2018年11月18日 (日)

AZUSA『HEAVY YOKE』(2018)

THE DILLINGER ESCAPE PLANのリアム・ウィルソン(B)と、ノルウェーのテクニカルデスメタルバンドEXTOLのクリスター・エスペヴォル(G)&デイヴィッド・フスヴィック(Dr)というカオティックなエクストリームミュージックファン生唾モノのメンツが揃ったバンドAZUSA。彼らが2018年11月にリリースしたのが、このデビューアルバム『HEAVY YOKE』です。

AZUSAはこの3人に紅一点のエレーニ・ザフィリアドウ(Vo, Piano)を加えた4人編成。バンド名の“アズサ”から日本人女性が関係あるのかと思いきや、「18世紀当時、南カリフォルニアにいたコマ・リーというネイティヴ・アメリカンの少女は断食と祈りで、人々の病を治すことができた。“アズサ”という名は彼女の神秘的な力で病が治ったという部族の長老が与えたもの。彼らトングヴァ族の言葉で“祝福された奇跡”を意味する」そうです。

そんな神秘的なバンド名を持つ彼ら。このメンツから想像できるサウンドが終始展開されているのですが、特筆すべきはエレーニのボーカルでしょう。

時には男性真っ青なスクリームを轟かせ、時には癒しのような繊細な歌声で囁く。プレス資料にある「ケイト・ブッシュがボーカルのSLAYER、もしくはアネット・ピーコックとDEATHのコラボレーションをあなたは想像できるだろうか?」という説明も納得のボーカルパフォーマンスを、存分に楽しめます。

もちろん、これはボーカルだけが素晴らしいからというわけではなく、そのバックでうねるように変幻自在な演奏を繰り広げる楽器隊の手腕によるものも大きいわけですが。つまり、どっちもクセが強いのに相手を負かしてないし、自分も相手に負けていない。力と力のぶつかり合いをしつつも、共倒れすることなく、むしろするりとかわしたりしながら両者の魅力を引き出している。これって簡単なようですごく難しいことだと思うのですが、それをいとも簡単にやり遂げている。いやいや、ものすごいアルバムですよ、これ。

全11曲(日本盤はボーナストラック1曲追加)で34分(日本盤は38分)というトータルランニングもちょうどよい。狂気じみた作品だけど、これくらいのボリュームだと何度も繰り返し聴きたくなるし、聴き返すにはちょうど良い長さなんですよね。

変拍子があったり不協和音が飛び出したりと、ヘヴィロック/ラウドロックファンはもちろんのこと、ハードコアやアヴァンギャルドな音楽が好きな人にもアピールするものが少なからず含まれている本作。エクストリームミュージックにおける最新形……と言ってしまうのは大げさかもしれませんが、2018年に彼らのようなバンドが登場し、このアルバムでその存在感を時代に刻み込んだことは間違いない事実。これ、ライブで観たらどうなるんだろう……ただただ、それだけが楽しみでならない、今一番“生で観たい”バンドのひとつです。



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投稿: 2018 11 18 12:00 午前 [2018年の作品, Azusa, Dillinger Escape Plan, The] | 固定リンク

2003年6月26日 (木)

THE DILLINGER ESCAPE PLAN with MIKE PATTON『IRONY IS A DEAD SCENE』(2002)

アメリカが誇る変態テクニカル・ラウド集団、THE DILLINGER ESCAPE PLANが奇才マイク・パットン(元FAITH NO MORE、現FANTOMAS等)を迎えて制作したEP。昨年夏、フジロックに出演した際には新ボーカリストを含んだ編成になっていたものの、このEPはそれ以前に録音されたもの。何故新編成になってから(リリースは昨年秋)リリースすることにしたのかは判らないけど、これは世に出すべき音源ですよ。つうかこれ読む前に、まず先に音を聴いて欲しいよ。絶対に言葉が出なくなるから。

マイク・パットンが過去、どういう音楽をやってきたか、そして彼のパーソナリティが如何に複雑かを知ってる人なら、このEPでやってることも何となく想像が付くと思いますが、更にその上を行ってますよ実際。俺、DILLINGER ESCAPE PLANというバンド自体、昨年のフジロックで初めて知ったのですが(結局観れなかったんだけど)、「EPITAPH」所属なのね。「EPITAPH」っていうと、BAD RELIGIONとかRANCID、OFFSPRINGといった'90年代前半のアメリカンパンク・ムーブメントを支えたバンドが所属するレーベルっていうイメージが強いんだけど、こういうバンドもやってるのね。

とにかくこのバンド、凶暴なんだけど知性を感じさせるのね。度を超す程凶暴で狂ってるんだけど、そんな中に一瞬だけインテリジェンス‥‥知的さからくる冷たさを感じさせるのね。そういうキチガイ・サウンドに、あのマイク・パットンのボーカルが乗るんだから‥‥ねぇ。特定のバンド名は敢えて出さないけど‥‥これ聴いちゃったら、やれ○○だの何だのって言ってられないんじゃないの? 結局はみんなニューメタルだよな、と。

勿論ね、このバンド自体もメタルの影響が強いんですよ。マイク・パットンだってそうだと思うんだけど(‥‥違ったかな??)、そういうのを上手く消化しつつ、更に違った地平というか、更に高い地点に到達しようとしてるんだよね。それも無意識に。いや、無意識さを装って実は計算しまくりか。そんなイメージもあるな、この組み合わせ。

1曲目"Hollywood Squares"が始まった途端に異空間。いきなりキチガイ100人が詰まった満員電車の中に放り込まれたような状態に陥るわけですよ。次に何が起きるか全く想像がつかない、かなり怖い、けどちょっとドキドキ、みたいな?(いやドキドキはしないか)演奏テクや展開もハンパじゃないし、何よりもマイクの歌いっぷり、これがもうね‥‥ホントにひとりで歌ってるの!?って疑いたくなる程多彩。勿論FAITH NO MORE時代からのことなんですが、ここでのマイク、正しく「水を得た魚」状態だよね。ヘヴィメタルやハードコアからの影響を感じさせつつ、ところどころにプログレやジャズ、映画のサントラ的な要素も見受けられる。何て言うか‥‥いろんな色を感じさせるんだけど、そのどれもが自分自身を強く主張しすぎて他者を潰し合って結局何色なのか判らないような状態になっちゃう‥‥そんな感じ(どんな感じだよ)。とにかく凄すぎ。それ以上語れないよ(いや語ってるし)。

そういえば、このアルバムにはダンス系好きにはたまらない山場があるんだった。そう、APHEX TWINの名曲"Come To Daddy"のカバーをやってるんですよ! しかもバンド演奏で! マイク・パットンの歌入りで!! これがねぇ、原曲の雰囲気を見事に残しつつ、完全な変態ハードコアソングへと生まれ変わってるのね。きっとリチャードも涅槃で喜んでるはず(いや死んでないし)。そういうひねくれた喜び方しそうだもんな、あの人‥‥このユニットにこのカバー、ここまで合致した組み合わせもそうはないでしょう。'80年代ヒット曲で一山当てるような安パイでお茶を濁すようなことせずに、こういう冒険して欲しいよね、もっと。

本当ならこの編成でのライヴってのも観てみたかったんだけど、後任ボーカルグレッグもかなりのキチガイらしいので(人伝で聞いただけですが)、そろそろリリースされるであろうフルアルバムに期待大ですね。



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投稿: 2003 06 26 08:25 午前 [2002年の作品, Dillinger Escape Plan, The, Faith No More] | 固定リンク