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カテゴリー「Duff McKagan」の12件の記事

2021年11月 2日 (火)

JERRY CANTRELL『BRIGHTEN』(2021)

2021年10月29日にリリースされたジェリー・カントレルの3rdアルバム。日本盤未発売。

ALICE IN CHAINSのギタリスト兼ボーカリストのジェリーですが、バンド活動が休止していた1998年に初のソロアルバム『BOGGY DEPOT』、2002年に『DEGRADATION TRIP』(同作発売から半年後に未発表のディスク2をつけた『DEGRADATION TRIP VOLUME 1&2』も発表)の2作品を発表。その後は新編成でのALICE IN CHAINSが始動したこともあり、ソロとは無縁でした。

このたび19年ぶりに制作されたソロ3作目は、バンドの状態が良好なこともあり、気心知れた仲間と息抜きのつもりで作った1枚といったところでしょうか。共同プロデューサーにホラー映画のサウンドトラック制作やMARILYN MANSONとの共作でも知られるタイラー・ベイツを迎え、レコーディングはダフ・マッケイガン(B/GUNS N' ROSES)、ギル・シャロン(Dr/STOLEN BABIES、TEAM SLEEP、ex. THE DILLINGER ESCAPE PLANなど)、エイブ・ラボリエルJR.(Dr/ポール・マッカートニーエリック・クラプトンなど)、グレッグ・プチアート(Cho/KILLER BE KILLED、THE BLACK QUEEN、ex. THE DILLINGER ESCAPE PLANなど)といったメンツで実施されました。

ALICE IN CHAINSが現存していることから、本作ではそちら側のダークなサウンドや不協和音ハーモニーを無理に全面に押し出すこともなく、もっと肩の力の抜けたアーシーなロックが中心。といっても、そこはグランジ畑出身のジェリーらしく、随所にオルタナティヴなテイストが散りばめられており、それによってごく一般的なアメリカンロックに収まることのない、独自性の強い“グランジ以降のUSロック”が展開されています。

例えば、ALICE IN CHAINSでいうところの『SAP』(1992年)『JAR OF FLIES』(1994年)で試みた、アコースティック色の強い楽曲群。それらをもとにした、3rdアルバム『ALICE IN CHAINS』(1995年)の一部側面。そして、『MTV UNPLUGGED』(1996年)……振り返れば本作への布石は、活動初期から用意されていました。そして、こういったテイストはソロ活動にも引き継がれ、過去2作でもその一部で取り入れられていました。だから、こういったライトな作風になったからといって彼が日和ったわけではないのです。

もちろん、「Siren Song」「Had To Know」のようなALICE IN CHAINSのダークサイドの流れにある楽曲も、あるにはあります。が、バンドではこのテイストがメインなところを、ソロ3作目ではアクセントとして使用している。しかもそこまで重苦しくないから、このアルバムの流れで聴いても違和感なく楽しめる。

アルバムのラストには、2分にも満たないエルトン・ジョンのカバー「Goodbye」を用意。この穏やかさこそ、彼がソロで表現したかったことそのものではないでしょうか。バンドでの先鋭的な刺激や緊張感の強いプレイこそないものの、再結成以降のALICE IN CHAINSを好意的に捉えているリスナーなら問題なく楽しめるはずだし、グランジが本格的に勃発した1991年から30年を経て表現される、“大人になったグランジ”と言えなくもない。そういった意味では、実に2021年らしい1枚かもしれませんね。

 


▼JERRY CANTRELL『BRIGHTEN』
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2021年9月25日 (土)

GUNS N' ROSES『HARD SKOOL』(2021)

2021年9月24日に配信リリースされたGUNS N' ROSESの新曲。

今年8月6日に突如配信された、約13年ぶりの新曲「ABSUЯD」から2ヶ月経たずして届けられたGN'Rの新曲。いやいや、なんなのよこのスピード感。ストリーミングサービス全盛の2021年だからこそといったところでしょうか。

「ABSUЯD」同様、今回も現時点での最新アルバム『CHINESE DEMOCRACY』(2008年)レコーディングセッション時に着手していたアウトテイクを手直しした1曲。元ネタは「Jackie Chan」とか「Checkmate」などの仮タイトルで呼ばれていたナンバーで、僕はフルでは聴いたことがありませんでした。しかし、今回正式リリースされた楽曲を聴く限りでは、確かにこれは『CHINESE DEMOCRACY』の世界観からは外れるかなと。アルバムから漏れるのも仕方ないですね。

楽曲のスタイル的には「Nightrain」や「You Could Be Mine」などを筆頭に、1stアルバム『APPETITE FOR DESTRUCTION』(1987年)『USE YOUR ILLUSION I』および『同 II』(ともに1991年)で展開された、マイナーキーのストレートなハードロックチューンの延長線上にあるもの。そりゃあ『CHINESE DEMOCRACY』期のメンバーと演奏するよりも、スラッシュ(G)やダフ・マッケイガン(B)といった気心知れたメンバーと演奏するほうがハマりますよね。

「ABSUЯD」はスラッシュ&ダフ脱退後のデジタルな色合いを残したオルタナティヴロック・スタイルだったので、今回の曲のほうが往年のファンの琴線に触れるものがあるのではないでしょうか。事実、僕もイントロのベースリフを聴いた瞬間に「あ……VELVET REVOLVER 往年のガンズだ!」と思いましたから(笑)。また、スラッシュに関してもギターリフやそこに絡むギターソロで、「ABSUЯD」以上に“らしさ”を爆発させている。そうそう、聴きたかったのはこれなんですよ。

アクセル・ローズ(Vo)のボーカルは、「ABSUЯD」の時点では“そういう曲調だから”と思ってはいたものの、やはり若干の衰えは否めないかな。それでも、中音域からハイトーンへと移行する流れなどは非常に“らしさ”に満ち溢れており、個人的には合格点かな。

ドラムに関しては、誰のテイクが用いられているのかはわかりませんが、この手の曲にしてはペタペタ感の強い、重すぎるプレイ/ミックスなのが玉に瑕。もうちょっと軽やかで前のめりくらいが、この手の楽曲には合っている気がします。

まあ、そうはいっても……ガンズの新曲を2ヶ月連続で聴くことができる世界線って……ここまでくると、来月末〜11月頭くらいにもう1曲くらい新曲が届けられて、11月末くらいにはアルバムが出ちゃうんじゃないか?という気すらしてきました。いや、気がするというより確信しております。いやいや、出せ出せ出せ!(笑)

 


▼GUNS N' ROSES『HARD SKOOL』
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2021年8月 6日 (金)

GUNS N' ROSES『ABSUЯD』(2021)

2021年8月6日にリリースされたGUNS N' ROSESの新曲。

アクセル・ローズ(Vo)、スラッシュ(G)、ダフ・マッケイガン(B)、ディジー・リード(Key)、リチャード・フォータス(G)、フランク・フェラー(Dr)、メリッサ・リーズ(Key)という現編成になってからは初のレコーディング作品(実際のレコーディングでは、前任ドラマーのブライアン・“ブレイン”・マンティアがプレイしているようです)。バンドの新曲/新作音源としては『CHINESE DEMOCRACY』(2008年)以来約13年ぶり(笑)、アクセル/スラッシュ/ダフが参加したオリジナル作品としては『USE YOUR ILLUSION I』(1991年)および『USE YOUR ILLUSION II』(1991年)以来実に30年ぶり(!)となります(カバー曲を含めると、1994年の「Sympathy For The Devil」以来27年ぶり)。

GN'Rは7月31日にツアーを再開させ、8月3日のボストン公演にてこの今日を“新曲”としてライブで披露。そこから3日後になんの前触れもなく、突如13年ぶりの新作音源がデジタルリリースされたわけです。まさか自分の節目となる誕生日に、心底惚れたバンドの新曲が届けられるとは……最高の誕生日プレゼントになりました(笑)。

さて、この曲ですが、純粋な新曲というわけではありません。本来は『CHINESE DEMOCRACY』のセッションから生まれた1曲で、当時は「Silkworms」というタイトルで知られており、2001年以降にはライブでも数回披露。その後流出したでも音源でもこの曲を聴くことができるのですが、オリジナル版は『CHINESE DEMOCRACY』の延長線上にあるデジタル色の強いアレンジが施され、アルバムに入れるにはちょっと淡白かなという印象の楽曲でした。

今回新たにリアレンジ&レコーディングされた「ABSUЯD」は、いかにもスラッシュらしい豪快なギターリフ(と要所要所に挿入される“らしい”フレーズ)が軸になった、パンキッシュさの際立つ1曲に生まれ変わっています。歌唱スタイルが以前のアクセルと異なることから「アクセルも老いたな」なんて貶されそうですが、原曲での歌唱スタイルがこういう形なので、あくまでこれはこれ、ということで捉えていただけると。そもそも、たった1曲だけで今のGN'Rがどうのこうのと批判するのもどうかと思いますが……。

タイプ的には「Oh My God」(1999年、映画『END OF DAYS』に提供したアルバム未収録曲)の延長線上に仕上がったかなという印象で、あれをさらにパンキッシュなアレンジとトライバルなリズムで再構築するとこうなるのかな。スラッシュとダフが復帰した2016年以降、2人が参加した新作音源を心待ちにしていましたが、まずは軽いジャブといったところでしょうか。今後、2人がソングライティングに参加した完全未発表曲が表に出ることはあるのか……ここまできたら、気長に待ちたいと思います。

 


▼GUNS N' ROSES『ABSUЯD』
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2021年5月12日 (水)

NANCY WILSON『YOU AND ME』(2021)

2021年5月7日にリリースされたナンシー・ウィルソンHEART)初のソロアルバム。日本盤は海外に先駆け、同年4月28日に発売。

ソロ名義では1999年にライブアルバム『LIVE AT McCABES GUITAR SHOP』を発表しているものの、スタジオアルバムはキャリア45年にしてこれが初めて。もともと2020年HEARTとしての大々的なツアーが予定されていたところ、新型コロナウイルスの影響で中止に。その空いた時間をソロアルバム制作に充てたらどうかと周りから提案されたことにより、重い腰を上げついに制作に乗り出したとのこと。レコーディングにはHEARTのメンバーを中心に、サミー・ヘイガーダフ・マッケイガンGUNS N' ROSES)、テイラー・ホーキンス(FOO FIGHTERS)といったゲストミュージシャンがリモートにて参加したそうです。

全体的にアコースティック中心な作風は近年のHEARTにも通ずるものがあり、これは想定内かなと。そんな中、ダフ&テイラーが参加した「Party At The Angel Ballroom」やオリジナル曲「The Inbetween」「The Dragon」、PEARL JAMのカバー「Daughter」などロックテイスト強めの楽曲も含まれており、安心安定の内容を楽しむことができます。特に前者はかなり生々しいサウンドで録音されており、HEARTの良き時代を思うかべることができるはずです。

また、本作には先の「Daughter」以外にもブルース・スプリングスティーン「The Rising」、サイモン&ガーファンクル「The Boxer」、THE CRANBERRIES「Dreams」といったカバー曲も用意。「The Boxer」ではサミー・ヘイガーとのハーモニーを味わえるほか、「Dreams」ではナンシーのバンドROADCASE ROYALEのメンバーでもあるリヴ・ウォーフィールドとのコラボレーションを楽しむことができます。

さらにアルバム終盤には、昨年亡くなったエディ・ヴァン・ヘイレン(VAN HALEN)に捧げたアコースティック・インストゥルメンタル曲「4 Edward」も用意。エディっぽいフレージングを含む、アルバムのクロージングにぴったりな1曲と言えるでしょう。

さすがに現在67歳の彼女に「These Dreams」や「There's A Girl」のようなハードロックチューンを求めるのは酷ですし、そもそも2021年の今、彼女にそういったスタイルを求めるリスナーもそう多くないはず。特に90年代以降のHEARTはアコースティックをひとつの武器としているので、このアルバムで聴けるスタイルは非常に自然なものであり、バンドの作品からの流れで楽しむことができるはずです。と同時に、ナンシーが歌うスプリングスティーンやPEARL JAM、THE CRANBERRIESというのも非常に興味深く、バンドとは違ったテイストを味わえるのではないでしょうか。

ハードなテイストはアン・ウィルソンが中心で歌うHEARTに任せて、ソロはこれくらい肩の力が抜けていていいのでは……という、納得の1枚です。

 


▼NANCY WILSON『YOU AND ME』
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2020年4月28日 (火)

SLASH『SLASH』(2010)

2010年3月末にリリースされた、スラッシュのソロアルバム。これまでSLASH’S SNAKEPIT名義では2枚のアルバムを発表していますが、ソロ名義ではこれが初のオリジナルアルバムとなります。

2007年にスコット・ウェイランド(Vo)が脱退したことで、事実上の解散状態に陥ったVELVET REVOLVER。スラッシュはUniversal Musicと新たに契約し、これまでのキャリアを総括するようなソロアルバム制作に臨みます。

彼と親交の深いミュージシャンを多数迎えた本作は、イアン・アストベリー(THE CULT)、オジー・オズボーン、ファーギー、マイルズ・ケネディALTER BRIDGE)、クリス・コーネルSOUNDGARDEN)、アンドリュー・ストックデイル(WOLFMOTHER)、アダム・レヴィーン(MAROON 5)、レミー・キルミスター(MOTÖRHEAD)、キッド・ロック、M.シャドウズ(AVENGED SEVENFOLD)、ロッコ・デルーカ、イギー・ポップと曲ごとに異なるシンガーが参加した豪華な内容に。さらに日本盤のみ、稲葉浩志(B'z)をフィーチャーした楽曲も用意されたことで、当時はリリース前から賛否両方の意味で話題となりました。

サウンド的には、過去にスラッシュが参加したバンド……GUNS N' ROSESやVELVET REVOLVER、そして自身のSNAKEPITの延長線上にあるものですが、それらをアクの強いシンガーたちが自身のメロディで歌うことにより、スラッスの楽曲であると同時に各シンガー自身の楽曲にもなっている、まさにコラボらしいコラボ作と呼べる仕上がりです。だって、オープニングのイアン・アストベリーが歌う「Ghost」からして、彼が歌うことでどう聴いたってTHE CULT以外の何者でもない楽曲に昇華されていますし、それこそオジーが歌う「Crucify The Dead」もオジーの近作に収録されていても不思議じゃない内容。ハードロック調の「Beautiful Dangerous」がファーギーのアルバムに収録されていたとしても、別に不思議じゃないし……っていう妙な納得感があるのは、それこそ本作に参加したシンガーたちの個性がいかに強いかという証拠でもあるわけです。

また、本作には1曲のみインストナンバー「Watch This」が収録されているのですが、こちらではベースに盟友ダフ・マッケイガン、ドラムにデイヴ・グロール(FOO FIGHTERS)という夢の組み合わせが実現しています。これ、デイヴがそのまま歌っても面白かったのにね。

本作で唯一複数歌っているマイルズ・ケネディとは相性が良かったのか、本作を携えたワールドツアーにも帯同することに。結局、その後もスラッシュのソロ活動では毎作彼が参加することになります。

ちなみに、誰もが気になる稲葉浩志が参加した「Sahara」ですが……稲葉による日本語詞で歌われているので、稲葉のソロ曲のように聴こえます。スラッシュらしさももちろんそこそこ見受けられるのですが、やっぱり他シンガー同様に稲葉のアクの強さが優っており、そこはさすがだなと。けど、どうせなら英詞で歌えばよかったのにね……日本語が悪いってことではなく、この流れで最後に日本語が飛び込んでくると、ちょっと違和感がね。80年代によくあった、外タレが日本盤ボーナストラックに提供した「日本語バージョン」みたいで、少し恥ずかしくなってしまうと言いますか。曲やボーカルパフォーマンスが素晴らしいだけに、非常に勿体ないと思いました。

なお、本作はのちに国別に内容の異なるボーナストラック/ディスクを付けたさまざまな別バージョンが発表されており、そちらにはCYPRESS HILLとファーギーによるガンズ「Paradise City」やマイルズ・ケネディが歌う「Sweet Child O' Mine」アコースティックカバー、ニック・オリヴェリやアリス・クーパー参加のアルバム未収録曲、先の稲葉歌唱曲「Sahara」の英語バージョン(!)などが収録されております。おいおい、英語版あるじゃねーかよ(苦笑)。

 


▼SLASH『SLASH』
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2020年2月22日 (土)

OZZY OSBOURNE『ORDINARY MAN』(2020)

2020年2月下旬にリリースされたオジー・オズボーンの11thオリジナルアルバム。カバー曲で構成されたアルバム『UNDER COVER』(2005年)を含めると、通算12作目のスタジオアルバムということになります。

前作『SCREAM』(2010年)が2010年6月発売だったので、ほぼ10年ぶりということになりますが、その10年の間にはBLACK SABBATHとしてのラストアルバム『13』(2013年)もあったので、実質7年ぶりの新作ということになるのかな。ま、どちらにせよオジークラスのリリース間隔としてはだいぶ空いたことには違いありません。

ここ数年、新作に向けた噂はいろいろ上がっては消え、上がっては消えを繰り返していました。個人的に記憶に残っているところではスティーヴ・スティーヴンス&ビリー・モリソン(ともにビリー・アイドルBANDのギタリスト)と共作しているなんて話もありました。しかし、新曲は一向にリリースされる気配はなく、2年前には『NO MORE TOURS』と題した最後のワールドツアーを行うことが発表され、日本にも昨年3月に『DOWNLOAD JAPAN』のヘッドライナーとして来日することが決まっていました。が、実際にはご存知のとおり。2015年秋の『OZZFEST JAPAN 2015』を最後に、オジーの来日公演は実現しておりません。

もともと、オジーはこの10年でスタジオ入りにだいぶ消極的だったようで、前作『SCREAM』は完成までに約1年半もの歳月を要したとのこと。これがあって、長期間スタジオにこもるのを嫌がったみたいなんです。ところが、ポスト・マローンとの共演曲「Take Me What You Want」で出会ったプロデューサー/マルチプレイヤーのアンドリュー・ワットにけしかけられ、ついに重い腰を上げアルバム制作に突入。ザック・ワイルド(G)をはじめとする現在のバンドメンバーではなく、アンドリュー側がお膳立てしたレコーディングメンバー……ダフ・マッケイガン(B/GUNS N' ROSES)とチャド・スミス(Dr/RED HOT CHILI PEPPERS)、そしてギターはアンドリュー自身という布陣で曲作りを含む制作を実施。さらには、スラッシュ(G/GN'R)やトム・モレロ(G/RAGE AGAINST THE MACHINE)、エルトン・ジョン(Vo, Piano)という豪華ゲストまで迎え、これまでの躊躇が嘘みたいに待望のオリジナルアルバムは1年かからずして我々の手元に届けられたわけです。

昨年11月にリードトラック「Under The Graveyard」がまず配信されましたが、ぶっちゃけた話をすると僕、この曲に対してはまずネガティブな感情が溢れ出てしまいました。「ああ、なんだかわかんねえ若造プロデューサーにそそのかされて、ソロでもサバスみたいなことやらされて……10年待った結果がこれか」と。

ところが、その2週間後に発表された2ndシングル「Straight To Hell」を聴いて、気持ちを改めることになります。路線的には確かにサバス以降の流れにあるものでしたが、しっかりオジーのソロワークスらしさも感じられる。ポップさやキャッチーさは薄いものの、確かにこれはオジーのソロ曲だわ、と。

さらに年が明け、1月初頭には3rdシングル「Ordinary Man」も配信。エルトン・ジョンとのデュエットという話題もありましたが、何よりこれが“いかにも”なオジー流スローバラードで一聴して心を持っていかれたわけです。うん、これは期待できそうだなと。

あれから約1ヶ月。リリースより少々先にアルバムをまるまる聴く機会を得たのですが、最初の「Under The Graveyard」に対するネガティブな感情がまるでなかったかのように本作を全面的に受け入れる自分がいました。うん、どこからどう聴いてもオジー・オズボーンのニューアルバムだと、そう素直に思えたのです。

確かに、テイスト的にはソロよりもサバス時代に寄った作風かもしれません。しかし、リリースタイミング的にもBLACK SABBATHのレコードデビュー50周年(2020年2月13日)とかぶっていたり、ここ最近のオジーの体調面での問題なども相まって、「もしかしたらこれが最後かもしれない……」という不安も少なからず感じていた。だからこそ、本作をもっと前向きに捉えようと気持ちを持ち直したのかもしれませんね。

けど、作品への評価とそういった個人的感情はできるだけ切り離して楽しみたい。そう思って何度かリピートしてみましたが……やっぱりどうしても感傷的な気持ちは切り離すことはできませんでした。できなかったんだけど……それでも「ああ、オジーの新作カッコいい!」と思える自分が存在するのもまた事実。もうそれでいいじゃん!

スラッシュらしいギターソロがフィーチャーされた「Straight To Hell」から始まる本作は、序盤こそ8thアルバム『DOWN TO EARTH』(2001年)以降の流れを汲む、“21世紀のオジー”らしいアルバムかと思いきや、ところどころに6thアルバム『NO MORE TEARS』(1991年)のテイストも散りばめられているし、もちろんサバスらしさもあるし、もっと言えばオジーのルーツであるビートルズからの影響もしっかり残されている。そこまで含めて、従来のオジーのソロらしいんですよね。しかも、その“らしさ”がセルフ・パロディで終わっていないし、しっかり新しいオリジナル作品にまで昇華されている。きっとザックを含むイツメンで作っていたら、セルフ・パロディとまでは言わないまでも焼き直し感を残したまま消化不良で終わっていたのかもしれない。だからこそ、スタジオワークに無駄な時間がかかりすぎてしまうのかな……いや、わからないけど。

アルバムの流れで聴くと、不思議と「Under The Graveyard」も悪くない。いや、むしろ「Ordinary Man」のあとにこの曲が続く必然が感じられるし、「Under The Graveyard」のあとに「Eat Me」が並ぶ意味も理解できる。個人的にはこの「Eat Me」以降のアルバム後半の流れがめっちゃツボで、トム・モレロらしいソロをフィーチャーした「Scary Little Green Men」、アンドリュー・ワットの素晴らしいギターソロと美しいメロディ&アレンジがオジーソロ史上ベストワークと思えるほどの「Holy For Tonight」、ポスト・マローンがゲスト参加したパンキッシュな「It's Raid」と、“らしさ”と“斬新さ”が共存する構成なのです。そこからボーナストラックの「Take What You Want」、日本盤ボーナストラックとなる短尺曲「Darkside Blues」へと続くエンディングまで含めて、しっかり楽しめました。

『NO MORE TEARS』でひとつの極みへと到達し、続く7thアルバム『OZZMOSIS』(1995年)以降は試行錯誤の繰り返しだったオジーでしたが、ようやく“やりたかったこと”を全うすることができたんじゃないか。こんなこと書いたら不吉だって思われるかもしれないけど、この集大成的な1枚はオジー流“辞世の句”であり、昨年12月に71歳になったばかりのアーティスト:オジー・オズボーンにとっての“スワン・ソング”なのかなと。そんな重みと凄みと説得力を感じずにはいられない、会心の1枚だと思います。

 


▼OZZY OSBOURNE『ORDINARY MAN』
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2019年6月17日 (月)

DUFF McKAGAN『TENDERNESS』(2019)

GUNS N' ROSESのベーシスト、ダフ・マッケイガンが2019年5月末に発表したソロアルバム。ソロ作品としてはDUFF McKAGAN'S LOADEDでの『THE TAKING』(2011年)から8年ぶり、ソロ名義では『BELIEVE IN ME』(1993年)以来実に26年ぶりのアルバムとなります(本来、1999年に『BEAUTIFUL DISEASE』というアルバムを完成させリリース予定でしたが、レーベルとのトラブルで現在まで未発表。なので、ここでは本作『TENDERNESS』をソロ2ndアルバムと記載します)。

55歳になったダフが2019年の今鳴らすのは、ハードロックでもパンクロックでもなく、アコースティックベースのアーシーでレイドバックしたカントリーロック。オルタナ・カントリー界の鬼才シューター・ジェニングスをプロデューサーに迎え、彼のバンドメンバーとともにスタジオ入りして制作した今作は、これまでのダフのイメージからすると非常に“枯れ”まくった1枚と言えます。

本作のテーマは「GUNS N' ROSESの2年半に亘るワールドツアーの間に遭遇した悲痛な思い、怒り、恐怖、混乱など」だそうで、そういった感情がスロー/ミディアムテンポのスカスカなサウンドとともに展開されているのですが、ダフがあの“男気に溢れた味のある声”で歌うことで完全に自身の世界観へと昇華させてしまう。その説得力はさすがの一言です。

ある意味でロック/パンクを体現してきた男が、80〜90年代に一時代を築き上げたメガヒットバンドの一員として再び世界中を周り、そこで目にしてきた現状は決して喜ばしいものではなかった。そういった負の感情がダフを音楽制作/表現へと向かわせた……そういった意味では、今作もまた彼にとって(音楽的にではなく、生き方/スタイルという意味での)パンクロック作品なのかもしれません。

そして、そういった負の感情が気づけばポジティブなものへと昇華された。ここで鳴らされている楽曲や綴られている言葉の数々は、すべてがマイナスなものではありません。そういった負の感情の中から幸福や平和を導き出そう、つなげていこうとする姿勢がところどころから感じられるのです。これこそが、ダフ・マッケイガンという男の心意気といいますか、我々が彼のことを愛してやまない理由でもあるわけです。

決して刺激的ではないし、ガンズのハードコア・ファンからはヌルいと言われてしまうかもしれない。しかし、こんなにもエモーショナルなアルバムは過去のダフの作品には存在しなかった……それを今このご時世にこういう形で世に送り出す、その姿勢に心打たれるし、嘘がないと信用できる。何度でも何時間でも、ずっと聴いていられる心の安定剤的な1枚です。

 


▼DUFF McKAGAN『TENDERNESS』
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2019年3月20日 (水)

GILBY CLARKE『PAWNSHOP GUITARS』(1994)

イジー・ストラドリンに代わり、GUNS N' ROSESにギタリストとして加入することになったギルビー・クラーク。80年代半ばにアイドル的な立ち位置のパワーポップバンドCANDYや、ハードロックバンドKILL FOR THRILLSなどで活躍したのちにガンズに加わるのですが、バンドがスタジアムバンドとして人気肥大していく中でツアーのみに参加ということもあって、正直ミュージシャンとしてどこまでの才能がある人なのか、いまいちわかっていなかったところがありました。

そんな中、ガンズ活動休止中にダフ・マッケイガンに続いてソロアルバムを発表するのがギルビーだとわかると、当時のファンは「お前かよ!」と総ツッコミを入れることになるわけです。だって、オリメンのスラッシュより先なんですから。

そんなわけで、1994年7月にVirgin Recordsから発表されたのがこの『PAWNSHOP GUITARS』というアルバム。ガンズが所属するGeffen Recordsからではないというあたりに、いろいろ政治的なものを感じますね。

プロデュースを手掛けたのは、キース・リチャーズとの仕事などで知られるわディ・ワクテル。レコーディングには同じくガンズからマット・ソーラム(Dr)とディジー・リード(Key)が全面参加し、スラッシュやダフも数曲でゲスト参加。さらに、ダフやスラッシュのアルバムにはノータッチだったアクセル・ローズがストーンズのカバー「Dead Flowers」で、ギルビーとデュエットしているという事実に、これまた多くのファンが「……なぜ!?」と驚くことになるわけです。笑える。

ほかにもPIXIESフランク・ブラックSKID ROWのドラマー、ロブ・アフューソ、ELECTRIC ANGELSや2代目SLASH'S SNAKEPITに在籍し現在ALICE COOPER BANDで活躍中のライアン・ロキシーなども名を連ねています。何気に豪華ね。

ギルビーのボーカルは可もなく不可もなくの“ヘタウマ”タイプ。適度にパンキッシュなスリージーハードロックにはこれくらいでちょうどいいのかもしれません。作曲面でも「Cure Me... Or Kill Me」のようなハードロックから「Tijuanna Jail」のポップパンク、「Skin & Bones」のホンキートンク路線、「Johanna's Chopper」でのサイケロックまで、ガンズ路線からポップなものまで意外と器用にこなせることがわかります。あと、ストーンズの「Dead Flowers」とTHE CLASHの「Jail Guitar Doors」(ダフとフランク・ブラックがゲスト参加)というカバーのセンスもなかなか。この才能がガンズで一度も活かされることがなかったのが悔やまれます。

この手のロックとしては、実は隠れた名盤的色合いの強い1枚。過去のガンズ在籍メンバーの中では(大全盛期に在籍していたにも関わらず)もっとも影の薄いギルビー。今となってはアクセルのゲスト参加って、「まあこれで許してや?」的なご祝儀だったのかな……というのは言い過ぎでしょうか(苦笑)。



▼GILBY CLARKE『PAWNSHOP GUITARS』
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2019年3月19日 (火)

DUFF McKAGAN『BELIEVE IN ME』(1993)

GUNS N' ROSESダフ・マッケイガン(B)が1993年9月(日本では同年10月)に発表した、現時点で唯一のソロアルバム。当時はガンズが『USE YOUR ILLUSION I』(1991年)および『同 II』(同年)に伴うワールドツアーが終了したあとで、バンドとしての活動が一時的に休止していたタイミング。本作の2ヶ月後には、事前にレコーディングされていたカバーアルバム『THE SPAGHETTI INCIDENT?』(1993年)もリリースされています。

ガンズの在籍メンバーとしてはいち早くソロ活動に乗り出したダフ(元メンバーのイジー・ストラドリンは脱退後の1992年にアルバムを発表していますが、ガンズに所属したままでのソロ活動はこれが初)。このアルバムでダフはベースはもちろんのこと、リードボーカルやリズムギター、ドラム、ピアノなど大々的に挑戦。どこか“スリージーロック版レニー・クラヴィッツ”みたいなスタイルで、アルバム作りに臨んでいます。

曲によってはさまざまなゲストミュージシャンも多数参加。スラッシュ(G)やギルビー・クラーク(G)、ディジー・リード(Key)、マット・ソーラム(Dr)といった“アクセル・ローズ抜き”ガンズの面々に加え、ジェフ・ベック(G)やレニー・クラヴィッツ(Vo)、当時SKID ROWのメンバーだったセバスチャン・バック(Vo)、デイヴ・スネイク・セイボ(G)、ロブ・アフューソ(Dr)など、顔の広いダフらしい豪華な面々が華を添えています。

ダフ自身はガンズのアルバムやライブでも「So Fine」や「New Rose」「Attitude」などでその歌声を披露してきましたが、決して個性的で上手というタイプではない、雰囲気で聴かせる“ヘタウマ”タイプ。当然このアルバムでもそういったスタイルが全開で、ガンズのアルバムをパンク/オルタナ側に寄せたその作風に妙にフィットしています。スラッシュがリードギターを弾きまくるオープニング曲「Believe In Me」からして、そのカラー押しまくりですものね。

かと思えば、クラヴィネットを多用したファンキーな「(Fucked Up) Beyond Belief」があったり、オルガンやストリングスを被せたスローバラード「Could It Be U」があったりと、相変わらず器用さも提示している。なんて感心していると、1分半程度のタイトルまんまな疾走パンクチューン「Punk Rock Song」なんて曲もある。さすがダフ、我々の思い描くパブリックイメージを裏切りません。

さまざまなゲストミュージシャンのカラーも強く打ち出しながらも、それに消されることのないダフの個性。アルバムとしては決して完成度が高いとは言い難いラフな内容ですが、そこも含めて当時のガンズのメンバーが作ったソロアルバムという印象が強いかも。この春、久しぶりにソロライブを行うというダフ(※参照)、そのあとには本作以来となるソロ名義でのアルバムもリリース予定なんだとか。ガンズでの活動を経た今の彼がどんな作風のアルバムを作るのか、そしてどんなゲストが参加するのか、とても気になります。



▼DUFF McKAGAN『BELIEVE IN ME』
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2017年9月29日 (金)

NEUROTIC OUTSIDERS『NEUROTIC OUTSIDERS』(1996)

SEX PISTOLSのスティーヴ・ジョーンズ、DURAN DURANのジョン・テイラー、GUNS N' ROSESダフ・マッケイガン&マット・ソーラム(当時)が90年代半ばに結成したスーパーグループ、NEUROTIC OUTSIDERSが1996年に発表した唯一のアルバム。もともとはチャリティイベントのために結成したお遊びバンドで、気づけばアルバムを作ってツアーをするまでになっていたという。

このバンドではスティーヴとジョン、ダフの3人がボーカルを担当。ジョンとダフはもともとベーシストですが、ジョンはギターにスイッチしています。アルバムのプロデューサーは元TALKING HEADSのジェリー・ハリスン。大半の楽曲をスティーヴが担当し、ジョンのソロ名義が2曲、スティーヴとジョンの共作が1曲、ダフとスティーヴの共作が1曲、そしてTHE CLASH「Janie Jones」のカバーという全12曲が収められています。

DURAN DURANの中でもアンディ・テイラーに次いでロック/パンクのイメージが強いジョン、そのアンディと1987年に『THUNDER』というアルバムで共演したスティーヴ、1993年にガンズで『THE SPAGHETTI INCIDENT?』というパンクカバーアルバムを発表した直後のダフ&マット。音楽的につながってないようで、実はいろいろつながっている4人なんですよね。

アルバム自体は、この4人から想像できる、適度にハードでパンキッシュ、それでいて歌メロはしっかりポップなロックが展開されています。ピストルズでのスティーヴ、そしてパンクカバーを通過したガンズが好きって人は否応無しに楽しめる1枚だと思います。ただ、パンクやハードロックを通過してないDURAN DURANのファンには多少キツいかな? THE POWER STATIONでの彼とも全然違いますしね。

思えばDURAN DURANって「SEX PISTOLSとCHICのミックス」をイメージして結成されたバンドなわけで、後者はDURAN DURAN本家やTHE POWER STATIONで強めに表現していたので、前者をこちらのバンドで表現した……ってことなんでしょうね。にしては、それぞれのオリジネイターと共演することでそれを具現化するっていう、安直さはアレなんですが。

ガンズもDURAN DURANも大好きだった自分からしたら、確かに夢の組み合わせなんですよね。なのに、リリース当時はまったく惹かれなくて……ぶっちゃけ、このレビュー書くために10数年ぶりにこのアルバム、引っ張り出したくらいですから。

時代的に、この頃はGREEN DAYあたりがブレイクしたタイミングだったと思いますが、そういったポップパンク勢よりもハードロック色が強いのは、間違いなくスティーヴのカラーとマットのドラムによるものが大きいわけで。そこでの差別化はしっかりできていますが、だからなのかチャート的にもセールス的にもそこまで成功を収めることはありませんでした。まあもともと遊びで始まったバンドなので、それでいいのかもしれないけど。じゃなきゃ、このメンツで「Janie Jones」なんてやりませんて(これがなかなか良いんです)。

“これ!”といった突出した1曲はないものの、アルバム通して気楽に聴ける1枚。傑作ではないけど、忘れた頃に再生してみると「あ、意外と良いじゃん」と素直に思える作品集なんじゃないでしょうか。事実、久しぶりに聴いてみたらリリース当時よりも楽しめたので。



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