EMPEROR『EMPERIAL DARKNESS JAPAN TOUR 2023』@EX THEATER ROPPONGI(2023年3月2日)
今週はMEGADETHの武道館公演でいい気分を味わいながらスタートしましたが、実はもうひとつ楽しみにしていたライブがありました。それがEMPERORの単独公演。前回観たのが2017年で『LOUD PARK 17』で、あのときは名作2ndアルバム『ANTHEMS TO THE WELKIN AT DUSK』(1997年)リリース20周年を記念して、同作完全再現ライブが展開されましたが、今回はキャリアを総括するようなベスト選曲とのこと。そんなの行かないわけにいかないじゃないですか。
会場のEX THEATER ROPPONGIはスタンド席の観やすさはもちろん、音もそれなりに良いのでお気に入りのハコ。チケット予約の際には情勢がどうなっているか不安もあったので、今回はスタンディングではなくスタンド席に。個人的にはこれが正解だったと思っています。
開演30分前に会場入り。客入りもまずまず、というかほぼ埋まっていたんじゃないかな。ビールを1杯ひっかけていたら、そろそろ開演時間……と思っていた18:58、開演2分前に会場が暗転。「早っ!」と思っていたら、外国人スタッフがステージに登場して、ライブの幕開けを告げるアナウンス。開演時間から何十分も遅れる外タレは星の数ほど観てきたけど、開演時間前にライブをスタートさせるバンドは初めて観たかもしれない。なんとなく、この勤勉さがイーサーン(Vo, G)のイメージとなんとなくリンクしていて、思わずニヤリとしてしまいました。
ライブは最終作『PROMETHEUS: THE DISCIPLINE OF FIRE & DEMISE』(2001年)からの「In The Wordless Chamber」からスタート。意外な1曲でかなり新鮮。タリム(Dr)が繰り出す狂気的なビート、派手な動きもせず黙々とトレモロリフを弾き倒すサモス(G)、長らくバンドをサポートし続けるセクトデーモン(B)とエイナル・ソルベルグ(Key)、そしてボーカルパートがないときは唯一ステージ上を動き続けるイーサーン。しかも、その風貌のジェントルマンぶりと歌唱時のスクリームとの落差にドキッとさせられたり、思わずニヤリとさせられたり。そのビジュアル含めてカッコいいったらありゃしない。
カッコいいといえば、彼らはそのシルエットだけで絵になるのも特徴的な点かな。暗めの照明や激しい点灯で顔がはっきり見えず、どちらかというとその佇まいが強く印象に残る彼らのステージですが、そういった神秘性も込みで惹きつけられるし、むしろビジュアルが音を邪魔しないからこそ、その音に没入できる。そこも含めて、改めて最高だなと思いました。
冒頭こそ4thアルバムの楽曲でしたが、以降は1stアルバム『IN THE NIGHTSIDE ECLIPS』(1994年)と2ndアルバム『ANTHEMS TO THE WELKIN AT DUSK』の楽曲中心。結局3rdアルバム『IX EQUILIBRIUM』(1999年)からは「Curse You All Men!」のみ、4thからも先の「In The Wordless Chamber」のみとかなり偏った“ベスト選曲”でしたが、リスナーが観たい/聴きたいEMPERORはまさにこれなので問題なし。
にしても、彼らのライブ。とにかく美しい。激しく暴力的な側面はもちろん備えつつも、全体を覆うシンフォニックな要素と、スクリームの合間に飛び込んでくるイーサーンのクリーンボイスによるメロウなパートに、心をわし摑みにされる瞬間が多々あり、気づいたら涙腺が緩んでいたほど。体は激しいサウンドに合わせて痙攣気味にヘドバンするものの、心で泣く。こんなメタルライブ、そうそうないですよ。さらに、MCではイーサーンの紳士的な挨拶(日本語の発音、完璧)に対し、オーディエンスはことあるごとに“EMPERORコール”を繰り返す。この関係性も観ていて素敵すぎて、胸が熱くなる。あれ、思っていたのと違うぞ?(笑)
ライブは終始気持ちよかった。序盤、音量が若干抑えめかな?と思ったものの、気づいたらかなりの音圧で、MEGADETHのとき以上に耳に圧迫感を感じたし、サモスのギター音量が若干小さめだったものの、それ以外のバランスは良好。キーボードのエイナルが自分のパートがないとき、持ち場を離れてエアドラムをしまくっているのも可愛らしくて良し。あ、「I Am The Black Wizards」のときにイーサーンのギターから音が出なくなるトラブルがありましたが(続く「Inno A Satana」まで若干引っ張った)、それ以外は文句なしの90分でした。
改めて実感したのは、「Curse You All Men!」が個人的には一番好きな曲だということと、「Inno A Satana」と「Ye Entrancemperium」はいつ聴いても問答無用でアガるという事実。イーサーンは「また会おう!」と約束してくれたので、次の来日も楽しみに待ちたいと思います。
セットリスト
Intro
01. In The Wordless Chamber
02. Thus Spake The Nightspirit
03. The Loss & Curse Of Reverence
04. The Acclamation Of Bonds
05. With Strength I Burn
06. Curse You All Men!
07. Cosmic Keys To My Creation And Times
08. Towards The Pantheon
09. The Majesty Of The Night Sky
10. I Am The Black Wizards
11. Inno A Satana
Outro: Opus A Satana
<アンコール>
12. Into The Infinity Of Thoughts
13. Ye Entrancemperium
Outro: The Wanderer