カテゴリー「Evanescence」の12件の記事

2023年8月25日 (金)

SUMMER SONIC 2023(2023年8月19日、8月20日)

最初にBLURの出演が発表された時点で、今年は2日とも行こうと決意し、先行でチケットを確保。しかし、夏が近づくにつれて今年の尋常じゃない猛暑ぶりに不安を覚えるわけですが……。さて、2023年のサマソニはどんな感じだったんでしょう。レポというよりもメモ程度に受け取ってもらえると幸いです。


Img_7377 ●8月19日(土)

■SUMMIT All Stars(MARINE STAGE)

NewJeansで早々にマリンスタジアムに到着したのですが……スタンド席の座席、熱すぎ!(笑) なるべく日陰を探して退避しつつ、普段あまり接することのない国内ヒップホップシーンの一部を味わいました。ノンアル状態だったけど偏見なく、気持ちよく楽しめましたよ。


■NewJeans(MARINE STAGE)

で、肝心のNewJeans。曲の良さはさることながら、パフォーマンスは……平均的かな。悪くはないけど、ステージ慣れしていない感も多々見受けられたし、何よりこの猛暑にメンバーがついていけてない印象もあり。やりたいことはわかるんだけど、あとひとつといったところか。


■PassCode(PACIFIC STAGE)

久しぶりに観たけど、現編成もだいぶ板についた感。ラウドなバンドサウンドをバックに、気持ちよく楽しめた。ただ、突き抜けるにはプラスアルファというかSomething Specialというか、あとひとつ何かが足りない気も。海外に行けばいいとかそういう問題ではなく、ね。


■GABRIELS(MOUNTAIN STAGE)

まったく予習せずに触れた、大収穫のひとつ。いわゆるモダンでジャジーなソウルなんだけど、アメリカンエンタメの強さを改めて実感させられたパフォーマンスに圧倒された。とにかく歌の力よ。これは音源よりもステージを観たほうが一発でハマるやつですね。これだからフェスは面白い。


■HONNE(MOUNTAIN STAGE)

マリンスタジアムに移動するため、頭数曲だけ。音源よりもバンド感が強まっており、好みだったな。


■FALL OUT BOY(MARINE STAGE)

ずいぶん久しぶりに観たけど、改めて知ってる曲ばかりで驚いた。シンガロングまで含めてライブが完成する、まさに現場に足を運ばないとその魅力を完全に理解できない。そういった意味では、彼らのようなバンドはコロナが明けてようやく本領発揮といったところでしょうか。あと、彼らはポップパンクの文脈で語るのではなく、エモを通過したアリーナロック/スタジアムロックとして語るべきだなとも思いました。


■BLUR(MARINE STAGE)

Img_7384 直前に8年ぶりのアルバム『THE BALLAD OF DARREN』を発表したものの、サマソニも海外でのフェス同様にグレイテストヒッツ的なセトリで臨むのかなと思っていたら、オープニングから新曲「St. Charles Square」で始まるもんだからびっくり。新作から5曲も披露していたことからもわかるように「意外と新作モードなんだな」と、思わず唸ってしまいました。

とはいえ、それ以外はグレイテストヒッツモード(+α)。いつぶりだよ?ってくらい久しぶりに生で聴けた「Country House」をはじめとする名曲群に加えて「Trimm Trabb」や「Villa Rosie」、『MODERN LIFE IS RUBBISH』(1993年)のインタールードを披露するサービスぶり。ああ、やっぱりこのバンド大好きだ……1999年夏のフジロックぶりに実現した、グレアム・コクソンを含む編成での来日公演(僕が彼らを観るのもそれ以来)、満喫しました。

セットリスト
01. St. Charles Square
02. Popscene
03. Beetlebum
04. Goodbye Albert
05. Trimm Trabb
06. Villa Rosie
07. Coffee & TV
08. Country House
09. Parklife
10. To The End
11. Barbaric
12. Girls & Boys
13. Advert
14. Song 2
15. The Heights
16. This Is A Low
17. Tender
18. The Narcissist
19. The Universal


Img_7394 ●8月20日(日)

■METALVERSE(MOUNTAIN STAGE)

今年に入ってからのBABYMETALのライブにたびたび登場していた謎の存在、ついに本格的なお披露目。サウンド的にはメタルの枠からはみ出たものも少なくなく、メンバーも歌唱する子以外(全部で5人くらいいたのかな)は固定なのか流動的なのかも不明。新たな何かが始まるぞ!という期待感だけは十分伝わりました。


■NOVA TWINS(MOUNTAIN STAGE)

個人的2日目メインアクト、待望の初来日。サポートドラマーを含むトリオ編成で、音源どおりゴリゴリしたアグレッシヴなラウドサウンドで、かつ動きも華やか。メイツとモノノフが多く集っていることもあってか、非常に盛り上がりました。気づいたら、後ろまでお客さんパンパンだったな。

セットリスト
01. Fire & Ice
02. Cleopatra
03. Taxi
04. Puzzles
05. K.M.B.
06. Sleep Paralysis
07. Antagonist
08. Choose Your Fighter


■ももいろクローバーZ(MOUNTAIN STAGE)

気づいたら、4人になってから初めて観る気が(そんなことないか)。安定のバンド編成、しかもマーティ・フリードマン(G)を含む編成で、もはや王道エンタメの装い。なんの不安もない。ただ、最近の楽曲の弱さだけは弱点か。なかなか難しいですね。


■THE SNUTS(SONIC STAGE)

期待してフロアに足を運んだけど、思っていた以上にスペシャル要素が感じられず。よくあるギターロックバンドのひとつ、といった印象でとどまり。数曲で移動してしまいました。


■WILLOW(MOUNTAIN STAGE)

マシンガン・ケリーの「Emo Girl」やYUNGBLUD「Memories」などへの客演で名前を目にしていたアクト。最近のPARAMOREやPVRISの流れを汲むサウンド、楽曲でめちゃくちゃ好み。まだ22歳なんでしよ? 将来有望すぎる。


■THE KID LAROI(MARINE STAGE)

この日唯一のマリンスタジアム。昨日より暑くない……と思ったものの気持ち悪い蒸しっぷりで、で用意した水分も飲み果たし、やはり数曲で退散。ノリの良い曲が多いものの、若さだけが印象的だったかな。


■女王蜂(PACIFIC STAGE)

『推しの子』のあとだけに注目度も高く、客入りも上場。こういうときの女王蜂は本当に強い。今日も一寸の隙もなし。完璧でした。


■EVANESCENCE(MOUNTAIN STAGE)

そういえばコロナ禍に入る直前、和楽器バンドのゲストとしてエイミー・リーが来日して、大阪でインタビューしたんだよな。翌月に控えた『DOWNLOAD JAPAN』の話もしたっけ。そういう意味でも、非常に感慨深いライブでした。最新作『THE BITTER TRUTH』(2021年)からの楽曲を中心に、今年リリース20周年を迎えたデビュー作『FALLEN』(2003年)の名曲群を交えた、まったく無駄のないセットリスト。楽しくないわけがない。熱心なファンも少なくなく、それなりにシンガロングも起こっていたけど、日本での人気/認知度はまだまだか。フェスでもこういうバンドの集客が形にならないと、単独来日は難しいんだろうな……なんて悲しい気持ちにもなったものの、個人的には大満足。

セットリスト
00. Artifact/The Turn
01. Broken Pieces Shine
02. What You Want
03. Going Under
04. Take Cover
05. Call Me When You're Sober
06. Lithium
07. Wasted On You
08. Whisper
09. End Of The Dream
10. Better Without You
11. Imaginary
12. Use My Voice
13. My Immortal
14. Bring Me To Life


■BABYMETAL(MOUNTAIN STAGE)

MOMOMETALが正式メンバーになってから初観覧(前回は召喚される直前でしたから)。とはいえ、この3人でのステージは今に始まったことではないので、安定感は抜群。セトリ的には春に観たワンマンのショートバージョンといったところか。しかし、今回は直近リリースの新曲「メタり!!」が加わっているので、だいぶ印象が異なるかも。直近のアルバム『THE OTHER ONE』(2023年)がシリアスモードだっただけに、ようやく“あの”BABYMETALが戻ってきた感濃厚。いつも以上にあっという間に感じられたな(実際短かったんだけど)。ケンドリック・ラマーではなくこちらを選んで正解だったのか、ライブが始まる前は迷いもあったけど、結果大正解。2日間の締めくくりにふさわしいアクトでした。

セットリスト
01. BABYMETAL DEATH
02. ギミチョコ!!
03. PA PA YA!!
04. Distortion
05. BxMxC
06. MAYA
07. Monochrome
08. メタり!!
09. メギツネ
10. ヘドバンギャー!!
11. Road of Resistance
12. イジメ、ダメ、ゼッタイ

2023年1月24日 (火)

HEROES AND MONSTERS『HEROES AND MONSTERS』(2023)

2023年1月20日にリリースされたHEROES AND MONSTERSの1stアルバム。日本盤未発売。

このバンドはSLASH featuring MYLES KENNEDY & THE CONSPIRATORSのベーシストであり、本国カナダでは80年代末から活動を続けるバンドTHE AGE OF ELECTRICの一員でもあるトッド・カーンズ(Vo, B)、Y&TALICE COOPER BANDなどで活躍したステフ・バーンズ(G)、EVANESCENCEの屋台骨を支えるウィル・ハント(Dr)というミュージシャンズ・ミュージシャンたちにより結成されたトリオバンド。Frontiers Recordsと契約し、昨年秋から「Locked And Loaded」や「Raw Power」「Let's Ride It」といった楽曲を配信してきました。

満を持して発表されたデビューアルバムは、バンドのセルフプロデュースにより完成したもの。長期にわたり北米のメジャーシーンで活躍してきた3人ならではの、安定感の強いパワフルな演奏を楽しむことができます。うん、各メンバーのプレイやアレンジに関してはさすがの一言です。

で、気になるのが楽曲ですよね。オープニングを飾る「Locked And Loaded」こそポストグランジ的側面を漂わせるものの、続く「Raw Power」以降はポップなメロディラインとキャッチーなサビを持つ良質なハードロック/パワーポップを聴かせてくれます。「Let's Ride It」なんて、どことなくトッド・カーンズと同郷のHAREM SCAREMあたりを彷彿とさせますよね。

要所要所でダウンチューニングを効かせたポストグランジ的なリフワークやアレンジが登場するので、一瞬ギョッとするかもしれませんが、(それこそこちらもカナダ出身の)NICKELBACKあたりとの共通点も見つけられ、そういった点からも彼らがこのバンドでやりたいことがなんとなく透けて見えてくるのではないでしょうか。こういうスタイルってお国柄によるものが大きいんですかね?

THE AGE OF ELECTRICではボーカルも担当するトッドのボーカルも古き良き時代のハードロックバンド的で、ハイトーンの伸びもよい。豪快なハードロックもパワーポップもお手のものといった印象で、良質な楽曲と相まって最後まで楽しく聴けてしまう。かつ、どの曲も4分程度にまとめられており、全10曲で39分という尺もちょうど良い。ステフ・バーンズのプレイに関しては、ソロはリフほど惹きつけられるものが少なく、そこだけが今後の課題かな。

トッドが在籍するTHE AGE OF ELECTRICをモダンにした印象の本作。SLASH featuring MYLES KENNEDY & THE CONSPIRATORSのファンやY&T、EVANESCENCEのリスナーにアジャストするかどうかは微妙ですが、これはこれで良質な内容なので、深いことを考えずにリラックスしながら楽しみたいと思います。

 


▼HEROES AND MONSTERS『HEROES AND MONSTERS』
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2023年1月 9日 (月)

2002年4月〜2003年3月発売の洋楽アルバム20選

2015年から毎年この時期に用意してきたこの成人企画。ちょうど昨年から成人年齢が18歳へと引き下げされ、現在は成人式の概念も崩れつつあります。が、この企画はこの企画として毎年やっていってはどうかと思い直し、タイトルから「祝ご成人」の文字を外し、20年前を振り返る企画として残すことにしました。

通常なら1月はじまりでカウントするところを、これまで同様4月はじまりの翌年3月終わりという年度縛りで進めるのは、ちょっと日本的なのかな。とはいえ、今さらこのフォーマットを崩すのも何かなと思い、このまま続けさせていただきます。

この1月に成人式を迎えたの皆さんが生まれた年(学年的に2002年4月〜2003年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れが強い作品のうちSpotifyやApple Musicで試聴可能なものを20枚ピックアップする……というのが本来の趣旨。20年って結構節目にもなると思うので、改めて「ああ、自分が生まれた頃はこういうアルバムがヒットしていたのか」とか「これってもう20年前の作品なのか」とか、いろいろ浸っていただいたり驚いていただけるとうれしいです。

 

では、サブスクを通して20年前の名盤20枚をお楽しみください。

 

AVRIL LAVIGNE『LET GO』(2002年6月発売)(Spotify)(レビュー

 

BECK『SEA CHANGE』(2002年9月発売)(Spotify

 

COLDPLAY『A RUSH OF BLOOD TO THE HEAD』(2002年8月発売)(Spotify

 

EMINEM『8 MILES: MUSIC FROM AND INSPIRED BY THE MOTION PICTURE』(海外:2002年10月発売、日本:2003年4月発売)(Spotify

 

EVANESCENCE『FALLEN』(2003年3月発売)(Spotify)(レビュー

 

FOO FIGHTERS『ONE BY ONE』(2002年10月発売)(Spotify)(レビュー

 

JURASSIC 5『POWER IN NUMBERS』(2002年10月発売)(Spotify

 

KILLSWITCH ENGAGE『ALIVE OR JUST BREATHING』(2002年5月発売)(Spotify

 

THE LIBERTINES『UP THE BRACKET』(2002年10月発売)(Spotify)(レビュー

 

LINKIN PARK『METEORA』(2003年3月発売)(Spotify)(レビュー

 

MAROON 5『SONGS ABOUT JANE』(2002年6月発売)(Spotify

 

MASSIVE ATTACK『100TH WINDOW』(2003年2月発売)(Spotify)(レビュー

 

MOBY『18』(2002年5月発売)(Spotify

 

THE MUSIC『THE MUSIC』(2002年9月発売)(Spotify

 

RED HOT CHILI PEPPERS『BY THE WAY』(2002年7月発売)(Spotify)(レビュー

 

SIGUR ROS『( )』(2002年10月発売)(Spotify

 

STONE SOUR『STONE SOUR』(2002年8月発売)(Spotify)(レビュー

 

SUM 41『DOES THIS LOOK INFECTED?』(2002年11月発売)(Spotify

 

t.A.T.u.『200 KM/H IN THE WRONG LANE』(海外:2002年12月発売、日本:2003年3月発売)(Spotify)(レビュー

 

UNDERWORLD『A HUNDRED DAYS OFF』(2002年9月発売)(Spotify)(レビュー

 

このほかにも、以下の作品を候補に挙げていました。

ASIAN DUB FOUNDATION『ENEMY OF THE ENEMY』
BEN HARPER『DIAMONDS ON THE INSIDE』
BON JOVI『BOUNCE』(レビュー
BRUCE SPRINGSTEEN『THE RISING』
DAVID BOWIE『HEATHEN』(レビュー
DISTURBED『BELIEVE』(レビュー
EMINEM『THE EMINEM SHOW』
FEEDER『COMFORT IN SOUND』(レビュー
HANOI ROCKS『TWELVE SHOTS ON THE ROCKS』(レビュー
THE HELLACOPTERS『BY THE GRACE OF GOD』(レビュー
IN FLAMES『REROUTE TO REMAIN』
KING CRIMSON『THE POWER TO BELIEVE』
KORN『UNTOUCHABLES』(レビュー
MESHUGGAH『NOTHING』
OASIS『HEATHEN CHEMISTRY』(レビュー
OK GO『OK GO』
OPETH『DELIVERANCE』
PET SHOP BOYS『RELEASE』
PETER GABRIEL『UP』
PRIMAL SCREAM『EVIL HEAT』(レビュー
QUEENS OF THE STONE AGE『SONGS FOR THE DEAF』
ROYKSOPP『MELODY A.M.』
RUSH『VAPOR TRAILS』(レビュー
SPARTA『WIRETAP SCARS』(レビュー
THE USED『THE USED』(レビュー
THE VINES『HIGHLY EVOLVED』

 

2021年3月30日 (火)

EVANESCENCE『THE BITTER TRUTH』(2021)

2021年3月26日にリリースされたEVANESCENCEの5thアルバム。日本盤は同年3月24日に先行発売。

スタジオ作品としてはオーケストラとのコラボアルバム『SYNTHESIS』(2017年)から3年4ヶ月ぶり、全曲新曲で構成されたオリジナルアルバムとなると『EVANESCENCE』(2011年)から約9年半ぶりの新作。随分と時間が経ってしまった感がありますが、良くも悪くも「Bring Me To Life」(2003年)の幻影を断ち切るには十分だったのではないかと思います。

プロデュースを担当したのは、前々作『EVANESCENCE』を手掛けたニック・ラスクリネクツ(ALICE IN CHAINSCODE ORANGEDEFTONESHALESTORMなど)。メインソングライターのひとりだったテリー・バルモサ(G)に代わり2015年に加入した女性ギタリスト、ジェン・マジューラ(G)を含む新編成で取り組んだ、真のデビュー作と言えるでしょう。大半の楽曲はエイミー・リー(Vo)、トロイ・マクロウホーン(G)、ティム・マッコード(B)、ウィル・ハント(Dr)の4人が中心となり制作されており、そこにジェンや、ウィル・B.ハントなるドラマーのウィル・ハントと同名のプログラマー/プロデューサー(前作『SYNTHESIS』のプロデュースはこちらのB.ハントのほうが担当したようです。同名なので、クレジット上では“B”を付けているみたいですね)、ニックなどが加わりまとめあげたと推測されます。

メロディの抑揚が以前の作品と比べて弱いせいもあってか、ダークが際立ちつつも、どこかこじんまりした印象を与える本作。それでも随所にこのバンドらしい美メロが散りばめられており、一定以上の完成度は保っていると思います。実際、フックになるような楽曲も少なくないですし、アルバム本編12曲を通して聴いたときの印象も決して悪くありません。個人的には中盤から終盤にかけての流れや楽曲の配置の仕方が、従来のEVANESCENCEらしいと思いましたし、序盤でちょっとした違和感を残しつつも後半にかけて“らしさ”を提示する流れは決して嫌いじゃありません。

演奏面でも非常に工夫されており、前々作『EVANESCENCE』以上に“バンド”感が強まっている。“エイミー・リーwithバンド”だった初期2作と比べたら、そりゃあエイミーが後ろに引っ込んでいるように映るかもしれませんが、これが今のEVANESCENCEの在り方であり、バンドを長生きさせるための処世術なんだろうなということが伝わってきます。

何度かリピートしても、やはり「Use My Voice」から本編ラストの「Blind Belief」までの流れ(および各楽曲)が文句なしの仕上がりなので、若干薄味な序盤と帳消しという点ではやはり及第点かな。

実は昨年2月中旬、エイミーが和楽器バンドとのライブ共演(およびコラボ新曲制作)のために来日した際、大阪でのライブ前日に和楽器バンドとエイミーの座談会のほか、エイミーの単独インタビューも担当したのですが(こちらは翌月に控えた『DOWNLOAD JAPAN』や、春から始まるWITHIN TEMPTATIONとの欧州ツアーについても伺っていたのですが、コロナの影響でいろいろな予定が狂ったため、現在まで未公開のまま)、その際にニューアルバムの進行についても聞いており、「ほぼ完成しているけど、残り数曲をツアーの手応えを経てから完成させて、秋には発表したい。それまでには新曲も随時リリースしていきたい」という話をしてくれていました。

そう考えると、このアルバムって当初予定していた内容とは少し違うものになったのかなと思うんです。もっと言えば、コロナの影響がもろに反映された愛用/作風だなと。抑揚の弱さや本作以前と比べて質感の異なるダークさは、まさにその一環だろうと感じます。「Use My Voice」にはリジー・ヘイル(HALESTROM)やテイラー・モムセン(THE PRETTY RECKLESS)、シャロン・デン・アデル(WITHIN TEMPTATION)などの女性ボーカリストがゲスト参加していますが、これらもリモート(データのやり取り)で制作されたものでしょうし。きっと、これらのバンドとツアーをしていたらまた違った仕上がりになっていたかもしれないし、もっと言えばこの曲は生まれなかったかもしれない……そう考えると、つくづく難しい世の中になったものだなと感じます。

コロナの影響を差し引いても、本作は特別ずば抜けたアルバムとは言い難いかもしれません。しかし、どうしても2021年という“withコロナ”の時代に生まれたという事実は加味して考えないといけない。半年後、1年後に世の中がどう変わっているかわかりませんし、実はそんなに大きな変化はないのかもしれない。それでも、本作は時間が経つにつれて響き方が変わってくるんじゃないだろうか……そんな気がしてなりません。だから、一方的に否定できないし、嫌いになれない。そんなふうに、いろんなことを考えさせられる1枚なんです。

聴けば聴くほど語るべきことがたくさん見つかる。時が経てば経つほど、たくさん語りたくなる。そんな不思議なアルバムです。

 


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2020年10月30日 (金)

BRING ME THE HORIZON『POST HUMAN: SURVIVAL HORROR』(2020)

2020年10月30日にデジタルリリースされた、BRING ME THE HORIZONの最新EP。CDやアナログなどフィジカルでは2021年1月22日の発売が予定されています。なお、日本盤は2021年1月27日に豪華仕様でのリリースを予定しているそうです。

さて、本作が配信スタートしてからまだ数十分しか経っていませんが、まずは本作を1回通して聴いて、そのフレッシュな感想をそのまま記録として残そうかと思っており、このテキストを深夜1時には公開しようともがいている最中です(笑)。すでに2回くらい聴いたというリスナーも少なくないでしょうが、これから聴く人はまずこれを読む前に1回通して聴いて、それからじっくり読むといいんじゃないかな。そう思っております。

では、以下9曲分の解説、お楽しみください。

M-1. Dear Diary,
本作で初めて公開された新曲その1。最近の彼らにしては珍しいスピートチューン。メタリックな要素が強いものの、要所要所にトラップ以降のEDMテイストもしっかり散りばめられている。要するに最強/最狂のメタルナンバーなわけです。カッコいいったらありゃしない、最高のオープニングです。

M-2. Parasite Eve
今年6月にデジタルリリースされたリード曲のひとつ。こちらに詳しく書いてます。「Dear Diary,」からの流れで聴くと、その魅力がより増しますね。

M-3. Teardrops
本作に数日先駆けて配信されたリードトラック。「Parasite Eve」「Obey」の流れを汲む、というか4thアルバム『THAT'S THE SPIRIT』(2015年)や5thアルバム『amo』(2019年)の延長線上にあるニューメタル〜メタルコア的なテイスト。いまだにこういう楽曲にも真剣に取り組んでくれるあたりに好感が持てます。メロディがしっかり作り込まれているので、スルスル聴き進められるはず。

M-4. Obey (with YUNGBLUD)
ヤングブラッド(YUNGBLUD)をフィーチャーした、今年9月の配信楽曲。詳しくはこちらに書いています。まとまった作品集の流れで聴くと非常にノリよく楽しめるし、冒頭4曲だけでも本作がモダンメタルの2020年最新型(現在進行形)の決定打なんだと認識できるのではないでしょうか。

M-5. Itch For The Cure (When Will We Be Free?)
本作で初めて公開された新曲その2。ようやくメタルテイストから離れ、ダンスミュージック寄りの楽曲へ移行……といっても、本曲は続くM-6への序章と呼べる1分半程度のインタールード。すでにこの時点で“あの2人”の声が聴こえてきたり……。

M-6. Kingslayer (feat. BABYMETAL)
本作で初公開となった新曲その3。おそらく世界中のメタルファンがもっとも注目していたであろうトラックで、かのBABYMETALをフィーチャリングアーティストに選ぶという英断(というか暴挙というか)は、今のBMTHにしかできないことだと思います。BMTHらしいアグレッシヴさと、BABYMETALならではのキュートさポップさが絶妙なバランスでミックスされており、SU-METALの歌が聴こえてきた瞬間の、目の前が開ける感覚といったら……思わず膝をパンパン叩いて、次にはガッツポーズをとってましたよ。そうそう、こういう曲が聴きたかったんだよ!と。しっかり日本語詞もフィーチャーされており、2組がコラボする必然性がしっかり感じられる。いやあ、個人的には今年3本指に入るベストトラックです(興奮気味で自分でも何書いてるかわからなくなってきたけど、たぶん冷静になって読んでもその気持ちは変わらないと思います)。

M-7. 1x1 (feat NOVA TWINS)
本作で初公開となった新曲その4。フィーチャリングアーティストのNOVA TWINSはエイミー・ラヴ(Vo, G)&ジョージア・サウス(B)からなるロンドン出身のロックデュオ。パンクやオルタナを通過したラップコアなどを軸に活動しており、BMTHとの相性も抜群。とはいうものの、前曲のBABYMETALと比べるとフィーチャー度は低く、全体的にはM-1〜4の延長線上かなと。前曲での興奮を良くも悪くもクールサウンさせてくれる(もしくはある程度高く維持させてくれる)、終盤に向けた箸休め的な色合いも若干感じられます。悪くはないです。

M-8. Ludens
昨年11月に配信された、PS4用ゲーム『DEATH STRANDING』のイメージアルバム提供曲。昨年11月の来日時(BABYMETALのゲストアクト)にはライブ1曲目に披露されていましたね。トラップ以降のテイストを軸にしつつも、曲が進むにつれてラウドさが増していく。それでいて、しっかりとシンガロングできるメロディが用意されている、まさに今のBMTHを象徴するような1曲。この直後に突如配信された大作EP『Music to listen to-dance to-blaze to-pray to-feed to-sleep to-talk to-grind to-trip to-breathe to-help to-hurt to-scroll to-roll to-love to-hate to-learn Too-plot to-play to-be to-feel to-breed to-sweat to-dream to-hide to-live to-die to-GO TO』(2019年)を聴いたときは「ここからそこへ流れるか……」と驚かされましたが、あれはあくまで実験だったんだなということを、今作を聴くと再確認できたのではないでしょうか。

M-9. One Day The Only Butterflies Left Will Be In Your Chest As You March Towards Your Death (feat. Amy Lee)
本作で初公開となった新曲その5。EVANESCENSEのエイミー・リー(Vo)をフィーチャーした1曲で、エイミーはつい最近も和楽器バンドとのコラボ曲「Sakura Rising」を発表して話題になったばかり。こちらはゴシックテイスト強めの壮大なバラードとなっており、冒頭からエイミーの歌をしっかり楽しむことができます。2コーラス目からはオリヴァー・サイクス(Vo)がメインで歌い、その対比含めて非常に興味深い仕上がりです。にしても、エイミーやBABYMETALの場合はある程度共演者側に色を寄せているのが印象的。だからといってBMTH色が希薄になることもなく、ちょうどいいポイントをついてくるんですよね。カオスなエンディング含め、非常に素晴らしい仕上がりだと思います。

以上、全9曲をじっくり解説してみましたが、これはEPというよりもフルアルバムと言い切ってしまっていいと思います。バンド的には『amo』に続くオリジナル作品というよりは『Music to listen to-dance to-blaze to-pray to-feed to-sleep to-talk to-grind to-trip to-breathe to-help to-hurt to-scroll to-roll to-love to-hate to-learn Too-plot to-play to-be to-feel to-breed to-sweat to-dream to-hide to-live to-die to-GO TO』(長いよ)同様に、別の角度からの実験作という扱いでEPなのかもしれませんが、『amo』があり、『Music to listen(以下略)』があり、小出しにしてきた楽曲があり、この作品集ということで考えると、僕は「ここ2年の活動の先にあった、ひとつの集大成」としてのアルバムと受け止めたい。そう考えています。

まあなんにせよ。『Music to listen(以下略)』同様に、いやそれ以上にリピートしまくりの1枚になりそうです。年明けくらいには一度落ち着くかもしれないけど、きっと来年1月にフィジカルリリースされたら、また聴く頻度が上がるんでしょうね。

 


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2020年8月19日 (水)

HALESTORM『REIMAGINED』(2020)

2020年8月14日にデジタルリリースされた、HALESTORMの最新EP。CDでのフィジカルリリース予定は今のところなく、海外アナログ盤が同年8月28日に発売されるようです。

HALESTORMはこれまで、フルアルバムとフルアルバムの合間に『REANIMATE: THE COVERS EP』と題したカバーEPを3作発表しています。どれもバンドのルーツを感じさせる選曲だったり、直近のヒットチャートを賑わせたポップソングを彼ら流にカバーしていたりと非常に興味深い内容で、個人的にもオリジナルアルバム同様に愛聴してきました。

現時点での最新アルバム『VICIOUS』(2018年)発売から2年経ち、そろそろ次のカバーEPの出番かなと思っていたら、ここで新たな挑戦が。リジー・ヘイル(Vo, G)が語るところによると、「ここ10年くらい面白半分で、アルバムとアルバムのリリースの間にカバーEPを出してきて、でも今回は大きく変えてみようって決めたの。1曲だけカバー曲で、あとはHALESTORMの楽曲を新たに作り直したバージョンを収録している」とのことで、全6曲中5曲が既発曲のリアレンジバージョンとなっています。

新たな解釈が施された楽曲群は、「I Miss The Misery」「I Am The Fire」「Mz. Hyde」などの代表曲をアコースティック・ベースでスロー&バラード調のアレンジに変身。かといってアンプラグド風になっているわけではなく、あくまで「ロックバンドがスタジオに集まって、肩の力を抜いてセッションしている」感じのアレンジかなと。バンドの主張はそこまで強くなく、あくまでリジーのシンガーとしての表現力を改めて知らしめるための、貴重なサンプルとして楽しめる作品かなと思いました。

その表現力が単にロックシンガーとしてだけでなく、もっと普遍的なボーカリストとしてのものであることがよくわかるのが、本作唯一のカバー曲「I Will Always Love You」でしょう。ご存知、ホイットニー・ヒューストンが映画『ボディガード』で披露しメガヒットした、ドリー・パートンのカバー曲(つまり、本作ではカバーのカバーということになるのかな)。彼女の歌がより際立つシンプルな演奏&アレンジで表現されることで、歌の力をより感じることができるはずです。こういうリジーもいいですね。

そしてもうひとつ、「Break In」の再構築バージョンではゲストシンガーとしてEVANESCENCEのエイミー・リーをフィーチャー。過去に2バンド一緒にツアーした経験から親交を深めてきたリジーとエイミーですが、今年5月にはリジーのYouTubeプログラムでもこの曲をデュエットしていました。つまり、本作への布石だったわけですね。コロナ禍前にレコーディングされたそうですが、リジーはこの制作を振り返り「2人一緒の部屋で、最初から最後までのフルパフォーマンスで収録したの。エイミーが参加することで、単なるラブソングから、お互い団結して支え合う声明へと、この楽曲に新しい意味をもたらした。今は大変な世の中だけど、今作がみんなの楽しみや希望となってくれてたらうれしいなと思っている」とコメントを寄せています。とにかく2人の声の相性も抜群ですし、最高のリメイクと言えるでしょう。

今後もこの『REIMAGINED』シリーズが続くのかどうかはわかりませんし、続いたとしても毎回必ずこういったアレンジとも限らないでしょう。でも、リメイクとカバーという2つの“お遊び”を手に入れたことは、おそらく来年あたりには届くであろうニューアルバムにも少なからず影響を与えるのではないでしょうか。何にせよ、しばらくはこれを聴いて彼らの次のアクションを待ちたいと思います。

 


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2020年2月13日 (木)

EVANESCENCE『EVANESCENCE』(2011)

2011年10月上旬にリリースされたEVANESCENCEの3rdアルバム。

メガヒットを記録したデビューアルバム『FALLEN』(2003年)のリリースツアー中、ソングライターのひとりであるベン・ムーディ(G)がバンドを脱退。エイミー・リー(Vo, Piano)は新メンバーを迎えることでツアーを継続し、新たな布陣で2ndアルバム『THE OPEN DOOR』(2006年)を完成させます。同作はチャート上ではデビューアルバム(全米3位)を上回る初の全米1位を獲得。セールス的には200万枚程度とデビュー作には及びませんでしたが、メガヒット後の余波を受けつつ成功を持続させることができました。

『THE OPEN DOOR』は『FALLEN』の世界観を踏襲した、良くも悪くも“ディフォルメ感”の強い1枚でした。即効性はかなり強く、リリース当時は良い作品だと感じながらリピートしたのですが、時間が経つと「これを聴くなら別に1作目があればいいんじゃないか?」と思えるようにもなってしまい。要するに、瞬発力やインパクトはある程度あるのですが、深みが足りない作品集だったように思うのです(今になってみれば、ですが)。

特に、ベンというメインソングライターを欠いたことで、エイミーはテリー・バルサモ(G)という新たなパートナーと共作を続けるのですが、2作目の時点では“デビュー作で獲得できたファン層をいかに離さずに1stアルバムらしさを再現するか”に注力することのみに専念。結果、バンドというよりは“エイミー・リーのソロプロジェクト”感が強くなってしまったのかもしれません。

そこから5年という長い歳月を経て、エイミーはEVANESCENCEを“ソロプロジェクト”から“バンド”へと成長させた。だからこそ、このタイミングにバンド名をアルバムタイトルとして用いたのでしょうね。

当初は巨匠スティーヴ・リリーホワイト(U2、XTC、LUNA SEAなど)をプロデューサーに迎えて制作を始めたものの、途中でニック・ラスクリネクツ(ALICE IN CHAINSDEFTONESMASTODONなど)に交代。エイミー、テリー、トロイ・マクロウホーン(G)、ティム・マッコード(B)、ウィル・ハント(Dr)という心強い布陣は演奏やアレンジのみならず、ソングライティング面でも貢献することでよりバンド感を強めることに成功しています。

実際、このアルバムではデビューアルバムの幻影をかなり払拭できているのではないでしょうか。バンドとしての一体感を強め、ソングライティングでも従来のスタイルをただなぞるだけではなくちゃんと進化させている。ゴシックメタルの要素は残しているものの、むしろそれは味付けといった程度に収められており、むしろヘヴィロック/ラウドロックバンドとしての側面を強く確立させているのが本作なのかなと。

シングルカットされた「What You Want」や「My Heart Is Broken」「Lost In Paradise」を筆頭に、「The Other Side」「Never Go Back」、そしてアルバム本編のラストを飾る美しいゴシック&エレポップ風バラード「Swimming Home」など癖になる佳曲が多い。リリースから8年以上経ちますが、意外と何度でもリピートできる1枚です。

 


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2017年11月27日 (月)

EVANESCENCE『SYNTHESIS』(2017)

EVANESCENCEの、2011年発売3rdアルバム『EVANESCENCE』から実に6年ぶりとなる新作は、なんと新曲+過去曲のオーケストラリアレンジバージョンからなる『SYNTHESIS』。しかもオーケストレーションはかのデヴィッド・キャンベル(あのベックの実父)が担当。これを純粋な新作と呼ぶには多少抵抗がありますが、バンド的には一応4thアルバムと銘打っているようなので、こちら側としてもそのつもりで接したいと思います。

デビューアルバム『FALLEN』(2003年)はエイミー・リー(Vo)と、ベン・ムーディー(G)やデヴィッド・ホッジス(Key)といった制作中および同作のツアー中に脱退したメンバーとの共作曲が大半で、それゆえに「次作がエイミーにとって正真正銘の勝負作」と言われてきましたが、2ndアルバム『THE OPEN DOOR』(2006年)も3rdアルバム『EVANESCENCE』もともに全米1位を記録。後者は時代柄か50万枚にも達しませんでしたが、前者は200万枚を超える成功を収めています。

で、本作なのですが、全16曲中インタールードやピアノインストを除けば13曲が歌モノ。内2曲が新曲で、ほかの11曲が過去曲のリメイクとなるわけです。内訳は『FALLEN』から3曲、『THE OPEN DOOR』から3曲、『EVANESCENCE』から5曲と、その大半が“エイミーとその仲間たち”体制になってからのものなんですね。なので、俗に言う「大ヒットした1stアルバムの遺産を食いつぶしやがって」的物言いは実は的外れなんじゃないかと。確かに「Bring Me To Life」や「My Immortal」といった大ヒット曲もピックアップされているものの、それはあくまで“ファンサービス”程度で、本当は『EVANESCENCE』で展開された世界観をより深化させたかったのではないでしょうか。

もちろん、『FALLEN』で作り上げられた世界観がその後の作品にも反映されているわけで、そういう意味では間違いなく遺産は食いつぶしています。が、本作はそういったヒット曲“だけ”に頼った内容ではないことも明らか。もし本気でそっちに走るなら、ありきたりに「通常のバンドサウンド+オーケストラ」なアレンジにしたはず。でも、そうならなかった、そうしなかったのは、間違いなく前作『EVANESCENCE』からの延長で「デジタル+オーケストラ」というテイストにチャレンジしたかったから。そういう意味では、本作は“バンド・EVANESCENCE”の新作ではなく“エイミー・リー featuring デヴィッド・キャンベル”のオリジナルアルバムと呼んだほうが正しいのかもしれません。

まあ6年待たされて新曲はたった2曲、しかもロックでもメタルでもない。そりゃあ肩透かしと思われても仕方ありません。が、このバンドのこういう側面に特化した作品もいつか聴いてみたいと一瞬でも考えたことがあるリスナーには、ある種理想に近い1枚なのでは。オーケストラの内側に存在する軸をあえてバンドサウンドにせずデジタルサウンドをしたのも、個人的にはアリ。頻繁に引っ張り出して聴く作品ではないかもしれませんが、深夜に若干ボリューム抑えめで、リラックスしながら聴きたいアルバムです。

 


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2006年9月30日 (土)

EVANESCENCE『THE OPEN DOOR』(2006)

 1stアルバム『FALLEN』(2003年)から3年半という時間が経ってしまったことにも驚きだけど、前作で大半の楽曲を手がけたベン・ムーディが脱退したにもかかわらずここまで前作からステップアップした作品を生み出せたのは、さすがだなぁと思います。そんなEVANESCENCE、現在はバンドという形を取っているようですが(いや、少なくともデビュー作の時点でもそういう触れ込みだったけど、現実的にはエイミーとベンの2人がメインだったよね)、今回も表ジャケットにはエイミーの姿のみ。これがバンドのコンセプトだと言ってしまえばそれまでですが、やはりエイミーさえいれば成り立つのが今のEVANESCENCEかな、という気が。

 ま、そんなことはどうでもいいんですよ……曲が良ければ。正直に書くと、最初先行シングルの「Call Me When You're Sober」を聴いたときは「あぁ、やっぱり前作は超えられないか。そりゃ曲書いた人間がいないし、前の焼き直し&水増しバージョンになってもしゃーないわな」と落胆したんです。悪くない、悪くないけど取り立てて素晴らしいとも言えない。そんな微妙な曲だなぁと。だけどアルバムを通して聴くまではその気持ちを押し殺して、とにかく全部聴いてみようと思ったわけ。

 で、ガーッと通して聴きました、アルバム。すでに何度となく聴き返してますが……いいんだよね、これ。個人的には前作よりも好き。前作はいわゆる「ゴシックなラウドロック」という枠に当てはめたかのような……まぁ産業ロック臭がプンプンしてて、人によってはまったく受け入れられなかったんじゃないかな。ところが今回はライブで聴くことができるようなヘヴィさが前面に押し出されて、それでいて全体としてのバランス感が優れている。いわゆる「トータルコンセプトのしっかりした」アルバムとして仕上がってるわけ。流れも良いし、とにかく聴き入ってしまうアルバムなんだよね。ただ、その分「これ!」という決めの1曲がないのも確か。「Bring Me To Life」や「Going Under」「My Immortal」のような突出した出来の楽曲がね……「Call Me When You're Sober」は正直そこまでのナンバーだとは思わないし。だけどアルバムとしての出来は、前作以上の内容だと思うんだよね、不思議だね。

 彼ら(というか彼女)がこの2ndアルバムを「アルバム・オリエンテッド」に仕上げようとしたのかどうかはわからない。もしかしたらこれでも「全曲シングルとして切れる傑作」のつもりなのかもしれない。でも、残念ながら俺にとってはそういう作品ではなくて、アルバムでがっつり楽しむ作品集だなぁと。受け取り方は聴き手それぞれだから別にいいんだろうけどさ。俺は好きよ、想像してた以上の出来だったし。

 昨今、この手の「ゴスの要素が強いラウドロック」は腐るほどあるし、決してEVANESCENCEがその元祖ではないけど、やはりブレイクのきっかけをつくった先駆者としての意地を見せつけられた気がします。これはまたバカ売れするのかもね、アメリカで。だって前作以上に「アメリカの音」だもんね?

 


▼EVANESCENCE『THE OPEN DOOR』
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2004年12月 4日 (土)

まだまだあるよ、ボックスセット

 昨日のエントリで、年末商戦に合わせてボックスセットをリリースするアーティストが多いというお話をしましたが、前回挙げた他にもまぁボックスとまではいかないまでも、CD複数枚+DVD、あるいはCD+DVDというセット販売をする企画盤、結構あるんですよね。

 んで、最近話題になってるものをまた幾つか紹介してみようかと。大半が輸入盤ですが、モノによってはDVDがリージョンコード1で普通の家庭用プレイヤーで観れない代物もあるかと思いますので(PCでは観れるってのが多いのかな?)、それ目当てで購入を考えてる人はご注意を。

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