DIZZY MIZZ LIZZY『ALTER ECHO』(2020)
2020年3月下旬にリリースされたDIZZY MIZZ LIZZYの4thアルバム。
2009〜10年の単発復活を経て、2014年に本格的な再結成を果たした彼らは、2016年に約20年ぶりの新作『FORWARD IN REVERSE』をリリース。本国デンマークではデビューアルバム『DIZZY MIZZ LIZZY』(1994年)以来となるチャート1位を獲得し、好意的に受け入れられした。
あれから4年ぶりに発表された本作は、前作で見せた“従来のDIZZY MIZZ LIZZYらしさ”と“20年の積み重ねて得た音楽的進歩”の程よいブレンド感が、良い意味で後者側へと振り切った意欲作に。とはいうものの、同じメンバーが作っているのだから当然のように“らしさ”は至るところから感じ取ることができますし、むしろティム・クリステンセン(Vo, G)がこの声、この節回しで歌えばしっかりDIZZY MIZZ LIZZYとして成立するのですから、違和感のようなものは皆無だと思います。
確かに、オープニングの「The Recochet」や全5楽章で構成された組曲「Amelia」の最終楽章「Part 5: Alter Echo」がインストナンバーで飾られるという異色の構成は気になるものの、思えばその前兆は前作の後半パートに見え隠れしていたわけなので、突然こんなことを始めました的な驚きはないはず。それよりも、前作で見せた新境地がいよいよ本格稼働し、90年代からの続きを良い意味で表現した『FORWARD IN REVERSE』以上に“ナウ”な彼らが凝縮されているのではないでしょうか。
いわゆるアップテンポの楽曲はないに等しい作風で、歌モノの1曲目にあたる「In The Blood」からして重々しい空気感を放っている。けれど、ティムの歌うメロディはDIZZY MIZZ LIZZY以外の何者でもないわけですから、このインスト流れのオープニングからも「いよいよ本格的に新章に突入した」ことがう伺える。以降も同じようなテンポ感で、アレンジで味付けを変えながらグイグイと聴き手を惹きつけ続ける。昨年秋にリードトラックとして先行配信された5曲目「California Rain」までたどり着くと、そのディープな世界観にどっぷりハマってしまっている自分に気づくはずです。
そこから、後半5曲が計23分にもわたる組曲「Amelia」。もちろん1曲1曲を単独で楽しむことも可能ですが、ここはぜひ5曲続けて(いや、アルバムまるまる46分)途切れることなく向き合ってもらいたい。ティムが往年のプログレから影響を受けていることはデビューアルバムの時点からなんとなく想像できましたし、特にその傾向が前作あたりから強まっていることも理解できました。そういう意味では、本作は作家性とアーティスト性が絶妙なバランスで共存する、奇跡の1枚なのではないでしょうか。
個人的にはラストのインスト「Part 5: Alter Echo」で余韻に浸って終わりたいところですが、日本盤のみこのあとにボーナストラックとして「Madness」という楽曲が追加されています。正直、このエンディングのあとに歌モノ曲が追加されたらアルバムの世界観台なしだな……そう思っていたのですが、いざ届けられたボートラを聴くと、アルバムのエピローグ的な、泣きのミドルチューンだったりするもんだから、非常にベストな形でアルバムにもうひとつのエンディングを加えてくれたことに気づく。うん、この終わり方も全然アリだ。
配信版での「Part 5: Alter Echo」終わりがベストっちゃあベストですが、この日本盤フィジカルでのラストも捨てがたい。要するに、気になる人はCDも買って、ストリーミングでも楽しめってことです(笑)。
4月末には本作を携えた一夜限りの来日公演も控えていますが、このご時世ですから無事敢行されるのかどうか……。せっかくなのでアルバムまるまる、この曲順どおりに演奏してもらいたいところです。
▼DIZZY MIZZ LIZZY『ALTER ECHO』
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