カテゴリー「Eminem」の4件の記事

2019年1月13日 (日)

祝ご成人(1998年4月〜1999年3月発売の洋楽アルバム20選)

新成人の皆さん、おめでとうございます。2014年度に初めて執筆したこの“洋楽版成人アルバム”企画、今回で5回目となります。毎年この時期にこの企画をやることで、温故知新というよりは「自分の20年前の音楽ライフはどんなだったか」を思い返す上で非常に重要なコンテンツになりつつあります。

しかも、今回は当サイトの前身サイトがスタートした時期(1998年12月)が被っていることから、選出時もいろいろ感慨深いものがあります。いやあ、長く続けるもんだ。

さて、この企画の説明です。この1月に成人式を迎えたの皆さんが生まれた年(学年的に1998年4月〜1999年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れがある作品のうちSpotifyやApple Musicで試聴可能な作品を20枚ピックアップしました。今年度は残念ながら、選出した20枚すべてがSpotifyおよびApple Musicに揃っているものではありませんでした(各サービスともに1枚足りないという)。

でも、どれも名盤ばかりですし、もしまだ聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にチェックしてみてはどうでしょう。特に、現在20歳の方々は「これ、自分が生まれた年に出たんだ」とかいろいろ感慨深いものがあるような気もしますし。ちなみに、作品の並びはすべてアルファベット順です。(2014年度の新成人編はこちら、2015年度の新成人編はこちら、2016年度の新成人編はこちら、2017年度の新成人編はこちらです)


ASIAN DUB FOUNDATION『RAFI'S REVENGE』(1998年11月発売)(Spotify

AT THE DRIVE-IN『IN/CASINO/OUT』(1998年8月発売)(Spotify)(レビュー

BEASTIE BOYS『HELLO NASTY』(1998年7月発売)(Spotify

BLUR『13』(1999年3月発売)(Spotify)(レビュー

BOARDS OF CANADA『MUSIC HAS THE RIGHT TO CHILDREN』(1998年4月発売)(Spotify

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2004年11月21日 (日)

とみぃ洋楽100番勝負(95)

●第95回:「My Name Is」 EMINEM ('99)

 まさかエミネムが音楽業界的に、こんなにも大きな存在になるなんて‥‥この曲が出始めた頃は想像も出来なかったよね。単純に、白人で面白いラッパーが出て来たなぁ‥‥くらいにしか思ってなかったのに。デビューから約5年。4枚のアルバムと1枚の映画サントラ、そして主演映画‥‥アメリカでは社会現象にまでなって、日本でも'01年のフジロックの大トリを務めちゃったりしたんだからさ。あの時点でそこまで大きくなるって信じてた人がいたら、是非会ってみたいよ。

 最初は誰が歌ってるとか、どんなキャラクターの男だとか全然知らなかったんだよね。よく行くクラブイベントでこの "My Name Is" っていう曲がよくかかってて。面白い曲だなぁ、ポップな曲でいい感じだなぁ、これなら俺にも馴染めるな‥‥とか好意的に感じてたのよ。で、暫くしたらビルボードのシングルチャートでトップ10入りしてて。2位まで上がったんだっけ? そりゃビックリですよ。普段ヒップホップとかそんなにかかるイベントじゃなかったし(ロック系だったからね)、そんな中でしょっちゅうかかってたから、DJがよっぽど気に入ってるか、あるいは何か理由があってかけ続けてるのか‥‥ま、普段ロックしか聴かないような奴らはこの曲になるとフロアから離れてって、新しい音に敏感な奴らだけがこの曲に合わせて踊ってたんだけどさ。俺は‥‥その状況を眺めてた、というか。まだ自信がなかったんだよね、これが「クる」かどうか‥‥いや、そういう問題じゃなかったんだけど。

 その後の彼の曲と比べればかなりシンプルなバックトラックでかなりスカスカなんだけど、逆にそこが良かったのかな。何だろ‥‥それまで白人ラップというと、俺の中ではBEASTIE BOYSとHOUSE OF PAINくらいしか思いつかなかったし、それくらいしか通過してないんだけど‥‥これなら楽しめる。そう直感で思ったんだよね。事実、後でこれが誰の何という曲なのか、DJに聞いて、後日CDショップでアルバム買ってるしね。

 今となっては別に珍しいことじゃないけど、やはりあの頃はロックファンが「エミネムっていう奴、面白いよね?」と声を大にして言えるような空気じゃなかったよね。どっちかっていうと、ラップメタル的なLIMPBIZKITとかの方が好意的に受け入れられてたし。んでそのLIMPとエミネムが共にツアーとかするようになって、ロックファンにも認知されるようになったのかな(んで、その後両者は犬猿の仲になるんだけど)。

 久し振りにアルバム引っ張り出して聴いてみたけど、うん、これはやっぱりカッコ良いよ。聴きやすさとか親しみやすさは次作以降に譲るけど、これはこれで素晴らしいな、と。そこは譲れないよな、うん。



▼EMINEM「THE SLIM SHADY LP」(amazon

2001年8月13日 (月)

「FUJI ROCK FESTIVAL '01」DAY 3@苗場スキー場(2001年7月29日)

◎BRAHMAN (at GREEN STAGE / 11:00~11:40)

  3年振りの最新作「A FORLORN HOPE」を引っ提げてのフジロック、しかも今回はグリーンステージだ。お約束の沖縄チックなSEに乗せてメンバーが続々とステージに現れる。最新作同様、1曲目は「For One's Life」からスタート。徐々に盛り上がるタイプの曲だが、すでにイントロから最前ブロックの客はヒートアップ気味。演奏がガツンとくるパートに入ると、モッシュ&だいぶの嵐。3日通したトップバッターの中で、一番殺伐とした空気が流れる。

  この曲の時点で気づいたのが、ボーカルのTOSHI-LOWの状態が芳しくないという事実。明らかに上のキーの音程が取れていない。音程が取れていて外すのと、完全に見失って外すのとでは明らかに違う。結局、終始辛そうな状態で40分を乗り切るのだった。

  新作から立て続けに、アルバムの曲順通りに5曲披露した後に前作から「See Off」や「Answer For…」といった人気曲を挟むものの、従来の切れやしなやかさを上手く表現できずにいる、もどかしそうなTOSHI-LOWを観るにつれ、こちらまで痛々しい気持ちになり、聴いてるのがつらくなる。彼らの最大の魅力である、独特なメロディーが全く伝えられない状況。そしてそれが全く伝わってこない状況。正直、途中でグリーンステージを後にしようかとも考えたくらいだ。ラストの「Arrival Time」での悲痛な叫びも何だか尻切れトンボの如くフェードアウトしていく。

  これが事実、これが現実だ。はっきり言う。この日のBRAHMANは最低だった。これはメンバー自身、特にTOSHI-LOW本人も認めるところだろう。これで「最高だった」と言い切ってしまうようだったら、いっそのこと解散してしまった方がいい。そのくらい、プロとしてはレベルの低いモノを、よりによってフジロックの大舞台で見せてしまったという失態。今後の彼らがこの現実とどう向き合っていくのか、そしてそれをあの場にいたファンがどう捉えるのか、非常に興味深い。最低なものは最低だったと言える勇気、そして正直さ。ファンならこれだけは決して忘れないでほしい。「やっぱサイコー」とかいう馴れ合いが、バンドを潰してしまうことだってあるのだから。


◎JOUJOUKA (at WHITE STAGE / 12:40~13:20)

  トランス系テクノのアーティストだという事しか知らなかった。一昨年、そして昨年もフジに出演してるそうだが、一昨年、観なかったなぁ。DJ Tsuyoshiが中心となっているユニットだが、ライブではどういう感じになるのか。

  ホワイトに着いた時点で、すでにステージは始まっていて、遠くからそのトランシーな音は聞こえてきていた。気持ち良さそう、それが第一印象。ようやくステージが見える位置までたどり着く。メンバー構成はDJ陣が2名、ギタリストがひとり、そして時々引っ込むベースがひとりの計4人編成。ギターは常時ステージ上で煽りまくっているので、どうやらベーシストはゲスト出演のようだ。基本的にはDJ陣がプレイするトランシーなサウンドの上に生楽器を重ねて、普通のトランステクノとしては終わらせない、魅せる要素も兼ね備えている。生楽器を被せるのは、どうやらDJ Tsuyoshiの信条らしく、とにかくギターのザクザクしたリフが気持ちよく、またベースもスラップまではいかないけど、バキバキしたサウンドでこれまた気持ちいい。ちょっと聴いた感じでは、UNDERWORLDにも通ずるロック感を見出すことができる。でも、歌がないぶん、こっちの方がよりダンスに徹することができる気もする。

  最初、軽い気持ちで観るはずが、結局終始気持ちよさげに踊り狂ってしまった。3日間の疲労が相当足にきてるにも関わらず、アホみたいに踊る俺を見て、友人に心配される始末。結局踊ってるうちに調子が戻ってきて、疲れなんて吹っ飛んでしまった。

  最後にはホワイトステージの総合MCであるブライアン・バートン・ルイスがボーカル&MCとして、即興で歌う。やっぱり歌が入ったほうが、それなりに盛り上がるけど、個人的には最後のは蛇足って気もしないでもない。このユニットは2人のDJ陣のプレイと、そこに被さるギター(時にベース)、そこから生み出されるトランシーで腰にクるテクノサウンド、それだけで十分だ。


◎SION (at FIELD OF HEAVEN / 13:20~14:20)

  SIONは、俺が知ってるあの頃のSIONのままだった。選曲的には、きっと先頃リリースされた最新作が中心になってるんだろうけど、俺の心臓が鷲掴みされたのは、名曲「Sorry Baby」。酔っていたせいもあるだろうけど、炎天下の中、ただステージ一点を見つめる俺。言葉のひとつひとつを噛みしめながら、一緒に歌う。このフジロックってフェスは、自分の現在・過去・未来を見つめ直すイベントなのか?って思えるくらいに、心にズシンとくる瞬間が非常に多かった。特に今回、30を目前としていただけに、そういう過去の想い出が走馬燈のように蘇ることが多かった。音楽で振り返る30年……人に自慢できるような大したモノじゃないけど、俺にとってはかけがえのない大切なもの。改めて音楽っていいな、歌っていいなと思った瞬間だった。

  気づけばラストの頃は前まで行って一緒に歌ってたっけ。よく知りもしない歌に合わせて。それだけのパワーを持っているのが音楽であって、歌である。きっと帰宅後もSIONの音楽に再び触れる機会はないのかもしれないが、それでも今この一瞬を大切にしたい。そう思って、力一杯踊った。このSIONのステージは、ちょっと俺の中では大切なものとなりそうだ。


◎SYSTEM OF A DOWN (at GREEN STAGE / 17:10~18:10)

  正直に言う。FOHのムーンライダーズを観るために、冒頭の数曲のみで移動してしまった。あとになって「なんで最後まで観なかったんだよ!」っていまだに後悔しているアクトのひとつ。

  今でもよく覚えているのは、始まる直前の場の異様な空気。あの瞬間の「別に人がそこまでパンパンではないんだけど、なぜか急に暴動が起こるんじゃないか?」と勘違いしてしまいそうなヒリヒリした空気だけは忘れられない。そしてステージに出てきた4人。すでに2人は半裸の状態だ。ダロンがギターを爪弾きながら、「ドラッグで病んでる?」「ドラッグやってる?」的変な日本語を交えつつ歌い、サージはそこにハーモニーを重ねていく。そこから「War?」へとなだれ込み一気に激しさを増す。すでに最前ブロックの盛り上がりは手に負えない状況だ。そこから数曲知らない曲が続くが、今思えばこの中には「TOXICITY」の1曲目「Prison Song」も含まれていた。イントロが異常にカッコよかったことだけは覚えており、のちにアルバムを聴いた瞬間に「あ、あの曲!」とすぐに気づいた……が、結局ノリきれずに途中で退散したのだった。


◎ムーンライダーズ (at FIELD OF HEAVEN / 17:20~18:30)

  この方々も活動歴が長い割に、実はちゃんと聴いてこなかったバンドのひとつ。とにかく、実験的要素満載にして極上のポップ。終始あっけに取られっぱなし。白井氏のギターは相変わらず変だし(ギターのブリッジ周辺にサンプラーをそのまま打ち付けてるし、しかもストラップの前後にギターのネックとボディーがそのままくくり付けてあるし)、鈴木慶一氏は終始クール。曲によってメインボーカルが変わるのだけど、基本的には慶一氏。あれは作曲者がリードを取るのだろうか。逆にキーボードとドラムの方々はコーラスに加わったり加わらなかったりで、演奏に徹していただけ。そこが職人っぽくて素敵だったけど。

  ちょっとトッド・ラングレンを彷彿とさせるくらい、楽曲のバラエティーが多彩で、なおかつそれらがすべてポップなのがすごい。コアなファンが多かったのか、周りの年齢層はやけに高かった。フジにも親子連れが多くなったようだね。最前列には初老の夫婦に小学生くらいの子供という親子がいたけど、前に押されることもなく、気持ちよさげにステージを楽しんでいたのが印象的だった。そうそう、3日目になってようやく、名物のトンボを多く見かけるようになった。マイクに止まったトンボを捕まえて、空に逃がす白井氏の姿も印象的だった。普段、進んで聴くことのないタイプの音楽だが、こういう場でならすんなりと聴けてしまう。しかもストーンと心の中に先入観なく入ってくるんだから、不思議だ。


◎TOOL (at GREEN STAGE / 19:10~20:30)

  一種異様ともいえる不穏な空気が流れる暗闇の中、照明やぐらの右隣に陣取りスタートするまで座って待つ。モッシュピットはすでに満員御礼、直前に演奏したSYSTEM OF A DOWNの熱気も冷めやらぬ状態で、みんな今にも暴れ出しそうな勢いだ。

  待望の初来日。俺は常々言ってきた。1998年の豊洲にKORNが初上陸した後、1999年にブレイク後の勢いのままLIMP BIZKITが苗場の地を踏んだ後。決まって「次はTOOLだな」と。もうTOOLしかないだろう、オーディエンスの度肝を抜かす存在は。その願いがいよいよ叶うときが来たのだ。しかも約5年振りの、全米ナンバー1アルバムを引っ提げて。

  ステージにメンバーが現れた。左にギターのアダム、右にベースのジャスティン……多分ね。照明がほとんど当たらない、非常に暗い状態の中で終始彼らはプレイしていたのだ。そして後方右側に、ドラムのダニーが陣取り、その左側には大型スクリーンとお立ち台のような一段高くなった舞台が‥‥そこに人影のようなものが常に動いている。そうこうしてるうちに、あのミステリアスなイントロが聞こえてくる。「The Grudge」だ。スクリーンには新作ジャケットをモチーフにした映像が終始流れている。歌がうっすらと聞こえてくる。しかしPAの調子が悪いのか、いまいち聞き取り難い。そして明るくなったスクリーンの前には、明らかに人影が。そう、そのお立ち台で怪しいダンスをしているのが、ボーカルのメイナードなのだ。ほとんど全裸に近い状態(パンツ一丁で、全身青塗り)で曲の起伏に合わせてユラユラと踊る、殆ど姿や表情は確認できないが明らかに存在感、カリスマ的オーラを感じることができる。

  噂には聞いていたが、これは衝撃的だ。流される映像も曲をイメージさせるというよりも、エログロに近いもので、PVが存在するシングル曲に関してはそれをモチーフにして再編集されているようだった。登場した時点で湧いていたモッシュピットも、気づけばみんな棒立ちでステージを見つめる者が続出。ノれないのではない、動けないのだ、この音とこの映像とあのバンドから発せられるオーラを前にしたら。背筋がゾッとしたのは、何も気温のせいではない。こんばバンド、今まで見たことがない。何なんだよ、こいつら。

  続く2曲目は、前作のトップナンバー「Stinkfist」の登場だ。さすがにオーディエンスがさっき以上の歓声で応える。しかし、それも最初だけ。曲が進むにつれて、やはり身動きがとれなくなってしまう。衝撃的なんて言葉、簡単には使いたくなかったのだが、それ以上もそれ以下でもない、本当の衝撃なのだ。こんなもん、見たことないんだから他の何ものとも比べようがない。唯一、映像を駆使するという点では、NINE INCH NAILSと比較することができるのかもしれないが、あれとはまったくの別物だ。

  それにしても、3曲目までボーカルが聞き取りにくかったなぁ。新作からの「Schism」あたりから、ようやくボーカルもクリアに聞こえるようになった。演奏に関しては、もう完璧すぎて何も言うことなし。確かにミスする場面もあったものの、そんなことが気にならないほど、アルバムと寸分違わぬ緻密で計算され尽くされた演奏を披露する。さらに、そこに乗るメイナードのボーカルも、時に力強く、時に潤いを感じさせる。決して「暗黒大将軍」ってわけではなく、あのボーカルとあの演奏が融合するからこそ生まれる浮遊感、それがさらにこの苗場という環境にマッチしていた。ギターのザクザク感はヘヴィロックのそれに近いのだが、パーカッシヴなドラム、時にリード楽器にもなりうるベース。4人それぞれの自己主張がぶつかり合いながらも、互いの持ち味を引き出そうと機能している。計算なのか、単なる偶発的事故なのか。終始握りしめていた拳に、ジワリと嫌な汗をかく。

  終盤はファーストからの「Sober」やセカンドの「Aenema」を交えながら、新作からのムーディで濃い楽曲群を我々に叩きつける。途中、メイナードが曲間に何かしゃべった。一瞬の出来事で聞き逃しそうだった。英語だと思ったのだが、二度目にようやく聞き取れ、理解できた。


「ポジティヴなものを生み出す、その気持ちを忘れるな。」


こんなことを第一声で発した来日アーティスト、これまでいただろうか? この一言にメイナードの、TOOLというバンドの揺るぎない姿勢を垣間見た気がした。「ニホンノミナサン、コンニチワ」でもなければ「アナタワ、ウツクシイ」でもない。「ココニコレテ、トテモウレシイ」といった社交辞令の挨拶ではない。オーディエンスとバンドの間に明確な信頼関係が、この一言で生まれたと思う。

  難解且つホラー映画と言っても過言ではない映像と、ステージ上が薄暗くてほとんど表情を伺うことができないバンドの演奏から、言い表しようのない威圧感が終始あったが、このメイナードの一言は、そしてそれを日本語で発したという事実は、そういう他の表現要素よりも深く、俺の心の中にえぐり込まれた。一生忘れない、忘れられない初来日公演となりそうだ。


01. The Grudge
02. Stinkfist
03. 46 & 2
04. Schism
05. Disposition
06. Reflection
07. Sober
08. Parabola
09. Aenema
10. Lateralus


◎EMINEM featuring D12 (at GREEN STAGE / 21:30~23:00)

  例の前妻に対する暴力沙汰の裁判、来日直前に審判が下り、その結果外国へも行くことができるようになったEMINEM。オーストラリアを回った後の来日ということもあり、きっと調子も昇り調子のはずだ。一体どんなステージを見せてくれるのだろう。TOOL同様、まったく予想がつかない展開になりそうだ。

  21時半を回った頃に、ステージ上手にDJらしき人物が現れるも、そのままの状態が10分程続く。すると急にステージが暗くなり、スクリーンに何か映像が流れ始める。ドキュメンタリー形式のドラマみたいだ。どうやらハンディーカメラを持って、EMINEM宅へ忍び込む青年2人組の話のようだ。カメラを持ったひとりが、もう一方にインタビュー形式で話しかける。あれっ、どこかで観た光景……次の場面で、EMINEM宅らしき家に忍び込んだ2人。ひとりが地下の方へと向かう。カメラを持ったもう一方が壁を映す。そこには「MY NAME IS...」「SLIM SHADY」「MARSHALL MATHERS」等といった文字がずらずらと書き殴られていた。あぁ、なるほど。先頃公開された2作目がコケた、例の低予算ホラー映画のパロディーなわけね。すると、例のごとく地下室から悲鳴が……カメラは走りながら地下室へと近づく。悲鳴を上げた若者をカメラが捕らえた瞬間、目の前にはチェーンソーを持ったジェイソン・マスクの男が……。

  フィルムがそこで終わると、ステージ上からチェーンソーの音が。ステージ上手からフィルム同様のジェイソン・マスクの男がチェーンソーを持って現れる。どこからどう観てもEMINEMだ。こりゃ面白い。ここまで馬鹿馬鹿しくやってくれると、逆に気持ちいい。

  ヒップホップ系のステージっていうと、個人的には昔観たRUN DMC初来日のイメージがあったので、どうしても中弛みしそうな感じがあったのだが、ことEMINEMに関してはそんな心配皆無だった。まず曲がポップだし、オーディエンスに対してコール&レスポンスを求め、一体感を大事にしている。確かにMCがネイティヴ・イングリッシュ(しかもバリバリのスラング入り)だったため、何度か理解に苦しむ場面に遭遇したが、それを補うだけのエンタテインメントが満載だった。

  曲毎に現れるD12の面々や、同じグリーンステージに登場したXZIBITのメンバー。日本酒やエクスタシーを持ってきたり、「PURPLE RAIN」で踊るエクスタシー錠剤の着ぐるみ(背中に「E」の文字が)、中盤再びスクリーンに映し出されたアニメ「THE SLIM SHADY SHOW」、「日本のオーディエンスに『俺の名前は何?(MY NAME IS)』か言わせるんだ」とEMINEMがDJに言うと、わざとヒット曲「My Name Is…」のイントロを流す等の寸劇、そしてパイロ。これだけ馬鹿馬鹿しい要素を含んだショー、今まで観たことないわ。ある意味、俺の中では「ZOO TV」ツアーでのU2を超えたんじゃないかな。

  そして、笑いだけではない。ちゃんとオーディエンスに合いの手を求めたり、一緒に歌ってくれといって流れ出す「Stan」のあのフレーズ。どれを取っても笑顔と感動の瞬間だった。これはもう、言葉で言い表すよりも一度は観てほしい。終始笑いっぱなしで、90分が短いと感じるほど充実した内容だった。

2001年7月25日 (水)

EMINEM『THE MARSHALL MATHERS LP』(2000)

さて、2001年のフジロックを目前にして、いよいよ「とみ宮」でも問題児・EMINEMを取り上げようと思う。実は昨年からずっと、やろう/やりたいとは思っていたのだけど‥‥意外とうちでは話題に上ることが少ないじゃない? 確かにこのアルバム「THE MARSHALL MATHERS LP」を昨年(2000年)のベストアルバムに挙げてくれた方もいたんだけど‥‥これだけ売れても騒がれもしない。まぁ管理人がヒップホップに弱いから、掲示板等でも話題にする機会もなかったし。

EMINEMとの出会いは、確か一昨年のクラブKで、当時ヒットし出していた"My Name Is"を聴いたのが最初。まぁその頃はそれ程ヒップホップに惹かれることもなかったので、何なる「踊りやすい」1曲として流していた。その後、LIMP BIZKIT等のヒップホップ・メタルを通過することによって、ヒップホップはより身近な存在となっていき、そんな中昨年リリースされたこのアルバムが大ヒットを記録し、EMINEMは一躍時の人となる。今年のグラミー賞でも何か受賞してたしね?(よくこんなお下劣なアルバムが受賞したもんだ/笑)

このアルバムは、まぁヒットしてたってこともあって何となく手を出したんだけど‥‥買ってから暫くは封すら開けず手付かず状態が続いて‥‥2ヶ月程経ってから?(笑)やっと聴いてないことに気づいて。そこからはもう、頻繁に聴いてた。昨年自分が参加してた地元のDJイベントでもよく回されてたし、このアルバムからのシングル"Stan"も大ヒットを記録したから、自分から進んで聴こうとしなくても、どこからともなく耳に入ってくるって感じだった。で、ここ数ヶ月は、フジロック出演/初来日が決まったこともあって、改めて自分の意志で聴いている。

ロックファンと公言する人の中には、ヒップホップが苦手だとか、ヒップホップとロックを別モノとして語ったりする人が多い。俺は何度も言うけど、「ヒップホップやテクノも、ロックの中のいちジャンルにすぎない」と思っている。十代前半でRUN DMCやBEASTIE BOYSと出会ってからずっと、ヒップホップはロックに含まれると思い続けてきた(RUN DMCがAEROSMITHと共演した"Walk This Way"やBEASTIESの"Fight For Your Right"といった曲はロックそのものと言っても過言ではない)。その後、ヒップホップは確立したひとつのジャンルとして成長していったが、俺は今でも「ストリートレベルのロックンロール」だと信じている。

このEMINEMには、そういう「ストリートレベル」のいい意味でのくだらなさを感じる。お下劣で暴力的で俺様節全開のライム(歌詞)から受ける印象は、例えば'70年代前半のストーンズやピストルズ、ビッグになる過程のGUNS N'ROSESと同様なものだと言える(アクセル・ローズがカミさんの鼻をへし折ってやる程度だったのが、このEMINEMさんは殺しちゃいますから/苦笑)。さしずめ最近のアーティストで言えば、そのEMINEMが大いに嫌う(笑)LIMP BIZKIT辺りと共通するものさえある。但し、ここでいうLIMPはセカンドでの大ブレイク前夜まで。LIMPは最新作でそれまでストリートレベルだった視点が、完全にエンターテイメントの方向へ向いている。一方EMINEMの方もライヴでは完全にエンターテイメント路線のようだ。つまり、このEMINEMのセカンドアルバムとLIMPのセカンドは、ある意味同じ方向性だと言える。と同時に、実は全く正反対な性質を持ってるとも言えるのだが‥‥どっちつかずだって? ほっとけ(笑)。

全く正反対な性質‥‥つまり、LIMPが「外へ、外へ」‥‥オーディエンス側へ向けてライムを放っていたのに対し、ここで放たれるEMINEMのライムは私小説的‥‥「内へ」と向いているように受け取れるのだ。いや、その内を通り越して一周して、実は外を向いていたりするのだが(って実際どっち向いてるんだよ!?/苦笑)。何故EMINEMがフレッド・ダースト(LIMP BIZKITのVo/MC)のことをボロカスに言うのかが、何となく理解してもらえたのではないだろうか?

EMINEMは言いたい放題言って「攻め」続けた結果、勝ち組の仲間入りをした。今では大嫌いなLIMP BIZKITと同じ土場で戦うことを強いられている。LIMPは最新作で、前作を踏まえた上でのエンターテイメント路線を展開した。さて、EMINEMはどうだろう‥‥とりあえず現時点(2001年7月)では、D12という6人のMCから成り立つユニットとして活動を平行している。どっちがどうで、という違いはあまり感じられないのだが、自身のバランス感覚を保つためにも必要なユニットなのだろうと俺は考えている。まぁ音楽的に言えば、EMINEMソロの方がよりロックテイスト(バックトラックが多彩で、ギターの音も効いている)を強く感じさせるが、攻撃性だけみたら甲乙付けがたい。まぁパンチが効いてるのがD12で、色とりどりなのがソロだと言えるかもしれない。

今後、EMINEMがどういう方向性のアルバムを作るのかは本人にしか判らない。彼も日和ってLIMPのサードのような作品を作るのかもしれないし、あるいはここまで売れてしまっても尚、内面にえぐり込むような攻撃を仕掛けてくるかもしれない。その結果はすぐには出ないだろうが、とりあえず今は、数日後に控えたフジロック3日目大トリという「歴史的瞬間」に備えて、意味もなく腕立て伏せなどをしてみたりして‥‥体力使いそうだもんな、何かライヴは(苦笑)。



▼EMINEM『THE MARSHALL MATHERS LP』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

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