えます。まあこの曲、正式版自体がシンプルそのものですからね。続く「Work It Out (1st Draft)」も「Breath A Sigh (Rough Mix)」「Deliver Me (Rough Mix)」も同様。アルバム序盤のエキセントリックな楽曲と比べたら、このへんの楽曲は最初から完成形が見えていたってことなんでしょうね。

で、見慣れないタイトルの「Black Train」。こちらは「Gift Of Flesh」のデモバージョンで、ハードロックバンド的なダイナミックさが加えられた「Gift Of Flesh」よりもラフでユルい雰囲気が漂っています。また、サビ前からサビのメロディが完成版とは異なり、このシンプルさこそ当時の彼らが目指していたものなのだと理解できははずです。以降は「Blood Runs Cold (Rough Mix)」「Where Does Love Go When It Dies (1st Draft)」と再び完成版に近いテイクが続き、最後の「Pearl Of Euphoria (Rough Mix)」では過剰なエフェクトが加えられる前の生々しさを体感でき、改めてこっちのバージョンもいいなと思ったり。

ディスク2はまだまだ続き、ヴィヴィアン・キャンベル(G)のペンによる未発表曲「All on Your Touch (2012 Revisit)」や、「Deliver Me」の初期バージョン「Anger ("Deliver Me" 1st Draft)」(サビメロや歌詞が異なる)、ヴィヴィアンによる未発表デモトラック「Move On Up」、「Gift Of Flesh」のフィル・コリンVoバージョンなど貴重なテイクがたっぷり収められています。

こうやって完成した『SLANG』から通して聴くと、好き放題やり尽くしたと思われた『SLANG』というアルバムも実は最終的に“従来のDEF LEPPARDらしさ”を残そうとして微調整していたんだな、という事実にも気づかされます。もちろん「Truth?」や「Slang」のように過剰に突き抜けた楽曲もあるにはあるのですが、全体的にはやっぱり「DEF LEPPARDのアルバム」なんだと。その一言に尽きると思います。

こういうアウトテイク集って作品によってはまったく面白くなかったりするのですが、『SLANG』みたいな実験作および問題作だとやっぱり面白いもんだなと再確認できたので、このリリースの意味は非常に大きいものがあると思います。もし『SLANG』というアルバムに多少でも興味を持っていたら、迷わず手にしてみることをオススメします。



▼DEF LEPPARD『SLANG: DELUXE EDITION』
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投稿: 2017 12 07 12:00 午前 [1996年の作品, 2014年の作品, Def Leppard] | 固定リンク

2017年12月 6日 (水)

DEF LEPPARD『SLANG』(1996)

1996年5月にリリースされた、DEF LEPPARD通算6枚目のスタジオアルバム。前作『ADRENALIZE』(1992年)から4年ぶりの新作となるわけですが、その4年間に新曲+シングルBサイド集アルバム『RETRO ACTIVE』(1993年)やベストアルバム『VAULT: DEF LEPPARD GREATEST HITS (1980-1995)』(1995年)のリリースを挟んだので、意外と久しぶりという気がしなかったことを今でもよく覚えています(まあ、それも「彼らにしては」という大前提が入りますが)。

『ADRENALIZE』リリース後にスティーヴ・クラーク(1991年逝去)の後任としてヴィヴィアン・キャンベルが加入した彼らが最初に制作したスタジオアルバムがこの『SLANG』になるわけですが、本作は当時からいろんな意味で問題作として紹介されてきました。

まず、完全にロバート・ジョン・マット・ラングの手を離れ、すべての楽曲をメンバーのみで制作。プロデュースも基本はセルフプロデュースという形に近く(パートナーに以前から携わるエンジニア、ピート・ウッドロフを迎えている)、完全に「当時やりたかったことを試した」実験作と言える内容。時代背景的には『ADRENALIZE』発売前後から勃発したグランジムーブメントを経て、1995年前後のOASIS vs BLURなどのブリットポップムーブメントという、完全にHR/HMが時代遅れとして扱われたタイミングなわけで、当のDEF LEPPARDも完全に“過去の遺産”的扱いを受けていました。

そんな彼らが、純粋に「グランジ、シンプルでカッコいいじゃん!」「ブリットポップ、わかるよ。だって俺らもイギリス人だし!」と感じたことをそのまま音に反映させた。つまり、元来持ち合わせているポップセンスはそのままに、オーバープロダクションが持ち味だった彼らのスタイルを180度真逆の「無駄を削ぎ落としたシンプルさ」「人工甘味料を排除し、素材をそのまま生かした味付け」へと昇華させたのがこの『SLANG』だったのです。

グランジやブリットポップのみならず、当時流行り始めていたインダストリアルロックのテイストまで取り入れた「Truth?」に、まずリスナーはびっくりしたことでしょう。「え、NINE INCH NAILS?」と苦笑いしつつ、“LED ZEPPELIN+インダストリアルロック”な「Turn To Dust」、ヒップホップの香りがするポップチューン「Slang」、グランジ的なシンプルな構成とモノトーンな味付けの「All I Want Is Everything」、グランジというよりもU2に近いものを感じる「Work It Out」、どこか当時流行のR&Bバラードに通ずるものがある「Breathe A Sigh」と、とにかく前半は驚きの連続。「Photograph」「Pour Some Sugar On Me」「Love Bites」を求める従来のファンを、まるで拒絶するかのような楽曲の数々に、そりゃあ虚説反応を示したくもなりますよね。

しかし後半になると、音は完全にグランジだけど彼ららしいメロディを持つ「Deliver Me」やもっとも従来のDEF LEPPARDに近い(けど味付けは現代的)「Gift Of Flesh」を筆頭に、音数に少なさに改めて驚かされるバラード「Blood Runs Cold」、サウンド的には『ADRENALIZE』以前の作品に入っていたとしても許容範囲ないなスローナンバー「Where Does Love Go When It Dies」、そしてドゥーミーなツェッペリン的ミディアムヘヴィナンバー「Pearl Of Euphoria」と、作風こそ現代的ですが意外と従来のDEF LEPPARDに近いものが感じられる楽曲たちが並びます。

そう考えると、序盤に新たな挑戦を並べて旧来のファンを振り落としていき、進めば進むほど彼らが本来持ち合わせるカラーへと戻っていく……そんな「聴く者を試す」1枚となっているのではないでしょうか。それくらい、当時の彼らは以前の自分たちの色を払拭させたかった、偏見なしに音で評価してほしかったのかもしれません。それがやりすぎだったとしても……。

ちなみに僕、当時からこのアルバムに関しては両手を上げて絶賛する派です。本作を携えた来日でも、武道館公演を複数観てますし、ジョー・エリオット(Vo)がライブでNIRVANA「Come As You Are」やOASIS「Live Forever」の弾き語りをしたのを観て微笑ましい気持ちになったことも、昨日のことのように覚えています。

なお、DEF LEPPARDは2014年に本作『SLANG』のデラックスエディションを自身のレーベルから発表しており、そこには『SLANG』収録曲の未発表バージョンなどが多数含まれています。正直、このバージョンだけでエントリー1本分語れるので、次回は続編としてこのデラックス版について紹介したいと思います。



▼DEF LEPPARD『SLANG』
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投稿: 2017 12 06 12:00 午前 [1996年の作品, Def Leppard] | 固定リンク

2017年6月 5日 (月)

DEF LEPPARD『THE DEF LEPPARD E.P.』(1979)

DEF LEPPARDがメジャーデビュー前の1979年1月、自主レーベルから発表した3曲入りEP(レコーディングは前年1978年11月に実施)。当時のメンバーはジョー・エリオット(Vo)、ピート・ウィリス(G)、スティーヴ・クラーク(G)、リック・サヴェージ(B)の4人で、ドラムにはセッションメンバーとしてフランク・ヌーンが参加。本作完成後に当時15歳だったリック・アレンが加わり、メジャーデビュー時のメンバーが揃うことになります。

本作に収録されているのは「Ride Into The Sun」「Getcha Rocks Off」(以上A面)、「The Overture」(B面)の3曲で、「Getcha Rocks Off」と「The Overture」はのちの1stアルバム『ON THROUGH THE NIGHT』(1980年)で再レコーディング(その際、「Getcha Rocks Off」は「Rocks Off」、「The Overture」は「Overture」と改題)。「Ride Into The Sun」も4thアルバム『HYSTERIA』(1987年)からのシングルでカップリング曲として再録音され、のちにコンピレーションアルバム『RETRO ACTIVE』(1993年)に収録されているので、楽曲自体はこれまでも聴くことはできました(オリジナルの「Getcha Rocks Off」のみ、METALLICAのラール・ウルリッヒ企画によるNWOBHMコンピ『NEW WAVE OF BRITISH HEAVY METAL '79 REVISITED』でCD化済み)。

しかし、当時アナログ盤で限定リリースされた本作。その後もファンの間では高値で取引されていましたが、2017年4月のレコードストアデイでアナログ盤が限定再発され、より手軽に楽しむことができるようになりました。

セルフプロデュースということもあり、そのサウンドの荒々しさはのちの『ON THROUGH THE NIGHT』以上。初めて『ON THROUGH THE NIGHT』を聴いたときも、以降の『PYROMANIA』(1983年)や『HYSTERIA』と比較すればラフ以外の何物でもありませんでしたが、この『THE DEF LEPPARD E.P.』 収録の3曲はそれ以上。HR/HMというよりもガレージバンドの勢いといいましょうか、とにかく「ここから何かが始まり、ハジけようとしている」感がひしひしと感じられます。

本作を聴いてしまうと、「Ride Into The Sun」ものちの再録音バージョンよりもカッコ良く聞こえるし、『ON THROUGH THE NIGHT』中でもかなりアグレッシヴだと思っていた「Rocks Off」も原曲の「Getcha Rocks Off」のほうがよりパンキッシュだし。かと思えば、「The Overture」の時点でその後のプログレッシヴな作風の片鱗を見せていたのだと改めて驚かされたり。ここから始まったというよりも、「開始前夜」という表現のほうがぴったりな1枚ではないでしょうか。



▼DEF LEPPARD『THE DEF LEPPARD E.P.』
(amazon:海外盤アナログ / MP3

投稿: 2017 06 05 12:00 午前 [1979年の作品, Def Leppard] | 固定リンク

2017年3月27日 (月)

DEF LEPPARD『ADRENALIZE』(1992)

1991年1月8日、DEF LEPPARDのギタリスト、スティーヴ・クラークが亡くなりました。当時は小さいながらも新聞記事にもなったし、bayfm『POWER ROCK TODAY』では4時間まるまる追悼特集を組んだほどでした。DEF LEPPARDは当時、1987年夏発売の4thアルバム『HYSTERIA』に続く新作を制作している途中でしたが、これにより作業は一時中断。1983年の3rd『PYROMANIA』発売から『HYSTERIA』が完成するまでも、リック・アレン(Dr)が交通事故で片腕を失う悲劇が起こりましたが、まさか二度も大きな不幸が訪れることになろうとは……。

その後、バンドはスティーヴの代役を立てずにフィル・コリン(G)がすべてのギターパートを担当。こうして1992年春に完成したのが前作から4年ぶりの新作『ADRENALIZE』でした。

当時だけで全米で700万枚近くも売り上げた『PYROMANIA』、そして『PYROMANIA』をさらに上回る1000万枚に到達した『HYSTERIA』とメガヒットアルバムが2枚も続いたいあとだけに、プレッシャーは相当なものがあったと思います。しかもソングライターのひとりでバンドの初期メンバーを最悪の形で失ったあとだけに、バンドはどんな思いで制作と向き合ったのか……新曲を耳にするまでは、こちら側にもそんな不安がたくさんありました。が、先行シングルにしてアルバムのオープニングトラック「Let's Get Rocked」はそんな負の要素が一切感じられない、ひたすらポジティブさに満ちあふれた1曲でした。これには、きっと多くのHR/HMファンが驚かされたんじゃないでしょうか。

『HYSTERIA』ほど緻密に作り込まれた感じではなく、かといって『PYROMANIA』みたいに生々しいロックサウンドというわけでもない。スティーヴに捧げた7分超のエピック「White Lightning」はあるものの、ほかは1曲1曲が非常にコンパクトで、全10曲(日本盤ボーナストラック2曲を除く)で44分程度。12曲で60分超えだった『HYSTERIA』とはある種相反する作風かもしれません。思えば、時代はすでにグランジ時代に突入したタイミング。パンキッシュで生々しくてコンパクトな方向へと突き進み始めた時代の変わり目に、DEF LEPPARDがこういう“らしくて、らしくない”作品を発表し、それが英米1位を獲得してしまったのは、今となっては非常に面白い話です。

そういえば、本作収録の「Tonight」は前作『HYSTERIA』制作中には存在した楽曲だというし、「Heaven Is」「Make Love Like A Man」「Stand Up (Kick Love Into Motion)」「I Wanna Touch U」「Tear It Down」にはスティーヴの名前もクレジットに入っている。そりゃあ『HYSTERIA』にも通ずる色合いがあるよなと。だけど、バンドは次のフェーズに進みたがった。そういう意味においては、この『ADRENALIZE』はメガバンドDEF LEPPARDにおける過渡期の1枚なのかもしれません。真の意味での新章は、本作完成後に加入したヴィヴィアン・キャンベルと一緒に制作した次作『SLANG』(1996年)から始まるわけです。



▼DEF LEPPARD『ADRENALIZE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤2CD / MP3

投稿: 2017 03 27 12:00 午前 [1992年の作品, Def Leppard] | 固定リンク

2017年1月 9日 (月)

祝ご成人(1996年4月〜1997年3月発売の洋楽アルバム20枚)

新成人の皆さん、おめでとうございます。2014年度に初めて実施したこの企画、今回で3回目を迎えます。今年も新成人の皆さんが生まれた年(学年的に1996年4月〜1997年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れがある作品を20枚ピックアップしました。どれも名盤ばかりなので、もし聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にお手にしてみてはいかがでしょうか。とは言いながらも大半が名盤中の名盤なので、聴いたことがあるものばかりかもしれませんが。

作品の並びはすべてアルファベット順です。(2014年度の新成人編はこちら、2015年度の新成人編はこちらです)


ATARI TEENAGE RIOT『THE FUTURE OF WAR』(Amazon

BECK『ODELAY』(Amazon

BLUR『BLUR』(Amazon)(レビュー

DEF LEPPARD『SLANG』(Amazon)(レビュー

THE HELLACOPTERS『SUPERSHITTY TO THE MAX!』(Amazon)(レビュー

HONEYCRACK『PROZAIC』(Amazon)(レビュー

KORN『LIFE IS PEACHY』(Amazon)(レビュー

KULA SHAKER『K』(Amazon)(レビュー

MANIC STREET PREACHERS『EVERYTHING MUST GO』(Amazon)(レビュー

MANSUN『ATTACK OF THE GREY LANTERN』(Amazon)(レビュー

MARILYN MANSON『ANTICHRIST SUPERSTAR』(Amazon)(レビュー

METALLICA『LOAD』(Amazon)(レビュー

OCEAN COLOUR SCENE『MOSELEY SHOALS』(Amazon

PANTERA『THE GREAT SOUTHERN TRENDKILL』(Amazon)(レビュー

RAGE AGAINST THE MACHINE『EVIL EMPIRE』(Amazon

REEF『GLOW』(Amazon)(レビュー

SUEDE『COMING UP』(Amazon

TOOL『AENIMA』(Amazon)(レビュー

U2『POP』(Amazon)(レビュー

WEEZER『PINKERTON』(Amazon)(レビュー


残念ながらセレクトから漏れた作品も多いです。以下、主だった作品をざっと羅列します。

AEROSMITH『NINE LIVES』(レビュー
ALICE IN CHAINS『UNPLUGGED』
ARCH ENEMY『BLACK EARTH』(レビュー
ASH『1977』
BEN FOLDS FIVE『WHATEVER AND EVER AMEN』
THE BLACK CROWES『THREE SNAKES AND ONE CHARM』
THE BOO RADLEYS『C'MON KIDS』
BJORK『TELEGRAM』
BRYAN ADAMS『18 TIL I DIE』
BUSH『RAZORBLADE SUITCASE』
CARCASS『SWANSONG』
THE CARDIGANS『FIRST BAND ON THE MOON』
THE CURE『WILD MOOD SWINGS』
DAFT PUNK『HOMEWORK』
DAVID BOWIE『EARTHLING』
DINOSAUR JR.『HAND IT OVER』
ELVIS COSTELLO & THE ATTRACTIONS『ALL THIS USELESS BEAUTY』
FIONA APPLE『TIDAL』
FOUNTAINS OF WAYNE『FOUNTAINS OF WAYNE』
GEORGE MICHAEL『OLDER』
HELMET『AFTERTASTE』
IMPERIAL DRAG『IMPERIAL DRAG』
JAMIROQUAI『TRAVELLING WITHOUT MOVING』
JOURNEY『TRIAL BY FIRE』
LUSCIOUS JACKSON『FEVER IN FEVER OUT』
MACHINE HEAD『THE MORE THINGS CHANGE...』
MANOWAR『LOUDER THAN HELL』
MATTHEW SWEET『BLUE SKY ON MARS』
MICHAEL SCHENKER GROUP『WRITTEN IN THE SAND』
NIRVANA『FROM THE MUDDY BANKS OF THE WISHKAH』(レビュー
PATTI SMITH『GONE AGAIN』
PEARL JAM『NO CODE』(レビュー
PET SHOP BOYS『BILINGUAL』
PRINCE『EMANCIPATION』
R.E.M.『NEW ADVENTURES IN HI-FI』
ROLLINS BAND『COME IN AND BURN』
RUSH『TEST FOR ECHO』
SCORPIONS『PURE INSTINCT』
SLAYER『UNDISPUTED ATTITUDE』
SLOAN『ONE CHORD TO ANOTHER』
SOUNDGARDEN『DOWN ON THE UPSIDE』(レビュー
STEVE VAI『FIRE GARDEN』
STRAPPING YOUNG LAD『CITY』
SUPER FURRY ANIMALS『FUZZY LOGIC』
VERUCA SALT『EIGHT ARMS TO HOLD YOU』
ZAKK WYLDE『BOOK OF SHADOWS』
THE WiLDHEARTS『FISHING FOR LUCKIES (East West Version)』(レビュー
ZZ TOP『RHYTHMEEN』


1995年から1996年初頭がブリットプップの最盛期と昨年のブログに書きましたが、続く1996年から1997年にかけてはその最盛期から末期に向かっていく過程。BLURが1997年初頭に発表したセルフタイトルアルバムが「ブリットポップの終焉」を決定づけたのは間違いないでしょう。KULA SHAKERやMANSUNのデビュー作、MANICS、OCS、REEFの諸作、そして選外でしたがASHのデビュー作などはその末期に輝いた傑作だと思っております。

そして、アメリカではRATM、KORN、TOOL、MARILYN MANSONのブレイクにより新たなヘヴィロックシーンが確立されるタイミング。と同時に、ベックやWEEZERといったアーティストたちも新たなオルタナシーンを築き上げておりました。その一方で、METALLICAやDEF LEPPARDといった大御所たちが迷走していたのも、このタイミングの面白いところ。それぞれピックアップした作品は、各バンドのキャリアの中でも迷作扱いされることの多いものですが、今聴くと意外と悪くないから不思議。今回選出した動画20曲の中に混じっても、実はあまり違和感がない音楽性だったりします。面白いもんですね。

あ、1997年に入ると同時にU2が『POP』を出したり、ATRの2ndアルバムが話題になったりと、新たな可能性が見え始めたのも興味深いですね。

ちなみに日本での1996年4月〜1997年3月といいますと、TK作品のチャート独占やプリンセス・プリンセスの解散、米米CLUBの解散発表(ラストライブは翌年)、TMRやPUFFY、ELT、SPEEDのデビューなど、音楽産業的にもピークを迎えつつあった時期でした。

最後に。ここではピックアップしませんでしたが、1996年で特に印象に残っているのは「恋のマカレナ」と「Wannabe」です。



▼SPICE GIRLS『SPICE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 01 09 12:00 午前 [1996年の作品, 1997年の作品, Atari Teenage Riot, Beck, Blur, Def Leppard, Hellacopters, The, Honeycrack, Korn, Kula Shaker, Manic Street Preachers, Mansun, Marilyn Manson, Metallica, Ocean Colour Scene, Pantera, Rage Against The Machine, Reef, Suede, Tool, U2, Weezer, 「20年前」] | 固定リンク

2017年1月 8日 (日)

個人的に気になるメタル系職業作家15選

先日KIX『BLOW MY FUSE』を紹介した際、知人が文中に登場したテイラー・ローズやボブ・ハリガンJr.といった職業作家に興味を持ったらしく、「デズモンド・チャイルドやホリー・ナイトあたりは調べたことあるんですが、メタル職業作家の存在すごく気になります」というコメントをいただきました。

実際、80年代後半以降、特にBON JOVIやAEROSMITHの大ヒット以降こういった職業作家の存在はメタル系アーティストにとっても欠かせない存在になっています。90年代に入ると、SCORPIONSやオジー・オズボーンといった大御所ですら採用し始めるわけですからね。それまでバンドの力だけですべてをまかなおうとしていたところ、「もっといい曲を!」というバンド自身の姿勢から積極的に、もしくはレコード会社からの圧力からイヤイヤこういったアクションに行動を移すようになったのかもしれません。

また、職業作家の楽曲をアーティストが取り上げるケースには幾つかのパターンがあり、


①作家が以前発表した楽曲をカバー。
②作家とアーティストが共作(アーティストが書いた楽曲をテコ入れする、あるいは逆のケース)。
③プロデューサーとして制作に加わり、楽曲制作にも携わる。
④作家が書いた新曲をそのまま取り上げる。


の4つが考えられるかと。現在のメタルシーンでは多くの場合②が主流だと思いますが、まれに③で大ヒットを飛ばすケースも見受けられます(AEROSMITHの「I Don't Want To Miss A Thing」など)。

そこで今回は、CDのブックレットでよく目にする作家さんをピックアップしつつ、その中から個人的にピンとくる方々をここで紹介。作家の特性を上記の①〜④で分類し、代表曲な楽曲を紹介していきたいと思います。


<70年代〜>

●ラス・バラード(特性:①②)
この人の場合は楽曲提供というよりも、彼が自身のバンドや他のアーティストに提供した曲をメタル系アーティストがカバーしたことにより、その名が知られるようになったと言ったほうがいいかもしれません。きっかけはグラハム・ボネット期のRAINBOWがカバーした「Since You Been Gone」ですよね。RAINBOWは続くジョー・リン・ターナー期にも「I Surrender」をカバーしてますし。そのRAINBOWの数年前に、当時KISSのエース・フレーリーもラス・バラッド作「New York Groove」をカバーして全米トップ20入りのヒットを記録。KISS自身も90年代に「God Gave Rock And Roll To You」を「God Gave Rock And Roll To You II」と改題してカバーしてますしね。それと今回いろいろ調べて初めて気づいたのですが、NIGHT RANGERが最初の解散前に発表したアルバム『MAN IN MOTION』からのリード曲「I Did It For Love」もラス・バラッド作。加えて、これも全然気にしてなかったんですが、BAD ENGLISHのラストアルバム『BACKLASH』収録曲「So This Is Eden」はジョン・ウェイト(Vo)、ジョナサン・ケイン(Key)との共作曲。時代的に90年代に入ってからの作品なので、世の中的に職業作家との共作が当たり前になった時期にそれまでのカバーとは違った形でのコラボレーションが実現したわけです。

代表作品:ACE FREHLEY「New York Groove」「Into the Night」、BAD ENGLISH「So This Is Eden」、GRAHAM BONNET「Liar」「S.O.S.」、KING KOBRA「Dream On」、KISS「God Gave Rock And Roll To You II」、NIGHT RANGER「I Did It For Love」、PETER CRISS「Let Me Rock You」「Some Kinda Hurricane」、RAINBOW「Since You Been Gone」「I Surrender」


●リチャード(リッチー)・スパ(特性:①②④)
AEROSMITH「Chip Away The Stone」の作者として知られる彼は、もともとソングライター兼ギタリストとして活動していたアーティスト。ソロアーティストとして70年代にアルバムも発表しており、この中からジョニー・ウィンターが「Stone County Wanted Man」をカバーしています。また、エアロにはその後も楽曲提供を幾つかしているだけでなく、ジョー・ペリーが脱退した際にはレコーディングにも参加(1979年のアルバム『NIGHT IN THE RUTS』収録の「No Surprize」「Mia」)。それ以外に目立った共演は、元BON JOVIのリッチー・サンボラの2ndソロアルバム『UNDISCOVERD SOUL』での共作ぐらい。メタル系以外では、P!NKやMIKAといったアーティストにも楽曲提供しています。

代表作品:AEROSMITH「Chip Away The Stone」「Lightning Strikes」「Amazing」「Pink」、OZZY OSBOURNE「Back On Earth」、RICHIE SAMBRA「Hard Times Come Easy」


<80年代〜>

●ジム・ヴァランス(特性:②)
この人はブライアン・アダムスとの共作者としての印象が強いですが、そのブライアンと一緒に書いた2曲がKISS『CREATURES OF THE NIGHT』に収録されたのが、メタル系との最初の接触でしょうか。その後、80年代半ばにはHEART「What About Love」の全米ヒットを皮切りに、AEROSMITH「Rag Doll」を機にエアロとの仕事が増えていきます。ちょうど80年代後半になると、ブライアンとジムの関係も一時的に疎遠になり、メタルのみならず幅広いジャンルのアーティストと共作を重ねていきます。

代表作品:AEROSMITH「Rag Doll」「Eat The Rich」、ALICE COOPER「Die For You」「Lullaby」、HEART「What About Love」、KISS「War Machine」、OZZY OSBOURNE「I Just Want You」、SCORPIONS「Tease Me Please Me」


●デズモンド・チャイルド(特性:②③④)
BON JOVI「You Give Love A Bad Name」「Livin' On A Prayer」でのイメージが強い彼ですが、実は70年代末にKISS「I Was Made For Lovin' You」をポール・スタンレー、ヴィニ・ポンシア(KISS作品でのコラボレーションが有名なソングライター)と共作しています。なので、上の世代の方々はBON JOVIがヒットした際に「KISSのラヴィン・ユー・ベイビーの人」と思ったかもしれません。BON JOVIでの大成功後、AEROSMITH、アリス・クーパーから引っ張りだこ。そのすべての楽曲がヒットにつながっています。興味深いところではRATTの5thアルバム『DETONATOR』のプロデュースおよび楽曲制作、DREAM THEATERへの楽曲提供といったものもあります。また、HR/HM以外にもジョーン・ジェット「I Hate Myself for Loving You」、リッキー・マーティン「Livin' la Vida Loca」、ZEDD「Beautiful Now」、WEEZER「Trainwrecks」といったところでも名前をみかけます。

代表作品:AEROSMITH「Dude (Looks Like A Lady)」「Angel」「Crazy」、ALICE COOPER「Poison」、BON JOVI「You Give Love A Bad Name」「Livin' On A Prayer」「Bad Medecine」、DREAM THEATER「You Not Me」、KISS「I Was Made For Lovin' You」「Heaven's On Fire」、MEAT LOAF「The Monster Is Loose」、RATT「Shame Shame Shame」「Lovin' You's A Dirty Job」、RICHIE SAMBRA「Rosie」


●ダイアン・ウォーレン(特性:②④)
カナダ出身の女性ソングライターで、80年代前半から作家としての活動を開始。最初にヒット曲はローラ・ブラニガン「Solitaire」でした。メタル系では80年代後半、HEART「Who Will You Run To」、BON JOVI「Wild Is The Wind」あたりで最初に名前を目にするようになったと記憶しています。が、メタルシーン彼女の名が本当の意味で知られるようになるのは、その10数年後に発表された映画『アルマゲドン』のテーマソングであるAEROSMITH「I Don't Want To Miss A Thing」でのこと。このインパクトは強かったと思います。しかし、非メタルシーンではホイットニー・ヒューストン、ビヨンセ、マライア・キャリーといったアーティストへの楽曲提供ですでにキャリアを積んでおり、中でも「Because You Loved Me」をはじめとするセリーヌ・ディオンとのヒットは「I Don't Want To Miss A Thing」と同じくらい大きなものでした。

代表作品:AEROSMITH「I Don't Want To Miss A Thing」「We All Fall Down」、ALICE COOPER「Bed Of Nails」、BON JOVI「Wild Is The Wind」「Thank You For Loving Me」、CHEAP TRICK「Ghost Town」「Wherever Would I Be」、HEART「Who Will You Run To」「I Didn't Want To Need You」、KISS「Turn On The Night」、MEAT LOAF「I'd Lie For You (And That's The Truth)」「Not A Dry Eye In The House」、RICHIE SAMBRA「Rosie」


●ホーリー・ナイト(特性:②④)
ダイアン・ウォーレンと同時期に名前を目にする機会が増えた、同じく女性ソングライター。そして、自身もシンガーとしての活動をしています。ティナ・ターナーやパット・ベネターといったポップ/ロック系を経て、HR/HM系ではHEART「Never」が最初だったのかな。そこからAEROSMITH「Rag Doll」、BON JOVI「Stick To Your Guns」でメンバーや他の職業作家と共作を繰り広げます。CHEAP TRICKやKISS、オジー、MEAT LOAFといった面々から想像される、ポップで親しみやすい楽曲作りがメイン。とはいえ、OTEPといったモダンラウド系へも楽曲提供しているから、なかなかあなどれません。

代表作品:AEROSMITH「Rag Doll」、BON JOVI「Stick To Your Guns」、CHEAP TRICK「Space」、HEART「Never」「There's The Girl」、KISS「Hide Your Heart」「I Pledge Allegiance To The State Of Rock & Roll」「Raise Your Glasses」、LITA FORD「Stiletto」、LOU GRAMM「Just Between You and Me」、MEAT LOAF「Monstro」「Alive」、OTEP「Perfectly Flawed」「UR A WMN NOW」、OZZY OSBOURNE「Slow Burn」、PAUL STANLEY「It's Not Me」


●ロバート・ジョン・マット・ラング(特性:②③④)
ソングライターというよりもプロデューサーのイメージが強い存在ですよね。古くはAC/DCやFOREIGNER、そしてDEF LEPPARD、90年代にはブライアン・アダムス、2000年代はNICKELBACKやMUSE、さらにはLADY GAGAあたりも手掛けております。主にDEF LEPPARDのメガヒット作『HYSTERIA』において、全曲にクレジットされているところから、曲作りの面においてもある程度コントロールしながらプロデュースしていくタイプなんでしょうね。他にはHEART、LOVERBOYの楽曲制作にも携わっているようです。

代表作品:DEF LEPPARD『HYSTERIA』全曲、「Promises」「It's Only Love」、HEART「All I Wanna Do Is Make Love To You」「Will You Be There (In The Morning)」、LOVERBOY「Lovin' Every Minute Of It」


●ジャック・ポンティ(特性:②③④)
BON JOVIのデビュー作に収録された「Shot Through The Heart」でその名を目にして以降は、BONFIRE、DORO、KEELとB級バンドとの仕事が多いイメージ。90年代に入るとNELSON、アリス・クーパーへの楽曲提供で再びその名を目にするようになります。彼自身はプロデューサー業も行っており、BATON ROUGEやDOROといった正統派からKITTIE、OTEPなどのモダン系まで幅広く手掛けています。

代表作品:ALICE COOPER「Hey Stoopid」「Love's A Loaded Gun」、BABYLON A.D.「The Kid Goes Wild」、BATON ROUGE「The Price Of Love」、BONFIRE「Sweet Obsession」「Hard On Me」、BON JOVI「Shot Through The Heart」、DORO「Eye On You」「Ceremony」、KEEL「Somebody's Waiting」、NELSON「We Always Want What We Can't Get」


●ボブ・ハリガン・Jr.(特性:②④)
自身もシンガーとして活動するソングライター。メタル系アーティストへの楽曲提供がメインで、JUDAS PRIESTのアルバム『SCREAMING FOR VENGEANCE』に収録された「(Take These) Chains」で始めてその名を目にした人がほとんどでは? プリーストには次作でも「Some Heads Are Gonna Roll」を提供したほか、ロブ・ハルフォードのHALFORDにも「Twist」を提供しています。また、80年代末にKIX「Don't Close Your Eyes」のヒットによって、さらに知名度を高めることに成功。90年代には自身のソロアルバムも2枚制作しているようです。

代表作品:BLUE OYSTER CULT「Beat 'Em Up」「Make Rock Not War」、BONFIRE「Bang Down The Door」、HALFORD「Twist」、HELIX「Rock You」、ICON「Danger Calling」、「Raise The Hammer」、JUDAS PRIEST「(Take These) Chains」「Some Heads Are Gonna Roll」、KISS「Rise to It」「Read My Body」、KIX「Midnite Dynamite」「Don't Close Your Eyes」


<90年代〜>

●テイラー・ローズ(特性:②④)
88年発売のKIX「Cold Blood」でその名を目にしたのが最初で、本格的に活躍し始めたのは90年代に入ってから、AEROSMITHとのコラボレーションが活発化して以降のこと。「Cryin’」というヒットシングルがひとつのきかっけになったことは間違いありません。

代表作品:AEROSMITH「Cryin'」「Blind Man」「Full Circle」、CHEAP TRICK「Back 'n Blue」、JOURNEY「All The Way」、KIX「Cold Blood」「Hot Wire」、LOVERBOY「Love Will Rise Again」、OZZY OSBOURNE「Back On Earth」、TORA TORA「Amnesia」「Faith Healer」、Y&T「Contagious」


●マーク・ハドソン(特性:②③)
シンガーソングライター、TVパーソナリティなどを経て、プロデューサーや職業作家としての道を進み始めます。AEROSMITH「Livin' On The Edge」でその名を広く知らしめ、グラミー賞も受賞しました。エアロとの仕事はアルバム『JUST PUSH PLAY』でスティーヴン・タイラー&ジョー・ペリー、次に触れるマーティ・フレデリクセンとのチームで「Boneyard Boys」と名乗り、プロデュースやソングライティングを行いました。他にはアリス・クーパー、オジー・オズボーン、BON JOVI、SCORPIONSと大御所ばかりと共作。他にはリンゴ・スターとのコラボレーションも有名どころです。

代表作品:AEROSMITH「Livin' On The Edge」「Gotta Love It」「The Farm」、ALICE COOPER「Cleansed by Fire」、BON JOVI「Two Story Town」、OZZY OSBOURNE「Ghost Behind My Eyes」「Denial」、SCORPIONS「No Pain No Gain」


●マーティ・フレデリクセン(特性:②③)
AEROSMITHのアルバム『NINE LIVES』で頭角を表して以降、同バンドとのコラボレーションを重ねていきます。上のマーク・ハドソンでも触れたように、スティーヴン・タイラー&ジョー・ペリー、マーク・ハドソンとの4人で「Boneyard Boys」というチームで、続くアルバム『JUST PUSH PLAY』のプロデュースやソングライティングも手掛けました。以降はBUCKCHERRY、MOTLEY CRUE、DAUGHTRYなどへの楽曲提供、DEF LEPPARD『X』のミキシングといったHR/HM系仕事のほか、キャリー・アンダーウッド、フェイス・ヒルとの共作でも知られています。

代表作品:AEROSMITH「Nine Lives」「Jaded」「Fly Away from Here」「Sunshine」、BUCKCHERRY「Next 2 You」「Sorry」、THE CULT「Breathe」、DAUGHTRY「Crawling Back To You」「Outta My Head」、JAMES DURBIN「Higher Than Heaven」「Love Me Bad」、MOTLEY CRUE「Saints of Los Angeles」「Mutherfucker Of The Year」、OZZY OSBOURNE「Dreamer」「That I Never Had」、RICHIE SAMBRA「Who I Am」、SCORPIONS「10 Light Years Away」「We Were Born To Fly」、STEVEN TYLER「(It) Feels So Good」


●グレン・バラッド(特性:②③)
この人は90年代中盤、アラニス・モリセット『JAGGED LITTLE PILL』のプロデュース&楽曲制作で一気に名を馳せることになりますが、それ以前にもソングライターやミュージシャン、プロデューサーとしてマイケル・ジャクソン、ポーラ・アブドゥル、WILSON PHILLIPSなどの代表作に参加して経験を積んできました。アラニスの成功により、AEROSMITHが1997年のアルバム『NINE LIVES』のプロデューサー兼コラボレーターとして白羽の矢を立てるのですが、その内容に納得できずに制作途中でコラボを解消。結果的には一部の楽曲をケヴィン・シャーリーのプロデュースで再録音したり新たに楽曲を書き足したりして、現在の形にまとまるという、エアロファンには忘れられない事件を引き起こします。以降、HR/HM系アーティストとの共作はほとんどなく、エアロ以前にVAN HALENにデイヴ・リー・ロスが一時復帰した際の新曲に携わった程度でしょうか。本来ならここで取り上げるまでもない存在なのですが、トピック的に面白かったので残してみました。

代表作品:AEROSMITH「Falling in Love (Is Hard on the Knees)」「Taste of India」「Pink」、VAN HALEN「Me Wise Magic」「Can't Get This Stuff No More」


<2000年代〜>

●アンドレアス・カールソン(特性:②)
スウェーデン出身のプロデューサー、ソングライター。現在40代前半と、上記の作家陣と比べると若手の部類に入ります。ということで、彼が活躍し始めたのも2000年前後から。一番の出世作はBACKSTREET BOYS「I Want It That Way」でしょうか。彼はブリトニー・スピアーズやWESTLIFE、NSYNCと当時のアイドルを手がけることが多かったのも特徴です。そういったポップフィールドでの活躍が評価されて、2002年にBON JOVIがアルバム『BOUNCE』で「Everyday」「Misunderstood」など、DEF LEPPARDがアルバム『X』で「Unbelievable」を共作します。同じタイミングにこの2バンドが彼を採用したことで、僕も印象に残っていました。HR/HM系では他にもポール・スタンレーのソロアルバム『LIVE TO WIN』、EUROPEの異色作『LAST LOOK AT EDEN』にも参加しています。

代表作品:BON JOVI「Everyday」「Misunderstood」「All About Lovin' You」、DEF LEPPARD「Unbelievable」、EUROPE「Last Look At Eden」「New Love in Town」、PAUL STANLEY「Live To Win」「Wake Up Screaming」「Bulletproof」


●ジェイムズ・マイケル(特性:②③)
プロデューサーやソングライターとしてより、現在はニッキー・シックス(元MOTLEY CRUE)とのバンド、SIXX: A.M.のフロントマンとして有名かな。さまざまなバンドを経て、2000年にソロデビュー。ちょうどこのころにニッキー・シックスと出会い、MOTLEY CRUEのトミー・リー不在アルバム『NEW TATTOO』にソングライターとして参加します。以降は同じくニッキーが参加したBRIDES OF DESTRUCTION、そしてSIXX: A.M.へと続いていくわけです。他にはPAPA ROACH、HALESTORM、ジェイムズ・ダービンといったモダンなアーティストのほか、SCORPIONS、MEAT LOAFなどの大御所との共演も実現しています。またプロデューサー/エンジニアとしてはHAMMERFALLのアルバムも手掛けています。

代表作品:BRIDES OF DESTRUCTION「Brace Yourself」「Natural Born Killers」、HALESTORM「Private Parts」、JAMES DURBIN「Higher Than Heaven」、MEAT LOAF「Couldn't Have Said It Better」「Did I Say That?」、MOTLEY CRUE「New Tattoo」「Sick Love Song」「Saints of Los Angeles」、PAPA ROACH「I Almost Told You That I Loved You」、SCORPIONS「Hour I」、SIXX: A.M.「Life Is Beautiful」「Lies of the Beautiful People」「Gotta Get It Right」


以上、15名を独断と偏見で挙げてみました。やはり80年代中盤、アメリカでHR/HMが大ヒットしたことがメタル系職業作家の繁栄につながったと言って間違いなさそうですね。正直2000年代以降はどういった人たちが主流なのかいまいち調べきれず、こういう形になってしまいました。

改めて思ったのは、BON JOVIやAEROSMITHといった先駆者たち、そしてオジーやSCORPIONSなどの大御所アーティストが新作を出すたびにクレジットに注目しておくのが、一番手っ取り早いなと思いました。

そういう意味でも、この(↓)アルバムは歴史を変えた重要な1枚かもしれませんね。



▼BON JOVI『SLIPPERY WHEN WET』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 01 08 12:00 午後 [Aerosmith, Alice Cooper, Bon Jovi, Buckcherry, Def Leppard, Europe, Heart, Kix, Night Ranger, Ozzy Osbourne, Richie Sambora, Scorpions, Sixx:A.M., Van Halen, 「分析ネタ」] | 固定リンク

2016年12月16日 (金)

DEF LEPPARD『DEF LEPPARD』(2015)

ブライアン・アダムス『WAKING UP THE NEIGHBOURS』について語っていたら、続いてDEF LEPPARDのことも書いてみたくなったので、昨年発売された最新アルバム『DEF LEPPARD』についてもレビューしてみたいと思います。

スタジオアルバムとしては2008年の『SONGS FROM THE SPARKLE LOUNGE』以来7年ぶりとなる今作は、デビューから所属したメジャーレーベルのMercury Recordsを離れて最初の新作。よくDEF LEPPARDはオリンピックイヤーに(4年に1枚)アルバムを出すなんて揶揄されてきましたが、今回は過去最長の7年というブランク。とはいえ、バンドはその間に毎年のようにツアーを行っていましたし、2011年には新曲を含むライブアルバム『MIRROR BALL』、2013年には代表作『HYSTERIA』の完全再現ライブの模様を収めたライブアルバム『VIVA! HYSTERIA』も発表しているので、そこまで空いたという感覚がないのも事実。2008年、2011年にはそれぞれ来日公演も敢行されましたし、人によっては7年というブランクに驚くかもしれません。

この7年の間に、音楽産業も大きな変化を遂げました。それにより、80〜90年代にパッケージをバカスカ売り上げていたDEF LEPPARDのようなバンドにとってかなり厳しい時代に突入しました。そんな時代に、彼らがニューアルバムをパッケージでリリースする意味はあるのだろうか。おそらく僕ら以上に当のメンバーはよりそんなことを考えたのではないでしょうか。

しかし、彼らはそんな不安を払拭するような傑作を作り上げた。しかもアルバムタイトルに堂々とバンド名を冠した、自信作を。外部ソングライターを一切入れず、気心知れた面々だけで制作された本作は、『PYROMANIA』や『HYSTERIA』ほどの緻密さはなく、適度なラフさを伴っています。楽曲のタイプ的には先の2作をより深化させたものに、バンドのルーツを感じさせるブリティッシュロック/ポップの流れにあるものばかり。1曲1曲が比較的聴きやすい長さで、全14曲中2分台が2曲、3分台が6曲、4分台が3曲、5分台が3曲で計52分。過去の作品には6分を超える大作が1曲は入っていましたが、今回は極力無駄なアレンジを排除しているのも印象的です。

40年近くバンドを続け、セールスという点では満足行くほどのヒット作を連発した。メンバーに不幸が出来事が続いたし(本作制作中に発覚したいヴィヴィアン・キャンベルのガンもそのひとつ)、この先あと何年今の活動を続けられるのか……そう考えたときに、リラックスして好きなものを作るという答えたに到達した。それが今作だったのではないでしょうか。

個人的には昨年のベスト10枚に選出はしませんでしたが、そこに限りなく近い位置にある1枚なのは間違いありません。だって、リリースから1年以上経ってもいまだに聴いているんですから。シンプルだからこそ飽きが来ない、いつ聴いても単純に楽しいと思える、そんなアルバムです。



▼DEF LEPPARD『DEF LEPPARD』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2016 12 16 03:00 午前 [2015年の作品, Def Leppard] | 固定リンク

2016年1月12日 (火)

Cybernauts日本公演(2000年1月8日/再掲)

※このライブレポートは2000年1月13日に「とみぃの宮殿」に掲載されたものを、加筆修正したものです。デヴィッド・ボウイ追悼の意味を込めて、再掲載したいと思います。


新世紀1発目となるライブが、後ろ向きとも言えるトリビュートバンドというのも何だかな。しかも相手はかのDef Leppardのフロントマン2人と、歴史的なバンドThe Spiders From Marsのリズム隊。70〜80年代の英国を代表する面々による、デヴィッド・ボウイ&ミック・ロンソンのトリビュートバンドだ。そして会場となるのは、一昨年10月に憧れのCheap Trickを観たあの忌まわしい横浜ベイホール……いい意味で解釈すれば「あんな小さい会場で憧れの人たちを観られる!」、悪く解釈すれば「またあそこまで行くのか……」という思いがよぎるわけだが。しかも当日、体調が悪いときたもんだ。正直、朝起きたときはどうしようか?と思ったものの、今思えば本当に行ってよかったと思えるだけの内容だった。そしてLeppsを切っ掛けにハードロックに目覚めた自分にとって、忘れられない1日にもなった。

当日は祝日ということもあって、普段より1時間早い開場/開演だった。僕は16時半過ぎに会場に着いたのだが、海の近くということもあって寒いのなんの。しかも前夜から当日朝にかけて初雪が降ったもんだから、余計に寒い。微熱を伴う僕にとってキツ過ぎる状況。そして217番というまずまずの整理番号だったのだが、ふと並んだ後ろを見ると……せいぜい50人程度といったところだろうか。しかも前にも明らかに200人は並んでいない。アルバムが年末リリースだったこともあって、それほど大々的にはプロモーションされなかったのだろうか。まあ翌日には東京公演があるのだから、こっちに来る人は余程のファンか、それとも平日公演が観られない地方の方々といったところだろう(自分含む)。トータルで300人前後。天下のDef Leppardのメンバーがいるにも関わらず……いや、ここ日本では彼らは英米での人気と比べたらそれほどでもないし。過去にも武道館追加公演で2階席が解放されなかったりなんてこともあったくらいだから。

会場に入ると、3列目前後真正面のポジションを確保。どうせ始まれば後ろから押されてより前に行けるだろう、そう思ったのだが……これは間違いだった。押されるほど、後ろに人がいない。せいぜい10列前後しかできていないのだ。フロア後方に行くくらいなら、一段高くなった柵より後ろに行けばいいという人が多かったようだ。結局ライブが始まっても後ろから押されることもなく、最後までそのポジションで快適に楽しめた。しかもステージから1メートルちょっとといった距離で、天下のLeppsのメンバーを観られるのだから……。

BGMのTeenage Fanclubで会場の空気が和む中、スタッフがステージに登場。「Pleaese welcome!~」っていう例のアナウンスを始め、その後に続々とメンバーが登場する。ボーカルのジョー・エリオットは黒のTシャツに牛柄のシャツ、黒のパンツというLeppsでのライブと何ら変わらぬ格好。ギターのフィル・コリンも基本的には普段と何ら変わらぬ格好だ。ウッディーは白い帽子を被っている以外には特に目立たない格好。というか、よく見えない。トレヴァーもシャツにジーンズという、アルバム内の写真と同じ服装で、キーボードのディックは見た目が「スキンヘッドのクラプトン」で思わず二度見。

そしてライブはスタート。選曲・曲順については最後のセットリストを確認してもらうとして……それにしても、この客席の“寒さ”は何なんだろう? いや、盛り上がってはいるんだけど、いかんせん客が少なすぎる。翌日のSHIBUYA-AXは結構な数入ったと聞くから、やっぱり場所的な問題なんだろう。見渡す限りではでデヴィッド・ボウイのファンやグラムロックファンは見受けられない。ということは、やはりここにいるほぼ全員がLeppsファンということになるのだけど……口をパクパク動かしてるわりには、歌声が聞こえてこないのが不思議だ。

ライブアルバムと違った点をいくつか挙げると‥‥①ミック・ロンソンのソロ曲が削られ、ボウイの曲が増えていた(『Aladdin Sane』から2〜3曲)、②完全にこの5人だけで再現しているため、ライブアルバムで聴かれたハーモニカ等は一切なし、③アルバムでは曲間を編集して短くしてるが、実際のライブでは曲間が結構空いたりして、ダラダラした印象を受けた。まあそこがクラブギグっぽくていいんだけど。逆に、思ってたのと違った(驚いた)点は、①Leppsではコーラスの要となっているフィルが、完全にギターに専念していたこと。彼の前にはマイクすらなかった(ただしお約束ともいえる上半身裸は、中盤で早くも登場)、②そのぶん、トレヴァーとディックがナイスなコーラスを聞かせてくれたこと、③そのディックがフィル並、いや、それ以上の仕事をしていたこと。「Moonage Daydream」ラストのギターソロに被さる高音コーラスなど、本当にすごいと思う瞬間が多々あった。またキーボードのパートがない曲ではタンバリンを持ってステージ前方まで飛び出し、フィルに絡んだりもした。

アルバム以上に素晴らしかった曲。まず前半のハイライトともいえる先の「Moonage Daydream」のギターソロ。ミック・ロンソンというよりも、完全にフィル・コリンしていた。フィルのギタープレイはピッキングやストローク時の腕に特徴があって、一度観たら忘れられないのだけど、それを目の前で間近に観られたのはある意味貴重だった。あまり速弾きギタリストには興味がないが、この人とブラッド・ギリス(Night Ranger)、ニール・ショーン(Journey)、そしてスティーヴ・ヴァイだけは別格。続いて、アルバム未収録で今回初めてプレイされた「Lady Grinning Soul」。イントロでのディックのピアノプレイが素晴らしく、さらにLeppsではほとんど聴くことのできないジョーのファルセットが堪能できた。さらににエンディング前の「The Width of a Circle」。この10分以上もあるライブバージョンがもうすごすぎ。中盤にウッディーのドラムソロが挿入されているんだけど、とても50歳を越えた人間のドラムソロとは思えなかいほど圧巻だった。

ライブ本編はVelvet Undergroundのカバー「White Light White Heat」で一旦終了。アンコールはすぐに始まった。ディック、ウッディー、トレヴァーが現れ、続いてフィルが登場し、最後にシャツを脱いだジョーがアコギを抱えて登場。ここで神妙な顔つきでMC。

「今日、1月8日はデヴィッド・ボウイの54回目の誕生日だ。そして、もうひとつは‥‥」

そう言いかけた瞬間、ハっと我に返った自分。そしてジョーはギターで隠していたTシャツの胸のプリントを見せた。そこには「STEVE CLARK / 1960-1991」の文字とともに、亡きスティーヴの笑顔が。そう、この日のためにジョーはこんな粋なものを作っていた。泣くに泣けないよ……隣にいた、ほぼ僕と同年代と思わしき女性は、そのTシャツの絵柄を見た瞬間に号泣。ジョーは続けた。

「もう彼がいなくなって10年も経ったんだよ。いつまでも彼のことを忘れないでほしい。僕らの大切な友達、スティーヴのことを……次の曲をスティーヴに捧げます」

そう言って彼は『Ziggy Stardust』の最終曲「Rock'n'Roll Suicide」をアコギ1本で歌いだした。スティーヴはLeppsのほとんどの曲で作曲者としてクレジットされている、結成当時からのギタリスト。僕が浪人中だった1991年1月8日に亡くなった。このニュースを当時の友人から知らされたんだった。丁度その日は土曜で、センター試験初日。当日深夜には伊藤政則のラジオを、結局最後まで聴いてしまった。4時間ぶっ続けでスティーヴに関する情報を、ロンドンと電話でやりとりしていた。彼が大好きだったLed Zeppelinの「Stairway To Heaven」で番組は締めくくられ、僕はそのまま眠れずにLeppsのアルバムを聴きまくってから試験会場に向かった……そんな10年前の記憶がよみがえってきた……そうそう、あの日も確か雪が降ったんだよなぁ……。

珍しく、あのフィルまでもが神妙な顔つきでギターを弾きまくる。他のメンバーも特に面識があったわけではないだろうが、スティーヴに敬意を表して真剣にプレイに取り組む。そして曲が終了すると盛大な拍手。妙にしんみりしてしまった中、そのまま「Suffragette City」に突入したのだが、ここでもいい仕事をしていたのは、ディックだった。笑顔で他のメンバーとアイコンタクトを取る。するとつられて他のメンバーも笑顔に。こうして最後には満面の笑みで最初のアンコールは幕を下ろした。そして2回目のアンコールはお約束ともいえる「All The Young Dudes」であっさりと終了。ライブ全体のトータル時間は1時間40分程度で、アルバムよりもちょっと長いくらいか。ALLボウイだったにも関わらず、Leppsファンを最後まで飽きさせなかった点はさすがだなと思う。

個人的にはボウイを聴きにいったのに、最後にはLeppsを観たような錯覚に陥ってしまったが、僕自身忘れてしまっていた初心(そう、僕はLeppsを切っ掛けに洋楽にのめり込み、バンドやりたいギター弾きたいって思ったんだ)を思い出させてくれた。21世紀の最初に初心を再確認できたという意味でも、このライブは(少なくとも自分にとって)意味のあるものだった。

最後に。会場内で「やっぱりデフレパ(やめろよ、この呼び方)の曲、やらないのかな?」「やらなきゃ意味ないでしょ?」といった方々。君たちがここにいることの方が意味ないと思うのだけど……横浜に向かう帰りのバスの車中では「Leppsの曲、やらないで正解だったね?」と会話していたカップルがいたけど、本当そのとおり。

セットリスト
01. Watch That Man
02. Hang on to Yourself
03. Changes
04. The Superman
05. Five Years
06. Cracked Actor
07. Moonage Daydream
08. Lady Grinning Soul
09. The Jean Genie
10. Life on Mars
11. The Man Who Sold The World
12. Starman
13. The Width of a Circle (feat. Drum Solo)
14. Ziggy Stardust
15. Panic in Detroit
16. White Light White Heat
<アンコール>
17. Rock'n'Roll Suicide
18. Suffragette City
<ダブルアンコール>
19. All The Young Dudes



▼Cybernauts「Live」
(amazon:国内盤

投稿: 2016 01 12 07:00 午後 [2000年のライブ, David Bowie, Def Leppard, 「R.I.P.」] | 固定リンク

2006年6月28日 (水)

DEF LEPPARD『YEAH!』(2006)

 2年くらい前から出る、出ると噂に上っていた「'70年代のブリティッシュロック/グラムロックのカバーアルバム」の最終型が、この『YEAH!』という身も蓋もないタイトルのアルバム。内容はというと、特にブリティッシュやグラムに限定したわけではなく、アメリカンもブルーズロックもポップロックもモッズも全部ある。要するに、DEF LEPPARの原型となるサウンド‥‥各メンバーが幼少の頃に聴いていた、影響を与えたバンドの名曲をストレートにカバーしたもの。何のひねりもない、ホントに直球。それは1曲目 "20th Century Boy"(もちろんあのT-REXのカバー)を聴けばお判りかと。

 これに対して「原曲の方が数百倍良い」とか「単なるお遊び」とか「LEPSならではのオリジナリティが感じられない」とか、ホント能無しな意見しか口にできない底の浅い奴らが多いこと、多いこと。なんつーかさ、これを素直に楽しめないっていうのがかわいそとすら思えてくるわ。

 「単なるお遊び」っていうのは間違ってないけど、ホントに遊ぶ気だったらもっと違う選曲になったんじゃないの。あと「原曲の方が〜」って意見は、もうこの手のトリビュートやカバーアルバムにはありがちな意見。以前、自分も他のトリビュート盤に対して同じような意見を述べたことがあったけど、そんなのは誰もが百も承知だし、そもそもそれを口に出したらおしまいでしょ。しかもありがちに「リアルタイムで通過した者としては〜」とか口にした日にゃ、「あー、単なる頭の固い、新しいものを受け入れられない、過去の思い出の中に生きてる年寄りかよ」ってさ。要するに、そういう人はこの手のアルバムを興味本位で聴かない方がいいんじゃねーの、って話ですよ。

 そして「LEPSならではのオリジナリティが感じられない」とか言っちゃった人。ねぇ、君はこのアルバムのどこを聴いてるの? そしてLEPSの何を聴いてきたの? このアルバムのそこら中から過去のLEPSの名作/名曲のルーツや元ネタが見つかるじゃないの。むしろ「ここまで直球にやったら、ネタバレしねぇ?」って心配しちゃうんだけど、俺は。なんつうか、批評したい気持ちはわかるんだけど(某音楽誌が無駄に持ち込んだ、なんちゃってジャーナリズムの汚点だな)、音楽を素直に楽しめなくなったら終わりじゃねぇ?

 まぁ固い話はここまで。確かにさ、ここには過去のLEPSにあったカッチリしたカッコ良さってのはないかもしれない。でも、オリジナルアルバムでいうところの前作『X』に続く作品として考えると、全然アリなんだよね。だからこそ、ちゃんと2004年に出てたらもっと効力があったと思うんだけどなぁ。勿体ない。でも良いアルバムだし、何も考えずに流しっぱなしにできる1枚だから良しとするか。

 音楽を頭で考えたり、常に批評精神を持って接するのも大切かもしれないし、ある意味では必要なことだと思う。でも、文字通り「音」を「楽」しめなくなったら、意味ないよね。もっと素直になった方がいいんじゃないのかな、みんな。



▼DEF LEPPARD『YEAH!』
(amazon:US盤UK盤日本盤 / MP3

投稿: 2006 06 28 12:30 午前 [2006年の作品, Def Leppard] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2005年3月 8日 (火)

時代錯誤も甚だしいけど‥‥

気分は80'S!デフ・レパード&B.アダムス、全米ツアー発表(CDJournal.com)

 共に'80年代は『産業ロック』だの『産業メタル』だのと言われつつも、数百万枚あるいは千数百万枚ものアルバムセールスを記録したトップセラーであり、また共に同じプロデューサー(ジョン・マット・ラング)だったことがある2組。'80年代(特に「HYSTERIA」)のDEF LEPPARDと、'90年代以降のブライアン・アダムスのサウンド・曲調が似たり寄ったりなのは、ソングライターとしてもアルバムに関わるマット・ラング(元々この人、AC/DCとかTHE CARSといったアーティストを手掛けてた人)の手腕によるもの。しかもその完成度の高さは一級品といっていいでしょう(好き嫌いはあるだろうけどね)。

 共に21世紀に入ってから‥‥特にLEPSは'90年代後半以降苦戦を強いられていて、ヨーロッパではそこそこ成功している2組も、アメリカでは散々なようです。

 そんな彼等がこの夏、ダブル・ヘッドライナー・ツアーを行うと! スタイル的には全く違いますが、MOTLEY CRUEとSUM41とのツアー並みに豪華なんですが(俺的に)。そりゃね、既にアメリカでは『OUT OF TIME』なのかもしれないけどさ、この春にBON JOVIが新作だしてそれがまたヒットとかしたら、状況がもう少し良くなると思うんだけどなぁ‥‥

 共に昨年末に音源をリリースした2組。ブライアンは約6年振りのオリジナル・アルバム、LEPSは新録カバー1曲のみのベスト盤。きっとお互い、グレイテスト・ヒッツ・ツアーみたいになるんだろうなぁ‥‥これ、このまま日本に来ちゃえばいいのに(ってブライアンは4月に来るからなぁ。厳しいか)。



▼BRYAN ADAMS「ROOM SERVICE」(amazon


▼DEF LEPPARD「BEST OF」[2枚組仕様](amazon

投稿: 2005 03 08 10:25 午後 [Bryan Adams, Def Leppard] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004年9月29日 (水)

DEF LEPPARDの最新ベスト盤

ベスト盤特設サイト開設(オフィシャル)

 ホント、ニュースサイト的なこと辞めてからこの手の話題に疎くなったなぁ俺。と同時に、あんまり他所のニュースサイト/ブログも見なくなったし。つーかネット自体疎くなってるんだけど‥‥

 つーわけで、来月リリースになるベスト盤。前のベスト盤から早9年、その間に出た新作はたったの3枚‥‥ってことで内容的には前ベスト「VAULT」の改訂版といった内容。

 2種類出て、1枚ものは前のベストと殆ど内容変わらず。新曲もないし。ただ、限定2枚組の方にたった1曲、新録音の "Waterloo Sunset"(THE KINKSのカバー)が入ってるのね(日本盤のみ、1枚ものにも特別収録。そして日本では2枚組、1枚モノがそれぞれ永久仕様なんだそうな)。もしかして、これがウワサされるカバー集からの1曲なのかしら。元々噂の選曲に入ってた1曲だしね。上の特設サイトで1分程度の視聴ができるので、興味がある人は是非。

 それにしても‥‥どうせならLEPSもBON JOVIみたいにボックスセットとか出せば良かったのに。そろそろデビュー25周年(!)なんだからさ‥‥

 それにしてもデビュー25年で、オリジナルアルバム8枚、Bサイド集1枚、ベスト盤1枚(今度のを入れると2枚)って‥‥



▼DEF LEPPARD「BEST OF」(amazon:2枚組仕様1枚仕様

投稿: 2004 09 29 11:27 午後 [Def Leppard] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004年8月25日 (水)

とみぃ洋楽100番勝負(6)

●第6回「Photograph」 DEF LEPPARD ('83)

 俺がハードロック/ヘヴィメタルの世界にハマる切っ掛けとなった、記念すべき1曲。この曲を深夜ラジオ(多分「全米トップ40」か「伊藤政則のロック・トゥデイ」のどちらか)で初めて聴いたことで、その後の俺の進むべき道が決まったようなもの。そしてあれから20年以上経った今でも、変わらずLEPSを聴いている、いや、聴けている。全てに感謝。

 DEF LEPPARDの大出世作「PYROMANIA(邦題:炎のターゲット)」に収録された、シングルナンバー。全米チャートでもトップ20に入るヒット曲で、当時よくMTVとかでもPVが流れてた記憶が‥‥いや、PVを目にしたのはもっと後だったかな‥‥MTVは中学入ってからかな、俺が観始めたのは。ちょっと記憶曖昧。

 ボロっちいラジカセを使って、AMラジオをエアチェックして、そのテープを擦り切れる程聴いて。まだFM局に目がいく前の話。とにかく、うちみたいな田舎じゃ電波弱いから雑音が凄くてね。それでも一生懸命聴いて。この頃出会ったアーティスト達が、その後の自分のバンド活動に大きな影響を与えたのは間違いないでしょうね。

 実はアルバムを聴いたのは、AMラジオでこの曲に出会ってから、半年以上後になってからのお話でして。最初にシングルを買ったんだよね、"Photograph" の。で、中学に入って小遣い値上げしてもらって、最初に買ったのがアルバム「PYROMANIA」で。いろんな意味で衝撃でしたよ、このバンドとの出会いは。彼等に出会わなかったら、QUEENにもAC/DCにも、そしてMOTT THE HOOPLEにも手を出さなかったかもしれないし。

 でさ。俺、以前やってたサイトの方で「初めて買った洋楽シングルが "Photograhp" だった」って書いてたんだよね。記憶違いだと思うけど‥‥確かSTYXの "Mr.Roboto" の方が先だったと思う。ま、両方共小学6年の頃に買ったのは間違いないんだけど‥‥ま、どっちでもいいか。ホントはよくないけどさ。



▼DEF LEPPARD「PYROMANIA」(amazon

投稿: 2004 08 25 12:00 午前 [1983年の作品, Def Leppard, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004年3月23日 (火)

DEF LEPPARD『HYSTERIA』(1987)

DEF LEPPARDが1987年夏にリリースした通算4作目のアルバム『HYSTERIA』は今でこそ「通算1000万枚を超えるセールスを記録」「全米チャートにおいて、リリースから1年以上経ってから1位を獲得」「HR/HMの枠を超えた、ポップ/ロックの金字塔」なんて言われて絶賛されることの多い80年代を代表する1枚なわけですが……俺ね、リリース当時このアルバムが大嫌いだったの。正確に言えば、ガッカリさせられたというか。

俺が洋楽ハードロックにのめり込む切っ掛けを作ったアルバムの内の1枚が、彼らの『PYROMANIA』だったんだけど、もうね、完全にあの世界観であったりサウンドであったり楽曲であったりが、全部が大好きだったわけですよ。当時12~3才だった「とみぃ少年」にとって、これほどまでに完璧なロックアルバムはあるだろうか!?というほどに。今でもあのアルバムがある種の指針になっているところがあるんだけどね(結局自分が“ブリティッシュ”にこだわるようになったのも、あのアルバムが切っ掛けだったしね)。

ところが、『PYROMANIA』から4年待ってリリースされたこの『HYSTERIA』というアルバム。リリース当時高校1年生だった自分は夏休みにプールでバイトして小遣い貯めて、それで購入したわけですよ。あの頃は洋楽CDでもまだ3200円くらいした時代。しかもこれ……今現物が手元にあるんですが、直輸入盤に帯と解説を付けた代物なわけ。「Made In West Germany」という懐かしい響き。この頃はまだ、こういった盤が結構国内でも流通してたんだよね。輸入盤CDも3000円近くした時代だもの。

でね。そこまで一生懸命働いて買った、大好きなバンド待望の新作。1回聴いて、かなり凹んだのよ。似てるようで全然違う、って。まぁリック・アレン(Dr)が交通事故で片腕を失って、それに対応したシモンズ・ドラムを開発。それを導入してのレコーディングということで、どうしても当時の技術じゃシンセドラムっぽくなってしまうのは仕方なかったんだけど(今なら生音をサンプリングすればいいだけの話ですからね)……にしても、ドラム含めて全体的な雰囲気が人工甘味料をまぶしたような、コテコテに甘ったるい曲調で、ギターサウンドも前作以上に歪みまくっていて若干作りものっぽい。シンセも多用してるし、曲によってはQUEEN以上にコーラスを重ねているパートもある(実際、120声以上も重ねたパートもあるとか)。前作にあったようなタフな雰囲気は減退し、角の取れた柔らかい印象に「これ、ハードロックじゃねぇじゃんか!」と当時16才だった「とみぃ少年」は憤りを感じたわけです。

事実、このアルバムはリリース当初こそアメリカ/イギリス両国で期待されたほど大きなヒットにはならなかったのね。アメリカでは4位くらいまで上昇したのかな。シングルも第1弾の「Women」がコケて……待望の新作からの1stシングルに適していたかどうかって話ですが。

そんなだから、翌1988年5月に実現した再来日公演にも足を運ばなかったんだよね(まあ、正しくは高校の中間テストがあったので、とても東京まで出ていける状況ではなかったのですが)。代々木体育館、満員にはならなかったそうだけど……結局、その3年後に悔やんでも悔やみきれないほどに、行かなかったことを後悔しまくるわけですけどね。

この頃からかな、このアルバムからのシングルがどんどんアメリカでヒットしていったのは。まず第2弾「Animal」がトップ20入りし、第3弾「Hysteria」で初のシングル・トップ10入りを記録。その後「Pour Some Sugar On Me」が全米2位まで上昇し、同年秋には「Love Bites」がとうとう1位を獲得してしまうのです。当然その頃までにはアルバムも10位圏内を行ったり来たりしていて、最終的には1位に。実はDEF LEPPARDにとってこれが、シングルのみならずアルバムも初の1位だったんですよね。この時点で、すでにアルバムは売り上げ700万枚を突破。以降も第6弾シングル「Armageddon It」が3位、第7弾シングル「Rocket」が12位にランクイン……1枚のアルバムからシングル7枚って! 12曲収録のアルバムですよ!? ホント、マイケル・ジャクソンの『THRILLER』にも匹敵するアルバムですよ。

こうして当時、MTVやラジオなどで『HYSTERIA』からのシングル曲を耳にする機会がどんどん増えていき、しばらく距離を置いていたこのアルバムを聴き返す機会がどんどん増えていきました。すると、最初は「前作ほど良くない」という先入観が植え付けられていたこのアルバム、聴くたびに新しい発見があり、ハードじゃないから嫌ってたのに逆にポップさに魅了され、気づけば学校から帰宅すると毎日リピートしまくりな1枚へと変化していったのです。

決して「シングル曲がいっぱい入ってるから」ではなく、これはもう単純にスルメ的要素を持ったアルバムだったからというのが大きいのではないか、と今になって思うわけです。当時としては破格の62分という収録時間も驚異的だったし(恐らくハードロック系で初めて「CD」を意識して作られたアルバムではないでしょうか。全編デジタル録音というのもあるし)、実は曲のバラエティ豊かさも前作の比じゃない。

当時はBON JOVIWHITESNAKEといったバンドがチャート上位を席巻していたのですが、そんな中でこのアルバムは異色だったかもしれません。いや、HR/HM側からしたら異色かもしれないけど、ポップス畑からするとそんなに不思議じゃない作品だった。だからこそ、ここまで支持されたんだろうな。ラジオで普通にポップスとして機能するし、MTVでビジュアル付きで聴けば完全にハードロックしてる。ある意味無敵な作品、それが『HYSTERIA』というアルバムだったのかな、と。その後の彼らの活動をみると、結局はここで得てしまったメガヒットを意識して、『HYSTERIA』の延長線上にある作品作りに励んでいるように映りますし。幸か不幸か、ね。

このアルバムを最後に、ギタリストでありメインソングライターのひとりでもあったスティーヴ・クラークはこの世を去るわけですが(1991年1月に死去)、そういう意味でも忘れられないアルバムになってるんですよ、自分にとって。

確かにドラムサウンドは今聴くとちょっと時代を感じますけど、楽曲自体のクオリティや普遍性はさすがと言わざるを得ない。2004年の現在においても、これを超えるようなアルバムはなかなか登場していないわけですから。

最近ではANDREW W.K.などの若手バンドがDEF LEPPARDの功績を讃え、その影響をあからさまに表したサウンドで世を賑わしてますが、当のDEF LEPPARDは残念ながら以前のようなヒットを飛ばしているとは言い難い状況です。あの頃、少年少女だった俺達にとって最高だったものが、今の少年少女にどう映るのか。どう響くのか。ハードロックとかポップとか関係なく、偏見なしに一度は触れてもらいたい名盤。「Love Bites」や「Love And Affection」に感動の涙を流し、「Gods Of War」で緊張感を味わい、「Rocket」や「Excitable」で踊り狂い、「Pour Some Sugar On Me」 や「Armageddon It」で拳を振り上げてシンガロングしようじゃないですか。そういう判りやすいアルバムなんですから。



▼DEF LEPPARD『HYSTERIA』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2004 03 23 08:01 午前 [1987年の作品, Def Leppard] | 固定リンク

2002年12月 6日 (金)

DEF LEPPARD『X』(2002)

DEF LEPPARDの21世紀最初を飾るアルバムは、デビューから22年目にして10作目となる『X』。文字通り「エックス」と読むことも出来れば、ローマ数字での「10」を意味するものでもある。しかもジャケットにはロゴマークは控えめに、全体にでっかく筆書きされたような「X」が。白地に黒。インパクトからいえばバッチリだよね。その昔、プリンスが無題・クレジットなし・ジャケットその他も全て真っ黒という通称「BLACK ALBUM」ってのを作ったり、METALLICAが黒地にロゴと蛇のイラストというセルフタイトルアルバムをリリースしたことがあったけど、それに匹敵するものがある。つうかこれ、過去のLEPPSのイメージを覆すために用いられたような気が‥‥

ご存じの通り、'83~'90年代初頭の彼等の勢いは本当に凄いものがありました。今の10代のファンは知らないだろうけど、当時マイケル・ジャクソンの『THRILLER』によって1位を取ることが出来なかった『PYROMANIA』が600万枚(当時)、4年振りに発表された『HYSTERIA』はリリースから1年経ってからアメリカで1位を取って、結果1,000万枚近いセールスを記録。グランジが席巻していた'92年、『ADRENALIZE』は全米初登場1位を記録。ドラムのリック・アレンが交通事故によって左腕切断という事故に遭ったり、メインソングライターでありギタリストであったスティーヴ・クラークがアルコール依存が原因で亡くなったり等、悲劇と引き替えに彼等は天文学的な成功を手にしてきたわけですが、『ADRENALIZE』以降‥‥現在のメンバー(ジョー・エリオット、フィル・コリン、リック・サヴェージ、リック・アレン、ヴィヴィアン・キャンベル)になってからは結構順調にリリースを重ねている割には、どんどんセールスを落としているんですよね。ここ3作、全米ではアルバムがトップ10入りすることもなく、大きなシングルヒットもなし。BON JOVIが初登場2位という逆転劇を繰り広げた2002年、何故LEPPSは過去のような成功を収めることが出来ないのでしょうか?

理由は幾つかあると思いますが、一番大きな理由はズバリ、彼等がアメリカ人ではないという点でしょう。えっ、だって彼等は'80年代はバカ売れだったんでしょ?何で今更!?とお思いでしょう。そう、確かに彼等は過去異常なほどに売れていた。しかしそれは純粋に楽曲が評価されたのと、丁度大きな波が押し寄せていたHM/HRムーブメントに思いっきり乗ることができたから。しかし'90年代以降、ハードロックが'80年代以上の成功を収めたでしょうか? それ以前にグランジ以降、アメリカではロックが市民権を得るのに相当苦しんでいたのです。R&Bやヒップホップがチャートの上位を占め、過去ヘヴィメタルと呼ばれていたジャンルのバンドは、新たにヒップホップ的要素やラップボーカルを取り入れ、メタルのようでメタルでない「ロックみたいなヒップホップ」としてチャートを席巻したのでした。

しかし、時代は少しだけ動きつつあります。そう、CREEDやNICKELBACK、TRAIN等といった純粋に楽曲で勝負するロックバンドが再び脚光を浴びるようになったのです。BON JOVIなんて正にここに入れてもおかしくない存在ですよね?

'90年代後半のLEPPSは非常に振り幅の大きい作品をふたつ発表しています。グランジムーブメントを彼等なりに消化し、これまでになく生々しくダークな『SLANG』と、'80年代の彼等を踏まえた上での集大成と呼べる『ADRENALIZE』です。そういう極端な作風のアルバムが2作連続で過去のセールスの三分の一にも及ばなかったのです。そこで彼等はバケーション中、各自ソロ活動を行ったりしました。特にジョーとフィルによるCYBERNAUTSはデヴィッド・ボウイのカヴァーバンドであるにも関わらずアルバムもリリースし、来日公演まで行いました。その後、再びバンドは集結し、この記念すべき10作目のアルバムについてミーティングを重ねたそうです。そこでは「ポップの定義」だったり「コマーシャル性」について話し合われたそうです。そして5人の意見が一致し、「『HYSTERIA』みたいな全曲シングルカットできるようなポップでコマーシャル性の高い曲が詰まったアルバム」を想定して、ソングライティング~レコーディングに挑んだそうです。

これは過去、最も難しい挑戦・実験だったのかもしれません。ハードロックバンドとしてデビューし、「ポップなハードロックバンド」として成功し、'90年代にはそれが足枷となっていろいろな実験をするものの、最終的には「ファンが最も望むLEPPS」を現代的にアレンジしたアルバムを制作してきた彼等が、ある意味ロックであることに拘らず、ひたすら「ポップ」なものを作る。一歩間違えば過去のファンを的に回すことになり得るこの挑戦。まず、「ポップ」とは何かという命題と戦わなければなりません。BACKSTREET BOYSのようなアイドルソングをポップと呼ぶのか、LIMP BIZKITのようなファンキーで親しみやすいラップメタルもポップと呼べるのか、それとも‥‥彼等が出した結論は、このアルバムの13曲で表現されています。

先に挙げたようなCREEDやNICKELBACK的イメージを彷彿させるトップナンバー "Now" からアルバムはスタートします。これはポップというよりも、かなりヘヴィな作風ではないでしょうか? 過去、こういったミディアムヘヴィチューンからスタートするアルバムが2枚あります。ひとつは『HYSTERIA』であり、もうひとつは『SLANG』。もっとも『SLANG』の方はヘヴィといっても、インダストリアルサウンドによるヘヴィさが強かったので、ここではどちらかというと『HYSTERIA』に近いのかも。けど、あそこまでヘヴィメタリックな硬質感は皆無。どちらかというと、もっと柔らかくて自然体。これまでみたいな長くて速弾きしまくりのギターソロは皆無(それはアルバム全体に言えることですが)。

続く "Unbelievable" は2曲目にしていきなりバラード。しかもLEPPSのメンバーが作詞・曲の全く絡んでいない‥‥過去そんなことが考えられたでしょうか? これも「ポップ」であることへの挑戦なのでしょうね。3曲目 "You're So Beautiful" は過去の "Animal" や "Promises" にも通ずるタイプ。こういう曲をファーストシングルにすればよかったのにね(ちなみにファーストシングルは "Now")。続く "Everyday" も過去のLEPPSをイメージさせるタイプ(偶然にもBON JOVIの新曲も同タイトルでしたね)。そして2曲目のバラード "Long Long Way To Go" はストリングスを取り入れた哀愁系。'80年代の "Bringin' On A Heartbreak" や "Love Bites" みたいに絡みつくような情熱系ではなく、もっとサラリと聴ける曲。

ポップソング的なナンバーが続く前半、6曲目にして過去のハードロックチューンにも引けを取らない "Four Letter Word" が登場。モロにAC/DCだよね、これ。グラムなAC/DCって印象。サビになると相変わらずLEPPSしてるんだよね。これも彼等なりの「ポップ」なのか、それとも「ロックバンド」としての拘りなのか。ライヴで盛り上がる1曲。続く "Torn To Shreds" もヘヴィなイントロを持った曲なんだけど、歌に入るとちょっと穏やかに。で、サビでまた爆発というタイプ。そのまま風変わりな "Love Don't Lie" へ。ループを取り入れてるけど、『SLANG』時代程あざとくなく、ごく自然に取り入れられてて、全然気にならない。この辺の曲の並びはちょっとロック色が強めかな。

9曲目は "Gravity" もシーケンスサウンドが入った、ちょっと軽めに始まってサビでロックするタイプ。サビのバンドサウンドがなかったら、完全にその辺のポップソングかも。要するに曲(メロ)さえしっかりしてれば、後はアレンジ次第でどうにでもなるってことか? 続く "Cry" はLEPPS的なヘヴィリフを持ったサイケ調ナンバー。リズムパターン(ベースの刻み方やギターとベースのシンコペーション)が、モロに過去のLEPPSしてて、安心して聴ける1曲。つうかこれは完全にポップソングじゃないでしょ? 前作や『ADRENALIZE』に入ってたとしても違和感ないもん。11曲目は "Girl Like You"。曲がポップな割りには、実はバックのバンドサウンドは結構ヘヴィだという、その対比が面白い。しかもリフはサンプリングされたものなのかな? 面白い曲だと思います。

12曲目はこのアルバム3つ目のバラード "Let Me Be The One"。ここでもストリングスが導入されていて、かなり聴かせる曲になってます。考えてみれば、こういう感じのバラードってLEPPSに今までなかったような気が‥‥前出の2つのバラードは共にLEPPS以外のソングライターによるものなんだけど、この曲は完全なLEPPSオリジナル。なのに、前の2曲よりも過去のLEPPSっぽくないかも。いや、サビはLEPPSしてるんだけど。不思議な感じ。

本編最後には「スティーヴ・クラークのことを考えながら作った」という "Scar"。アルバム中、最も過去の彼等らしい長いギターソロが登場するのはこの曲だけ。イントロのフレーズとかソロが、ホントにスティーヴが弾いてるかのよう。コード使いやサビのコーラスなんて、モロに『HYSTERIA』に入ってそうなタイプだよね。いろいろ新しい試みをやっているものの(勿論、どれも好きという前提で)一番好きな曲は?と聞かれれば、迷わずこの曲を選んでしまいます‥‥悲しいかな、やはり俺はオールドタイプのLEPPSファンなんだよね(日本盤には他に2曲ボーナストラックが入ってるんだけど、アルバムの流れを考えてここでは割愛)。

確かに過去には考えられなかったような「ロック色が薄い」ポップソングもあれば、メンバーがソングライティングに全く携わっていない楽曲まであり、プロデューサーも曲毎に変えている。そういう意欲的な姿勢で制作されたこのアルバムだけど‥‥俺にとってはやっぱり、全然過去と変わらないDEF LEPPARDなんだよね。ま、だから好きっていうのもあるんだけど‥‥ちょっとだけ残念なのは、過去必要以上に拘っていた「英国色」‥‥ブリティッシュ・ロックへの拘りがちょっと薄らいだかな、と。非常に普遍的なポップソングに拘るのと引き替えに、「イギリス人らしさ」はこれまでで一番後退してるような気がします。それはアメリカで再び成功を手にする為なのか、それとも「一般的な普遍性」を意識した為なのか‥‥ま、ジョーは「全然そんなことない!どこを取ってもvery britishじゃないか!!」って否定するんでしょうけどね。

1曲1曲がコンパクトな為、アルバムのトータルランニングが50分にも満たない(ボーナストラックを除く)点はラジオでのエアプレイを意識してのことだろうけど、1曲くらいライヴを意識した6分7分あるようなプログレッシヴナンバー(過去でいえば "Gods Of War" や "White Lightning"、"Paper Sun" 等)があると「ロック」アルバムとしては引き締まったんだろうけど、ま、ポップというものに拘った結果がこれなら、上出来じゃないでしょうか? 過去の作品と比べれば決して傑作と呼べるような作品ではありませんが、それでも「今を生きるバンド」が時代性を意識して作った作品としては高品質で賞賛されるべき1枚だと思います。そして、もっと売れるべきです。

リリース後半年近くが立ちましたが、結局このアルバムはヒットには程遠いセールスしか残していません。レコード会社はロック以外のアーティストだったり、売れ線であるU2やBON JOVIの新作に力を入れ、LEPPSを無視しつつあります。それでも彼等は「『HYSTERIA』だってブレイクするまでに8ヶ月かかった。まだまだ勝算はある。だってこんなにいい曲ばかりなんだから」と言っています。11月に日本公演を終えた後、来年2月から再びアメリカツアーがスタートします。それに合わせてアルバムから新たにシングルをリカットする予定もあるとか。恐らくバラードで攻めるんでしょうけど、さぁこの「ヨーロッパ人達」がアメリカという国でどこまで善戦するか、これからが見物です。



▼DEF LEPPARD『X』
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投稿: 2002 12 06 08:10 午前 [2002年の作品, Def Leppard] | 固定リンク

2000年7月22日 (土)

DEF LEPPARD『HIGH'N'DRY』(1981)

NEW AMERICAN SHAMEというアメリカのロックンロールバンドに興味を持った人にお薦めする、AC/DCタイプで且つメロディアスなHM/HR‥‥って事で、今回はこのDEF LEPPARD(以下LEPSと略)の2ndアルバムを紹介しよう。「へっ、DEF LEPPARDぉ~!?」って思った人は、少なくとも彼等の現在(というか、ここ14~5年)の音楽性を知っているということだろう。LEPSというと、何十、何百にも重なった綺麗なコーラスワークに、機械的なリズムワーク、そしてこれでもか!?って位に甘いメロディ。HR/HMの範疇に入れてはいるものの、既にその枠には収まらない、いい意味で「CDではポップスとして通用し、ライヴでは下手なバンドよりもパワフル」てな顔を持っている。彼等の2nd『HIGH'N'DRY』を何故「猿にも解るメタル講座」のサンプルとして取り上げるか!? どうせ取り上げるなら『HYSTERIA』(1987年)の方がいいんじゃないか!?という声も上がりそうだが、あえて「ロック」に拘ってこのアルバムを選んだ。まぁ、その他にも理由はあるが、それは後ほど‥‥

NEW AMERICAN SHAMEとLEPSって一見繋がらなさそうだが、先に挙げたようにこの2つのバンドにはAC/DCという共通項がある。HM/HRは聴かなくてもAC/DCなら聴くって人は多いかもしれない(いや、少ないか?)。グランジに影響を与えたって意味でBLACK SABBATHCHEAP TRICKを聴くのと同じように、あるいはAEROSMITHを聴くのと同じ感覚でAC/DCも聴かれていると思うのだが……(いや、そう思いたい)。それでいて、今挙げたようなバンド程(特に日本に限定して)人気がないのも、やはりAC/DCだ。ミュージシャン受けはいいのにねぇ‥‥

で、LEPSとAC/DCとの関係だが、AC/DCの『HIGHWAY TO HELL』(1979年)『BACK IN BLACK』(1980年)といったアルバムのプロデューサーをしていたのが、ジョン・マット・ランジという人。後にTHE CARSやBRYAN ADAMS等も手掛けるが、やはりこの人といえばLEPSだろう。実はLEPSがこの人と手を組んだのは、一般的に知名度がある『PYROMANIA』(邦題『炎のターゲット』/1883年)からではなく、この『HIGH'N'DRY』からだったのだ。ファーストアルバム『ON THROUGH THE NIGHT』(1980年)でのプロデューサー、トム・アロムの仕事に満足出来なかったバンドの面々は、勝負を賭けたセカンドのプロデューサーにこのマットを選ぶ。理由は「AC/DCみたいなパワフルなサウンドが欲しかったから」。実際にマットのスケジュールが空くまで、彼等は半年近くも待ったという。このアルバムでの顔合わせが、後にモンスターヒットとなる『PYROMANIA』や『HYSTERIA』(1987年)を生むことになる。

では、AC/DCのプロデューサーと組んだからといって、そんなに簡単に彼等に近づけるのか!?とお思いの方。是非このアルバムを通して聴いて欲しい。多くの人が想像するLEPSサウンドはここにはないのだ。いや、その後開花する片鱗は伺えるが、ここにあるのはファースト時の売りであった「ハードだけどメロディアス、且つコーラスが奇麗」を踏まえた上で、かなりガッツのあるサウンドにシェイプアップされている。バンド自体がツアーに次ぐツアーで鍛え上げられたのもその要因だろうが、プロダクションの良さは前作とは比にならない(当時のインタビューでボーカルのジョー・エリオットは「200倍は、前よりいい」「マットは自分の納得いくまでスタジオにいて、20時間でも22時間でも篭り続ける。全て判った上でバンドにベストの力を出させる。完璧なレコードを作るためさ。時々殺したくなるくらい、僕らを働かせるけどね(笑)」と発言している)。

そして楽曲。AC/DCを意識したのだろうか、とにかくリフ、そしてリフ。勿論メロウなソロプレイもあるが、ここにはその後の2作への足がかりとなるヒントが隠されている。耳に残るリフ作りという意味では後の2作には劣るかもしれないが、ここにはそれをフォローするだけのパワーと若さがある。そしてHR/HMという割にはギターが歪んでいない。恐らくエフェクターを通さない、レスポール~マーシャル・アンプ直の音だろう。このアルバムリリースの時点では現在のギタリスト(フィル・コリンとヴィヴィアン・キャンベル)はまだ在籍しておらず、スティーヴ・クラークとピート・ウィリスという2人のレスポール弾きが担当していた。まぁ時代が時代だったこともあるだろうが、この辺にも拘りが伺える。

何よりもギタリストでありメインソングライターであったスティーヴは、大のLED ZEPPELINジミー・ペイジのファンであり、その辺の影響はソロプレイ等からも感じ取る事が出来る。このアルバムには初期の名曲のひとつである泣きのバラード"Bringin' On The Heartbreak"が収録されている。AC/DCのコピーだけに留まらず、自らのルーツや個性を意識しだした結果、こういう新しいタイプの楽曲が加わっていった。そしてそれは次作で開花するわけだが‥‥

もうひとつ面白い点を挙げるなら、それはインストナンバー"Switch 625"が収録されている事だろう。このアルバム以降、最新作『EUPHORIA』(1999年)までインストに挑戦する事がなかった彼等。そういう意味でもこの曲は興味深い。アルバムには先のバラードからメドレー形式で続くのだが、この流れがまたいい。決して捨て曲になっておらず、このアルバムのハイライトだと俺は思っている。

途中、初心者には判り難い説明が続いたと思うが(苦笑)、とにかくNEW AMERICAN SHAMEやAC/DCが好きなら、結構イケるんじゃないかな?と思い、このアルバムを取り上げてみた。ちょっとハードかもしれないが、判り易い/聴き易いメロディが満載だし、それこそリフの絡みがかっこいいミドル・チューンから速い曲、泣きのバラードにインストと、曲のバラエティはそれら2つのバンドよりも幅広いので、どこかしらに心に引っ掛かる個所があるはずだと思う。後の彼等はちょっと甘すぎて……って人には丁度いいさじ加減かもしれない(まぁこれが大丈夫だったら『PYROMANIA』も何ら問題ないと思うが)。

最後に……実はNEW AMERICAN SHAME自身もこのアルバムをフェイバリットに挙げている。先日の来日公演でも開演前にこのアルバムがかかっていたという。「AC/DC以外なら、多分このアルバムと『PYROMANIA』だね?」というような事をインタビューでも言っていたので、意外と将来、こんな感じの音楽性になったりして‥‥いや、ないか(笑)。ちなみにあのPANTERAの面々もこのアルバムがお気に入りだそうだ。彼等もメジャーデビュー盤『COWBOYS FROM HELL』(1990年)以前(インディーズ時代に4枚のアルバムをリリースしている)はこのアルバムの頃のLEPPSのようなサウンドだった。今となっては恥ずかしいというか、微笑ましいというか。とにかく、今のシーンを築き上げている若くて活きのいい奴等が皆「『HIGH'N'DRY』に影響を受けた」っていうんだから、きっと何かあるに違いない……それを探ってみる為だけでも、聴く価値はあるだろう。



▼DEF LEPPARD『HIGH'N'DRY』
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投稿: 2000 07 22 07:55 午前 [1981年の作品, Def Leppard] | 固定リンク

2000年1月 6日 (木)

CYBERNAUTS『LIVE』(2000)

現在第一線で活躍する、所謂ビッグネームと呼ばれるアーティストにも、子供の頃憧れたアーティストがいる。そういう人達やその音楽と出会った事によって、そのアーティストのコピーをするためにバンドを始めたり、それを切っ掛けにオリジナルの楽曲を書き始めたり‥‥そう、「影響を受けたのは○×です」みたいな発言をよくインタビュー等で見かける、あれだ。しかし、ある程度プロのミュージシャンとして成功を収めると、急にその「影響」を隠してしまったり封印してしまう人も多い。自身のオリジナリティーのようなものがある程度完成してしまう事により、パクる必要がなくなるわけだ。良く言えば「独自の音楽に拘る」と言えるが、その反面「遊び心がなくなってしまった」という声も聞こえてきたりして‥‥ライヴやシングルのカップリングにカヴァー曲を入れる事はあっても、そういう直球型のカヴァー(所謂元ネタ)はなかなかやってくれない。
  ところが、ここに紹介するCYBERNAUTSというバンド(というユニット)は、その「子供の頃に憧れた存在になりきってしまう」という、究極の遊びバンドだったりする。しかもそのバンドのメンバーが、世界的大ヒットを飛ばし続けるビッググループのメンバーと、そのカヴァーされる側のメンバーの組み合わせというのだから、ある意味反則ともいえる。というか‥‥羨ましいぞ、このヤロー!(笑)

ご存じの通り、このCYBERNAUTSはあのDEF LEPPARDのボーカルであるジョー・エリオットとギタリストのフィル・コリンが中心となって結成されている。ガキの頃に憧れたデヴィッド・ボウイの、しかもTHE SPIDERS FROM MARSを率いていた時代の楽曲に限定されたトリビュートバンドなのだ。そこに加わるリズム隊というのが、そのカヴァーされる側‥‥つまりTHE SPIDERS FROM MARSのベース、トレヴァー・ボールダーとドラマーのウッディ・ウッドマンゼイなのだ。そこにサポートメンバーとしてキーボーディストのディック・ディーセントが加わった5人。これがCYBERNAUTSの正体だ。

事の始まりは、1993年4月30日にガンの為他界した、THE SPIDERS FROM MARS~MOTT THE HOOPLEのギタリストでるミック・ロンソンの追悼コンサートの為に'94年にTHE SPIDERS FROM MARSが1日だけの再結成をした事だった。当然デヴィッド・ボウイは参加するはずもなく、ボーカルとギタリストがいない状態だったところに、当日ゲストとしてジョーとフィルが参加する事を知ったトレヴァーは、旧知の仲である彼らに「一緒にやらないか?」と声をかける。当然2人は大喜びで参加するわけだ。

それから3年後に、今度はミック・ロンソンの地元であるハルでSPIDERS~としてライヴをやらないか、とオフォーが来る。そこで先の4人にキーボーディストのディックが加わったこの5人でショート・ツアーを行った、というわけだ。このライヴアルバムはその時のライヴの模様を完全収録したものなのである。

ここで多くのボウイファンに疑問が湧くと思う。大別して2つ。ひとつは「DEF LEPPARDとミック・ロンソンとの関係、及びSPIDERS~とは彼らにとってどういう存在なのか?」、そして「何故この時期にこんなものをリリースするのか?」。この辺について語っていこうと思う。

まず、DEF LEPPARDの音楽性について。現在の彼らのオリジナリティー溢れる存在からは想像出来ないだろが、彼らは間違いなくグラムロックの影響を受けている。その片鱗は彼らの楽曲からも伺い知る事ができるだろう。数々のヒット曲からT-REX、SPIDERS~時代のボウイ、更にはSLADEやSWEET、ゲイリー・グリッターといったアーティストからの影響が見え隠れするし、インタビューでも普段からそれらのアーティストに影響を受けたと発言している。特にQUEENとボウイというのは、ボーカルのジョー・エリオットが幼少期に最も影響を受けたアーティストだそうだ。

そのLEPPSが'92年4月、その前年に亡くなったQUEENのフレディ・マーキュリー追悼ライヴに出演した際に、かのデヴィッド・ボウイとミック・ロンソンも同ライヴに出演していたのだ。この時を切っ掛けに、ジョーとミックは親しくなり、ミックが当時制作中だったソロアルバムにジョーはゲスト参加する事となった。

しかし、翌年の同時期にミック・ロンソンは亡くなる。アルバムは未完のままだった。そこでジョー・エリオットが立ち上がり、彼がエグゼクティヴ・プロデューサーとなって様々なゲストを迎えて、ミックの遺作を完成させるのだった。それが彼の死後から1年経った日に発売された「HEAVEN AND HULL」だ。

更にLEPPSのメンバーはミック以外にも、トレヴァー・ボールダーとも交流があった。'83年の「PYROMANIA」に伴うツアーで、当時トレヴァーが参加していたURIAH HEEPと一緒にツアーしていたのだ。その時にジョー達はトレヴァーと仲良くなったそうだ。憧れの存在と毎晩のように飲みあかし、SPIDERS~時代の逸話に耳を傾けたそうだ。

以上の事から、何故DEF LEPPARDのメンバーがSPIDERS~トリビュートバンドをやったのかがご理解いただけると思う。残念ながら、当のボウイ本人とLEPPSとの交流については俺は何も知らなかったりする。まぁ現在のボウイから考えれば、何となく想像は出来るが‥‥(苦笑)

さて、第2の疑問点。何故この時期にこういうアルバムをリリースする事にしたのだろうか? 実はこれについては俺も詳しい事は知らなかったりする(笑)。最近の雑誌のジョー・エリオットのインタビューが載っていたそうだが、まぁ早い話が「LEPPSのツアーが終わったので、次のアルバム制作までのお遊び」のつもりなのだろう。そもそもこのアルバムがレコード会社を通して正式にリリースされるのは、ここ日本だけなのだから。

本来、このアルバムはLEPPSのオフィシャルサイトで、インターネット上のみでのリリースという形をとるものなのだ。しかし、海外と比べて日本ではまだインターネットがそれ程普及していない点、いざオフィシャルサイトを覗いてみても英語に弱いので取引しにくい点等々を考慮した日本のレコード会社がジョーに是非日本では一般流通させてくれ、と直訴したそうだ。日本だけなら、という事でメンバーは承諾し、更にアルバムリリースと同時期に日本でライヴもやりたいとも言ってくれたそうだ。やはり一般流通させる以上はプロモーションしなければならない。これはレコード会社にとっても好都合だし、LEPPSファンにとっても貴重な機会になる。噂が噂を呼んだ。2000年9月でバンドとしてのツアーを終えたにも関わらず、年末にLEPPS再来日の噂が急浮上する。カウントダウンなのか?と。それが別プロジェクトだという事が知れ渡るのに、そう時間はかからなかった。彼らのオフィシャルサイトで、CYBERNAUTSのライヴアルバムをインターネット流通する事が発表されたからだ。

現在特に定職(というかバンド)を持たないウッディーとトレヴァーにとっても、この話は好条件だったに違いない。何せ来日も出来るのだから。後ろ向きと言われてしまえばそれまでだが、これは「おもいっきり豪華な遊び」だと割り切ってしまえばいいのだから。自身の次の仕事の為のプロモーションの場と考えれば、これ程オイシイ話はないわけだし。

というわけで、当初の予定より1ヶ月送れてアルバムは日本リリースされ、その10日後には来日を果たすわけだ。

そういうわけだ。納得しただろうか。殆どアルバムの内容について説明していないが‥‥説明するまでもないだろう。ボウイの、最も輝いていた時代の名曲がギッシリ詰まっていて、それをオリジナルメンバーを含むラインアップで演奏している。ジョーはボウイを意識した唄い方をしているし、フィルもミックのプレイを意識しながら、独自のプレイをこれでもか!?と披露するのだから。LEPPSファンにも十分にアピールする作りとなっているし、若いボウイファンにも受け入れられると思う。

けど、最後にひとつ。これだけは大きな声で言っておきたい。これはボウイトリビュートはなく、あくまでミック・ロンソンのトリビュートだという事。それは収録曲の中に唯一収録されている非ボウイ曲、"Angel No.9"(ミック・ロンソンの2ndソロ「PLAY DON'T WORRY」収録)からも伺えると思う。ジョーやフィルにとってミック・ロンソンはヒーローだったのだ。グラム時代のボウイを影ながら支えていたのは、間違いなくこのミック・ロンソンなのだから。彼のファンは英米のみならず、ここ日本にも多い。代表的なところでTHE YELLOW MONKEYの吉井和哉。彼は先のミックのソロアルバム再発の際には、ライナーノーツも書いていた。

特にここ日本では過小評価をされる事の多いミック・ロンソン。これを機にDEF LEPPARDのファンは初期のデヴィッド・ボウイのアルバムに手を出して欲しいし、逆にボウイに興味を持つファンにはDEF LEPPARDの音楽に改めて触れ、そこからボウイ色を感じ取って欲しい。そして、ミック・ロンソンという偉大なギタリストがいたことを認識して欲しい。プロだからこそ出来る、正にプロの仕事。そして本当の遊び心というのはこういう事を示すのだという、素晴らしいアルバムだ。20世紀最後に届いた贈り物。そして20世紀最後に買ったのがこのアルバムだという事を、俺は決して忘れないだろう。



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投稿: 2000 01 06 07:20 午前 [2000年の作品, Cybernauts, David Bowie, Def Leppard] | 固定リンク

1999年6月13日 (日)

DEF LEPPARD『EUPHORIA』(1999)

DEF LEPPARDのニューアルバム『EUPHORIA』、買ってなくても試聴機などで一度は耳にされた方もいるのでしょうか? それともラジオで耳にしたとか? シングル曲「Promises」は一般のラジオ番組でも比較的かかっているほうですからね。

その「Promises」、初めて耳にしたときの感動……あれはどうやって表現すればいいのでしょうか。そう、初めて彼等の曲を聴いたときのあのときめき。初めて「Photograph」をラジオで耳にしたときの、あのドキドキ感。そして、スティーヴ・クラーク(G)亡き後の復活第1弾として発表されたシングル「Let's Get Rocked」を聴いたあとの高揚感。そういった感覚に近かった気がします。いや、それ以上だったかもしれないです。最近でいうと、BON JOVIの新曲「Real Life」 を初めて聴いたときの爽快感に似ているというか。別にハードロックにこだわるつもりはないけど、それでも“歌らしい歌”をちゃんと聴いたのは、随分久し振りのことだったから。最近のUKロックやオルタナバンドにはない“熱”が存在するバンド。AEROSMITHばかりに期待を背負わせてはいけないですよ!(もう歳なんだし!?おっと、失言) GUNS N' ROSESはああいう状態だしね!

それにしても……いいのか、こんなに良い曲書いちゃって!!ってくらいに感動したのは言うまでもありません。最近は毎朝このアルバムを(特に「Promises」を重点的に)聴きながら通勤しているのだけど、いやぁこの季節にピッタリっすね? 聴いていて本当に気持ちいい。暑苦しすぎないし、それでいて軽すぎない。どこを切っても金太郎飴のような“DEF LEPPARD印”の名曲揃い。

さて、今回はロック史上稀に見る超ヒットアルバム『HYSTERIA』より後の作品、『ADRENALIZE』とhttp://www.tmq-web.com/2017/12/def-leppardslan.htmlが無視されて何故このアルバムが『HYSTERIA』に続く“3部作の完結編”と言われるのか? そして、本当に『ADRENALIZE』と『SLANG』は本当に無視されるような作品だったのか?を踏まえながら、この『EUPHORIA』の素晴らしさを皆さんにお伝えしたいと思っております。

まず、僕自身はこの『EUPHORIA』を『HYSTERIA』に続く“3部作の完結編”、つまり『HYSTERIA』の続編だとは思っていません。むしろ『ADRENALIZE』と『SLANG』の続編だと考えています。至極当たり前のことですが、音楽的に考えてもこの2枚があったからこそ、『EUPHORIA』は今の形に落ち着いたんだと思います。

『ADRENALIZE』がメンバーや最近のファンの間でどのように評価されているのか知りませんが、僕はあの当時も今も傑作の1枚だと考えています。確かに『PYROMANIA』や『HYSTERIA』と比べるとクオリティ的に若干劣るかもしれません。ただ、あの当時の状況を考えてみると見えてくるものがあるのですが、この『ADRENALIZE』がリリースされた1992年って、グランジやヘヴィロック1色だった頃ですよね? NIRVANAPEARL JAMの大ブレイク、METALLICAが1000万枚もアルバムを売ってしまう時代。それまで天下だったBON JOVIやDEF LEPPARDが苦戦を強いられたのは言うまでもありません。この年の秋にリリースされたBON JOVIの4年振り新作『KEEP THE FAITH』は最高全米4位、セールス的にも100万枚程度(当時)だったと記憶しています。ところが、このDEF LEPPARDの『ADRENALIZE』は何と全米初登場1位、セールス的にも300万枚近く売り上げたのです。確かに前作『HYSTERIA』と比べれば700万枚もの開きがあるわけですが、あれは別格ですから。マイナス材料のほうが多かったのに(時代性、メインソングライターのひとりスティーヴ・クラークの急逝など)、これだけの記録を残したことは驚きに値します。

『ADRENALIZE』の良かったところは、1曲1曲がコンパクトになったこと。3~4分台の曲が大半を占め、日本盤を除く海外盤では10曲入りで40分ちょっとでした。このあたりりは時代を意識したかな?とも思いますが、ただ短くなったからといってつまらなくなったのではなく、そのぶんいろんな要素が1曲1曲に凝縮されるようになった気がします。そして、サウンドプロダクション(音の作り/組み立て方)も少しづつラフ/シンプルになりました。このあたりも時代を意識してのことなのか、それともスティーヴの死を期に何かを変えていこうと考えたのか、いろいろ理由があったと思います。

その後、1993年には未発表曲と過去のシングル・カップリング曲で構成された企画盤『RETRO ACTIVE』(全米8位)、1995年には初のグレイテストヒッツ・アルバム(新曲入り)『VAULT』(全米10位)という“スティーヴ在籍時の過去の精算”を4年かけて行いました。そのほかにも『ADRENALIZE』リリース直後にスティーヴの穴を埋める形でヴィヴィアン・キャンベルが加入し、1993年には現メンバーでの初来日公演もありました(僕が初めて観た生DEF LEPPARDはこのタイミングでした)。過去にケリをつけるために、音源でスティーヴ時代を総括しつつ、音楽性を形として残そうとする。その間に彼等は新メンバーと共に新たな道を模索していたのです。

そうして完成したのが『SLANG』(1996年。全米13位)でした。これはかなりの実験作で、当時も今も問題作としてファンの間では語り継がれています。が、そんなに目くじらをたてるほど酷い代物ではなかったですよ? むしろ、このアルバムがなかったら今回の『EUPHORIA』はこういう形にならなかっただろうし。

そう、『SLANG』の実験性は今作にも受け継がれているのです。『SLANG』の特徴は、『ADRENALIZE』から始まった“曲のコンパクト化”にさらに拍車がかかったこと。そして普遍性とは異なる“同時代性”を積極的に取り入れ、DEF LEPPARDなりに消化する。ドラムも機械的なサウンドから、より生に近い音に変化し、この頃からメンバーが個人で書いた楽曲が増えてきた。『ADRENALIZE』までは“チーム”として、“バンド”として1曲1曲を仕上げていたけど、『SLANG』以降、いや、『ADRENALIZE』からのシングル・カップリング曲以降、そういうメンバーが単独で書いた曲が増えていったのです。これにより、メンバー1人ひとりのカラーがさらに濃く浮き上がるようになった。そういう点においては、新加入のヴィヴィアンが単独で書いた「Work It Out」が『ADRENALIZE』からの第1弾シングルになったのは、“新しいDEF LEPPARD”を打ち出そうとした表れだったのかもしれません(楽曲自体かなりの冒険作だったし)。

だけど、この実験はセールス的には失敗に終わります。アルバムはアメリカで当時50万枚程度の売り上げ。ツアーも1996年5月月末からアジア地区にてスタートするも、その年のクリスマスには早くも終了しているはずです。つまり、これ以上プロモーション活動しても意味がない、とレコード会社やマネジメントは判断したわけです。悲しいかな、これが現実なのです。

これは噂ですが、この音楽的実験の失敗を受けてレコード会社は「次作は是非、従来の路線で」と迫ったそうです。大いにあり得る話です。たぶんこの新作『EUPHORIA』が“3部作の完結編”と呼ばれるのは、そうしたレコード会社の策略から始まったことだったのではないでしょうか。確かにここ数年、80年代を席巻したメロディアスロックの復権が望まれているようです。例えば、数年前に全盛期のメンバーで再結成されたJOURNEYのアルバム『TRIAL BY FIRE』はアメリカでチャート3位まで上昇し、シングルもトップ20に入るヒットとなったし。実際、近年アメリカでは80'sハードロックバンドのCDがまた売れているようですし、ラジオでもそういうのを中心にかける専門局が大当たりしてるそうですからね。これを知ったDEF LEPPARDのメンバーは大いに燃えたそうですよ、「俺達がやらずに誰がやる!?」と。「時代がそういうものを求めるなら、開き直ってやろうじゃねぇか! でも、俺達なりに90年代の解釈でやらせてもらうぜ?」ってところでしょうか。

以上、長くなりましたがこの『EUPHORIA』、最初に言った通りあくまで『ADRENALIZE』〜『SLANG』の流れを汲む作品なのです。勿論、作曲チームに80年代の名パートナー、ロバート・ジョン・マット・ラングを迎えたこともあり、“3部作”を彷佛させる楽曲が多いのは確かにあります。特に「Promises」なんて最も顕著な例ですし。でもあの頃と違うのは、やっぱり“楽曲がコンパクト”だという事実。本作も3分台前半の曲が多いし、日本盤なんてボーナストラック含め14曲で53分ですよ? 『HYSTERIA』なんて12曲で62分でしたからね。

嬉しかったのは、ハードな叙情詩的ナンバーが復活したこと。そう、「Paper Sun」ですね。このナンバーのある/なしで、僕的にも受け止め方が変わったんじゃないかって気がしています。こういう作風はある種、スティーヴの色だったはずなのに、“引き出しのひとつ”として今回改めて披露してくれた。しかも、過去の焼き直しで終わることなく、しっかり進化を遂げている。「Promises」と「Paper Sun」、タイプこそ異なりますが、この2曲があるだけで僕はノックアウト確実でした。

さらに、実験的要素も消えたわけではない。「All Night」におけるブラックテイストを臭わせるダンストラック、「Goodbye」みたいなバラードも『SLANG』を通過しなければ書けなかったでしょう。こういう曲が『PYROMANIA』や『HYSTERIA』に入っていたら、確実に浮いていたことでしょう。でも、これらの曲が『EUPHORIA』でまったく浮くことなく自然と収まっているのは、それ以外の曲が間違いなく『ADRENALIZE』~『SLANG』の流れを汲んでいるから。『SLANG』での実験は決して失敗ではなかったのです。

僕には“後ろ向き”とか“過去の焼き直し”には思えないんですよ、『EUPHORIA』って。90年代最後にきていよいよ、集大成的作品が完成したかな、と思っています。

僕らのようにDEF LEPPARDの大ブレイク期を知る人間でも、一部の人にはこのアルバムは「ちょっと(掴みが)弱いかな?」と感じるかもしれません。確かに思春期に聴いたアルバムのほうが印象は強いでしょうからね。でも……判っててもあえて声を大にして言いたいです。








































最高傑作だぜ!? てめぇら、聴きやがれ!!!!!



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投稿: 1999 06 13 08:07 午前 [1999年の作品, Def Leppard] | 固定リンク

1999年5月11日 (火)

DEF LEPPARD『PYROMANIA』(1983)

このサイト始まって以来初の旧譜じゃないかな? とにかく、ここで最初に過去の名盤を取り上げるなら、自分にとって大切なアルバムにしようと思っていたのは確か。が、まさかこの傑作を取り上げようとは、正直夢にも思わなかった(笑)。

何故これを取り上げたのか? 勿論、好きだから。そして、6月2日にいよいよDEF LEPPARD 3年振りのアルバム『EUPHORIA』が発売されるから。何でもこの新作は『PYROMANIA』、『HYSTERIA』に続く3部作(あれ、『ADRENALIZE』『SLANG』の存在は!?)の完結編となるそうで、内容的にも前作『SLANG』のような実験作ではなく、比較的『HYSTERIA』に近い作風になるらしいです。これはこれで嬉しいこと。先日、TVにてジョー・エリオット(Vo)の最新インタビューを観ましたが、そこでも「今、こういうメロディアスな曲が求められている」って言ってたし。もっと早く気づけってぇの(笑)。3年前にこれをやってほしかったわ……って、まだ新作からの楽曲は1曲たりとも聴いてはいないのだけどね(苦笑)。

さて、DEF LEPPARDです。ここにいらっしゃる方々の中でこのバンドを聴いてるって方、いないだろうなぁ……。それを承知で、無理やり書き通すわけですが。

彼等のイメージって、皆さんからするとどういったものなのでしょうか? ただのハードロックバンド? ハードロックにもなりきれないポップバンド? 考えたこともない? まぁ人それぞれでしょうね。

何故このアルバムが僕にとってとても大切な1枚なのか。このアルバムがリリースされたのが1983年。当時はまだ小6だったのですが、本格的に洋楽に目覚め、ラジオで聴いて気に入り、小遣いで買ったシングル盤がDEF LEPPARDの「Photograph」という曲だったのです。当時、確かビルボードのシングルチャート12位くらまで上がったと記憶しています。それをラジオ日本の「全米トップ40」で聴いて気に入り、そして当然のようにアルバムも欲しくなるわけです。何故ならその後、この「Photograph」が収録されたアルバム『PYROMANIA』は多くのヒットシングルを生み出したからです。「Rock Of Ages」や「Foolin'」などなど……結局シングルよりもアルバムを買ったほうが早かったかも(笑)。

アルバムを手にしたのは、それからもっと後の中学入学後。レンタルレコード店の存在を知り、貸出中で何度か店に足を運び、確か4、5回目でようやく借りられたのです。すでにアルバムからは「Rock Rock (Till You Drop)」や「Too Late For Love」もイギリスでシングルカットされており、アルバム10曲中シングル曲が5曲。半分は知ってる曲というだけで、昔はとても嬉しかった記憶があります。今なら知らない曲が多いほうが、初めて接するアルバムは興味がそそられるのですが洋楽を聴き始めの頃ってそういう傾向、なかったですか?

いざアルバムを聴くと、実は結構ハードなバンドなんだということに初めて気づくわけです。それは「Comin' Under Fire」や「Die Hard The Hunter」、「Billy's Got A Gun」といった楽曲がまず耳に残ったから。そして、最初こそ「Photograph」などのシングル曲が好きだったのだけど、アルバムを何度も聴くうちに先に挙げたヘヴィ系の曲をより好きになっていった。もっとも、今聴くとどの曲もメロディがしっかりしていて、かなりポップだけどね。

上京した1990年、すでにアナログLPを所持していたにも関わらず、結局CDでも買い揃えてしまったこの『PYROMANIA』。以来、何度聴いたことか……恐らく僕の音楽人生の中でも5本の指に入るだけの回数を聴いていると思います。ほとんどの曲をそらで歌えるしね。当時も話題になっていたと思うのですが、このコーラスの重ね方がQUEEN以来の衝撃でしたよね? まぁコーラスという点では、次の『HYSTERIA』のほうがさらにすごいことやってるのですが(何せコーラスに100チャンネル以上を使った曲もあるとか)。

ライブはこの頃、まだ観れていません。最初に彼等を観たのは1993年の現メンバーでの初来日(アルバム『ADRENALIZE』での来日)でした。東京公演は結局全部行ったんじゃなかったかな? 何故なら……1991年1月8日にこのバンドのギタリスト、スティーヴ・クラークが亡くなったから。1988年の来日時、確か中間テストか何かが重なって断念したんだよね。本当に後悔したもん、「やっぱり無理してでも行っておけばよかった」って。

おっと、今回は湿っぽい話をするつもりはないです。メロディアスなロックが好きな方で、ハードロックとかそういうことにこだわらず何でも楽しめるよって方に、是非このアルバムを聴いてもらいたいのです。

だってこのアルバム、ある意味旬なので。THE OFFSPRINGの「Pretty Fly」のイントロに何やら英語じゃない言語でカウントをとってる男性の声がありますよね? あれってこのDEF LEPPARDの、このアルバムに収録されてる「Rock Of Ages」のイントロ部分をそのまま使用してるんですよ。きっとTHE OFFSPRINGのメンバーも子供の頃、この曲に夢中だったんだろうね。そういう意味でも、多くの若い音楽ファンに聴いてもらいたい1枚です。

しかし……こんな文でいいのかな?(笑) 伝わるかしら。まぁ、たまにはこういうのもいいかな?



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投稿: 1999 05 11 07:58 午前 [1983年の作品, Def Leppard] | 固定リンク