DOKKEN『BREAKING THE CHAINS』(1981 / 1983)
DOKKENのデビューアルバム。もともとは1981年、フランスのレーベル・Carrere Recordsから『BREAKIN' THE CHAINS』のタイトルで発表されたものでしたが、Elektra Recordsからのワールドワイドデビューに際してリミックス&曲順変更、そしてタイトルを現在の『BREAKING THE CHAINS』に変更し、1983年9月18日にアメリカにて発売されています。なお、本稿では原稿のElektra版について触れていきます。
ドイツでレコーディングされた本作の制作メンバーは、ドン・ドッケン(Vo, G)、ジョージ・リンチ(G)、ミック・ブラウン(Dr)、ホアン・クルーシェ(B)という布陣。1983年のメジャーデビュー時点にはホアンはRATT加入のため脱退しており、アートワークやMVにはのちの黄金期メンバーのひとりであるジェフ・ピルソンが参加しています。
タイトルトラック「Breaking The Chains」やコンピ盤などにもたびたび収録されるファストナンバー「Paris Is Burning」など、その後のDOKKENにも通ずる原石のような楽曲も多数存在するものの、全体を通して聴くと若干のB級感は否めません。いわゆる“LAメタル/ヘアメタル”の範疇で語られることの多い彼らですが、ドイツレコーディングや当時ACCEPTなどで名を上げていたマイケル・ワグナーのプロデュースなども影響を、アメリカンな音よりも欧州メタルに接近した湿り気のあるメロディ/サウンドが特徴的で、同時期に台頭したMOTLEY CRUEやRATTとは一線を画する特殊な存在であったことは本作からもおわかりいただけることでしょう。
「I Can't See You」や「Seven Thunders」を今聴くと恥ずかしくなるようなポップさが含まれていますが、その一方で「Live To Rock (Rock To Live)」や「Nightrider」での前のめりな攻めの姿勢は次作『TOOTH AND NAIL』(1984年)への習作と受け取ることもできる。かと思えば、「Young Girls」が若干RATTっぽいリフワークなのも興味深い。ジョージ・リンチのギタープレイは派手さはあるものの、以降と比べるとこの時点ではまだ開花前といった印象も。
ところが、Elektra版に収録された「Paris Is Burning」は1983年12月のベルリン公演をベースにしていることから、1981年に録音した『BREAKIN' THE CHAINS』以降の音源/プレイ。フランス版のアルバムをレコーディングしたあとにライブを重ねることで、ジョージ自身の個性もさらに固まっていき、このElektra版「Paris Is Burning」では『TOOTH AND NAIL』でのプレイスタイルが早くも垣間見える結果となったわけですね。次作における「Tooth And Nail」でのフラッシーさにもつながる冒頭のソロプレイは、本作における最大のハイライトではないでしょうか。
なお、本作収録の「Felony」は初期のデモ音源をまとめたアルバム『THE LOST SONGS: 1978-1981』(2020年)にも収録されているので、完成版と聴き比べてみるのもいいかもしれません。
▼DOKKEN『BREAKING THE CHAINS』
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