DEPECHE MODE『PLAYING THE ANGEL』(2005)
2005年10月17日にリリースされたDEPECHE MODEの11thアルバム。日本盤は同年10月13日発売。
前作『EXCITER』(2001年)から4年5ヶ月ぶりの新作。かなり時間が空いた感がありますが、その間にはマーティン・ゴア(G, Key, Vo)やデイヴ・ガーン(Vo)がそれぞれソロプロジェクトにトライし、アンディ・フレッチャー(Key)も自主レーベルを立ち上げプロデュース業に取り組むなど、メンバーそれぞれ音楽的にかなり充実した時期を過ごしていたようです。
ブリープテクノ界の重鎮マーク・ベルとタッグを組み、新境地を伝えた前作でしたが、ファンからの評価はまちまち。特に、前々作『ULTRA』(1997年)を評価する層からは否定的な声も少なくなかったようです。そんな中、今作では新たなプロデューサーとしてその後数作でコラボレーションを続けることになるベン・ヒリアー(BLUR、ELBOW、DOVESなど)を起用。過去最短でアルバムを完成させるほど、充実した制作期間を過ごすことになります。
サウンドの質感こそ2005年当時のモダンさが伝わるものの、ベースになっているのは80年代の彼らが武器にゴシックテイストのエレポップ。メロディの運びや楽曲自体のテイストがどこか80年代半ばから後半……特に『BLACK CELEBRATION』(1986年)、『MUSIC FOR THE MASSES』(1987年)、『VIOLATOR』(1990年)の頃を彷彿とさせるものがあり、そこに『SONGS OF FAITH AND DEVOTION』(1993年)や『ULTRA』で実践したダーク&ダウナーさが適度なバランスで散りばめられることにより、多くのリスナーが臨む最強の形でのDEPECHE MODEサウンドが完成した……と言っては大袈裟でしょうか。
また、本作にはデイヴがソロ活動で得た経験も見事な形で反映されています。例えば、「Suffer Well」「I Want It All」「Nothing's Impossible」といった楽曲では、初めてデイヴがソングライターとしてクレジットされている。DEPECHE MODEらしさを崩すことなく、自身のソロワークスの色を適度に加える。もちろん、デイヴが歌えばそれはすべてDEPECHE MODEなわけですが、歌詞やメロディに自分の我を通せるようになったのは長く続いたマーティン一強体制が崩れたことにもつながり、バンドとしての柔軟性が芽生え始めているのかも……そういう意味では、『ULTRA』から始まったマーティン/デイヴ/アンディのトリオ編成が3作目にしてようやく完成の域に達したのかもしれません。
三頭体制のDEPECHE MODEは以降、アルバムを重ねるごとに独特の個性を強めていきます。これがずっと続くものだと、誰もが思っていたんですけどね……。
▼DEPECHE MODE『PLAYING THE ANGEL』
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