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カテゴリー「Dream Theater」の18件の記事

2021年10月22日 (金)

DREAM THEATER『A VIEW FROM THE TOP OF THE WORLD』(2021)

2021年10月22日にリリースされたDREAM THEATERの15thアルバム。

Inside Out Music移籍第1弾の前作『DISTANCE OVER TIME』(2019年)から2年8ヶ月ぶりのオリジナル新作。この期間の間にライブアルバム&映像作品『DISTANT MEMORIES』(2020年)のほか、4つのオフィシャルブートレッグ(『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: IMAGES AND WORDS - LIVE IN JAPAN, 2017』『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: A DRAMATIC TOUR OF EVENTS - SELECT BOARD MIXES』『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: TRAIN OF THOUGHT INSTRUMENTAL DEMOS (2003)』『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: MASTER OF PUPPETS - LIVE IN BARCELONA, 2002』)を続発していたこともあり、インターバルが空いている感覚は皆無。むしろ、コロナ禍の影響とはいえ3年に満たないスパンで新作が届けられたことは、素直に喜ばしいことだと思っています。

プレスリリースによると、前作は「原点回帰を目指した楽曲制作とレコーディング手法で、贅肉を削ぎ落としたパワーを封じ込めたコンパクトな楽曲群」中心の内容とのことでした。確かに、それ以前の作品と比較すれば4〜6分台の楽曲が中心で、全9曲で57分というトータルランニングも近年の彼らにしてはコンパクトだったと言えるでしょう。しかし、そこに封じ込まれた楽曲のメロディはインパクトの弱いものばかりで、個人的にはあまり響かない作品でした。

では、今作はどうでしょう。全7曲で70分とう構成は『DISTANCE OVER TIME』よりも前に立ち返ったように映り、アルバムのラストに構えるタイトルトラック「A View From The Top Of The World」は20分超えの超大作です。ファンからしたら、若干薄味だった前作よりも「そうそう、これを待っていた!」と言える1枚なんじゃないでしょうか。

リードトラックである1曲目「The Alien」を初めて聴いたとき、僕は9分半の長尺曲にもかかわらず「これはアルバムも期待できそうだ」と感じました。それは、前作よりもメロディラインに響くものが多々見つけられたからにほかなりません。バンドのスリリングなアンサンブルは相変わらず最高の一言ですが、デビュー時から比べたらだいぶ声域の狭まったジェイムズ・ラブリエ(Vo)のボーカルは中音域を軸にしながらも、可能な限り動きのあるメロディラインで曲ごとに変化を付けている。そりゃあメロディの動きは以前ほど大きなものではありませんが、それでも(前作のレビューで例えに挙げたDEEP PURPLEの)イアン・ギランと比べたらかなり健闘しているほうじゃないかなと(いや、近年のイアンはかなり良いんですけどね)。

要は、ここ数作はバンドの演奏力に対してボーカルが釣り合っていなかったけど、今作ではようやくそれに見合うバランス感を見つけることができた。だから全体を通して飽きずに楽しむことができるのかな、と思いました。無理に短い曲で勝負するより、歌割りが少なくなろうとも長尺曲で勝負し、なんならボーカルすらも曲の演出に徹する。それくらい割り切ったほうが今のDTは突き抜けられるんじゃないか……本作を聴いてそう確信しました。

2ndシングルとして先行配信された「Invisible Monster」や「Sleeping Giant」で耳にすることができる往年の輝きに匹敵するアンサンブルを筆頭に、これぞDT!と言える楽曲ばかりが詰め込まれた今作。ポップサイドを象徴する「Transcending Time」ではジェイムズのボーカルワーク(および歌メロ)も現時点でのベストと言えるものだと思いますし、「Awaken The Master」でのジョン・ペトルーシ(G)による重低音リフのカッコよさ、そして「A View From The Top Of The World」での圧倒感など、我々がDTに求める要素がしっかり揃っている。原点回帰という言葉は、むしろ今作のほうがぴったりなんじゃないでしょうか。アンディ・スニープによる際立ったミックス含め、ここ数作の中ではもっとも好きな1枚です。

 


▼DREAM THEATER『A VIEW FROM THE TOP OF THE WORLD』
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2021年9月15日 (水)

DREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: MASTER OF PUPPETS - LIVE IN BARCELONA, 2002』(2021)

2021年9月15日に日本先行リリースされた、DREAM THEATERのライブアルバム。海外では同年9月17日発売予定。

本作は今年6月に発売された『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: IMAGES AND WORDS - LIVE IN JAPAN, 2017』、7月発売の『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: A DRAMATIC TOUR OF EVENTS - SELECT BOARD MIXES』、8月発売の『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: TRAIN OF THOUGHT INSTRUMENTAL DEMOS (2003)』に続く、オフィシャル・ブートレッグシリーズ第4弾。過去に自主レーベルYsejam Recordsを通じてさまざまな貴重音源を限定販売してきたDTですが、現在バンドが所属するInsideOutMusic Recordsとのコラボレーションで2021年から定期的にオフィシャルリリースされることになったわけでね。

これまで同企画でリリースされてきた音源の多くは、過去にYsejam Recordsを通じて発表されてきたもののリマスタリング音源でしたが、今回もその流れにある1枚。2002年2月のバルセロナ公演にて披露された、METALLICAの出世作『MASTER OF PUPPETS』(1986年)を完全再現演奏したものとなります。当時のDTは同じ会場で2公演続けてライブがあると、2日目の公演では前日と異なるセットリストを……ということで、バンドが愛聴してきた他アーティストの名盤をまるまる完全再現していました。

Ysejam Records経由の初出盤も当時話題になりましたが、DT待望の新作発表目前、そしてMETALLICAが『ブラックアルバム』(1991年)の30周年記念盤を発表した同タイミングにリマスタリングが施された新規盤が一般流通されることは、非常に大きな意味があるような気がします。

プログレッシヴメタルバンドのDTにとって、元祖スラッシュメタルバンドが確変したタイミングの1枚をまるまるカバーするというのは、どういう意味を持つのか。それこそツインギターバンドのMETALLICAの楽曲を「シングルギター&キーボード含む」編成のDTがどうカバーするのか。聴いていただいたとおり、アコギやクリーントーンギターのパートをジョーダン・ルーデス(Key)がキーボードでカバーしたり、ギターソロパートもジョン・ペトルーシ(G)がある程度弾いたあとにジョーダンがシンセでソロをかましたり、ツインリードパートではギターとシンセがハモったりと、DT流のアレンジが見事に施されています。

もともとプログレッシヴな展開を持つ楽曲が多い『MASTER OF PUPPETS』ですが、こうやってDTが演奏すると意外にもプログメタル的に聴こえてくるんですから、本当に不思議なものです。当時のドラマー、マイク・ポートノイ(Dr)の活き活きとしたプレイ、プリミティヴなスラッシュメタルには不向きなジェイムズ・ラブリエ(Vo)のボーカルなど、プラス面/マイナス面ともにありますが、こと演奏に関しては文句なしではないでしょうか。「Battery」のイントロダクションや「Master Of Puppets」でのエフェクトなどオリジナルアルバムから流用したSEも多く、このカバーを披露したあとに本家のラーズ・ウルリッヒ(Dr)が完全再現ライブ音源をDTに求めたという逸話もあるくらいですから、最終的には本家公認のライブアルバムということなんでしょう。

DTがこういったプログレッシヴスラッシュに特化したアルバムを作る……なんて淡い夢を見ていた層が果たしてどれくらいいるかわかりませんが、個人的には「こんなDTもアリだな」とYsejam Records盤を初めて聴いたときに思った記憶があります。そこから10周年ぶりに本作に触れてみて、再び「こんなDTもアリだな」と同じ感想を抱くことになるとは。ということは、何年経っても良いものは良いし、その出典元となる『MASTER OF PUPPETS』は時代を超えて長く愛される傑作/名盤なのだなと再認識させてくれる、非常にありがたい1枚と言えるのではないでしょうか。

DTは10月22日にニューアルバム『A VIEW FROM THE TOP OF THE WORLD』をリリースするので、この『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES』シリーズはしばらくお休みするのかな(新作の売り上げの邪魔しちゃアレですものね)。DTは過去にIRON MAIDEN『THE NUMBER OF THE BEAST』(1982年)PINK FLOYD『THE DARK SIDE OF THE MOON』(1973年)、DEEP PURPLE『MADE IN JAPAN』(1972年)の完全再現ライブ実施およびオフィシャル・ブートレッグでのCD化を手がけてきたので、2022年以降はこれらの音源の再リリースにも期待したいところです。

 


▼DREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: MASTER OF PUPPETS - LIVE IN BARCELONA, 2002』
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2021年8月26日 (木)

DREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: TRAIN OF THOUGHT INSTRUMENTAL DEMOS (2003)』(2021)

2021年8月20日にリリースされたDREAM THEATERの企画アルバム。

本作は今年6月に発売された『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: IMAGES AND WORDS - LIVE IN JAPAN, 2017』、7月発売の『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: A DRAMATIC TOUR OF EVENTS - SELECT BOARD MIXES』に続く、オフィシャル・ブートレッグシリーズ第3弾。前2作はライブ作品でしたが、今作は2003年発売の7thアルバム『TRAIN OF THOUGHT』のインストゥルメンタル・デモ音源集となっています。

なお、本作は2009年にオフィシャル・ブートレッグとしてファンクラブ限定発売されていたものを、新たにリマスタリングを施し、アートワークを刷新しての一般流通となります。とはいえ、今回のフィジカルリリースに関しては完全生産限定盤となっているので、CDやアナログとして所持しておきたい方は早めのご購入をオススメします。

バンド史上もっともダーク&ヘヴィなムードを全面に打ち出した『TRAIN OF THOUGHT』ですが、ヘヴィメタルアルバムとしてはジェイムズ・ラブリエ(Vo)のボーカルあってこそ完成するもの。そのボーカルを抜きにして、かつデモ音源ならではの生々しいサウンドが聴き手側にどう作用するのか。正直このデモ音源集を聴く前は不安でしかたなかったのですが、すでにこの音源の時点で楽曲の大まかな構成は完成されており、かつ弦楽器隊(ギターとベース)のプレイを、細かなピッキングまで含めて楽しむことができるという点において、このデモ音源集は全然“アリ”な代物でした。

プログメタルアルバムとしても十分に通用する『TRAIN OF THOUGHT』ですが、ラブリエの歌が入ることでより王道ヘヴィメタル色が強まる。では、その歌がなくなるとどうなるのか。答えは簡単、ヘヴィ&ダークなプログメタルアルバムになるだけなんです(笑)。ファットなミキシング&サウンドプロダクションがない分、スタジオセッションをそのままマルチトラックで録音したようなロウな音は、ヘヴィ&ダークさに拍車をかけているものの、ドラムやシンセ含め各楽器の音やプレイをしっかり聴き取れるという点で、このアルバムの果たす役割はかなり大きなものがあるのではないでしょうか。当時のDTとしては相当異質に映った本作ですが、こうやってインストゥルメンタルに特化した形になると、やっぱりDTはDTなんだなと納得させられます。

DTの作品としては聴く頻度はそこまで高くないであろうことは、なんとなく想像に難しくありませんが(笑)、改めて異色作であり傑作でもある『TRAIN OF THOUGHT』の軸を理解するという点では、一度は耳にしておくべき副読本的アルバムだと言えるでしょう。『TRAIN OF THOUGHT』本編をじっくり聴き込んだあとに、こっそりと触れてみることをオススメします(笑)。

 


▼DREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: TRAIN OF THOUGHT INSTRUMENTAL DEMOS (2003)』
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2021年8月25日 (水)

DREAM THEATER『TRAIN OF THOUGHT』(2003)

2003年11月11日にリリースされたDREAM THEATERの7thアルバム。日本盤は同年11月12日発売。

以降のバンドの指針を確かなものとした前々作『METROPOLIS PT.2: SCENES FROM A MEMORY』(1999年)、初の2枚組大作となった前作『SIX DEGREES OF INNER TURBULENCE』(2002年)に続く今作は、前作から1年10ヶ月という非常に短いスパンで届けられた意欲作。2作にわたってコンセプトアルバムを制作してきたバンドが、改めてライブの躍動感を重視した作品作りに回帰し、3rdアルバム『AWAKE』(1994年)や4thアルバム『FALLING INTO INFINITY』(1997年)で試されたモダンヘヴィネス/グルーヴメタル路線を数歩推し進めたアグレッシヴなスタイルを確立させています。

全7曲で約70分という長尺ぶりは相変わらずですが、オープニングを飾る「As I Am」(約8分)や続く「This Dying Soul」(11分半)で魅せる/聴かせるスタイルは、過去のモダンヘヴィネス路線を昇華し、よりナチュラルに、より現代的にビルドアップさせたもの。もちろん、ただヘヴィでわかりやすいだけではなく、そこにDTらしいプログメタル要素もしっかり散りばめられており、要所要所に飛び出す変拍子やテクニカルなプレイと相まって、ヘヴィメタルバンドの充実ぶりがじっくり伺えるはずです。

また、アルバムの随所からオルタナメタル的なテイストも見え隠れし、そういった方向性が一時期のQUEENSRYCHEとも重なる。しかし、ここでは付け焼き刃的な危うさは皆無で、しっかりした軸が感じられるので、ヘヴィメタルアルバムとして終始安心して楽しむことができるのです。『AWAKE』や『FALLING INTO INFINITY』は一部のリスナーを除いて「これじゃない」という声が多かった迷作ですが(とはいえ、僕はこの2枚が大好物なんですけどね)、『METROPOLIS PT.2: SCENES FROM A MEMORY』で確たる核を再確認できたからこそ、再びこの路線に戻っていっても迷いなくやりたいことをやり通せる。つまり、今作はある種『METROPOLIS PT.2: SCENES FROM A MEMORY』に対する“裏の顔”と受け取ることができるのではないでしょうか。個人的にはそう感じています。

初期のMETALLICAがやりそうなヘヴィバラード「Endless Sacrifice」や前のめりなヘヴィプログメタル「Honor Thy Father」、ダークな本作における小休止的な短尺バラード「Vacant」、過去2作におけるドラマチックさを引き継ぐインスト「Stream Of Consciousness」、バラードテイストも強いヘヴィなミドルチューン「In The Name Of God」と、全体を通して王道ヘヴィメタルアルバム的作風も徹底されている。コンセプチュアルなテイストは苦手だけど……というメタルリスナーにも、本作はもっともとっつきやすい1枚ではないでしょうか。個人的にも、DTに対する熱を再び高めてくれたという意味で重要な良作です。

 


▼DREAM THEATER『TRAIN OF THOUGHT』
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2021年8月22日 (日)

BETWEEN THE BURIED AND ME『COLORS II』(2021)

2021年8月20日にリリースされたBETWEEN THE BURIED AND MEの10thアルバム。日本盤未発売。

短期間のうちに連発された二部作『AUTOMATA I』『AUTOMATA II』(ともに2018年)から3年ぶりの新作は、バンド初期の出世作にして代表作『COLORS』(2007年)の続編。『COLORS』は全8曲/64分がまるで1曲のように連なった構成で、聴いているとどこからどこまでが1曲かわからなくなるほどで、かつエクストリームメタルやプログメタルの要素のみならず、ジャズやブルーグラス、アコースティックポップなどさまざまなテイストが散りばめられた、一言では語りきれない強烈な1枚でした。

その正統的続編にあたる今作は、前作以上のボリューム(全12曲/79分)で、さらに包括するジャンルも前作以上。かつ、より曲の切れ目がわからなくなるような構成となっています。なにせ、冒頭の「Monochrome」からしてポストロックか?と思わせる世界観で聴き手を驚かせ、そのまま自然な形でヘヴィな「The Double Helix Of Extinction」へとつながっていくんですから。さらに、「Revolution In Limbo」は9分超、「Never Seen / Future Shock」は約12分、ラストの「Human Is Hell (Another One With Love)」なんて15分超えですからね(笑)。その1曲の中に複数の楽曲の要素が詰め込まれた組曲形式になっているので、CDやストリーミングを再生させているとき、プレイヤーを意識しなければ「今何曲目?」と前作以上に感じるはずです。

クリーントーンでしっとり歌うスタイルとヘヴィなグロウルを見事に使い分けたトミー・ギルス・ロジャース(Vo, Key)の歌唱力はしっかり完成の域に達し、彼の歌を支える楽器陣のテクニックも『COLORS』の頃よりも卓越したものへとレベルアップしている。「Prehistory」あたりの緩急に富んだアレンジは、もはやDREAM THEATERとの比較などでは語りきれない個性と言えるでしょう。

リードトラック「Fix The Error」にはゲストドラマーとしてマイク・ポートノイ(SONS OF APOLLO、ex. DREAM THEATER)、ナヴェネ・コーパーウェイス(ENTHEOS)、ケネス・シャクル(CANDIRIA)が参加。3人は1ブロック目、2ブロック目、3ブロック目でそれぞれドラムソロを披露しています。こういう複数ドラマーのフィーチャーの仕方、あるのね。

メタルコアから始まり、プログレッシヴメタルの要素を強めていくことで独自の個性を確立。そこからさらに道を極めることで誰にも追いつけないポジションにまで到達した彼らの、至高の1枚。こんなの生で、かつ目の前で完全再現された日にゃゲボ吐きますよ(苦笑)。恐ろしいまでに強烈で完璧な傑作の誕生です。

 


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2021年7月30日 (金)

DREAM THEATER『A DRAMATIC TURN OF EVENTS』(2011)

2011年9月13日にリリースされたDREAM THEATERの11thアルバム。日本盤は同年9月7日に先行発売。

2010年9月にマイク・ポートノイ(Dr)が脱退し、バンドは企画色の強いドラムオーディションを実施。数々の強豪を抑えて正式メンバーの座を勝ち取ったのが、過去にスティーヴ・ヴァイのサポートや後期EXTREMEなどに在籍した経験を持つマイク・マンジーニ。そして、ポートノイの脱退から1年という短期間で届けられたのが、Roadrunner Records移籍3作目に当たる今作でした。

前作『BLACK CLOUDS & SILVER LININGS』(2009年)で10作目、そしてポートノイのリーダー体制最後のアルバムという区切りを経て新編成で臨んだ11作目は、まるでバンド何度目かのデビューアルバムのようでもあり、ブレイク作となった2作目『IMAGES AND WORDS』(1992年)の再来とも言えるような作風・内容でした。

せっかくマンジーニという名手を獲得したにもかかわらず、ミックス状態はドラムが若干引っ込み気味というチグハグさに、最初こそ戸惑いを隠せませんでしたが(マンジーニが加入間もないこともあり、そこまで強く主張できなかったのかなと)、楽曲の良さは近作では随一ではないかと言えるほど。もっと言ってしまえば、本当に『IMAGES AND WORDS』並みにわかりやすい楽曲が並ぶ、バランス感に優れた内容なのです。

3rdアルバム『AWAKE』(1994年)以降のモダンヘヴィネス路線は若干後退し、耳に残りやすい歌メロと複雑ながらもわかりやすさを重視したアレンジを大切にしたことから、前作にあった重苦しさはまったく感じられず。全9曲で77分という長尺ながらも最後まで飽きずに楽しめる作り込みは、過去10年を振り返っても見当たらないんじゃないかと思えるほど。だんだんと高音が厳しくなり始めていたジェイムズ・ラブリエ(Vo)の声域を把握しつつも、メロディの動きがしっかり感じられる構成もさすがだなと思いました。

ポートノイが確立させたDTらしい個性を踏まえつつ、マンジーニらしい圧倒的なプレイが思う存分楽しめる「Outcry」を筆頭に、演奏面も文句なしに素晴らしい楽曲ばかりで、これでリズム面のミックスがもう少しシャープでアタックの強いものだったら200点満点だったのに……そんな惜しさを残しつつ、それでもなお完成度の高さを感じさせるのは、そもそもの基準値が高すぎるという事実の表れかなと。とにかく、後期DTが自身の過去の偉業を見つめ直し、再スタートを切った記念すべき1枚。プログレハードやプログメタル初心者にもオススメの良盤です。

 


▼DREAM THEATER『A DRAMATIC TURN OF EVENTS』
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DREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: A DRAMATIC TOUR OF EVENTS - SELECT BOARD MIXES』(2021)

2021年7月23日にリリースされたDREAM THEATERのライブアルバム。日本盤は同年7月21日に先行発売。

本作は今年6月に発売された『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: IMAGES AND WORDS - LIVE IN JAPAN, 2017』に続く、オフィシャル・ブートレッグシリーズの第2弾。2011年発売の11thアルバム『A DRAMATIC TURN OF EVENTS』を携えたワールドツアー(2011〜12年開催)から、東京公演の音源を含むベストセレクト・ライブテイク集となっています。

実は本作、2013年にファンクラブ限定でダウンロード配信されていたのですが、CDやアナログ盤などのフィジカルリリースはこれが初めて。僕も今回のリリースで初めてこの音源に触れましたが、なかなか興味深い感覚で向き合うことができました。

アルバム『A DRAMATIC TURN OF EVENTS』は、バンドの創設メンバーのひとりマイク・ポートノイ(Dr)脱退を経て、マイク・マンジーニ(Dr/スティーヴ・ヴァイEXTREMEANNIHILATORなど)を迎えた現編成での最初のスタジオ作品。一時なドラム世界最速記録の持ち主として知られたマンジーニが加わったDTがどんな変化を迎えるのか、当時もこのアルバムはツアーにはかなり注目が集まったと記憶しています。

そんなツアーを総括するような音源集、しかもジャパンツアーの音源を含むとあって、個人的にもリリース前から非常に楽しみにしていました。収録地は2011年4月12日の米・フェニックス公演、同年7月19日のイタリア・テルアビブ公演、7月24日の英・ロンドン公演、10月7日のカナダ・モントリオール公演、10月26日の米・オースティン公演、2012年4月24日の東京・渋谷公演(SHIBUYA-AX)、同年7月7日のオースティン公演、7月19日の米・ニューヨーク公演と比較的バラティに富んだもの。全13曲と比較的少ないように映りますが、そこはDTのこと。これでもCD2枚組、トータル2時間超えの長尺作品なんですよ(笑)。だって、「The Great Debate」は14分超え、「The Count Of Tuscany」なんて21分超ですからね!

本作は通常のライブアルバムの感覚で制作されたものとは少し異なります。例えば、1曲目にいきなり「Under A Glass Moon」が配置されているのですが、この曲は同ツアーでアンコールラストに用意されることが多かった1曲。実際、本音源でも最後にライブの終演を思わせるMCが残されています。要するにこれ、同ツアーの様子を再現するというよりは、マンジーニのプレイに焦点を当てて、かつバンドとしてのグルーヴ感を提示することに徹した内容なわけです。じゃなければ、13曲という限られた収録曲の中に7分近いドラムソロをまるまる入れませんし、そこからインスト「YtseJam」へとつなげたりしませんから。ジェイムズ・ラブリエ(Vo)の声の調子が良い音源を選んではいるものの、歌はメインではありません(だったら、いわゆる代表曲をもっと豊富にセレクトしますしね)。

というわけで、本作はある程度バンドのことを熟知したコアファン向けアイテムかな。あとは、自身も楽器を嗜むという方向け。個人的にはヘッドフォンやイヤホンなどでじっくり楽しんでもらいたい、妙技満載の作品集です。

 


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2021年6月25日 (金)

DREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: IMAGES AND WORDS - LIVE IN JAPAN, 2017』(2021)

2021年6月25日にリリースされたDREAM THEATERのライブアルバム。日本盤は同年6月23日に先行発売。

本作はバンドが現在所属するInsideOutMusic Recordsとのコラボレーションで、今後定期的に発表されるオフィシャル・ブートレッグシリーズの第1弾。DREAM THEATERは過去にも自主レーベルYsejam Recoresを通じて、さまざまなオフィシャル・ブートレッグをリリースしてきたことはご存知の通り。初期楽曲のデモ音源からMETALLICAIRON MAIDENPINK FLOYDなどの名作アルバムを完全再現したライブアルバムまで、多種多様な作品が大量に発表されてきたのですが、今回はメジャーレーベル(InsideOutMusicの配給元はソニー)を通じて、限定販売とはいえ比較的楽に入手できるのでありがたいかぎりです。

さて、その第1弾として選ばれたのが2017年9月11日の日本武道館公演『IMAGES, WORDS & BEYOND 25th Anniversary Tour』の第2部、2ndアルバム『IMAGES AND WORDS』(1992年)完全再現パートです。この日のライブには僕も仕事として足を運んでおり、当時リアルサウンドさんにこのようなライブレポートを執筆しています。こちらを読めば、当日の雰囲気はなんとなくご理解いただけるはずです。

そこを踏まえて、改めて音源を聴き返してみたのですが……ああ、半音下げチューニングだったね。忘れてた!(笑) 最近の楽曲はヘヴィさを強調すること、あるいはジェイムズ・ラブリエ(Vo)のハイトーンが厳しいことなども影響しているので6弦、7弦ギターを使用して重低音に比重を置いたサウンドメイキングが施されていますが、1992年当時はこの手のプログメタルバンドはレギュラーチューニングが一般的でしたものね。ダウンチューニングで表現される『IMAGES AND WORDS』の世界観は、確かにジョン・ペトルーシのギターはよりエッジの効いたサウンドを楽しめるものになっていますが、楽曲本来のポップさ、キャッチーさ、カラフルさは一切落ちていないのはさすがの一言。改めてすごいアルバムだと実感させられます。

「Take The Time」などでのラブリエの歌がアレなのは一旦置いておいて(苦笑)、アレンジ面では当時のオリジナルメンバーが2人交代している(ドラムのマイク・ポートノイ→マイク・マンジーニ、キーボードのケヴィン・ムーア→ジョーダン・ルーデス)ことも影響してか、若干モダンなテイストが感じられるものにバージョンアップしているのでは。特にジョーダンはケヴィンの個性を尊重しつつ、自身の“らしさ”もうまい具合にミックスさせていますし、マンジーニも然り。ジョン・マイアングのベースに関しては手数、音数が増えているようにも感じますが……どうかな? 当時のプレイよりも昨今の楽曲に沿ったプレイに近いのかなという印象があります。

ペトルーシのギターソロも要所要所で長めに用意されており、特に圧巻なのが先の「Take The Time」かな。この曲後半の長尺プレイは確かに記憶に残っていましたし、実際音源で聴き返してみるとそのとき以上の鮮烈さを味わうことができました。これは良い。

歌に関してはまあアレですが(すでに1時間近く歌ったあとに『IMAGES AND WORDS』完全再現はキツいわなそりゃ)、記録として非常に価値のある1枚ではないでしょうか。今月はKISSオフィシャル・ブートレッグアルバムもありましたし、しかもどちらも実際に足を運んだ日本公演なので、ちょっとした振り返りタイミングになってしまいましたが……ひと昔前の「日本限定ライブ・イン・ジャパン」的な作品(主にMR. BIG)とは異なる、ワールドワイド盤としてこういう音源が世に残されるのは非常にうれしいものですね。みんなもっとやればいいのに(笑)。

 


▼DREAM THEATER『LOST NOT FORGOTTEN ARCHIVES: IMAGES AND WORDS - LIVE IN JAPAN, 2017』
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2021年5月16日 (日)

CHARLIE BENANTE『SILVER LININGS』(2021)

ANTHRAXのドラマー、チャーリー・ベナンテが2021年5月14日に発表した初のソロアルバム。日本盤未発売。

このアルバムはCOVID-19パンデミックにより世の中のさまざまなことがストップした中でスタートさせた、「Quarantine Video Series」の総決算的作品。ANTHRAXのバンドメイトや気心知れた他バンドの仲間たちと、新旧のお気に入りナンバーをリモートセッションしていき、その中から選りすぐりの14曲がこのアルバムに収録されています。

カバー曲の内訳は以下のとおり。

M-1. City Of Blinding Lights [U2]
M-2. Chloe Dance / Crown Of Horns [MOTHER LOVE BONE]
M-3. Teardrop [MASSIVE ATTACK]
M-4. Run DMC [RUN DMC]
M-5. Rhiannon [FLEETWOOD MAC]
M-6. Yer So Bad [トム・ペティ]
M-7. Transylvannia [IRON MAIDEN]
M-8. Presto Vivace [U.K.]
M-9. Bad Guy [ビリー・アイリッシュ]
M-10. Jimmy James Jam [BEASTIE BOYS]
M-11. All The Way [KISS]
M-12. Mr. Speed [KISS]
M-13. Public Image [PUBLIC IMAGE]
M-14. Funny Vibe [LIVING COLOUR]

参加メンバーも実に多彩で、スコット・イアンやフランク・ベロといった盟友たちのほか、マーク・オセグエダ(Vo/DEATH ANGEL)、カーラ・ハーヴェイ(Vo/BUTCHER BABIES)、コリィ・テイラー(Vo/SLIPKNOTSTONE SOUR)、DMC(MC/RUN DMC)、ロブ・カジアーノ(G/VOLBEAT、ex. ANTHRAX)、デイヴ・セイボ(G/SKID ROW)、アレックス・スコルニック(G/TESTAMENT)、ジョン・5(G/ROB ZOMBIE)、ラ・ディアス(B/SUICIDAL TENDENCIES)、マーク・メンギー(B/METAL ALLEGIANCE)、ジョーダン・ルーデス(Key/DREAM THEATER)など。参加アーティストはHR/HM界隈中心ですが、選曲はチャーリーらしいセレクトで、メタルらしいメタルはIRON MAIDENくらい。もはやお約束となったKISSは2曲用意され、新しいところだとビリー・アイリッシュ「Bad Guy」もカバーされています。

いきなりU2の比較的最近の楽曲からスタートする本作は、そのサウンド的にはメタルからは少し離れたもので、チャーリー・ベナンテという鬼才の一端が表されているといったところでしょうか。もっとも、チャーリー自身は本作をソロアルバムとは捉えておらず、「非常に暗い時期に、友人の何人かと一緒に作ったお気に入りの楽曲集」程度なんだとか。なので、受け手側も「あのANTHRAXのチャーリーのソロプロジェクト」なんて構えずに、幅広い年代/幅広いジャンルの名曲セッション集くらい気軽に楽しめばいいのではないでしょうか。少なくとも僕自身、そういうふうに捉えてリピートしています。

どの曲のアレンジも組み合わせの妙が存分に楽しめるし、遊び心に満ち溢れていると思います。個人的にはメタルアレンジな「Bad Guy」がお気に入り。バンドアレンジにしてもカッコいい曲はカッコいいんだと気付かせてくれます。あとは、MASSIVE ATTACK「Teardrop」やFLEETWOOD MAC「Rhiannon」、トム・ペティ「Yer So Bad」も。女性ボーカル曲は総じて良いですね。プラス、KISSは録音状態まで含めてオリジナルに敬意を払っているのも好印象。遊ぶならここまでしないと。

なお、本作から生じた収益の一部は、音楽教育とメンタルヘルスを提唱するニール・カザル音楽財団に寄付されるとのことです。

 


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2021年4月23日 (金)

LIQUID TENSION EXPERIMENT『LTE3』(2021)

2021年4月16日にリリースされたLIQUID TENSION EXPERIMENTの3rdアルバム。日本盤は同年4月14日に先行発売。

LIQUID TENSION EXPERIMENTは1997年にDREAM THEATERのジョン・ペトルーシ(G)と、当時DREAM THEATERのメンバーで現在はSONS OF APOLLOなど多方面で活躍するマイク・ポートノイ(Dr)、KING CRIMSONピーター・ガブリエルとの活動で知られるトニー・レヴィン(B, Chapman Stick)、そして本作での共演を機に後々DREAM THEATERに加入することになるジョーダン・ルーデス(Key)により結成されたインストゥルメンタル・プログレッシヴメタルバンド。1999年までに2枚のアルバムを発表しますが、ジョーダンがDTに正式加入したため「DTとの差別化が難しくなる」との理由で活動休止に。その後、2010年にはマイクがDTを脱退し、さらに再始動は難しいかと思われましたが、ここ数年はマイクとジョーダン、マイクとジョンがそれぞれ共演を果たしていることから「タイミングさえ合えば」再始動もまんざらではない、というところまで復縁できていたようです。

そして、復活の大きなきっかけとなったのが2020年のコロナ禍……海外ではロックダウンという緊急事態に陥ったことで、4人のツアーや制作スケジュールの大半が白紙に。これにより、2020年7月に4人揃ってセッションを行うことができ、実に22年ぶりの再始動が実現したわけです。

前2作はプログ・ロック名門レーベルMagna Cartaからのリリースでしたが、今作はDTが所属するInside Out Musicからの発売。CDはボーナスディスクが付いた2枚組仕様で、DISC 1がアルバム本編『LTE3』で8曲収録、DISC 2は『A NIGHT AT THE IMPROV』と題したボーナスディスクで前5曲収録。2枚トータルで13曲、117分という超大作となっています。長っ! と最初は思ったのですが、これがね、不思議とスルスル聴き進められて、気づいたら最後の曲まで到達していて2時間経過しているんですよ。

DISC 1はアルバム本編ということもあり、セッションを軸にしながらも要所要所にしっかり作り込まれた形跡も見受けられ、そういった創意工夫がアルバムの聴きやすさにもつながっている。ヒリヒリした緊張感が漲っていた過去2作と比べると、その辺のテンション感は若干薄めではあるものの、ぶっちゃけ……DTの近作よりも良いんじゃないか、と思えたほど(あまり声を大にして言いたくはないですが)。これがマイク参加による功績なのかどうかはわかりませんが。

冒頭2曲「Hypersonic」「Beating The Odds」を聴くと、ここに歌メロが乗ったら……なんて想像を勝手にしてしまうのですが、もちろん歌がなくても十分に通用するカッコよさ、気持ちよさに満ち溢れているし、ジャズでお馴染みのジョージ・ガーシュウィン作「Rhapsody In Blue」のカバーも4人の個性がしっかり感じられる、遊び心に満ちたアレンジです(この曲、13分超の大作ながらもまったくダレませんしね)。

一方、『即興の夜』と題したDISC 2はジャムセッションの中から抜き出された素材が、そのまま使用されています。なので、「Blink Of An Eye」のようにフェードインから始まるものもあるし、エンディングも締まりが感じられないテイクも存在する。音質的にもDISC 1の完成されたものと比較すると、どこか生々しさが強い。完成品にまで至らなかったものの、バンドのジャムセッションの空気感を追体験できるという点においては、非常に興味深い内容ではないでしょうか。

後世に残す完成度の高い作品性(DISC 1)と、バンド本来の即興性(DISC 2)を同時に味わえる本作。22年待たされた甲斐があるよね、ってくらいに大満足の出来。DTファンやプログ・ロックのリスナーのみならず、多少なりとも楽器をかじったことがある方にも聴いていただきたい良質な作品集です。

 


▼LIQUID TENSION EXPERIMENT『LTE3』
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