2017/11/26

SONS OF APOLLO『PSYCHOTIC SYMPHONY』(2017)

ヘヴィメタルが世界的に大きなヒットを飛ばした80年代後半になると、“スーパーグループ”と呼ばれるような組み合わせの新バンドがいくつか結成され話題になりました。MR. BIGなんてまさにそれでしょうし、BLUR MURDERBAD ENGLISHもそう呼べるでしょう。90年代に入りメタルシーンが低迷し始めると、解散したバンドのメンバーが集まって新しいバンドを組み始める。必然的にそれらは“スーパーバンド”と呼ばれても不思議じゃないメンツになっており、もはや「“スーパー”とは?」とスーパー感がごく当たり前になってしまったことで有り難みが薄れてしまった。それは2017年になった現在、より強まっているのではないでしょうか。

しかし、そんな自分ですら「そうきたか!」と思わせられた最新の“スーパーバンド”が、今回紹介するSONS OF APOLLO。マイク・ポートノイ(Dr)、デレク・シェリニアン(Key)、ロン・“バンブルフット”・サール(G)、ビリー・シーン(B)、ジェフ・スコット・ソート(Vo)という80〜90年代のHR/HMファンなら誰もが一度は名前を耳にしたことがあるであろう面々ばかり。マイクとデレクは90年代後半にDREAM THEATERで一緒だったし、ビリーは現在MR. BIGのみならずTHE WINERY DOGSではマイクと活動をともにしている。バンブルフットは元GUNS N' ROSESで現在はART OF ANARCHYのメンバーだし、ジェフは初期YNGWIE MALMSTEEN'S RISING FORCEのシンガーで、一時はJOURNEYにも在籍していた。過去に在籍したバンドをカードに勝負することがあったら、間違いなく“勝てる”組み合わせです。

そんな彼らが組んだSONS OF APOLLOのデビューアルバム『PSYCHOTIC SYMPHONY』は、このメンツから想像できる音=プロヴレッシヴメタルが展開されています。DREAM THEATER的でもあり、昨今のヘヴィ/ラウドロック的でもある。ボーカルがジェフという時点でDREAM THEATERに似ないことはわかっていましたが、ここまでオリジナリティに満ちあふれた存在感を打ち出すかと、一聴して驚かされました。

80年代以降のDEEP PURPLE的な側面もあり、90年代以降のプログレメタルのカラーもしっかり受け継いでいる。それでいて現代にも通用するラウド感を持ち合わせているんだから、強いったらありゃしない。

楽曲もいきなり11分超の大作「God Of The Sun」から始まり、中盤に9分超えの「Labyrinth」を配置しながら、ラストは11分近いインストナンバー「Opus Maximus」で幕を降ろす。その間には4分前後のコンパクトな楽曲が配置されており(それでも十分に“プログレ”してるんですが)、とにかく情報量と聴きどころ詰め込みすぎな印象。すべてを理解するには、3回、4回と何度も聴き込む必要があります。

けど、最近のアルバムって数回聴いて「しばらくいいか」と思ってしまうようなものも少なくないので、こういう密度が高くて「もっと理解したい!」と思わせてくれる力作との出会いは正直嬉しくもあるんですよね。

5人の個性と技術が克明に打ち出されたこのデビュー作をもって、彼らは2018年に本格的なツアーを行うそうです。これ、ライブで観たら本当にどうなっちゃうんだろう……今からドキドキとワクワクが止まらない、そう久しぶりに感じさせてくれた1枚です。



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投稿: 2017 11 26 12:00 午前 [2017年の作品, Dream Theater, Guns N' Roses, Mr. Big, Sons of Apollo, Yngwei Malmsteen] | 固定リンク

2017/09/24

DREAM THEATER『IMAGES AND WORDS』(1992)

1992年初夏にリリースされた、DREAM THEATER通算2作目のフルアルバム。デビュー作『WHEN DREAM AND DAY UNITE』(1989年)はここ日本でも一部マニアの間で話題となりましたが、ボーカル脱退などもありその後しばらくは話題になることはありませんでした。

が、“正統派メタル冬の時代”に突入した1992年、突然変異と言われてもおかしくない形で復活。ジェイムズ・ラブリエ(Vo)という“ちゃんと歌える”メタルシンガーを迎えたことで、QUEENSRYCHEの成功以降いくつも誕生した“プログレッシヴメタル”中でも頭ひとつ抜けた存在へと成長します。

ギターやベース、キーボードのテクニカルなユニゾンプレイ、長尺で起承転結のしっかりした楽曲(全8曲で57分。最長はラストの「Learning To Live」の11分半)、ボーカルパートよりもインストパートのほうがはるかに長いなど、プログレ特有のカラーは確かに強いものの、今聴くとこのアルバムってヘヴィメタル以外の何ものでもないんですよね。

時代背景を考えると、グランジ全盛でメタルといえばMETALLICAブラックアルバムPANTERAHELMETをはじめとするヘヴィでグルーヴィーなバンドがトレンドの時期。いわゆる様式美を軸にした正統派ヘヴィメタルや華やかに着飾ったファッションメタル、テクニック至上主義のバンドは“時代遅れ”だったわけです。実際この時期を境に、それまでメインストリームにいたHR/HMバンドはどんどんグランジやグルーヴメタル系からの影響をあからさまに見せた作品を出して、次々と失敗していく。なのに、DREAM THEATERはこんなにも“ど真ん中”なアルバムを、メジャーレーベルから堂々とリリースしたのですから、驚くのを通り越して「何考えてるんだよ!?」と言いたくなってしまうわけですよ。

思えば制作自体はグランジだグルーヴメタルだと騒がれる前には始まっているわけで、良い意味でそういったトレンドに影響を受けていない。ただ自分たちの信じた道をまっすぐ進んだら、世の中的に“突然変異”と受け取られるような作品を完成させた。これが真実なんでしょうね。

また、彼らがここまでど直球にヘヴィメタルと向き合ったのも、きっと本作が最初で最後なんじゃないでしょうか。もちろん本作以降のアルバムもすべてヘヴィメタルアルバムには違いないのですが、続く『AWAKE』(1994年)以降の作品では、DREAM THEATER自身もトレンドから影響を受け、低音を効かせたヘヴィロック路線へと移行しているんですから。そういう意味でも本作は奇跡であり、やっぱり異色なんですよね。

楽曲単位では本当にどれも素晴らしいので、ここで何か解説するよりもまずは聴いてもらうのが一番かなと。ちなみに、先日の来日公演で本作の完全再現ライブが披露されましたが、そこで改めて感じたのは、自分はアルバムB面(「Metropolis Part I: The Miracle And The Sleeper」「Under A Glass Moon」「Wait For Sleep」「Learning To Live」)が本当に好きだということ。これらの名曲を現在のテクニックで再現されるなんて、最高以外の何ものでもないですよね。



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投稿: 2017 09 24 12:00 午前 [1992年の作品, Dream Theater] | 固定リンク