DREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: THE NUMBER OF THE BEAST (2002)』(2022)
2022年6月10日にリリースされたDREAM THEATERのライブアルバム。日本盤は同年6月8日先行発売。
2021年6月からスタートした、バンドと所属レーベルInsideOutMusic Recordsとの共同企画によるオフィシャル・ブートレッグシリーズ『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES』の第11弾。本作は同シリーズ第4弾『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: MASTER OF PUPPETS - LIVE IN BARCELONA, 2002』(2021年)に続く、メタル界のレジェンドアルバムを丸々再現する企画第2弾で、IRON MAIDENの3rdアルバム『THE NUMBER OF THE BEAST』(1982年)を完全再現したライブアルバムとなります。なお、本作は過去にYsejam Recordsを通じて発表されていましたが、今回新たにリマスタリングが施され、アートワークも『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES』シリーズに沿った形に刷新されています。
レコーディングされたのは2002年10月24日のパリ公演のもの。バンドはこれまでに3回にわたり『THE NUMBER OF THE BEAST』の完全再現を行なっており、1回目は同年10月4日のギリシャ・アテネ公演、2回目がこのパリ公演で、3回目は2004年4月24日の大阪公演なんだそうです。
さて、METALLICA同様シングルギター(+キーボード)編成のDTがツインギター編成のメイデンをカバーするとなると、いろいろ変更が生じますよね。リフワークの厚みが減退したり、アルペジオが重なり合うパートがギター+ピアノに変更されたり、など。そういった違和感は多少残るものの、これはこれとして全然アリだと思わされる内容ではないでしょうか。
DTのライブでは冒頭に「The Number Of The Beast」のオープニングに挿入されたSE(セリフ)が移動されたことで、ここから何が始まるのかという期待をより高めることに成功していますし、そこから「Invaders」へなだれ込むとギターとシンセが絡み合う独特のハーモニーが新鮮さを生み出している。ブルース・ディッキンソン(Vo)よりも線が細いジェイムズ・ラブリエ(Vo)ではありますが、続く「Children Of The Damned」「The Prisoner」と曲が続くに連れてどんどん慣れてくるので、普通にDTのライブ作品として納得しながら楽しめるはずです。
完全カバーはオリジナルに忠実ながらも、先に述べたように編成の違いでアレンジせざるを得ないパートも生じています。例えば「The Prisoner」のソロパート前半はジョーダン・ルーデス(Key)がシンセで代用しているのですが、なるべくオリジナルに忠実にあろうと、随所で音色を変えながらダイナミックなソロプレイを披露。これはこれで全然カッコいいし、普通にこういうカバーってありだよね?と思えるのではないでしょうか。
かと思えば、終盤の「Gangland」は唯一大幅なアレンジが施され、原曲の持つスウィング感をよりジャズ側に寄せたアコースティックバージョンへと生まれ変わっています。これもDTだからこそなせる技。むしろ、『THE NUMBER OF THE BEAST』というアルバムは後半になると「The Number Of The Beast」「Run To The Hills」、そして「Hallowed Be Thy Name」と“強い”楽曲がズラリと並ぶので、ここで変化球を挿入するのは大正解。アルバムどおりの曲順で演奏しているものの、“完全再現”にこだわりすぎないところにも好感が持てます。
DTはこれまで、複数の名盤完全再現を音源化していますが、個人的にもっとも好きなのが本作。音源集としてコンパクトなのも大きいですし、DTならではのこだわりがもっとも感じられるというのも重要なのかな。メイデンの『THE NUMBER OF THE BEAST』リリース40周年、この再現ライブ実施20周年という節目にもぴったりな1枚ではないでしょうか。
▼DREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: THE NUMBER OF THE BEAST (2002)』
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