EXTREME『EXTREME』(1989)
1989年3月にリリースされたEXTREMEのデビューアルバム。日本では2ヶ月遅れの5月にポニーキャニオンから、日本独自のジャケットに差し替えられ発売されています(その後、ユニバーサルからの再発分からは海外盤と同じジャケットに戻されました)。
B!誌のディスクレビューでその存在を知り、動いている姿を目にしたのは当時TBSで日曜深夜に放送されていたHR/HM専門プログラム『PURE ROCK』でのことだったと記憶しています。確か、同年秋に控えた初来日公演に向けて、地元ボストンで撮影されたリハーサル&コメント映像と「Kid Ego」のMVがオンエアされたはずで、そのリハーサル映像では次作『EXTREME II: PORNOGRAFFITTI』(1990年)に収録されることになるタイトルトラック「Pornograffitti」がすでに演奏されています。あとで1stアルバムを購入したとき、「あれ、あのリハ映像でやってた曲、入ってないじゃん!」とがっかりして、そこから1年後に「あ、この曲!」とやっとめぐり逢えたの、今でもいい思い出です。
そんな印象深い本作との出会いですが、内容的には以降のアルバムと比べて若干劣るかな。もちろん良い曲も多いですが、いまいち“ヤマに欠ける”といいますか。
オープニングの「Little Girl」やシングルカットされた「Kid Ego」、ヌーノ・ベッテンコート(G)の非凡なギタープレイを存分に味わえる「Mutha (Don't Wanna Go To School Today)」や「Play With Me」など今でもオススメできる楽曲も少なくないですし、QUEEN的な壮大さを持つバラード「Watching, Waiting」「Rock A Bye Bye」などもあるのですが、すべてがパーフェクトかというとそうでもないんですよね。デビューアルバムってアマチュア/インディーズ時代の集大成でもあるわけですが、本作の場合は比較的似通った曲が多いのも、そういったマイナス要素の一因なのかなと。
あと、ゲイリー・シェローン(Vo)というクセ/抑揚の少ないシンガーの存在もマイナスポイントかもしれません。その動き含めヴィジュアル的には面白みのある人ですが、音源だけとなるとね。器用な人ではないけど比較的どんなタイプの楽曲でも歌いこなせてしまうソツのなさは、武器にもなるんだけど仇にもなる。次作以降ではそれがちゃんと武器に転化されるんだけど、残念ながらここではまだ原石のままなんですよね。扱いの難しい人です。
……というのが、90年代に僕が持っていたEXTREMEの1stアルバムに対する印象。
これを書く際、久しぶりにSpotifyで聴いてみたのですが、当時はあまり印象に残らなかった「Teacher's Pet」とか「Flesh 'n' Blood」あたりが今聴くと意外と良いと思えたのは新たな収穫でした。うん、記憶の中にあったイメージよりも全然悪くない。デビューアルバムとしてはかなり高クオリティな1枚だったんだね。ゴメンよ、ちゃんと気づいてあげられなくて。
本作でのメジャーデビューから30年。再結成後のオリジナルアルバム『SAUDADES DE ROCK』(2008年)からすでに11年経ちましたが、そろそろ新曲も聴いてみたいものです。
▼EXTREME『EXTREME』
(amazon:日本盤CD / 海外盤CD / MP3)