カテゴリー「Def Leppard」の29件の記事

2020年3月22日 (日)

DEF LEPPARD『THE EARLY YEARS 79-81』(2020)

2020年3月下旬にリリースされたDEF LEPPARDの最新ボックスセット。

今年2020年にアルバムデビュー40周年を迎えたDEF LEPAPRDがこれを記念して、デビュー前夜の1979年から世界的メガヒット目前の1981年までの3年間に焦点を当てた5枚組ボックスセットを制作。1stアルバム『ON THROUGH THE NIGHT』(1980年)、2ndアルバム『HIGH 'N' DRY』(1981年)のリマスター音源に加え、1980年4月26日のオックスフォード公演を収めた未公開ライブアルバム『WHEN THE WALLS CAME TUMBLING DOWN - LIVE IN OXFORD』(DISC 3)、インディーズから発表した『THE DEF LEPPARD E.P.』(1979年)を筆頭に同時期のシングル収録音源(カップリング曲含む)や未公開だったデモ音源を含むDISC 4『TOO MANY JITTERBUGS - B-SIDES AND RARITIES』、1980年のレディング・フェス出演のライブテイクやBBC Radio Oneで放送されたスタジオ・ライブ音源をまとめたDISC 5『RAW - EARLY BBC RECORDINGS』という貴重な音源/楽曲をたっぷり楽しむことができます。

リマスター化された『ON THROUGH THE NIGHT』と『HIGH 'N' DRY』に関しては、2018年に発表された最初のボックスセット『THE COLLECTION: VOLUME ONE』で使用された音源と同じものかなと。初期のCD音源と比較すれば格段に音が良くなっており、ともに迫力の違いが感じられるはずです。

ここで特に注目しておきたいのがDISC 3のオックスフォード公演のライブアルバムでしょう。今やさまざまな時期のライブ音源/アルバムが手に入るDEF LEPPARDですが、デビュー初期のライブアルバムがこういう形で正式リリースされるのはこれが初めてのこと。聴いてもらえばご理解いただけると思いますが、こんなに綺麗な形で録音された音源がなぜ今まで正式に発表されることがなかったのか、本気で理解に苦しみます(笑)。ぶっちゃけ、あとから録音し直したんじゃないの?ってくらい今の耳で聴いてもそのクリアさ、迫力は商品化にふさわしい内容だと思いました。

公演時期(1stアルバム発売から1ヶ月後)からもおわかりのように、演奏されている楽曲は『ON THROUGH THE NIGHT』収録曲が中心。というか、全収録曲(11曲)がすべて披露されております。ですが、このライブCDに収められているのは16曲。つまり、5曲が『ON THROUGH THE NIGHT』未収録曲ということになります。その内訳は、『THE DEF LEPPARD E.P.』のみに収録された「Ride Into The Sun」、シングル「Hello America」のカップリング曲「Good Morning Freedom」といった既発曲に加え、翌年発売の『HIGH 'N' DRY』に収録されることになる「Lady Strange」、本作で初公開となる「Medicine Man」「When The Rain Falls」……後者3曲は、当時ライブでしか聴くことができなかった貴重な楽曲ということになるわけです。

「Lady Strange」は大まかなアレンジはほぼアルバムテイクと同様ですが、コーラスが入らないところなどスタジオテイクとの細かな違いを見つけることができるはずです。で、問題なのが「Medicine Man」「When The Rain Falls」の2曲。これ、聴いてもらえばわかると思いますが、前者が「Rock! Rock! (Till You Drop)」(3rdアルバム『PYROMANIA』収録)、後者が「Let It Go」(2ndアルバム『HIGH 'N' DRY』収録曲)の元ネタなのです。ぶっちゃけギターリフ以外は完全に別モノなので、のちの新作時にメンバー発かプロデューサー発でボツにされ、リフだけを生かして別の曲を作ったということなんでしょう。歌メロは完全に初期のDEF LEPPARDそのものなのですが、のちの完成版と比べるとメロディの抑揚やキーなどの違いに驚くはずです。個人的には「Medicine Man」のイントロ〜メインリフのもっさり加減がツボだったりします(笑)。

DISC 4にはシングルのみで発売された「Wasted」「Hello America」のニック・タウバー・プロデュース版、同じくニック・タウバーが手がけた「Rock Brigade」と「Glad I'm Alive」のアーリー・バージョン(後者は未発表曲かな)という貴重なテイクを収録。「Let It Go」や「Switch 625」「Bringin' On The Heartbreak」の各シングル・エディットというレア・テイクも楽しむことができます。

さらに、DISC 5のBBC音源集も1979年6月および同年10月という、1stアルバム制作前のスタジオ・ライブ音源を聴くことができるので、のちのスタジオ盤やライブ音源と聴き比べてみると面白いのではないでしょうか。さらに、1980年8月のレディング・フェスの音源も聴きどころのひとつ。ここでも「Medicine Man」や「Lady Strange」といった当時の未発表曲が披露されているので、この頃のバンドにとっては気合いの入った新曲だったのかもしれませんね。

『PYROMANIA』以降のレア音源はCD再発時のデラックス盤や『HYSTERIA』(1987年)ボックスセットなどで小出しにされてきたので、あれ以上のものは出てこないと思うので、こういった“作品として楽しめる”ボックスセットはこれが最初で最後かもしれませんね。あとは……ライブ音源か。これはもっとありそうな気がするので、忘れた頃にリリースしてくれるとうれしいかも(笑)。

 


▼DEF LEPPARD『THE EARLY YEARS 79-81』
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2019年11月26日 (火)

DOWN 'N' OUTZ『THIS IS HOW WE ROLL』(2019)

DEF LEPPARDのジョー・エリオット(Vo)が中心となり2009年に結成されたバンド、DOWN 'N' OUTZが2019年10月に発表した3rdアルバム。過去2作はMOTT THE HOOPLEやBRITISH LIONS、イアン・ハンターのカバーが中心だったのに対し、今作は全12曲中11曲がオリジナル曲。過去の作品と作風が逆転した、初のオリジナルアルバムとなります。

DOWN 'N' OUTZはジョーのほか、THE QUIREBOYSのポール・ゲリン(G)&ガイ・グリフィン(G)、元VIXENのジェア・ロス(B)、WAYWARD SONS、元TOKYO DRAGONSのフィル・マティーニ(Dr)、そしてキース・ウェア(Key)という6人からなる、いわゆる“スーパーバンド”のひとつ。もともとは先に挙げたMOTT THE HOOPLE周りのアーティストのカバーを楽しむためのサイドプロジェクトで、これまでに発表した2枚のアルバム(2010年の『MY REGENERATION』、2014年の『THE FURTHER ADVENTURES OF…』)も肩の力が抜けた歌と演奏を楽しむことができ、個人的にも気に入っていた2作品でした(これらは2016年に日本盤もリリース)。

前作から5年ぶりに制作された3rdアルバムは、こういった“カバーする対象”からの影響を色濃く表したオリジナルナンバーで占められており、ちょっと聴いただけでも「70年代のブリティッシュロックバンドの、隠れた名盤」的な匂いを感じ取れるはず。それくらいよく作り込まれた正統派ブリティッシュロック/グラムロックの後継作品なのです。

ジョーが歌っていることで、至るところからDEF LEPPARDとの共通点も見つけることができますが、あそこまで神経質な作り込みは皆無。ロックバンドならではのラフさを残しつつ、そこにQUEENやMOTT THE HOOPLEなど70年代中盤のブリティッシュバンドの優雅さや上品さ(または、ある意味での下品さ)を散りばめた楽曲の数々はさすがの一言です。「Last Man Standing」のような楽曲を聴くと、思わず涙が込み上げてくる……なんていうリスナーも少なくないのでは。

すべてが“ロック”というわけではなく、中には「Music Box」のようなトラディショナルなインスト曲も含まれているし、ゴスペルを思わせるコーラスが印象的な「Walking To Babylon」もある。そして、本作唯一のカバー曲である「White Punks On Dope」(過去にはMOTLEY CRUEもカバーしたTHE TUBESのカバー)があったりと、非常にバラエティに富んだ内容なのです。アメリカ産グラムロックのTHE TUBESですが、DOWN 'N' OUTZの手にかかれば違和感なくブリティッシュの流れで楽しむことができる。この流れも非常に面白かったです。

DEF LEPPARD周りの新作というよりは、古き良き時代のブリティッシュロックの後継者が発表した普遍性の高い1枚として気楽に向き合ってほしい良作。きっとこの先も暇さえあれば引っ張り出して聴きたくなる1枚だと思います。

 


▼DOWN 'N' OUTZ『THIS IS HOW WE ROLL』
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2019年11月25日 (月)

DEF LEPPARD『THE STORY SO FAR: THE BEST OF』(2018)

2018年11月末にリリースされた、DEF LEPPARDの最新グレイテスト・ヒッツ・アルバム。2枚組仕様とDISC 1のみの単品、同時期にデジタルリリースされたオリジナルのクリスマスソング「We All Need Christmas」を加えたアナログ盤の3形態が発売されました。

DEF LEPPARDのグレイテストヒッツ・アルバムはこれまでにも複数発表されておりますが、世界共通の収録内容という点においては本作が初めて。最初のベスト盤『VAULT: DEF LEPPARD GREATEST HITS (1980-1995)』(1995年)は北米とヨーロッパで一部収録内容が異なりましたし、ヨーロッパ&日本向けの『BEST OF DEF LEPPARD』(2004年)と北米向けの『ROCK OF AGES: THE DEFINITIVE COLLECTION』(2005年)もリリース時期および内容が異なるものでした。

そこから13、4年ぶりに制作された新たなグレイテストヒッツ・アルバムは、2005年以降に発表された新録曲……カバーアルバム『YEAH!』(2006年)、オリジナル作『SONGS FROM THE SPARKLE LOUNGE』(2008年)、新曲入りライブアルバム『MIRROR BALL: LIVE & MORE』(2011年)、最新オリジナルアルバム『DEF LEPPARD』(2015年)、Spotify限定シングル『SPOTIFY SINGLES』(2018年)を加えた全35曲にて構成されています。

CD単品(1枚もの)および2枚組仕様のDISC 1は従来のグレイテストヒッツ同様、おなじみのシングルヒットをまとめたもの。そこに『SPOTIFY SINGLES』から「Personal Jesus」(DEPECHE MODEカバー)のリミックス・バージョンを追加した内容で、正直新鮮さは皆無。「Pour Some Sugar On Me」や「Rocket」がMV用に編集されたバージョンではなく、アルバム『HYSTERIA』(1987年)のテイクという点は過去のベストとは異なるところでしょうか。

となると、注目すべきは2枚組仕様のDISC 2ということになるわけでして。「Personal Jesus」以外の“2005年以降に発表された新録曲”はすべてこちらにまとめられており、というか“大ヒットしなかった曲”の総決算的な1枚とでも言えばいいのでしょうか(苦笑)。個人的にはこちらのディスクの内容が新鮮味を持って楽しむことができました。

実験作『SLANG』(1996年)からの楽曲をはじめ『DEF LEPPARD』からのシングル曲、「Promises」や「Bringin' On The Heartbreak」「Tonight」「Stand Up (Kick Love Into Motion)」といったDISC 1から漏れた80〜90年代の中ヒット曲、一般的には駄作として扱われる『X』(2002年)から唯一選ばれ佳作「Now」など、いわゆる“隠れた名曲”が満載なわけです。DISC 1が誰もが知る“DEF LEPPARDのパブリックイメージ”だとしたら、DISC 2は“DISC 1を通過した人に向けた、DEF LEPPARDのディープサイド”とでも言えばいいのかな。とにかく、これまで発表されたグレイテストヒッツ・アルバムの中では一番新鮮味を持って向き合えた1枚でした。

ちなみに、単曲配信された新曲「We All Need Christmas」はアコースティックベースの、シンプルなバラード。昨年よりDEF LEPPARDの過去作がデジタル配信開始となったことで、このように新曲を気軽に配信できるようになったのは、彼らのようにアルバム1枚に5〜10年近くかけてしまうバンドにとっては良い傾向なんじゃないでしょうか。「Two Steps Behind」の延長線上にあるこの曲、ストリングスをフィーチャーした美しいメロディは非常にリラックスして楽しめるもので、今後この季節になったら聴いておきたい1曲になるといいですね。

なお、本作のストリーミングバージョンは、『DEF LEPPARD』からの3曲を除いた全32曲入り。これはリリース元が異なったり契約上のあれこれが原因なんでしょうけど、今や個人でプレイリストを作れる時代。ここに改めて「We All Need Christmas」を含む全36曲の完全版を用意しましたので、こちらでお楽しみいただけたらと。

 


▼DEF LEPPARD『THE STORY SO FAR: THE BEST OF』
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2019年3月16日 (土)

TESLA『SHOCK』(2019)

2019年3月発売の、TESLA通算8作目のオリジナルアルバム(2007年発売のカバーアルバム『REAL TO REEL』および『REAL TO REEL, VOL.2』を含むと10作目)。前作『SIMPLICITY』(2014年)から5年ぶり、再結成後4作目のオリジナル作品となります。ここ数作は自身の自主レーベルTesla RecordsやFrontiers Recordsから発表されていましたが、今作はメジャーのUMe(Universal Music Group)からのリリース。オリジナルアルバムのメジャー流通はGeffen Recordsから最後の作品となった4thアルバム『BUST A NUT』(1994年)以来、25年ぶりとなります。

プロデュースを手がけたのはDEF LEPPARDのギタリスト、フィル・コリン。フィルは2016年発売のライブアルバム『MECHANICAL RESONANCE LIVE!』に追加収録された新曲「Save That Goodness」のプロデュース&共作でクレジットされており、そこからの流れで今作も手がけることになったのかな。そもそも80年代から同じ事務所だったこともあり、付き合いも長いですからね。気心知れたメンツによる、リラックスした制作現場が想像できますし。

フィルは今作でもソングライターとして活躍(一部ギターやコーラスにも参加)。それも影響してか、どの曲も非常によく練り込まれた、ポップでキャッチーなものばかり。全体を通してバラードやミディアムテンポのメロウな楽曲が目立ち、このへんにフィルのポップセンスが反映されているのか、あるいはプロデューサー目線でそういった方向へと導いたのか気になるところです。

オープニングを飾る「You Won't Take Me Alive」のファンキーなギターワークやキャッチーなメロディは非常に耳障りも良く、なおかつTESLAらしいガッツのあるバンドサウンドも維持されており、なかなかの仕上がり。続く「Taste Like」も適度なレイドバック感のあるロックンロールで、そこからピアノ&ストリングスをフィーチャーしたバラード「We Can Rule The World」へと流れる構成は今までありそうでなかったもので、ハッとさせられます。

この曲を含むバラード調の楽曲に導入されたハーモニー/コーラスはこれまでのTESLAっぽくなく、むしろDEF LEPPARDのそれに近いもの。これも取って付けたものという感じではなく、自然とマッチしているので違和感なし。また、バラードも前半〜中盤にいくつかあるものの、後半はロック色の強い構成となっていて、従来のファンも納得させる内容ではないかと。特に初期を彷彿とさせる「The Mission」からラストの「Comfort Zone」までの流れは絶品だと思います。

良い意味での“80年代の黄金期”を現代的にポリッシュしたのが、この『SHOCK』という作品ではないでしょうか。従来の彼ららしさとは異なる、良い意味での“ショック”なポイントも含まれた良作。2019年にこういう作品がどこまで評価されるのか、楽しみなところです。



▼TESLA『SHOCK』
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2018年11月 2日 (金)

DEF LEPPARD『HYSTERIA』PERFORMED IN ITS ENTIRETY & MORE@日本武道館(2018年10月24日)

Img_3716もう1週間経ってしまいましたが、いまだに余韻が抜けないので改めて記録として残しておきます(ベビメタやらポール・マッカートニーやらで記憶が薄まる前に)。

DEF LEPPARD、3年ぶりの来日公演。前回は久しぶりのニューアルバム『DEF LEPPARD』(2015年)発売直後でしたが、今回は傑作『HYSTERIA』(1987年)完全再現+αというHR/HMファン歓喜の内容。そりゃ行かない理由はないですよね。

しかも、前回の来日時は自身の体調が万全ではなく(耳を患い長時間大音量が厳しい状態)、しかもライブ当日に名古屋で取材。開演に20分以上遅れるという失態を犯したこともあり、今回は最初から最後までまるまる堪能したいなと。30分前には武道館入りし、場内で延々流れるブリティッシュロック/ハードロックの名曲群に浸っておりました(ラジオDJ風で、途中「あと◯◯分でライブだよ」みたいな英語アナウンスが入る)。

ステージは非常にシンプル。後方に巨大LEDスクリーン、その前の一段高い位置にドラムセット。ステージ上にはギターアンプの類は一切なし。そういえば、前回の来日時も同じようなことで驚いた記憶が。あと、DURAN DURANのときも同じようなステージセットだったような。最近はこういう形が増えているんですかね。

予定時間から10分ほど遅れて暗転(そういえば、暗転前最後に流れたのはDEPECHE MODE「Personal Jesus」のDEF LEPPARDカバー。自分たちの曲を流すのは斬新でしたね。笑)。『HYSTERIA』収録曲をコラージュしたSEが流れる中、メンバーがステージに登場し、最後にジョー・エリオット(Vo)が現れたところでフィル・コリン(G)が「Women」のギターフレーズを奏でライブ開始。キーは半音下げでしょうか。ライブアルバム&映像作品『VIVA! HYSTERIA』(2013年)と同じキーだったと記憶しています。全体的に音量が抑えめで、ジョーの声も若干聞こえにくいような。高音が厳しいのは今に始まった話じゃないですが、こういった音響のせいもあってサビではジョーの声が聞き取りにくいったらありゃしない。まあそこは、観客の大合唱でフォローするわけですが。

ライブで久しぶりに耳にする「Women」からアルバムテイクの「Rocket」、ポップで小気味良い「Animal」へと順調に流れていき、MCは極力控えめ。4曲目「Love Bites」はさすがに半音下げでも厳しかったのか、1音下げだったのでは?(もっとかも) それでも違和感なく楽しめましたが。そしてライブ終盤の定番曲「Pour Some Sugar On Me」と、5曲立て続けにヒットシングルを演奏……冷静に考えて、なんて豪華なアルバム/ライブなんでしょう。普通のバンドだったら、ヒット曲はライブ全編に散りばめるのに、MCを挟んでさらに続く「Armageddon It」と、ここまでシングル6連発。アナログA面全曲がシングルナンバーって、それどこの『THRILLER』だよ!?って話ですよね。

ここまではライブで耳にする機会が比較的多い楽曲が続きましたが、個人的にはこれ以降が本番。マニアックな楽曲が並ぶアナログB面(M-7〜12)ゾーンに突入です。

Img_3714「Gods Of War」の前にはスティーヴ・クラーク(G/1991年死去)の在りし日の姿がスクリーンに映し出され、涙腺が刺激されます。この頃から演奏全体のボリュームが安定し、大きめになったような記憶があります。フィル・コリンやヴィヴィアン・キャンベル(G)がクールなギタープレイを披露し、リック・アレン(Dr)とリック・サヴェージ(B)がヘヴィなビートでボトムを固める。アルバムで聴ける人工的なサウンドとは異なる、生々しさがむき出しになったライブでのアレンジ、本当に良いです。

そして「Don't Shoot Shotgun」「Run Riot」と久しぶりにライブで演奏される楽曲が続くのですが……残念ながら、序盤と比べると観客のテンションが少しだけ落ちたような気が。シングル曲ではサビでシンガロングが続きましたが、このへんでは(主に自分の周りでは)ほとんどなかったような。が、「Hysteria」では会場の熱量も復活。スクリーンに映し出される過去の写真に、再び胸が締め付けられるのでした。

ライブで聴くと意外と楽しかったダンスチューン「Excitable」を経て、感動のラストナンバー「Love And Affection」へ。「Hysteria」とテンポ感が似ており、かつ曲の並びが近かったのはライブとしては残念だったかもしれません(アルバムで聴くと違和感ないんだけど)。けど、良い曲であることには違いなく、結局70分近くにおよぶ完全再現を経て、バンドは一度ステージを後にします。

12曲で本編終了と、ライブとしては若干物足りなさが残りますが、ここからは「+α」パート。つまり、『HYSTERIA』以外の代表曲のパートになるわけですが、まずいきなり「Let It Go」(2ndアルバム『HIGH 'N' DRY』収録曲)から始まるとは! これにはさすがに驚かされました(大阪や名古屋では「Action」や「Wasted」が演奏されたようですね。これも聴きたかった!)。そこから、この日演奏された楽曲の中でもっとも最新ナンバー(笑。1995年作)「When Love & Hate Collide」へと続き、「Let’s Get Rocked」「Rock Of Ages」「Photograph」と定番ナンバー連発でアンコールを締めくくりました。

全17曲、正味95分程度と最近のライブとしては比較的短いほうかもしれませんが、ヒット曲満載でこのボリュームなら納得がいくといいますか。腹八分目で「また観たい!」と思えるくらいの長さが、実はちょうどいいのかもしれません。2時間半から3時間のライブが当たり前となっていた時代もありますが、アーティストのエゴで(ファン的には不人気な)レア曲にて水増しされるよりはこれでいい気がしました。

バンドは間もなく新たなグレイテスト・ヒッツアルバム『THE STORY SO FAR: THE BEST OF』をリリースしますが、できることなら同作を携え、また来年も来日してほしいな。今回ライブに足を運んだ人は間違いなく、次も行くはずですから。


[SETLIST]
01. Women
02. Rocket
03. Animal
04. Love Bites
05. Pour Some Sugar On Me
06. Armageddon It
07. Gods Of War
08. Don't Shoot Shotgun
09. Run Riot
10. Hysteria
11. Excitable
12. Love And Affection
<ENCORE>
13. Let It Go
14. When Love & Hate Collide
15. Let's Get Rocked
16. Rock Of Ages
17. Photograph




▼DEF LEPPARD『VIVA! HYSTERIA』
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2018年11月 1日 (木)

DEF LEPPARD『RETRO ACTIVE』(1993)

1993年10月にリリースされた、DEF LEPPARD初のコンピレーションアルバム。1991年1月にスティーヴ・クラーク(G)を失い、残されたメンバー4人で5thアルバム『ADRENALIZE』(1992年)を完成させたバンドは、その直後に新メンバーとしてヴィヴィアン・キャンベル(G)を迎えます。そこでバンドは、スティーヴ・クラーク在籍時にひと区切りつけるために、過去のアルバム未収録曲や未発表曲をひとまとめにしたアルバムを作る計画を立てます。

ちょうどそんなタイミングに、映画『ラスト・アクション・ヒーロー』(1993年公開)のサウンドトラックに提供した「Two Steps Behind」がシングルヒット(全米12位)。もともとこの曲も『ADRENALIZE』からのシングル「Make Love Like A Man」に収められていたものに手を加えたもので、当然この『RETRO ACTIVE』に収録。そういう良き流れもあり、アルバム自体も純粋な新作ではないものの全米9位、全英6位という好成績を残しています。

収録曲の大半は『HYSTERIA』(1987年)および『ADRENALIZE』のレコーディングセッションから生まれたものばかりで、アルバム冒頭を飾る「Desert Song」と「Fractured Love」は『HYSTERIA』セッション時に生まれたアウトテイク。スティーヴ在籍時の貴重な音源で、『HYSTERIA』に入れるにはちょっとヘヴィ&シリアスすぎたのかなと。決して悪くはない出来で、普通にアルバムに入っていても違和感はないかも。

3曲目「Action」(ご存知SWEETのカバーで、今ではライブ定番の1曲)以降は、ヴィヴィアン加入後の音源やこのアルバム用にレコーディングされたテイクも混在。同じ曲の別テイクも複数含まれており、「Two Steps Behind」「Miss You In A Heartbeat」はそれぞれ2 バージョン、3バージョン(うち1バージョンはシークレットトラック)と「ちょっと余計じゃない?」と若干のクドさも。とはいえ、それぞれアコースティックバージョンとエレクトリックバージョンでカラーが異なるので、ファンなら楽しめるんじゃないかなと。

のちに発売された『HYSTERIA』30周年盤にも含まれている「Ride Into The Sun」「Ring Of Fire」「I Wanna Be Your Hero」は、本作収録バージョンとは若干ミックスが異なります。また、『ADRENALIZE』日本盤にボーナストラックとして収められた「She's Too Tough」と「Miss You In A Heartbeat」(エレクトリックバージョン)も新たにリミックスが加えられているので、マニアはその違いを聴き比べるのも面白いかもしれませんね。あ、「Ride Into The Sun」は『THE DEF LEPPARD E.P.』(1979年)が初出なので、聴き比べの際にはそちらもお忘れなく。

純然たるシングルコレクションとは異なり、あくまでオリジナルアルバムのアウトテイクやお遊び的楽曲が中心なので、バンドの本筋とは若干異なりますが、逆に軸にあるものがより見えやすい1枚かもしれません。そういう意味では、本作はDEF LEPPARDを語る上で欠かせないアルバムと言えるでしょう。個人的にもお気に入りの上位に入る作品集です。



▼DEF LEPPARD『RETRO ACTIVE』
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2018年10月21日 (日)

DEF LEPPARD『VIVA! HYSTERIA』(2013)

2013年10月に発売された、DEF LEPPARD通算2作目のライブアルバム(およびライブ映像作品)。前作『MIRROR BALL: LIVE & MORE』(2011年)は直近のオリジナルアルバム『SONGS FROM THE SPARKLE LOUNGE』(2008年)を携えたワールドツアー音源に3曲の新曲を追加した作品でしたが、今作はそのタイトルからもわかるようにバンド史上最大のヒット作『HYSTERIA』(1987年)を完全再現した、ラスベガスのHard Rock Hotel And Casinoでのライブを収めたものです。

ライブは『HYSTERIA』収録曲全12曲を、アルバムの曲順どおりに演奏した本編に加え、「Rock Of Ages」「Photograph」のヒットシングル2曲を披露したアンコール2曲の全14曲。2枚組CDのうち、ディスク1にこの模様がまるまる収録されています。

そして、ディスク2には近年あまりライブで演奏される機会の少なかった楽曲群……1stアルバム『ON THROUGH THE NIGHT』(1980年)期の「Good Morning Freedom」や「Wasted」「Rock Brigade」、2ndアルバム『HIGH 'N' DRY』(1981年)から「Mirror, Mirror (Look Into My Eyes)」や「Another Hit And Run」、さらに「Stagefright」や「Action」「Slang」「Promises」などを演奏した、同ライブのオープニングアクト(DEF LEPPARDがDED FLATBIRD名義で登場)のライブ音源も収録。日本盤のみ、「Now」や「When Love & Hate Collide」「Two Steps Behind」など計5曲を約8分のメドレーで披露したアコースティックセットが追加されています。

リック・アレン(Dr)が交通事故で片腕を失い、それに合わせて制作されたスペシャルなドラムセットを用いてレコーディングされた最初のアルバム『HYSTERIA』。その特徴的なドラムサウンドのみならず、何十、何百にもおよぶオーバーダビングによる重厚なサウンドがあのアルバムの特徴でしたが、ライブではそのマジックが完全再現されるわけではありません。ステージにいる5人だけで表現される『HYSTERIA』の楽曲群は、聴く人が聴けばオリジナル盤よりも薄っぺらくて、迫力が弱いものに成り下がっていると感じるかもしれません。

しかし、あの完璧に作り込まれた作品をここまで生々しくよみがえらせたという点においては、オリジナルとはまた違った楽しみ方ができるというのもあります。ドラムサウンドも1987年当時より技術的に向上しており、幾多のライブを重ねてきた彼ららしいアレンジとプレイの妙技もこの作品ならでは。2本のみで再現されるフィル・コリン(G)&ヴィヴィアン・キャンベル(G)のギターアンサンブルと、キーを半音下げながらもなるべく原曲に忠実に歌おうとするジョー・エリオット(Vo)のボーカル、さらに少ないメンバーで再現しようとするコーラスワークは、そりゃあスタジオワークの重厚さには敵いませんが、この隙間のあるアンサンブルも“ザ・ロックバンド”然としていてカッコいいではありませんか。

個人的に印象に残るのは、実はリック・サヴェージ(B)のベースプレイ。アルバムだとシンセベースに置き換えていたりするものも、ここではベースギターで演奏されているので、この低音が気持ち良かったりするんですよね。

間もなく3年ぶりの来日を果たすDEF LEPPARD。ここ日本でも『HYSTERIA』完全再現が実施されるわけですが、まずはこのライブ作品で予習するもよし。ライブを観た人はここで思い出に浸りつつ、復習するのもよし。スタジオ版とは異なるライブバンドならではの魅力を、ここから感じ取ってもらいたいです。



▼DEF LEPPARD『VIVA! HYSTERIA』
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2018年7月25日 (水)

DEF LEPPARD『SPOTIFY SINGLES』(2018)

今年10月に名盤『HYSTERIA』(1987年)再現ライブで3年ぶりの来日を果たすDEF LEPPARD。彼らの動向が今年に入ってから、かなり活発化しているのはご存知のとおりでしょう。1月にUniversal Records時代のカタログがすべてデジタルリリース&ストリーミング配信開始、6月には初期4作にボーナスディスクをつけたボックスセットを発売。そして今回、「Spotify」限定でEPをリリース。それが今回紹介する『SPOTIFY SINGLES』です。

この『SPOTIFY SINGLES』は2016年頃から始まったサービスで、ニューヨークにあるSpotify Studioでさまざまなアーティストが自身の楽曲とカバー曲を1曲ずつレコーディングするという企画。過去にはテイラー・スウィフトやエド・シーラン、CHVRCHES、SUPERORGANISMなどが参加し、最近も日本からもCorneliusが参加して話題を集めたばかりです。

この企画にHR/HM系バンドが参加することは珍しく、調べてみたらGRETA VAN FLEETくらいしか見当たりませんでした。なので、積極的にこういった企画に加わることを考えると、今のDEF LEPPARDのスタンスがある程度見えてくるのではないでしょうか。

DEF LEPPARDがレコーディングしたのは、『HYSTERIA』からタイトルトラックの「Hysteria」と、同郷イギリスのDEPECHE MODEのヒット曲「Personal Jesus」という意外なセレクト。前者はアルバム再現ライブをやっていること、代表曲のひとつということを考えれば頷ける話で、アレンジ的にもダウンチューニングされた現在のライブバージョンをそのままレコーディングしています。

で、問題は後者。DEF LEPPARDが取り上げるカバー曲といえば、過去に発表したカバーアルバム『YEAH!』(2006年)では自身のルーツに当たるアーティストばかりで、同時代に活躍する世代の近いアーティストの曲はあまり音源に残していないはず。ライブではOASISNIRVANAなどをワンフレーズだけカバーすることもありましたけどね。そういった意味でも、この音源は非常に貴重なものと言えるでしょう。

過去にはMARILYN MANSONカバーしたこの曲。DEF LEPPARDバージョンのアレンジも比較的原曲に忠実で、コーラスの入れ方含め同曲に対する愛情が感じられるものになっています。もともと半分電子ドラムのような編成のバンドということもあり、こういったエレクトロ調の楽曲をカバーするのはDEF LEPPARDに合っているのかもしれません。終盤のギターソロの応酬のみ、彼らなりのこだわりが見え隠れし、そこも微笑ましいかな。

こういった選曲ができるのも、90年代半ばに周りから迷作、駄作と叩かれた『SLANG』(1996年)を経験したからこそ。そう思えば、あれも重要な歴史だと言えるのではないでしょうか(僕は彼らの歴史に欠かせない重要作だと思っていますが)。

たった2曲という物足りなさこそあるものの、こういった企画ならぜひほかのバンドにも挑戦してもらいたいところ。どんなカバー曲を取り上げ、どんなアレンジを施すのか、センスが試されますしね(そもそもDEF LEPPARDのカバーアレンジにセンスがあるのかという問題もあるけど、それは見なかったことにします)。



▼DEF LEPPARD『HYSTERIA』
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2018年1月20日 (土)

DEF LEPPARD『ON THROUGH THE NIGHT』(1980)

DEF LEPPARDの過去のカタログが昨日1月19日から、デジタルデータでの販売およびサブスクリクションサービスでのストリーミング配信が開始されました。(参照:こちら

1980年のメジャーデビューから30年近く在籍したMercury/Island Records時代の音源に関しては、しばらくバンドのコントロールが効かない状況で、手元に取り戻した『SLANG』(1996年)以外は配信で手軽に聴くこともできず、バンドは苦肉の策として「Pour Some Sugar On Me」などいくつかの音源を再レコーディングして配信するなどしてファンのニーズに応え続けてきました。10年以上にわたり動いてきたこの件も、昨日で一件落着。個人的にもCDラックやハードディスクから彼らの音源を引っ張り出す手間が省けてありがたいですし、何よりも彼らの黄金期をリアルタイムで知らない若いリスナーにも手軽にDEF LEPPARDのカタログが楽しめるのは非常に大きな一歩だと思うのです。

ということで、今回は当初計画していた更新予定から、今月2枚目のDEF LEPPARDのアルバム紹介に変更することにしました。

今回紹介するのは、1980年3月に本国イギリスでリリースされたDEF LEPPARDのメジャー1stアルバム。彼らは前年の1979年1月に3曲入りEP『THE DEF LEPPARD E.P.』を自主レーベルから発売。同年にメジャー契約を果たすと、11月にはシングル「Wasted」でメジャーデビュー。当時はIRON MAIDENSAXONなどをはじめとする、イギリス出身の若手HR/HMバンドたちによる新たなムーブメント=New Wave Of British Heavy Metal(NWOBHM)が勃発し始めたタイミングで、サウンドのテイスト的にはヘヴィメタルとは異なるものの、DEF LEPPARDもこの流れに取り込まれて紹介される機会が増えていきました。

今このアルバムを聴き返すと、『HYSTERIA』(1987年)以降のデジタル色の強いポップなハードロックサウンドとは一線を画する、生々しくてアグレッシヴな印象を受けます。そりゃあリック・アレン(Dr)も健康体でしたし、当時はまだ16歳そこそこでしたし。メンバーの多くが20歳前後だったことを考えれば、この躍動感とフレッシュさは納得のいくものです。

また、王道ブリティッシュハードロックのスタンスを保ちながらも、「Rock Brigade」や「Hello America」などではアメリカナイズされた(と言われた)ポップさも積極的に導入している。もちろんこのへんもブリティッシュっちゃあブリティッシュなんですが、あの当時はこういったメジャー感に対して「アメリカかぶれ」なんて揶揄されたのかもしれませんね。今聴くとそんなにアメリカンな印象も受けないのですが。

上記のポップなハードロックはのちの彼らのヒット曲につながっていくと思うのですが、と同時に「It Could Be You」や「Wasted」「Rocks Off」のようなストレートなハードロックもあれば、「Sorrow Is A Woman」みたいに叙情的な楽曲、「When The Walls Came Tumbling Down」「Overture」といったプログレッシヴなハードロックも存在する。結局、次作以降の“らしさ”の原点がぎっしり詰まった、原点と呼ぶにふさわしい1枚なんですよね。彼らの代表作をすべて聴き終えてから本作に戻ると、非常に納得できる内容/作風なんじゃないかと思います。

今の彼らのこの勢いを求めようとは思いませんが、もしできることなら……今の彼らが表現する『ON THROUGH THE NIGHT』完全再現ライブというのも観てみたい気がします。実現しないものですかね?



▼DEF LEPPARD『ON THROUGH THE NIGHT』
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2018年1月 7日 (日)

DEF LEPPARD『SONGS FROM THE SPARKLE LOUNGE』(2008)

2008年春にリリースされた、DEF LEPPARD通算9枚目のオリジナルアルバム(カバーアルバム『YEAH!』を含めると10枚目のスタジオ作)。『YEAH!』から2年ぶりと短期間で発表された印象がありますが、オリジナル作品となると『X』(2002年)から6年ぶりと、80年代半ばから続いた3〜4年間隔を大幅に塗り替える長期ブランクなんですよね。もっとも、『X』での迷走ぶりを考えればこれだけのブランクが必要だったのかもしれませんが。

『YEAH!』で自身のルーツを振り返ったバンドは、この新作で非常にシンプルな視点に立ち返ります。それはつまり、「DEF LEPPARDらしさ」を踏まえつつも「ブリティッシュロックとは何か? 自分たちは何が好きでロックバンドを始めたのか?」という原点だったわけです。そうした結果、『HYSTERIA』(1987年)的な人工感や作り込みとは真逆の、オーガニックでシンプルな作風へと回帰したのです。

実際、本作に収録されている楽曲はすべて3〜4分台。長くても4:17ですし、全11曲でトータル39分というのも彼らの全キャリアで最短。そもそも、曲名からして「Go」とか「Love」とか「Tomorrow」とかシンプルなものばかり。時代的にもそういったサウンドに回帰しつつあったタイミングだったのかな、今振り返ってみると。

楽曲自体は、『YEAH!』の流れで聴くと非常に合点のいく作風。いわゆるHR/HMというよりは、70年代のブリティッシュロックを軸にしながら彼ららしいフレーバーを振りまいたブリティッシュ“ハード”ロック。カントリーシンガーのティム・マッグロウをフィーチャーしたロックンロール「Nine Lives」みたいなアメリカンなものもありますが、基本的には「Love」で示した方向性が本当にやりたいことなのかなと。もちろん、「Go」にしろ「Nine Lives」にしろ「C'mon C'mon」にしろ、従来の彼ららしさがにじみ出た楽曲もありますが、それらですらよりシンプルにすることで以前とは違うカラーを持ち始めているし。そういう意味では、『SLANG』(1996年)から装飾を剥ぎ取った姿と言えなくもないかも。

「Bad Actress」のようなファストナンバーでさえ、ハードロックというよりはグラムポップ的なカラーが強まっているし、比較的モダンな「Gotta Let It Go」もこのアルバムに入ると不思議と70年代的な香りが感じられる。また、彼ら特有のパワーバラードが皆無で、バラードらしいバラードが先の「Love」程度というのも本作の特徴といえるでしょう。DEF LEPPARDがロックバンドとして起死回生を目指した結果、こういう作品にたどり着いたという事実はすでに面白いですし、出来上がったアルバムのユニークさもまた面白い。そして本作が久しぶりに全米TOP10入り(5位)を果たしたという事実も、実に興味深い。

ただ、残念ながら彼らはこのアルバムを最後にメジャーレーベルから離脱。以降は自分たちのレーベルからリリースを続けています。結果、さまざまな権利関係で彼らの諸作品がデジタル配信されていないという事実を考えると、非常に残念でなりません。本作こそ、もっと多くの人に聴かれて再評価されるべき1枚なのに……。

P.S.
1月19日からDEF LEPPARDのカタログ一式のデジタル配信およびストリーイング配信がスタート。これにより、名盤の数々を手軽に楽しめるようになりました。メンバーも喜んでいるようで、本当によかった。



▼DEF LEPPARD『SONGS FROM THE SPARKLE LOUNGE』
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