DOKKEN『TOOTH AND NAIL』(1984)
1984年9月13日にリリースされたDOKKENの2ndアルバム。日本盤は同年11月28日発売(当初はアナログのみ。CDは1985年初出)。
言わずと知れたDOKKENの代表作。1983年前後から勃発したUSメタルの波に乗って、RATTやMOTLEY CRUEらとともに“ヘアメタル/グラムメタル”(日本では各バンドの活動拠点を差してL.A.メタルとも)シーンの立役者として人気を獲得し、アルバムは全米49位のスマッシュヒットに(100万枚を超えるセールス)。「Into The Fire」「Just Got Lucky」のラジオヒットに加え、パワーバラード「Alone Again」はBillboardチャート最高64位まで上昇しました。
前作『BREAKING THE CHAINS』(1981年/1983年)ではベースを、のちにRATTに加入するフアン・クルーシエがプレイしていましたが、本作のレコーディングから正式にジェフ・ピルソンが加わり、バンドの黄金期がここから始まることになります。ジェフはソングライティング面でもすべての楽曲に携わっており、B級臭濃厚だった前作からメジャー感が少し強まった作風へとスケールアップさせることに成功。また、演奏面ではジョージ・リンチ(G)のプレイヤーとしての個性が一気に開花し、「Tooth And Nail」のように1分以上におよぶギターソロをフィーチャーするなど、ギターバンドとしての独自性もここで印象付けることに成功しました。
そういったプレイヤー陣の強い個性に負けじと、線の細い歌声のドン・ドッケン(Vo)も哀愁味強めのメロディを絶妙な形で表現。この楽器隊とのアンバランスさこそ、実はDOKKENの魅力なんですよね。「Tooth And Nail」や「Don’t Close Your Eyes」「Turn On The Action」などのファストチューンでは頑張ってハイトーンを響かせたりするものの、ポップな「Just Got Luck」やメロウな「Into The Fire」、泣きのバラード「Alone Again」でこそ活きるドンの個性。それが、シングルヒットへとつながっていったのでしょう(次作『UNDER LOCK AND KEY』(1985年)での「In My Dreams」はそのもっともたる例では)。
楽曲、アレンジ、メロディアスさとハードさのすべてがバランスよく突出した『UNDER LOCK AND KEY』、完全なるギター・オリエンテッド・アルバムの『BACK FOR THE ATTACK』(1987年)と、その後洗練されていくDOKKENですが、本作は最初の“攻め”が具体化された、いわゆるヘヴィメタルのステレオタイプ的側面がもっとも強く表現された1枚。日本でいうところの“L.A.メタル”がもっとも具体的な形で示されており、RATTの『OUT OF THE CELLAR』(1984年)、MOTLEY CRUE『SHOUT AT THE DEVIL』(1983年)、QUIET RIOT 『METAL HEALTH』(1983年)などとあわせて聴くべき歴史的名盤です。
▼DOKKEN『TOOTH AND NAIL』
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