ENUFF Z'NUFF『NEVER ENUFF: RARITIES & DEMOS』(2021)
2021年8月27日にリリースされたENUFF Z'NUFFのデモ音源集。日本盤未発売。(※2021年12月追記)同年12月15日に日本盤が発売となりました。
CD3枚組、アナログ4枚組でトータル40曲という非常にボリューミーな内容の本作は、80年前半にドニー・ヴィ(Vo, G)&チップ・ズナフ(Vo, B)が残したデモ音源をまとめたもので、リリース元はDeadline Music / Cleopatra Records。大半はカセットベースのデモなのか、音質的には良好とは言えないものも含まれています。また、曲によって音質/録音状態もまちまちなので、コアなファン向けアイテムといったところでしょうか。
しかし、収録されている楽曲は「これぞZ'NUFF!」と言えるような美メロ/良曲のオンパレード。メジャーデビュー期のようなハードロック色の強いテイストというよりは、中〜後期のパワーポップ路線の延長線上にある楽曲が中心で、そこにピロピロしたギターソロが乗るという、1stアルバム『ENUFF Z'NUFF』(1989年)以降の路線に通ずるアレンジの楽曲も少なくありません。それはそれで悪くなく、個人的には意外にも好印象だったりします。
曲によってはフェードアウトの途中で終わってしまうもの、曲頭が若干削れているものもあり、正真正銘の“デモ”ばかり。だけど、これらを磨きに磨けばそのへんの中途半端なパワーポップバンドに勝るであろう楽曲集/アルバムが数枚は作れるのでは。もちろん、そのためにはドニーがすべて歌うことが大前提ですけどね。
それにしても、40曲中半数近くはネット上に転がっている音質の悪い流出音源で耳にしたことがあるものばかりで、それらが少しだけ音質が向上した形で耳にできるというのはうれしい限り。中にはドニーがソロで発表した未発表音源集『THIS & THAT』(2004年)などで発表済みのデモ曲、ポール・ギルバートに提供した「Girl Crazy」のオリジナルバージョンも含まれており、特に後者はキーの違いこそあれど原曲を聴ける喜びは何ものにも変え難いものがあります。
音質的なものやアレンジの完成度もあって、そう何度も繰り返し聴くタイプのアルバムではないかもしれませんが(特に40曲っていうボリュームがね。苦笑)、それでも良い曲は良いわけで。ENUFF Z'NUFFに多少なりとも興味がある方、全アルバム網羅したよって方はぜひチェックしてみることをオススメします。
▼ENUFF Z'NUFF『NEVER ENUFF: RARITIES & DEMOS』
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