BLACK SABBATH『MOB RULES』(1981)
1981年11月4日にリリースされたBLACK SABBATHの10thアルバム。邦題は『悪魔の掟』。
トニー・アイオミ(G)、ギーザー・バトラー(B)、ビル・ワード(Dr)のオリジナル編成にロニー・ジェイムズ・ディオ(Vo/ex. RAINBOW)が加入して制作された前作『HEAVEN AND HELL』(1980年)が、本国イギリスで最高9位、アメリカでも最高28位とヒットを飛ばし、辛うじて低迷期を脱したBLACK SABBATH。しかし、その成功も束の間、『HEAVEN AND HELL』を携えたツアー途中でビルが脱退してしまいます。
しかし、そのツアーを支えたのが、リック・デリンジャーなどと活動をともにしてきたヴィニー・アピス(Dr)。バンドはそのままヴィニーを正式メンバーに迎え、ジェフ・ニコルズ(Key)をレコーディングメンバーに迎えて、再びマーティン・バーチ(IRON MAIDEN、WHITESNAKE、DEEP PURPLEなど)とスタジオ入りします。
ロニー、トニー、ギーザーの3頭体制で制作された楽曲の数々は、『HEAVEN AND HELL』の雰囲気を引き継ぎつつも若干オジー・オズボーン期のテイストも復調。それもあってか、前作ほど様式美を追求した方向性というわけでもなく、「Neon Knights」をより陽気にさせたアップチューン「Turn Up The Night」やひたすらヘヴィさに振り切ったミドルナンバー「The Sign Of The Southern Cross」、豪快さが増した「The Mob Rules」、オジーが歌っても何ら違和感のない「Country Girl」など比較的バラエティ豊かな楽曲群はどこか軸を失ったようにも映り、聴き手に散漫な印象を与えます。
1曲1曲の仕上がりは非常に高く、トニーのギターワークもオジー時代のおどろおどろしさ&ヘヴィさ、そして『HEAVEN AND HELL』で得たメロディアスなスタイルの両面を発揮しており、アーティスト/プレイヤーとしての成長を強く感じさせる。しかし、それがアルバムのトータル面に直結したかといえばそうでもなく、残念ながら1枚のまとまったアルバムとしての完成度は前作より劣っていると言わざるを得ません。
ロニーの持ち味を見事に活かした「Falling Off The Edge Of The World」のような名曲も存在するものの、この方向でひっぱり切ったらもっと成功できたんじゃないか……そんなもどかしさを伴う1枚です。個人的には嫌いになりきれない魅力もしっかり感じているんですけどね。結局、本作での活動を経て1982年にロニーとヴィニーがバンドを脱退し、そのまま新バンドDIOを結成。その後、サバスは意外なシンガーをリクルートすることになります。
▼BLACK SABBATH『MOB RULES』
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