WEEZER『WEEZER (TEAL ALBUM)』(2019)
2019年1月24日に突如リリースされた、WEEZERのカバーアルバム(通算12枚目のスタジオアルバム)。今のところデジタルおよびストリーミングのみのリリースで(一応、3月にはフィジカルリリースの予定もあるようです)、セルフタイトルが冠されたことでシリーズの一環としてジャケットの色から“TEAL(=青緑) ALUBM”と呼ばれているようです。
WEEZERは昨年、TOTOの「Africa」や「Rosanna」をカバーして話題になりましたが、その流れからカバーアルバムの着想が生まれたのでしょうか。それとも来月リリース予定のオリジナルアルバム『WEEZER (BLACK ALBUM)』制作の合間に息抜きとして録音されたものなのでしょうか。その真相は不明ですが、まあとにかく40代の洋楽リスナーには懐かしい楽曲ばかりではないでしょうか。
取り上げられているアーティストはTOTO、TEARS FOR FEARS、EURYTHMICS、A-HA、THE TURTLES、BLACK SABBATH、ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA、TLC、マイケル・ジャクソン、ベン・E・キングとバラエティに富んだもの。とはいえ、大半が80年代にヒットした楽曲ばかりで(ベン・E・キング「Stand By Me」も同名映画の主題歌として80年代半ばにリバイバルヒットしましたし)、リヴァース・クオモ(Vo, G)や筆者と同世代のリスナーにはたまらない内容と言えるでしょう。
そのアレンジも原曲に忠実なもので、4人の演奏を軸に再構築されたサウンドは「WEEZERのようでWEEZERとはちょっと違う」印象を受けます。特に「Sweet Dreams (Are Made Of This)」(原曲:EURYTHMICS)や「Take On Me」(原曲:A-HA)から感じるニューウェイヴ感は今までのWEEZERにありそうでなかったもの。前者に関してはアニー・レノックスそっくりな歌声まで再現されており、思わずクスッとしてしまうのではないでしょうか。かと思えば、後者ではどこか頼りない歌声が原曲とは違った味を醸し出しており、これもなかなかの仕上がりと言えます。
WEEZERとしての本領発揮と言えるのが、M-5「Happy Together」(原曲:THE TURTLES)やM-7「Mr. Blue Sly」(原曲:ELO)といったあたり。パワーポップバンドとしてのルーツが垣間見れる良カバーと言えるでしょう。かと思えば、ハードロックバンドとしての側面を「Paranoid」(原曲:BLACK SABBATH)で、昨今のモダンなR&B調ポップサウンドを「No Scrubs」(原曲:TLC)でストレートに表現する……なんて感心していたら、「Billie Jean」(原曲:マイケル・ジャクソン)のボーカルを含む完コピぶりに爆笑させられる。で、最後は若干エレクトリックな香りのする「Stand By Me」で終了。いやあ、最初から最後まで飽きさせないトリッキーな1枚ですね、これは。
原曲が良いんだから、あとは味付け次第。そこでどうWEEZERらしさを出すか……なんて難しいことを考えていた自分が馬鹿らしくなるくらいまっすぐ攻めてくる(いや、まっすぐ進んでいるようで脇道を100キロオーバーで突っ走る)、そんなアルバムです。『WEEZER (BLACK ALBUM)』を前に、良い気分転換になりました(笑)。