カテゴリー「Enuff Z' Nuff」の9件の記事

2019年5月14日 (火)

ENUFF Z'NUFF『10』(2000)

ENUFF Z'NUFFが2000年10月にリリースした通算9作目のスタジオアルバム(日本では同年3月に先行リリース)。9作目なのに『10』というタイトル? と当時は疑問に思ったものですが、これは1998年のライブアルバム『LIVE』を加えた「通算10作目のアルバム」という意味なんだとか。紛らわしいですね。

この頃の彼らは海外ではインディーズ、日本ではメジャー(ポニーキャニオン)という非常に不安定な状況下でしたが、こうやって安定した良作を日本でしっかり流通させてくれる、しかも海外よりも半年以上も前にリリースしてくれるという恵まれた現状を喜ばしく思ったものです。

が、そういった活動状況が災いしてか、本作は日本でリリースされたバージョンと、半年後に海外でリリースされたバージョンとで収録内容および曲順が一部異なりました(もっと言えばジャケットもね)。SpotifyやApple Musicで聴けるストリーミングバージョンは今でこそ日本バージョンに準じた内容なので、ここでは初出の日本バージョンで話を進めます。

前作『PARAPHERNALIA』(1999年)までの数年は過去に制作した音源をパッケージしてお茶を濁していた感が強かった彼らですが、その『PARAPHERNALIA』で本格的に息を吹き返し、続く今作『10』では当時の彼らが目指した「普遍的なロック/パワーポップ」スタイルがひとつの到達点にまで達したように思います。

デビュー当時のようなフラッシーなギタープレイや重厚なハードロックサウンドを完全に排除して、地味ながらも普遍的な楽曲作りに専念した結果が本作なのかなと。それに、『PARAPHERNALIA』までは確実に存在したハードロック的要素が本作では可能な限り払拭されている。スタイル的にはダークな『TWEAKED』(1995年)とアコースティックベースの『SEVEN』(1997年)をよりスケールアップさせたような印象を受けますが、今作でのソングライターとしての手応えは、間違いなくバンドの(というよりもフロントマンであるドニー・ヴィの)その後の方向性を決定づけたと言っても過言ではない気がします。

若干ダークながらもヘヴィすぎない「Wake Up」から「The Beast」への流れ、そこから一気に弾ける「There Goes My Heart」という構成も素晴らしいですし、何よりも「There Goes My Heart」という名曲が含まれているというだけで本作に対する評価は大きく変わる気がします。

さらに「All Right」や「Holiday」といった良メロナンバーも含まれていますし、「Bang On」みたいなアップテンポのロックンロールやサイケデリック調の「Fly Away」、本作でもっともハードロック色が強い「No Place To Go」(USバージョンの『PARAPHERNALIA』にオリジナルバージョン収録。今作のバージョンではチップ・ズナフが歌唱)があったりと、アルバムとしてもバラエティ豊か。「ENUFF Z'NUFFってどんなバンド?」と質問されたら、まずこれを聴かせておけ!と言いたくなるくらい、“らしさ”がたっぷり詰まった1枚です。

 


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2018年8月26日 (日)

DONNIE VIE『GOODBYE: ENOUGH Z'NUFF』(2014)

2013年にENUFF Z'NUFFを脱退したドニー・ヴィ(Vo, G)が、同年に行ったツアー「Magical History Tour」からセレクトされた音源で構成された、2014年2月発売のライブアルバム。フィジカルではCD+DVDで発売され、DVDにはライブの模様に加え、ENUFF Z'NUFF時代のMVがたっぷり収録されています(MV自体の画質はかなりひどいですが)。

さて、このアルバムタイトル……ズナフの2ndアルバム『STRANGTH』(1991年)の収録曲から取ったものです(本ライブアルバムの最後にも収録されています)が、サブタイトルとして付けられた「ENOUGH Z'NUFF」によってその意味合いがかなり変わってくるのではないでしょうか。そこにこのアルバムジャケット。これを知ったときは「ああ、もう復帰はあり得ないんだろうな……」と気持ちを切り替えたことをよく覚えています。悲しかったけどね。

ここで演奏されている楽曲は、ファンならお気づきかと思いますがすべてENUFF Z'NUFF時代の楽曲。これらがドニーのアコギやピアノ弾き語りで表現されています。やっぱりこの“声”なんですよね。何ものにも変えがたい、唯一無二の歌声。この声でグラムメタルやパワーポップ的な楽曲を歌うからこそ、ほかの同系統バンドとは異なる艶やかさが生まれ、オリジナルな存在になれたわけですから。

そして、改めて良曲の多いバンドであると同時に、こうやってギター1本で歌っても魅力が落ちないことに驚かされる楽曲をたくさんもっとバンドだったんだな……と過去形で言いたくなるくらい、いろんなしがらみから解き放たれたドニーの歌を楽しめる、好企画盤だと思います。たとえこれが小金稼ぎのために無理やり作ったものだとしても、すでに脱退したメンバーを含む、30年近く前の音源を発表する今のあのバンドより、こちらを支持したいな。

曲によってはシンガーソングライターのバズ・フランシスがハーモニーで華を添えています。「You Got A Hold On Me」や「New Thing」あたりが、まさにそれ。ラスト2曲(「Someday」「Goodbye」)のバラードもそうですね。

にしても、「There Goes My Heart」や「Fly High Michelle」「Time To Let You Go」はいつ聴いても色褪せない名曲中の名曲だなと。「There Goes My Heart」が発表された時期には、ズナフも再びオーバーグラウンドへ浮上できるんじゃないか……と思ったんですけどね。残念です。



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2018年8月25日 (土)

ENUFF Z'NUFF『DIAMOND BOY』(2018)

2018年8月リリースの、ENUFF Z'NUFF通算14枚目(かな? 未発表曲集などの編集盤含めて)のスタジオアルバム。ドニー・ヴィ(Vo, G)在籍時のデモ音源などを含む前作『CLOWNS LOUNGE』(2016年)で、チップ・ズナフ(Vo, B)を中心にした新編成で本格的再始動を果たした彼ら。続く本作は、すべてチップ、トリー・ストッフリーゲン(G)、トニー・フェンネル(G, Key)、ダニエル・ヒル(Dr)という布陣で制作。もちろん、ボーカルはすべてチップが担当しています。

正直、チップの歌声にはドニーのような艶や危うさ(そこが“これぞフロントマン”的で良かったんですが)は皆無で、なんとなく録音の質感で“それっぽさ”は表現できているものの、ちょっとパンチに欠けるかな……楽曲のインパクトも以前と比べて弱めなだけに、歌が弱いと全体的にナヨナヨしたものに感じられちゃうんですよね。本当に勿体ない。

その楽曲も、インパクトは若干弱いものの、全体的にはよくできているほうではないかと。オープニングのSE「Transcendence」には少々驚くものの、続く「Diamond Boy」「Where Did You Go」は初期のグラムメタル然とした彼らをイメージさせるし、「We're All The Same」は王道のパワーポップ感がにじみ出ている。けど、歌がパッとしないから(以下同文)。

その後も初期っぽいヘヴィサイケロック「Fire & Ice」、ストレンジポップ風の「Down On Luck」、タイトルのわりにそこまでメタルっぽくない「Metalheart」、サイケバラード「Love Is On The Line」、豪快なハードロック「Faith Hope & Luv」、バラード調の「Dopesick」「Imaginary Man」と“惜しい”楽曲が並びます。悪くはないんですよ、どれもこれも。だって、ドニーが歌うだけでもうちょっと点数が高くなったと思うし。

本当に歌って大事。特にこの手のサウンドを信条とするバンドは、絶対に歌をごまかしちゃダメ。全部ラジオボイスみたいなエフェクトをかけて逃げようとするぐらいなら、もっとこのバンドに合ったフロントマンを見つけてこなくちゃ。それとも、過去の遺産(ENUFF Z'NUFFというバンド名さえあればやれること含め)を使ってミュージシャンとして延命したいだけなんでしょうかね、チップは。前作の録り下ろし曲「Dog On A Bone」は普通に録音してたぶん、まだよかったのに……。

ひどいことばかり書いているけど、本当に好きなバンドだからハードルを高く設定したくなるんですよ。ドニーを呼び戻すことが考えられないなら、本当にね、早急に歌える色気あるシンガーを捕まえてくること。チップが歌い続ける限り、100点は与えることはできないと思うな、自分。



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2018年4月16日 (月)

ENUFF Z'NUFF『TWEAKED』(1995)

日本では1994年11月に、海外では翌1995年にリリースされたENUFF Z'NUFFの4thオリジナルアルバム。1994年5月に発売された、初期のデモ音源をまとめた『1985』は当初企画アルバム扱いでしたが、のちにこちらが4thアルバムとして認識されているようになり、この『TWEAKED』が5thアルバムに繰り下げとなっています。

メジャーのAtlantic Recordsからデビューし、2枚のアルバムを発表後、3枚目の『ANIMALS WITH HUMAN INTELLIGENCE』(1993年)をArista Recordsからリリースするも、1枚で契約終了。『1985』からインディーズに拠点を移し、この『TWEAKED』もインディーズからのリリースとなりました。

それもあってなのか、本作のサウンドは過去3枚と比較すると非常にチープで生々しいプロダクションです。もちろん、80年代的なビッグプロダクションが時代遅れになっていたというのもあるでしょうが、それにしてももう少しどうにかできなかったのかなと思うものの、今作が今後リマスターなりされる機会もまずないでしょうから、これはこういうものとして受け取ることにしましょう。

内容についてですが、録り下ろしオリジナル作品として前作にあたる『ANIMALS WITH HUMAN INTELLIGENCE』に多少孕んでいたグランジなどダークなロックからの影響は本作にも見え隠れしますが、当時言われたほどグランジ的なカラーは今聴くと感じられない気がしていて。むしろ、2ndアルバム『STRENGTH』(1991年)にあったダークさに近いようなイメージかもしれません。要するに、このカラーって彼らが本来持ち合わせていたもの……例えばビートルズにおけるジョン・レノンの色だったり、CHEAP TRICKのヘヴィさだったり、そういうものと同質なんじゃないかなと。

そして、ダークかつヘヴィだからといってポップではない、なんてこともなく。どの曲にも彼ららしいメロディアスさがしっかり混在していますし、中には「My Dear Dream」や「We're All Alright」「It's 2 Late」みたいな極上のポップチューンも含まれている。すべてがすべて、この3曲のようではないけれど、それでもENUFF Z'NUFFというバンドの本質的な部分はしっかり感じられる。いや、むしろこのバンドが本来どういうルーツを持つバンドなのかが、初期3作、さらにはデモ音源集『1985』以上に色濃く刻まれているのではないか。その後彼らが進んだ道を認識すればするほど、この『TWEAKED』という作品は非常に重要な1枚だったのではないかと思うわけです。

冒頭の「Stoned」から重々しいですが、そんな中にもキラリと光るメロディアスさとセンスがしっかり感じられる。曲によっては従来のグラマラスさに加え、ブルースフィーリングあふれるナンバーも混在しており、内向的な作風に花を添えています。『STRENGTH』を好むようなリスナーにはうってつけの1枚ではないでしょうか(だからこそ、サウンドプロダクションがもう少し……ね。苦笑)。

最後に、ジャケットについても。本作は2タイプのジャケットが存在しており、初版はアイルランドの葬儀の様子をとらえた写真が用いられており、作品本来がもつダークさと相まって不気味さを醸し出しています。が、のちの再発では不気味かつサイケなイラストが用いられており、こちらもこちらでどうかと思うもの。僕は初版のジャケが気に入っています。



▼ENUFF Z'NUFF『TWEAKED』
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2017年3月23日 (木)

ENUFF Z'NUFF『CLOWNS LOUNGE』(2016)

また随分と微妙な作品をぶっこんできたなぁ……というのが正直な感想。まぁそこも含めてENUFF Z'NUFFらしいっちゃあらしいんですが。

日本では2009年、海外では2010年に発表された前作『DISSONANCE』から実に7年ぶりに発表された本作『CLOWNS LOUNGE』は、1988〜89年頃に制作されたデモ音源をベースに、2004年に制作されつつも未発表だった楽曲、そして新たに2016年に録音された楽曲を含む、とても“ニュー”アルバムとは呼べない代物。もちろんZ'NUFFにはこれまでにも未発表音源をまとめたアルバムはいくつか発表されているので、これもその一環と考えれば全然受け入れられるんだけど……要は、現在バンドには往年のフロントマン、ドニー・ヴィ(Vo, G)が在籍していないのに、その彼が歌う楽曲が中心のアルバムを新作として発表するのはどうなの?という疑問が残るわけです。こればかりは、過去のケースとはまったく異なりますからね。

しかも、1988〜89年というと1989年のメジャーデビュー作『ENUFF Z'NUFF』発表前夜。メンバーもドニーのほか、現在もバンドに在籍するチップ・ズナフ(Vo, B)、2004年に亡くなったデレク・フリーゴ(G)、バンド脱退後にヴィンス・ニールのソロプロジェクトに加わるヴィッキー・フォックス(Dr)という懐かしい布陣で、演奏スタイルも中〜後期(1990年代後半以降)とは異なる“もろに”ハードロックスタイル。楽曲の質感もその系統ですが、メロディが持つポップさ、普遍性はのちの彼らにも通ずる……というか、この時点ですでに一貫していたんだなと気づかされます。そう、“あの頃のENUFF Z'NUFF”が好きな人にはうってつけの1枚なのですよ(ただし、あくまでデモ音源がベースなので、それなりの音質。そこにこだわる人はご注意を)。

しかし、そこに現体制……チップがボーカルを務める楽曲も含まれていて、それがしらじらしくアルバムのオープニングを飾るんだから、なんとも言えない気持ち悪さを冒頭から感じてしまうんです。過去の遺産(と、世の中的には言えないレベルかもしれないけど)を食い潰す、あるいは過去の名声に便乗する……ドニー時代を愛する自分からしたら、そう見えてしまうアルバムなんです。

そんな中、アルバム中盤に突如登場する「The Devil Of Shakespeare」。この曲のみ2004年の録音なんですが、ボーカルを担当するのが元WARRANTのジェイニー・レイン。彼も2011年にお亡くなりになってますし、そんなことを考えながら聴くとよりいたたまれない気持ちになってしまうのです(ちなみにリードギターはSTYXのジェイムズ・ヤングがプレイ)。

彼らも5月に開催されるL.A.メタル系フェス『L.A. METAL SUMMIT in TOKYO』で久々に来日。「あれ、L.A.関係あったっけ?」という疑問も残りますが、“ドニーがいないZ'NUFF”を観て現実を受け入れるしかないのでしょうか。いい曲がそれなりに多い本作を聴くたびに、モヤモヤした気持ちになってしまうのです。



▼ENUFF Z'NUFF『CLOWNS LOUNGE』
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2003年10月28日 (火)

ENUFF Z'NUFF『1985』(1994)

ENUFF Z'NUFFが1994年にリリースした企画アルバム。正式なオリジナル・アルバムではなく、これは1985年頃に録音されたデモ音源を編集して1枚にまとめたもの。メジャーデビューが1989年だから、それよりも4年も前ってことになるんだけど、これがかなり面白い音源集でして。

メジャーデビュー後の彼等は時代のせいか(80年代中~後半、アメリカではハードロックがブームだった)かなり硬質でビッグプロダクションなアルバムを連発してきたけど、ここで聴ける音源は、まぁインディーズ紛いのデモ音源ということもあってかなりチープなんだけど、楽曲の構成がまず違うのね。

メロディの潤いや根本的な部分は既にこの時点で完成されてるといっていいんだけど、何せ曲調がハードロックというよりもパワーポップ色の方が強いというか。確かに現在にも通ずるハードな面もあるし、いかにもアメリカ人的な大袈裟な面も同時に存在するんだけど、ここではもっとルーツに忠実というか。例えば彼等がインディーズシーンでのブレイクの切っ掛けとなった「Catholic Girls」なんて曲調とかドニー・ヴィの歌声がまんまエルヴィス・コステロなのね。他にもコステロを彷彿させる楽曲はいくつもあるんだけど、他にもCHEAP TRICKだったり、それこそビートルズだったり。そういったルーツを臆面もなくひけらかしてるのがこのアルバム。実はこのアルバムが好き、っていうズナフ・ファンって結構いるんじゃない?

メンバーはさすがにリリース当時のメンツとは違い、ドニーとベースのチップ・ズナフは基本メンバーだからいいとして、ギターには90年代中盤の彼等を支えた旧友・ジーノ・マルティノが、ドラムにはB・W・ボウスキーという人が参加してます。ま、ジーノに関しては「おいおい、こういう曲でそんなに弾きまくらなくても……」とちょっと困ってしまう面もあるにはあるんですが、まぁそれも時代ってことで、ええ。基本的にはギターもそんなに歪んでないし(メジャー3作と比べてね)もっと温かみがある音がするんですよね。ドラムの音色も前作までにあった人工色は全くないし。ま、プロデュースらしいプロデュースがされてないってのも大きな要因なんでしょうけど。けどミックスに関しては一応一流所のクリス・シェパードが担当してるんですよね。だからちゃんと聴けるものに仕上がってるってのもあるんでしょうね。

アルバムはいきなりSMOKEY ROBINSON & THE MIRACLESの70年のナンバー1ヒット曲、「Tears Of A Clown」で始まるんですが、このへんの遊び心もまた憎い。ギターソロを除いてですけどね(相変わらず弾き過ぎ)。余韻を引きずったまま名曲「Catholic Girls」へと流れていくんですが、これが自然な感じでまたいいんですわ。

コステロっぽい「Day By Day」、絶対にジョン・レノンを意識してるであろうピアノバラード「No Second Time」ときて、イントロの泣きメロが印象深い「Hollywood Squares」(どう聴いてもコステロ!)、ちょっとCHEAP TRICK的かな?と思えなくもないポップロック「Fingers On It」、BON JOVIあたりの哀メロ・ハードロックを彷彿させる美メロ・マイナーチューン「Aroused」、これぞアメリカン!なハード・シャッフル「Marie」、典型的なアメリカンロック「I'll B The 1 2 Luv U」、アルバム中最もヘヴィな側面を持つメロディアスロック「Goodbye, Goodbye」で終わるかと思わせて、シークレットトラックとなるアコースティックナンバー「You Got A Hold Of Me」で終了。約40分というトータルランニングも丁度いいし、とにかくメジャー3部作と違って気楽に聴けるのがいいですね。

ここにはドラッグによるドンヨリとした重い空気もないし、サイケな色合いもないし、意図したヘヴィさもない。凄く自然体なんですね。自然体だからこそ、若気の至りでギターソロ弾きまくったり、聴いてて恥ずかしくなるような「まんま」な引用も登場する。けどそれは決して悪いことだと思わないし、むしろその後の「完成された」ズナフを考えると「これがあったから今があるんだな」と素直に思えるんですね。そういった意味で非常に重要な1枚ですし、むしろファーストから聴くよりもこのアルバムを最初に聴いた方がいいんじゃないか、って思える程。ま、これから聴いちゃうと、その後のハードロック路線がちょっと歯がゆく感じるかもしれませんが。

そうそう。丁度このアルバムの頃(1994年)ってアメリカでもレコード契約がなくて、日本でアルバムを3枚(『1985』含む)リリースしてるんですよ。アルバムジャケットだけでなくリリースした時期とか順番も若干変わってくるんですね。一応今回はUSでのリリース順を参考にレビューで取り上げる順番を決めてます。ま、読む方としてはあまり関係ない話かと思いますが。



▼ENUFF Z'NUFF『1985』
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2003年10月13日 (月)

ENUFF Z'NUFF『ANIMALS WITH HUMAN INTELLIGENCE』(1993)

アメリカのハードロック/パワーポップ/グラムロック・バンド、ENUFF Z'NUFFが1993年春にリリースした、通算3作目となるオリジナルアルバム。前2作をリリースしていた「Atlantic/Atco」レーベルから契約解除され(1stアルバム『ENUFF Z'NUFF』に比べ、2nd『STRENGETH』はまったくといっていい程ヒットしなかった)、新たに「Arista/BMG」と契約。前作から約2年振り、満を持してのリリースとなるはずが、出鼻を挫かれるような出来事が起きます。

それはデビュー時から参加していたドラムのヴィッキー・フォックスの脱退です。レコーディングには参加しているものの、丁度この頃から元MOTLEY CRUE(当時)のシンガー、ヴィンス・ニールと活動を共にし始め、結局ENUFF Z'NUFFを脱退し、ヴィンス・バンドに加入することになるのです。そういうこともあって当時のアルバムジャケットにはメンバーが3人しかいないのです。が、ジャケット撮影終了後に無事、リッキー・ペアレントという人物の加入が決まります(その後、現在に至るまで彼はバンドに在籍しています)。

更に、ギタリストのデレク・フリーゴにもレコーディング中に脱退騒動が持ち上がります。実際、一時期バンドを離れたようです。レコーディングには初期のバンドに関わっていたジーノ・マルティノが参加したものの最終的には復帰、ツアーにも参加しています(が、このアルバムのツアー終了後に正式脱退)。

そして、レコーディングに入る前に、シンガー/ギタリストのドニー・ヴィがドラッグ問題で入院~リハビリのため、数ヶ月バンドを離脱する事件も起きています。2ndアルバム『STRENGETH』がデビュー作以上にダークでヘヴィな作風だったのは、ソングライターであるドニーのドラッグ癖が影響していたのだ、と後に自身が語っています。

レコード契約を失ったりメンバー個人の問題や脱退騒動等、バンドとしてはどん底といっていい状態だった彼等ですが、心機一転、このアルバムではこれまでとは違ったアプローチで新たな側面を見せてくれています。

まずこのアルバムのレコーディング・セッションは2度行われています。HEARTや復活後のCHEAP TRICKPOISONBAD ENGLISHといったハードロック/産業ロックを多く手掛けてきたリッチー・ズィトーをプロデューサーに迎えた7曲(「Right By Your Side」「These Daze」「Innocence」「One Step Closer To You」「Takin' A Ride」「The Love Train」「Mary Anne Lost Her Baby」)と、ドニー&チップ・ズナフ&フィル・ボナーノという布陣でプロデュースされた5曲(「Superstitious」「Black Rain」「Master Of Pain」「Bring It On Home」「Rock N World」)に分かれるのですが、こうやってレコーディング時期毎に分けてまとめて聴いてみると前者と後者とで作風が若干違うことに気づきます。

リッチー・ズィトーが手掛けたということもあってか、前作までにあったビートルズ的なポップな側面を更にシュガーコーティングしたかのような人工的なサウンドエフェクトをあしらった前者に対して、1993年という時代背景(産業ハードロックの後退~グランジ/ヘヴィロックの台頭)を踏まえた上でそういった要素を取り込んで自己流に表現しようとする新たな側面を見せてくれる後者は、確かに前作までの「ヘヴィ」とは違ったヘヴィさを表現してるように感じます。内面的ヘヴィさを強調した『STRENGETH』とは違った、単純に装飾としてのヘヴィさ。楽曲の持つメロディ自体はそれまでと何ら変わっておらず、むしろそのポップなメロディセンスは更に磨きがかかっているようにも感じられます。

確かに「時流に乗って便乗しようとしてる」と非難することも出来るでしょうし、「完全に消化しきれていない」という声もあるでしょう。けど、個人的な趣味からいえば初期3枚のメジャーレーベルからのアルバムの中では、これが一番聴きやすいと思うんですよね。保守的ながらもメロの冴えは抜群なリッチー・ズィトーが手掛けた楽曲群といい、時流に乗ったアレンジを持つヘヴィなセルフ・プロデュース作といい、とにかく聴きやすい。ハードロックの範疇でのサウンドですが、これはこれで素晴らしい1枚だと思いますよ。

とにかく名曲揃いなんですよ。後にガールズ・ポップバンドであるTUESDAY GIRLS(後にTUESDAYSに改名)はENUFF Z'NUFFの曲を幾つかカバーしてるんですが、特にこのアルバムからのリードシングルにもなった「Right By Your Side」は出色の出来で、Z'NUFFバージョンは勿論、TUESDAY GIRLSバージョンもまた良いんですよね。他にも名バラード「Innocence」や、やはりメロの冴えが異常に優れている「Mary Anne Lost Her Baby」等、印象に残る曲は沢山あります。

しかし、いくら1曲1曲が優れているからといっても、アルバムのトータルバランスとしてはちょっと……という気もしたりして。プロデューサーが2チームあったり、レコーディング時期やアプローチがそれぞれ異なっていたり等、いろんな事情が絡んでくるんですが、それらは全てバンドの意思ではなくレコード会社の指示だったことも、彼等の弁護のために記しておきます。その後、そういったメジャーレーベルのやり方に嫌気が差した彼等は、インディーレーベルで地道に活動していくことになります。

そうそう。このアルバムはリリース後、暫くして廃盤になってしまうんですが(唯一日本盤のみ入手可能でしたが、非常に品薄で手に入りにくかったのも事実)、このアルバムの権利を「BMG」から買い取り、2000年秋にインディーレーベルから再発されています。ジャケットが2種類あるのはそのためです。また、当初は日本盤にのみボーナストラックとして収録されていた「Fingertips」というバラードも、再発盤に無事追加収録され、現在では世界共通の全13曲入りとなっています。その他、再発時にバラされた事実として、当時GUNS N' ROSESのメンバーだったスラッシュが1曲、「The Love Train」でギターを弾いているというのも、新たな魅力となっているのではないでしょうか(ま、言われるまで気づかなかったし、言われても「そんな気がする」程度なわけですが)。



▼ENUFF Z'NUFF『ANIMALS WITH HUMAN INTELLIGENCE』
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2003年3月13日 (木)

ENUFF Z'NUFF『STRENGTH』(1991)

1989年にデビューしたENUFF Z'NUFF。デビュー時の奇抜なビジュアル・イメージからグラム系と思われたりもしたけど、シングル「Fly High Michelle」は中ヒット、1stアルバム『ENUFF Z'NUFF』はビルボードのトップ100入り(74位)を果たしました。しかしながら、そのビジュアルが災いして結構非難を浴びる機会も。それが原因だったのか、彼等は1stアルバムに伴うツアーの途中から、ビジュアル・イメージを一新し、ナチュラルな方向へと移行していきました。サイケデリックなのは音楽だけで十分だ、これからは楽曲で勝負する。そういう心構えが何となく見え隠れする出来事ですね。

そうして出来上がったのが、この『STRENGTH』という2ndアルバム。1991年春に全米でリリースされました。今作からボーカル&ギターのドニー・ヴィとベースのチップ・ズナフが、前作でエンジニアを務めたポール・ラニと共にプロデューサーとしてクレジットされています。アーティスト自身がプロデュースに関われるようになれたということは、レコード会社からもそれなりに認められたということなんでしょう。実際、その内容もファーストを更に押し進めた、非常に濃い作品となっています。

ファーストではメタル・バブルを引きずりながら、ちょっとビッグプロダクション気味だったサウンドも、今回はかなり抑え気味に、「まず楽曲ありき」というテーマでもあったのか、その楽曲を引き立てるようなサウンドとアレンジになっています。つまり、前作よりも楽曲の完成度が更に高くなっているんです。1曲目「Heaven Or Hell」からして、もう名曲。前作では弾きすぎた感のあるデレク・フリーゴ(G)も、今作では少しだけ抑え気味に、けどソロでは一気に爆発するというように、あくまでバンドの一員としての成長を見せています。

また、前作ではルーツミュージック的なものとしてブルーズを引き合いに出しましたが、今作からいよいよドニーとチップの本当のルーツであるビートルズCHEAP TRICKからの影響が色濃く表れ始めています。ジョン・レノン的な「Holly Wood Ya」や「Goodbye」といった楽曲は、前作にはなかった色合いではないでしょうか。また、アルバムラストを飾る「Time To Let You Go」に関しては非常に初期のビートルズ的で、この曲のみ録音がアナログ(モノラル)的なんですね。余計な音を極力削り、隙間だらけのサウンドなんだけど、実はこの曲が一番温かみを持っているという。ロビン・ザンダー(CHEAP TRICK)やジンジャーTHE WiLDHEARTS)がこの曲を気に入ってカヴァーしたくらい人気が高い楽曲です。

勿論、それ以外の楽曲も非常に優れたものばかりなのですが、前作にあった「陽」の面が今作では若干後退し、ちょっとダークな面が強調されているように感じます。シンプルなロックンロール「Long Way To Go」や如何にも彼等らしいサイケナンバー「Mother's Eyes」(アルバムからのファーストシングル。これも名曲ですね)、タフでグラムな"Heaven Or Hell"といった「陽」を感じさせる楽曲もあるにはありますが、例えば前作にあったような、如何にもアメリカのバンドといったような脳天気さはここにはありません。どちらかといえば、よりブリティッシュ寄りになったというか。それは先にも挙げたビートルズやCHEAP TRICK(彼等は同じボストンのバンドですが、やはりブリティッシュ寄りでしょう)からの影響をそのまま形にしたから余計にそう感じるんでしょうね。

後に判ったことですが、この時期のドニーはヘロインまみれで、相当酷い状態だったそうです。そんな状態の中作った「Missing You」や「Strength」等は彼等にしてはダークでヘヴィな側面を持った楽曲ではないでしょうか。前作にもブルースフィーリングを感じさせる楽曲はありましたが、「Missing You」は同じようなリズムを持ちながらも、もっとドロドロしたような印象を受けますし(サイケなコーラスのせいもあるんでしょうけど)、何よりもシンガーとしてのドニーの成長によって、よりそういう側面が強調されてしまったのも大きいと思います。

自分も始めてこのアルバムを聴いた当時、「Heaven Or Hell」といった超名曲からスタートして「これは凄いアルバムかも!?」と期待させておいて、「Missing You」~「Strength」というヘヴィでサイケでディープな曲が連続する流れに絶句してしまったという。ENUFF Z'NUFFというバンドのパブリックイメージを1stアルバムで作ってしまっていた俺が、新作でショックを受けた、という意味でですよ。今聴くと、これよりもヘヴィなアルバムはその後の彼等は作っていたりするので別にそこまで重いとは感じないのですが、やはりそういうエピソード(ドニーのドラッグ癖)を聞いた後に改めて接すると、聞こえ方もまた違ってくるような気が。偏見でしょうか?

とは言いながらも、実はこの俺、何を隠そうこの『STRENGTH』が一番好きなアルバムだったりするんですよね。適度にヘヴィで適度にポップ。依然パワーポップというよりはハードロックの音ですが、これが1991年という時代にドロップされたという事に意義があるんじゃないでしょうか。そう、この半年後にMETALLICAブラックアルバムを、GUNS N' ROSES『YOUR ILLUSION I』『YOUR ILLUSION II』を、そしてNIRVANA『NEVERMIND』PEARL JAM『TEN』をリリースするんです。そう考えるとちょっと興味深くないですか?

俺の太鼓判押しでこのアルバムに興味を持ったあなた。今すぐCDショップにこのアルバムを求めに行っても無駄ですよ。だってこのアルバム、現在廃盤ですから。90年代半ばからずーっと国内外で、唯一このアルバムだけが廃盤状態です。最近、ようやく3rdアルバム『ANIMALS WITH HUMAN INTELLIGENCE』も海外で再発されましたが、何故かこのセカンドのみ廃盤状態が続いています。何か権利関係で揉めているのでしょうか? インディーズなら意外と簡単に再発できるんでしょうけど、メジャーとなると権利の買い取りとか、いろいろ難題が多いんでしょうね‥‥それとも、ダニーがこのアルバムの再発を拒んでいるんでしょうか?(方やバンドはこのアルバムを「ダーク過ぎる」「プライベートが酷い状態だったこともあって思い出したくもない」と嫌っている様子) 1stを気に入った人も、そして最近の彼等を気に入っている人も、意外とこのアルバムはいけるんじゃないかと思うんだけどなぁ。



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2003年3月 6日 (木)

ENUFF Z'NUFF『ENUFF Z'NUFF』(1989)

シカゴ出身のハードロック/パワーポップ・バンド、ENUFF Z'NUFFが199年夏にリリースした、記念すべき1stアルバム。当時のメンバーは現在も在籍するボーカル&ギターのドニー・ヴィとベースのチップ・ズナフの他に、ギターにデレク・フリーゴ、ドラムにヴィッキー・フォックス(脱退後、MOTLEY CRUEのボーカル、ヴィンス・ニールのバンドに加入)の4人。もともと'80年代中盤から活動していたバンドで、1985年には既に地元シカゴのインディーレーベルからレコードを出していたらしいけど、このアルバムにてメジャーデビュー。1989年当時は丁度「メタル・バブル」の末期で、LAメタルから派生した「バッドボーイズ・ロック/スリージー・ロック」が主流で、西のGUNS N' ROSES、東のSKID ROWが人気を集めていた頃。マッチョで男性的でワイルドなサウンドが持てはやされ、第二のガンズみたいな二流バンドが次々とデビューしていた中でのデビューだったわけです。

今でこそズナフは「CHEAP TRICKの後継者」的に解釈される事が多いですが、この当時の彼等は聴いてもらえば判る通り、ちょっとサイケ色の強いハードロックといったサウンドでした。しかもルックスが、初期のPOISONも真っ青な、派手でケバケバのグラムファッション。このアルバムを聴いて「気に入った!是非前座として使いたい」と言ったAEROSMITHジョー・ペリーも、その後にMVを観て難色を示した、なんて話もあった程、ちょっと時代に逆行してるんじゃないの!?と思われてたようですね。しかし、実際のサウンドの方はかなりミュージシャン受けが良く、確か当時、BON JOVIジョン・ボン・ジョヴィやMOTLEY CRUEのニッキー・シックスなんかが高く評価してたんじゃないか、と記憶しています。

ファーストシングルでありオープニング曲でもある「New Thing」はサイケなグラムロック調の良い曲なんですが、ギターソロになるともう、時代を感じさせるというか。所謂「速弾き」が登場するわけですよ。また、ところどころに登場するハーモニクス音やチョーキングが、モロにハードロック系のそれという、如何にもなギターサウンドに、今現在の彼等しかしらないパワーポップ・ファンは引いてしまうかもしれませんが、楽曲単体として評価すると、非常に優れた曲だと思います。リリース当時から既に聴いていたわけですが(逆に俺はその「New Thing」のMVを観て気に入ったんですが)、やっぱりこの曲や、シングルヒットも果たしたサイケなバラード「Fly High Michelle」は今聴いてもいいと思うし、実際名曲と呼んでも差し支えないと思います。アレンジさえ今のズナフ風にすれば、全然2003年の楽曲として通用するはずですし。

もしこのアルバムを聴いたあなたが「パワーポップを求めて聴いたんだけど、俺ハードロックもいける口なんだよね?」って人だったら、他の曲も間違いなく気に入るでしょうね。「She Wants More」や「In The Groove」みたいなスローブルース(サイケ)ロックあり、ちょっとLAメタルに影響された?的脳天気な「Hot Little Summer Girl」あり、ポップなハードロックチューン「For Now」あり、ワイルドなロックンロール「Kiss The Crown」あり、80年代的なパワーバラード「I Could Never Be Without You」あり、ウエスタン調のイントロが味わい深い「Finger On The Trigger」あり、となかなか佳曲揃いなんです。あの当時、B級のBON JOVI崩れ、ガンズ崩れが山程いた中、やはりそれなりのオリジナリティと光るモノは持っていたようで、だからこそジョー・ペリーやニッキー・シックスみたいなビッグ・ネームが彼等に興味を持ったんでしょう。

BON JOVIやGUNS N' ROSESといったバンドの成功により、時代がよりルーツミュージック/ブルース的な方向へ流れていたためか、その後のズナフには見られないようなブルーズ色が強い楽曲が多く収録されている点も興味深いですし、既にCHEAP TRICK的手法を用いている点も特筆すべきポイントでしょう。が、これはまだまだスタート地点にしか過ぎません。今後、いろんな意味でこのバンドは成長や変化を繰り返していくことになります。それはいい意味も、そして悪い意味も含まれているのですが(ま、その辺は後々のアルバムレビューで述べることにしましょう)。

それにしても、「Fly High Michelle」という曲はリリースから13年以上も経った今聴いても、本当に色褪せない、いい曲ですねぇ。たとえその内容がソングライターであるドニーの「ドラッグのオーバードーズで亡くなった恋人」について歌われた曲であっても。だからこその美しさ、儚さなのかもしれませんね。アコースティックアレンジで聴いてみたいな、一度。



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