2018年1月14日 (日)

SOULFLY『SOULFLY』(1998)

1998年春にリリースされた、マックス・カヴァレラ(元SEPULTURA)による新バンドSOULFLYのデビューアルバム。SEPULTURAを実質追い出されたマックスは、そのSEPULTURAの直近作『ROOTS』(1996年)で試みたトライバルなヘヴィロックをさらに進化させた音楽をこのバンドで表現。つまり、傑作と言われる『ROOTS』の直系の続編と呼べる内容が本作ということができるわけです。

プロデュースは『ROOTS』と同じくロス・ロビンソンが担当。この頃にはKORNでひと山当て、さらにLIMP BIZKITのデビュー作なども当てて知名度を高めたあと。そのロス・ロビンソンとマックス本人の人脈もあり、本作にはFEAR FACTORYのバートン・C・ベル&ディノ・カザレス、LIMP BIZKITのフレッド・ダースト&DJリーサル、DEFTONESのチノ・モレノ、SKINDREDのベンジー・ウェッブなどヘヴィ/ラウドロックシーンの著名アーティストたちがゲスト参加しています。

オープニングの「Eye For And Eye」のアグレッシヴさに、本作は『ROOTS』以上に激しいアルバムになるんじゃないか?とワクワクすることでしょう。「Tribe」「Bumba」のようなトライバルなビートを用いた楽曲もあれば、「First Commandment」のようにダンサブルな楽曲もある。そしてバンド名を冠した「Soulfly」では民族音楽に接近したインストゥルメンタルナンバーを楽しめる。確実に『ROOTS』の延長線上にあるのですが、そことは違う香りもする。

例えば『ROOTS』がヘヴィさという点に重きを置いたとするならば、この『SOULFLY』はもうちょっと軽やかさが重視されているように感じます。それはテンポ的なこともそうだし、リズムの取り方ひとつにしても『ROOTS』にはないものを感じる。もちろんマックス以外のメンバーが違うんだから、そのへんが変わってくるのは当たり前の話なのですが、ここからまた新しい何かが始まる。そういう変化の兆しを強く実感させる序章的作品集なのかもしれません。

事実、本作を起点にSOULFLYはさらなる変化を遂げていきますし、気づけばSEPULTURAとは異なる道を進み始めていた。一方のSEPULTURAも新たなシンガーを得たことで以前とは異なる道を歩み始める。良い意味で、誰ひとりとして『ROOTS』を引き継ごうとしていない。つまり視点を変えると、マックスにとって本作は『ROOTS』を引きずりつつも決別しようとしている、そんな転換期の1枚とも受け取ることができるわけです。

『ROOTS』が出来すぎたアルバムだっただけに、そこからどう進化させていくか。その問いかけとひとつの回答が、このアルバムの中に示されているのではないでしょうか。リリースから20年経った今、このアルバムを聴くと改めてそんなことを考えてしまいます。



▼SOULFLY『SOULFLY』
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投稿: 2018 01 14 12:00 午前 [1998年の作品, Deftones, Fear Factory, Limp Bizkit, Sepultura, Soulfly] | 固定リンク

2018年1月 8日 (月)

祝ご成人(1997年4月〜1998年3月発売の洋楽アルバム20枚)

新成人の皆さん、おめでとうございます。2014年度に初めて執筆したこの“洋楽版成人アルバム”企画、今回で4回目を迎えます。この1月に成人式を迎えたの皆さんが生まれた年(学年的に1997年4月〜1998年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れがある作品のうちSpotifyやAppleMusicで試聴可能な作品を20枚ピックアップしました。どれも名盤ばかりなので、もし聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にチェックしてみてはどうでしょう。

作品の並びはすべてアルファベット順です。(2014年度の新成人編はこちら、2015年度の新成人編はこちら、2016年度の新成人編はこちらです)


Björk『HOMOGENIC』(Amazon

THE CHEMICAL BROTHERS『DIG YOUR OWN HOLE』(Amazon

CORNERSHOP『WHEN I WAS BORN FOR THE 7TH TIME』(Amazon

DEFTONES『AROUND THE FUR』(Amazon

EMPEROR『ANTHEMS TO THE WELKIN AT DUSK』(Amazon)(レビュー

FAITH NO MORE『ALBUM OF THE YEAR』(Amazon

FOO FIGHTERS『THE COLOUR AND THE SHAPE』(Amazon)(レビュー

LIMP BIZKIT『THREE DOLLAR BILL, Y'ALL$』(Amazon)(レビュー

MADONNA『RAY OF LIGHT』(Amazon

METALLICA『RELOAD』(Amazon)(レビュー

MOGWAI『YOUNG TEAM』(Amazon

OASIS『BE HERE NOW』(Amazon)(レビュー

PORTISHEAD『PORTISHEAD』(Amazon

PRIMAL SCREAM『VANISHING POINT』(Amazon

THE PRODIGY『THE FAT OF THE LAND』(Amazon

RADIOHEAD『OK COMPUTER』(Amazon)(レビュー

RAMMSTEIN『SEHNSUCHT』(Amazon

SPIRITUALIZED『LADIES AND GENTLEMEN WE ARE FLOATING IN SPACE』(Amazon

THE VERVE『URBAN HYMNS』(Amazon)(レビュー

THE WiLDHEARTS『ENDLESS, NAMELESS』(Amazon)(レビュー


残念ながらセレクトから漏れた作品も多いです。以下、主だった作品をざっと羅列します。

ARTENSION『PHOENIX RISING』
BLACK GRAPE『STUPID STUPID STUPID』
THE BRIAN JONESTOWN MASSACRE『GIVE IT BACK!』
BRUCE DICKINSON『ACCIDENT OF BIRTH』
THE CHARLATANS『TELLIN' STORIES』
CHEAP TRICK『CHEAT TRICK』
CHUMBAWAMBA『TUBTHUMBER』
COAL CHAMBER『COAL CHAMBER』
CURSIVE『SUCH BLINDING STARS FOR STARVING EYES』
DEPECHE MODE『ULTRA』
DEVIN TOWNSEND『OCEAN MACHINE: BIOMECH』
DREAM THEATER『FALLING INTO INFINITY』
DURAN DURAN『MEDAZZALAND』
ERIC CLAPTON『PILGRIM』
FEEDER『POLYTHENE』
GAMMA RAY『SOMEWHERE OUT IN SPACE』
THE GET UP KIDS『FOUR MINUTE MILE』
GREEN DAY『NIMROD』
THE HELLACOPTERS『PAYIN' THE DUES』(レビュー
THE HIVES『BARELY LEGAL』
IN FLAMES『WHORACLE』
INCUBUS『S.C.I.E.N.C.E.』
INXS『ELEGANTLY WASTED』
JANET JACKSON『THE VELVET ROPE』
JESUS JONES『ALREADY』
JON BON JOVI『DESTINATION ANYWHERE』
JUDAS PRIEST『JUGULATOR』
KISS『CARNIVAL OF SOULS』(レビュー
KMFDM『SYMBOLS』
LED ZEPPELIN 『BBC SESSIONS』
MEGADETH『CRYPTIC WRITINGS』(レビュー
MORRISSEY『MALADUSTED』
MOTLEY CRUE『GENERATION SWINE』(レビュー
NAPALM DEATH『INSIDE THE TORN APART』
NASHVILLE PUSSY『LET THEM EAT PUSSY』(レビュー
OCEAN COLOUR SCENE『MARCHIN' ALREADY』
PARADISE LOST『ONE SECOND』
PAUL McCARTNEY『FLAMING PIE』
PRIMUS『BROWN ALBUM』
PULP『THIS IS HARDCORE』
THE ROLLING STONES『BRIDGES TO BABYLON』
THE SEAHORSES『DO IT YOURSELF』
STEREOPHONICS『WORD GETS AROUND』
SUPER FURRY ANIMALS『RADIATOR』
SUPERGRASS『IN IT FOR THE MONEY』
THE TEA PARTY『TRANSMISSION』
TEENAGE FANCLUB『SONGS FROM NORTHERN BRITAIN』
TESTAMENT『DEMONIC』
THIRD EYE BLIND『THIRD EYE BLIND』
TRAVIS『GOOD FEELING』
VAN HALEN『VAN HALEN III』
VOIVOD『PHOBOS』
W.A.S.P.『KILL.FUCK.DIE』
WHITESNAKE『RESTLESS HEART』
YNGWIE MALMSTEEN『FACING THE ANIMAL』


1995年から1996年初頭がブリットプップの最盛期と一昨年のブログに書き、続く1996年から1997年にかけてはその最盛期から末期に向かっていく過程と昨年のブログに書きました。では1997年から1998年にかけてはどういう年だったかといいますと、イギリスに関してはその末期の中からいくつもの名盤が誕生した“ギリギリ”のタイミングだったのかなと。OASISが『BE HERE NOW』で最大瞬間風速を見せたり、THE VERVEが国民的メガヒット作『URBAN HYMNS』を、THE CHARLATANSが起死回生の1枚『TELLIN' STORIES』をそれぞれドロップしたのが1997年でした。

そうそう、忘れてはいけないのがRADIOHEAD『OK COMPUTER』の存在ですね。この1枚の誕生が、それ以降のロックシーンを大きく変えたのは間違いない事実です。同じように、アルバムごとに変化を繰り返すPRIMAL SCREAMも『VANISHING POINT』でダブに接近したのは、非常に興味深い事象でした。そんなタイミングにSPIRITUALIZEDが『LADIES AND GENTLEMEN WE ARE FLOATING IN SPACE』で大注目を集めたり……なんだかんだけ、豊作の1年なんですよね。

さらにTHE CHEMICAL BROTHERSやTHE PRODIGYといったデジタル系アーティストが頭角を現し、特に後者は全米1位を獲得するという最大のハプニングまで引き起こすわけですから。そのTHE PRODIGY『THE FAT OF THE LAND』、アメリカではマドンナのレーベルからのリリースでしたね。さらにマドンナは『RAY OF LIGHT』という名盤を発表して、何度目かの黄金期を迎えたり……このへんも改めて振り返ると、いろいろ面白かったりします。

アメリカではLIMP BIZKITやINCUBUS、DEFTONESによってラウドロック/ヘヴィロックに新たな潮流が見え始めたタイミング。ドイツからはRAMMSTEINが全米進出を果たすなど、2000年代に向けてヘヴィ系が再編されていくきっかけの1年だったように思います。

方やHR/HMシーンに目を移すと、JUDAS PRIESTやVAN HALENといった大御所バンドが新たなフロントマンを迎えた新作を発表。選外でしたが、IRON MAIDENも新ボーカリストを含む編成で2作目を発表した時期でもありました。かと思えば、MOTLEY CRUEはヴィンス・ニールが復帰してオリジナル編成で8年ぶりのアルバム『GENERATION SWINE』をリリースしたり、W.A.S.P.もクリス・ホルムズが復帰して『KILL.FUCK.DIE』を発表したり、WHITESNAKEも8年ぶりの新作『RESTLESS HEART』を発表するも解散を宣言したり……あ、そうそう。KISSがオリジナル編成で復活したのもこの頃でしたね。こちらもこちらで、次のフェーズに突入するための過渡期だったと言えます。

そういえば、ミュージシャンの訃報が続いたのもこの時期でしたね。1997年は3月にノトーリアス・B.I.G.が射殺されたのを筆頭に、5月にジェフ・バックリー、6月にロニー・レーン、8月にフェラ・クティ、11月にINXSのマイケル・ハッチェンス、年明け1998年2月にはTHE BEACH BOYSのカール・ウィルソン、同じく2月にファルコが亡くなっております。個人的にはノトーリアス・B.I.G.とジェフ・バックリー、マイケル・ハッチェンス、ファルコの死が特に印象に残っています。

ちなみに日本の音楽シーンにおける1997年4月〜1998年3月といいますと、ちょうどCDの売り上げがピークに達したタイミング。引き続きTK(小室哲哉)プロデュース作品のヒット連発に加え、SPEEDやGLAYがメガヒットを飛ばし、KinKi KidsがCDデビュー。LUNA SEAの1年間活動休止に伴い、RYUICHIが河村隆一名義でソロヒットを連発させ、T.M.Revolutionが「HIGH PRESSURE」で本格的ブレイク。1997年末にはX JAPANの解散もありましたが、年明け1998年1月にはモーニング娘。、2月にはMISIAがメジャーデビューを果たしました。さらに、1997年7月には日本で最初の本格的ロックフェス『FUJI ROCK FESTIVAL』がスタートしています。

最後に。ここではピックアップしませんでしたが、1997年で特に印象に残っている1曲を紹介して、この記事を締めくくりたいと思います。



▼HANSON『MIDDLE OF NOWHERE』
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投稿: 2018 01 08 12:00 午後 [1997年の作品, 1998年の作品, Björk, Chemical Brothers, The, Cornershop, Deftones, Emperor, Faith No More, Foo Fighters, Hanson, Limp Bizkit, Madonna, Metallica, Mogwai, Oasis, Portishead, Prodigy, The, Radiohead, Rammstein, Spiritualized, Verve, The, Wildhearts, The, 「20年前」] | 固定リンク

2017年7月15日 (土)

TEAM SLEEP『WOODSTOCK SESSIONS VOL.4』(2015)

DEFTONESのチノ・モレノ(Vo)は前回紹介した✝✝✝以外にも複数のプロジェクトを抱えていますが、その中でも比較的長く続いているのが、このTEAM SLEEPかもしれません。

結成は2000年。ちょうどDEFTONESが『WHITE PONY』をリリースした時期にあたります。それから5年後、セルフタイトル作となる1stアルバムをメジャーから発表しますが、以降10年近くは完全に凍結していたようでした。

今回紹介するアルバムはTEAM SLEEP名義では通算2作目の作品で、タイトルどおりウッドストックにあるスタジオでライブレコーディングされた音源から構成。ライブといっても観客の声は抑え気味で、基本的にはスタジオセッションを一部のファンが観覧しているといったところでしょうか。

全9曲中5曲が1stアルバムの楽曲で、その合間にここでのみ聴くことができる最新のインストナンバーなどが挿入されています。約40分絶え間なく続くサウンドスケープは圧巻の一言。15曲入りで50分超だった1stアルバムに手を出すにはちょっとハードルが高すぎるというDEFTONESファンには、とっつきやすい1枚かもしれません。

サウンド的にも『WHITE PONY』以降のチノがバンドで表現しようとしていたもうひとつの要素……ポストロックやアンビエント/サイケのカラーが色濃く表れているし、✝✝✝で表現されたダークでゴシック調のエレクトロポップとは異なりながらも、“もしかしたら、これもまたDEFTONESが進んでいたかもしれない道”と実感させられるのではないでしょうか。

バンドサウンドが軸になっているという点でも、本作は✝✝✝よりもとっつきやすいかもしれません。特に『OK COMPUTER』期のRADIOHEAD、MOGWAIや90年代以降のKING CRIMSONあたりが好きなロックリスナーにはピンとくるものがあるのではないでしょうか。

こういったサイドプロジェクトが、いかにその後の『GORE』(2016年)制作に影響を与えたかを想像するだけで、個人的にはとても興味深いものがあります。



▼TEAM SLEEP『WOODSTOCK SESSIONS VOL.4』
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投稿: 2017 07 15 12:00 午前 [2015年の作品, Deftones, Team Sleep] | 固定リンク

2017年7月14日 (金)

✝✝✝ (CROSSES)『✝✝✝』(2014)

DEFTONESのチノ・モレノ(Vo)が幼少期からの友人であるFARのショーン・ロペス(G)、そしてチャック・ドゥーム(B)の3人で2011年からスタートさせたサイドプロジェクト・✝✝✝(“CROSSES”と読む)。2枚のEPを経て2014年に完成させたのが、このセルフタイトルのフルアルバムです。

DEFTONESでトライしているダークでゴシックな作風はそのままに、サウンド面をそのままエレクトロに置き換えて表現したのがこの✝✝✝と言えるでしょう。ヘヴィロック的な激しさを伴う楽曲もあるにはあるし、曲によってはスクリームも取り入れられていますが、それはほんの味付け程度。基本的にはダウナーでメロウな世界観が展開されています。

過去に発表された2枚のEP収録曲をそのまますべて収録したほか、新たに録り下ろされた新曲5曲を加えた全15曲から構成されているという点においては、結成から2014年時点での集大成と呼べるでしょう。トラックリストも非常に考えられているように見えますが、実は1曲目から1st EP収録曲、2nd EP収録曲、新曲のサイクルを繰り返して収められているという不思議な構成。それでも単なる寄せ集めには感じられないのは、1曲1曲が独立した世界観を持っているからでしょうか。

もともとチノのルーツにはDEPECHE MODEあたりからの影響が見え隠れしていたし、実際DEFTONESでDEPECHE MODEのカバーにも挑戦していましたが、こうやって打ち込み主体のサウンドにトライすると、やはりそういう方向性になってしまうのですね。もちろん、単なるDEPECHE MODEオマージュでは終わっておらず、そこにはシューゲイザーやドリームポップ、あるいはトリップホップあたりからの影響も色濃く表れている。DEFTONESではテイストとして取り入れていた要素を、ここではサウンドの軸として全面に打ち出しているのは大きない違いと言えます。

同じシンガー、違うバンドメンバーではあるものの、DEFTONESと✝✝✝がまったくの別モノと思えないのも事実。それは“スタート地点は同じなのに、そこから枝分かれした道、進んだ道が異なることでゴールが違った”だけの話なんでしょうね。そしてチノが✝✝✝というプロジェクトを経て、DEFTONESで『GONE』(2016年)という力作を完成させたという点も、非常に興味深いのではないでしょうか。



▼✝✝✝ (CROSSES)『✝✝✝』
(amazon:海外盤CD / MP3

投稿: 2017 07 14 12:00 午前 [2014年の作品, Crosses (✝✝✝), Deftones] | 固定リンク

2016年12月30日 (金)

DEFTONES『GORE』(2016)

前作『KOI NO YOKAN(恋の予感)』から3年半ぶり、通算8枚目のオリジナルアルバム。チャート的には2003年の4thアルバム『DEFTONES』と同じく、全米2位という高順位を記録しており、イギリスでも過去最高の5位にランクインし、オーストラリアやニュージーランドでは初の1位に輝くなど世界中で好意的に受け入れられた1枚のようです。

2000年の3rdアルバム『WHITE PONY』が大成功したことで、以降の作品ではファンから「第二の『WHITE PONY』」を望む声が増えたようですが、バンドは『DEFTONES』、『SATURDAY NIGHT WRIST』(2006年)と作品ごとにその音楽性を少しずつ進化させていきます。しかし、『DIAMOND EYES』(2010年)と前作『KOI NO YOKAN』ではその進化が若干停滞していたように感じられました。特に『KOI NO YOKAN』に関しては個人的にあまりピンとこなかったこともあって、これまでの作品の中で聴く頻度がもっとも低かったと言わざるをえません。

それもあって正直、今回の『GORE』にもあまり過度な期待はしていなかったんです。ところが、アルバムタイトルの『GORE(=血糊や流血、暴力や殺人、あるいは醜いものを意味する)』というタイトルになぜか惹かれ、心のどこかで少しだけ期待していた自分もいました。

今作のリリースに際し、チノ・モレノ(Vo, G)は本作を「the singer playing Morrissey to the guitarist's Meshuggah」と表現。それも納得の内容だと思いました。いわゆるサンプリング要素を最小限に抑え、ギターを軸にしたサウンドメイキング(しかも要所要所で低音を利かせたプレイ)はMESHUGGAHのそれに通ずるものがありますし、そんな不穏なバンドサウンドにモリッシーのごとくポップでキャッチーな歌メロが乗る。聴きやすさという点においては、ここ数作で一番ではないでしょうか。

いわゆるヘヴィメタルやヘヴィロックというよりも、ゴシックロックやオルタナティヴロック寄り。今までの作品もその側面を持ちつつ、両者の要素をバランス良く配置していた印象が強いですが、今作はそこから一歩踏み出したというか、振り切った印象が強い。ギターソロ(しかもALICE IN CHAINSのジェリー・カントレルによるもの)が入る「Phantom Bride」みたいな曲が突如飛び出すのも、そういう理由からかもしれません。

だから、初期の彼らを愛好するファンからは否定的な意見が多いのも理解できるんです。別にこのアルバムを「メタル/ラウドシーンからの脱却」とか「メタルの新たなスタイル」とか呼ぶつもりはありません。でも、ここからまた何かが始まるのは間違いない事実。決して派手なアルバムではないし、最高傑作なんて言うつもりもありません。しかし、不思議と何度も何度も聴き返したくなる。そんなスルメ的強さを持った作品であることだけは、間違いない事実だと思います。実際、ここまで聴き返してるのは『WHITE PONY』以来かもしれません。



▼DEFTONES『GORE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 12 30 12:00 午前 [2016年の作品, Deftones] | 固定リンク

2004年2月28日 (土)

DEFTONES『DEFTONES』(2003)

前作「WHITE PONY」から約3年半振りに届けられた、DEFTONES通算4作目のオリジナルアルバム「DEFTONES」。この時期にセルフタイトルのアルバムを発表するということは、恐らくそれなりに自信があるのか、それともこれまでの活動の集大成となるような作品になるのか‥‥とにかく前作があまりにも恐ろしい傑作だったこともあり(そして予定されていたフジロックのキャンセル等、未だに大ブレイク後の来日が果たせていない事等も付け加えて)いろいろ期待していたのですが‥‥ま、良くも悪くも「前作の延長線上」にある作風といえるでしょう。

ニューメタルとかスクリーモとかいろいろ呼び名はあると思うんですが、こういった「ポストロックとのクロスオーバー」的サウンドを実践した先駆者として、今後後続達との差別化を図るためにどういう方向に進んでいくのか。この3年間に所謂「ニューメタル」と呼ばれるタイプのバンドは飽和状態に入り、平凡なバンドはどんどんと消えていき、成功を収めたバンドは更に自らの個性に磨きをかけ、独自の方法論で新作をリリースしていく中、このDEFTONESだけは沈黙を守り続けていたような思えます。海外からツアーやフェス等に参加した等の情報は伝わってきたものの、やはり前作に伴う来日公演が実現しなかったことから、ここ日本では殆ど盛り上がりに欠け、未だに「どこがそんなに凄いのか!?」といった感じで静止するロックファンが多いのではないでしょうか。考えてみれば過去、彼らが来日した際にはクアトロ・クラスでのツアーでしたからねぇ。それだけ観た人が限られるわけで‥‥だからこそ、フェスのような大舞台で彼らの魅力を余す事なく見せつけて欲しかったんですけどねぇ(結局、この「DEFTONES」リリースから1年近く経った今現在においても、来日は実現していません)。もしかしたら彼らって、'01年までのTOOLに近いものがあるのかもしれませんね。

そんな彼らの新作。悪いわけがない。いや、普段ヘヴィロックやラウド系をバンバン聴いてるファンにとっては、この程度のラウドさは日常茶飯事でしょう。しかし、やはり最近この手のバンドを聴く機会が少なくなった自分からすると、良い意味で聴きやすいサウンドなんですね。勿論、依然ラウドなサウンドには違いないのですが、前作辺りから顕著になりだした「RADIOHEADやMOGWAI等にも通ずるポストロック感」が一部の楽曲で激化しているように感じます。頭3曲はこれまでの流れを汲むミドルテンポのラウドロックで、適度にグルーヴィーで気持ちいいのですが‥‥その3曲目 "Minerva" 辺りから、少しずつですがMOGWAI辺りの色合い‥‥静と動のコントラストを強調した色合いが見えだします。5曲目 "Deathblow" になると、もはやラウド系やニューメタルということさえ忘れそうになる空気が漂い、打ち込みを多用した8曲目 "Lucky You" になると完全に「AMNESIAC」辺りのレディヘとイメージが被り、10曲目 "Anniversary Of An Uninteresting Event" ではそのレディヘやMASSIVE ATTACK辺りの色合いすら感じられ、既にラウドロック/ニューメタルなんて域を完全に抜け切っていることに気づかされます。ゴスとも違うダークさ‥‥例えば同時期にリリースされたEVANESCENCEと比べても、全く方向性や向かっている場所が違っていることに気づくことでしょう。

が、そういった要素がアルバム全体を覆っているわけではなく、あくまで「バンドとしての、何分の一かの個性」であり、やはり残りの楽曲はこれまでのフォーマット‥‥所謂ニューメタル/スクリーモの系譜に属するものなんですね。そこがその手のファンにとっての安心要素であり、且つ残念な点でもあるんですが。完全に向こう側に突き抜けることなく、あくまでこっち側に居座ってその居場所の面積/間口を広げている。それがDEFTONESの立ち位置なのかな、と。それはそれで否定しませんが‥‥NEUROSISのようなバンドもいるわけですし、今後はラウド系だけでなく、そういったポストロック系との付き合いも深めてみてはどうでしょうか? この手のサウンドを好むポストロック系アーティストも多いでしょうし、最近では普通にUKギターロックバンドでも、こういったバンド達とツアーをする人達がいるみたいだし。そうやってどんどんクロスオーバーを重ねていき、次のアルバムでは更なる「深化」を進めていってもらいたいものです。

やっぱり俺がこのバンドに望むのは、現状維持しつつ間口を広げていく形ではなく、いっそのことあっち側にどっぷり浸かって、「ポストロック側から鳴らされるラウドロック」という手法でアルバムを1枚作って欲しいんですけどね‥‥ちょっとズレてますかね?

ま、とにかくです。前作やこのアルバムを引っ提げて、是非一度来日してもらいたい。今年のフジロックやサマソニ‥‥一気にブレイクするチャンスだと思うんですけどね。



▼DEFTONES『DEFTONES』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2004 02 28 12:00 午前 [2003年の作品, Deftones] | 固定リンク

2000年7月 6日 (木)

DEFTONES『WHITE PONY』(2000)

実はこのバンドに関して、音を聴くのはこのアルバムが初めてだったりする。勿論その名前は何度も耳にしていたし、大体どういう音を出しているのかも把握していたはず。そう、「はず」だった‥‥結局、活字で目にした情報や耳にした噂で判断していたに過ぎないのだが。これはもう、反省する。結局今まで聴かないできた事を、そして聴かずに判断していた事を。

前作同様テリー・デイトがプロデュースしている。実は前作の時も確か「BURRN!」誌でのレビューで知ったのだと思うけど、プロデュースにテリーの名前を見たことで「PANTERAタイプの音に、流行りのヒップホップ調ボーカルが乗ったもの」と勝手に判断してしまっていた。もう、最悪。全然違うじゃんか、これ。とにかく、今までがどうであれこれはもう、素晴らしすぎる!

このバンドがTHE CUREから影響を受けたとか、フェイバリットにRADIOHEADを、よく聴いた('98年当時)アルバムにU.N.K.L.E.といった、ある意味対極にいる先鋭アーティスト達の名を挙げ、「もしバンドを脱退してまでも加入したいバンドがあったら教えてくれ」という問いに対してWEEZERの名前を挙げる。そういう意味では最近のMETALLICAなんかにも共通するものがあるかもしれない。しかしそれらの影響を恐れずに全面に出した結果、このような突然異変的サウンドが生まれたのだろう。音像は確かにヘヴィロックのそれだ。しかし、それだけでは済まされない多彩な要素が所々に顔を出す。メンバーにターンテーブル担当がいる点はLIMP BIZKITやSLIPKNOTと同様だが、その生かし方が他のバンド達とは明らかに違う。ターンテーブルをひとつの楽器と見立てて全面に打ち出すリンプとは逆に、まさに楽曲を生かす為の効果音的役割を果たしているのだ。

そして独特なメロウ感覚。SLIPKNOTのような「ヘヴィな中に存在するメロウ感」ではなく、「メロウの中に存在するヘヴィ感覚」と言った方がいいかもしれない。それくらいこのアルバムには琴線に触れる‥‥いや、胸を掻きむしるような情念を感じさせる。THE CUREといったニューウェーブ/ゴスの影響もあるのだろう。それがうまく生かされている。ある意味、MARILYN MANSONの「MECHANICAL ANIMALS」でのメロウさに通ずるものがあるかもしれない。所謂ヘヴィロックの括りの中で考えれば、恐らく一番うまくメロディと音像とが噛み合った例かもしれない。そしてそれを支えるボーカルがまたいい。この手のバンドには求めるべくもなかった「セクシーさ」まで持ち合わせた、チノ・モレノの声。ガツガツした曲では攻撃的にがなり立て、メロウな曲では感情の赴くままに唄い上げる。KORNにもこういう面はあるが、ここまであからさまにやられると、もうヘヴィロックだの何だのと言ってる事自体、次元が低く感じる。見た目が普通のオヤジなだけに、俺にとってはかなりショッキングな存在だ。

更にこのアルバムを支える、独特な浮遊感。熱い鉄のようなヘヴィ・サウンドの表面を冷たい水で覆ったような感覚‥‥このトリップ感はある意味、U.N.K.L.E.やMASSIVE ATTACKにも通ずるものがある。テクノだ、トリップホップだと言うつもりはない。明らかにこれはヘヴィロックだし。けど、それだけで片付けたくないのも正直な気持ち。この浮遊感は、ほぼ同時期にリリースされたA PERFECT CIRCLEのアルバムからも感じ取る事が出来る。(そういえばこのバンドでも相変わらず素晴らしい歌を聴かせてくれる、TOOLのメイナード・キーナンは「WHITE PONY」にもゲスト参加している。何か運命めいたものを感じるのは俺だけか?)こういうサウンドは、もしかしたら「旬」なのかもしれない。そしてそれがチャートという結果にも表れているようにも思える。(DEFTONESはビルボードのアルバムチャート初登場3位、A PERFECT CIRCLEは初登場4位を記録した。そう、BON JOVIが9位だったのに対して‥‥)

LIMP BIZKIT程ヒップホップ度が強いわけでもなく、RAGE AGAINST THE MACHINE程主義主張があるわけでもなく、SLIPKNOT程攻撃的でもなく、KORN程複雑でもない。明らかにこれらのバンドとは一線を画する、独特なバンドであり、独特なサウンドを持ったアルバムである。もし、これらのバンドがダメでRADIOHEADみたいなサウンドが好きって人がいたら、両手を挙げてお薦めするね? 特に中盤とラスト近くに収録されたミディアム~スロウな曲には、共通する部分も多いんじゃないだろうか?

もうね、俺の中では2000年度のベストアルバムの1枚に決定したね、マジで。昨年のリンプ、レイジ級で俺の中ではヒットしてるしね。今これを聴かずに何を聴く!?って感じ。この時期、梅雨が明ける前のどんよりした天気の朝、このアルバムを聴きながら車を飛ばすと異様な空気に包まれ、そしてそれを心地よく感じるようになる。ある意味マゾか!?とも思うが本当、今の時期にピッタリな空気感を持った作品だ。逆に真冬の雪の中でもいいかもしれない。氷のような冷たさの中で燃え盛る焔(「炎」ではなく、「焔」だ)。「WHITE PONY」というアルバムを喩えるなら、俺はこう表現するだろう。

メロディアス・ロックの復権を願う俺ではあるが、やはりアメリカでの現状は如何ともし難い。けど、逆にメロディアス・ロックだけが取り沙汰される世の中になったとしたら、それはそれで気持ち悪い。こんな性格の俺だから、きっとそうなったらそうなったで、今度はヘヴィ系かテクノの肩を持つだろう。俺自身の理想は、やはり共存だ。どのジャンルにもそれぞれ素晴らしい点は沢山存在する。勿論個人の趣味と生理的なものもあって、BON JOVIのようなバンドを毛嫌いする人もいれば、逆にリンプやレイジをつまらないと思う人もいる。それでいいと思う。けど、時には勇気を出して新しい扉を開けてみるような冒険もいいのではないだろうか? 何も2000円出してCD買え、とは言わない。ここで取り上げたアルバムに少しでも興味を持ったのなら、CDショップに行って手に取ってみるだけでもいい。もし試聴機があったなら、何曲か耳にしてみるのもいいだろう。そう、今回の俺みたいに「活字や噂だけで判断せずに、実際に自分の耳で判断して」欲しい。この絶賛文を読んで気になった人、是非行動に移してもらいたい。もし身近で耳にする手段がない、でもCD買うまではいかないって人がいたら、ご一報いただきたい。俺がどうにかするから(いや、マジな話)。また懐に余裕がある人は、是非周りの人間にもお薦めいただきたい。ボーナスのついでに1枚、御中元に1枚、暑中見舞い・残暑見舞いに1枚。これからのシーズン、酒の肴に1枚もいいだろう。とにかく、聴いてね♪



▼DEFTONES『WHITE PONY』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2000 07 06 12:00 午前 [2000年の作品, Deftones] | 固定リンク