DIRTY PRETTY THINGS『WATERLOO TO ANYWHERE』(2006)
さて、続けてカール・バラーによる新バンド、DIRTY PRETTY THINGS。昨年暮れ、ピート・ドハーティのBABYSHAMBLESのアルバムがリリースされたのを見計らってからともいえるような時期に、オフィシャルサイトにてアルバムに収録予定だった(後にシングルとしてもリリースされた)"Bang Bang You're Dead" のPVが先行公開され話題に。いよいよTHE LIBERTINESの面々が、それぞれの道を歩み始めたなぁという印象を受けました。
あれから約半年。とうとうリリースされたDPTのデビューアルバム「WATERLOO TO ANYWHERE」。ピート抜きのTHE LIBERTINESという表現もピッタリといえるメンバー(ドラムのゲイリーは元メンバーだし、ギターのアンソニーもピート抜き時代にTHE LIBERTINESのツアーにサポートメンバーとして参加)に、カールの新たな相棒といえるディス・ハモンド(元THE COOPER TEMPLE CLAUSE)を迎えて新たな出発をするこのバンド。BABYSHAMBLESとの比較は避けて通れないだろうし、実際に俺みたいな意地悪な見方をするファンもいるだろうから、この先には茨の道が待ち受けてるとも言えるでしょうね。でも、大丈夫だ、このバンドは。サウンドを聴いて安心した。良くも悪くも、THE LIBERTINESなんだもん。
音楽性云々よりも、その精神性を引き継いだBABYSHAMBLES。そして音楽性そのものを引き継いだDPT‥‥そう言い切ったら、ちょっと乱暴すぎるかな? でも、俺にはそう感じられました。
元THE CLASHのミック・ジョーンズを三度迎えて制作されたBABYSHAMBLESのアルバムと違い、DPTは新たにデイヴ・サーディ(レッチリやSLAYER、最近じゃOASISやJETなんかも手がけてる)とトニー・ドゥーガン(ベルセバとかMOGWAI辺りが有名)という名プロデューサーを迎え、リリースも「Rough Trade」ではなくメジャーの「Vertigo(Universal傘下)」から。結果、デビュー曲 "Bang Bang You're Dead" は全英チャートで5位、アルバムも初登場3位を記録したわけです。元THE LIBERTINESという話題性と、メジャーレーベルによる広告力と、そしてこの数年で培った実力が生み出した結果だと、俺は確信してます。
確かに、ここには意外性も初期衝動も薄い。そういうのを求めるファンはBABYSHAMBLSを聴けばいい。乱暴な言い方だけど、俺が求めるTHE LIBERTINESはこっちだったんだな、と音を聴いて実感できたという意味では、この2組の音を同時に聴けたのはラッキーだったね。
でも‥‥改めて言うけど、これはTHE LIBERTINESではない。と同時に、BABYSHAMBLESもTHE LIBERTINESではない。当たり前だけど、どっちもTHE LIBERTINESとは別のバンド。それを冷静に受け入れられるようになるまでには、もうちょっと時間がかかりそうだけどね。
▼DIRTY PRETTY THINGS「WATERLOO TO ANYWHERE」(amazon:UK盤/US盤/日本盤)