E・Z・O『E・Z・O』(1987)
1987年4月発売の、E・Z・Oのデビューアルバム。このバンド、もともとはFLATBACKERとして日本国内で2枚のアルバムを発表しており、渡米と同時にバンド名を変更。ジーン・シモンズ(KISS)とヴァル・ギャレイのプロデュースにより、海外ではGeffen Recordsから、国内はFLATBACKER時代同様ビクターからリリースされました。国内ではオリコン6位、アメリカでも150位まで上昇するなど、日本の新人バンドとしてはなかなかの成績を残したのではないでしょうか。
FLATBACKER時代は日本語詞、スラッシュメタルやハードコアからの影響が強いサウンドが特徴だった彼らですが、このE・Z・Oの1stアルバムはHR/HM色の強い作品に仕上げられています。楽曲によってはFLATBACKERの名残(「House Of 1,000 Pleasures」のメインリフ)も感じられますが、もちろんここではまったく別モノに変化。テンポ的にもFLATBACKER時代は前のめりのファストチューンが多かったところ、本作ではミドルテンポのヘヴィチューンが中心に。このへん、LOUDNESSが『THUNDER IN THE EAST』(1985年)で試みた路線に近いものを感じます。
全9曲中7曲がバンドと外部ライターとの共作で、2曲が職業ライターの手によるもの。MVも制作された「Flashback Heart Attack」にはHOUSE OF LORDSなどで知られるジェイムズ・クリスチャン(Vo)、「House Of 1,000 Pleasures」や「Mr. Midnight」ではBLACK 'N BLUEのジェイミー・セント・ジョーンズ(Vo)、そして「Here It Comes」や「Kiss Of Fire」などではKISSとの共作でおなじみのアダム・ミッチェルの名前を見つけることができます。このへんは確実にジーン・シモンズの手腕によるものですね(バンド名変更や歌舞伎の隈取メイクも確実にジーンの発案だろうし)。
とにかく、どの曲も非常にキャッチー。シングルカットされた「Here It Comes」のみ毛色が異なりますが、そのほかは基本的に豪快でメロディアスなハードロック。ちょうどBON JOVIがブレイクし、ここからWHITESNAKEが当たりGUNS N' ROSESがデビューするという絶妙なタイミングだったこともあり(E・Z・Oとガンズはアメリカでのレーベルメイトですしね)、本作も海外で高い評価を獲得したようです。セバスチャン・バック(ex. SKID ROW)の口からもE・Z・Oの名前が飛び出すこともありましたしね。
ドラムサウンドに時代を感じるものの、Shoyo(G)のギターワークやMasaki(Vo)のディストーションボイスは今聴いても凄みというか恐ろしさを覚えます。特にMasakiはダサダサ日本語詞のFLATBACKER時代を忘れさせるだけの実力を発揮しており、そこから90年代のLOUDNESS加入につながるわけです。
今でこそサブスクで手軽に聴くことができる本作。実はCDはしばらく廃盤状態でした(紙ジャケ化含め、何度か再発されてきましたが)。ホント、良い時代になりましたね。80年代後半のHR/HMブームにおける(世界的には)隠れた名盤、そしてジャパニーズメタルの歴史に名を残す傑作、ぜひこの機会に触れてみてください。