THE FACELESS『IN BECOMING A GHOST』(2017)
LA出身の4人組テクニカルデスメタルバンド、THE FACELESSの2017年12月に発売された4thアルバム。本作はシンフォニックブラックメタルバンドABIGAIL WILLIAMSのフロントマン、ケン・ソーセロン(Vo)を迎えて制作された初めてのアルバムで、すでにオリジナルメンバーはリードギターのマイケル・キーン以外残っていない状況です。
実は、ジャケ写に釣られて初めて聴いたバンドですが、非常に面白いですね。Wikiを見ると、彼らのジャンルはテクニカルデスメタルだとかブラッケンドデスメタル(ブラックメタルのテイストが強いデスメタル)なんて言われているようですが、聴けばなるほどと。プログレッシヴメタルにデスメタルの要素を乗せ、そこにブラックメタル的な風合いを散りばめた結果、どこかゴシックメタル調にも感じられると。そりゃ嫌いになれるわけがない。
ケン・ソーセロンによるデスボイスに加え、マイケル・キーンはクリーンボーカルを担当。バランス的にはメロウなクリーンボイスもかなり多めに登場し、インダストリアル調サウンドやゴシックロック風アレンジが加わることによって、怪しさが倍増。それをプログレッシヴメタル的な変拍子や不協和音、音数の多い細かなテクニカルプレイで表現するわけで、意外とスルスルと楽しめてしまう。むしろ、メインであるはずのデス声のほうが味付けにすら感じられ、ブラックメタルやデスメタルに苦手意識があるリスナーでも比較的楽に楽しめる作品ではないでしょうか。
で、個人的に気になるのがDEPECHE MODEのカバー「Shake The Disease」。エレポップ調の原曲を、ブラストビート&トレモロリフで味付けした狂気に満ちたアレンジで蘇らせています。しかも、プログレメタル的プレイも追加されたかと思うと、マイケル・キーンによるデイヴ・ガーンばりのバリトンボーカルを響かせる。デスボイスもしっかり含まれており、その緩急含め非常に面白い仕上がりになっていると思いますよ。
全体を通して聴くと、プログレ的でもあるけどそれ以上にシンフォニックなタッチが多いなと気づかされます。そこが聴きやすさにもつながってるんじゃないでしょうか。ブラッケンドデスメタルなんて仰々しいカテゴライズがあるものの、その中身は意外と聴きやすいもの。ジャケの狂気性や雰囲気に騙されずに、ぜひ気軽に触れてみてはどうでしょう。個人的にはかなり点数の高い1枚でした。