2017/08/17

DEAD CROSS『DEAD CROSS』(2017)

にしても、すごいバンドが誕生したものです。FAITH NO MOREのマイク・パットン(Vo)、元SLAYER/現SUICIDAL TENDENCIESのデイヴ・ロンバード(Dr)、THE LOCUST/RETOXのジャスティン・ピアソン(B)、同じくRETOXのマイク・クライン(G)というメタル/オルタナ/ハードコア界のそうそうたるメンツが一堂に会したスーパーバンド、DEAD CROSS。彼らのデビューアルバム『DEAD CROSS』が8月上旬にリリースされました(ここ日本では同月23日に発売)。

もともと2015年に結成された際にはTHE LOCUSTのゲイブ・セルビアンがボーカルでしたが(THE LOCUSTではドラマー)、翌2016年に脱退。新たにパットン先生が加入し、現在のサウンドスタイルが確立されたとのことです。

おそらくパットン先生が加わるまでは、意外とストレートなハードコアが展開されていたんだろうなと思うのですが、このアルバムで聴けるサウンドは単なるハードコアとは言い難い、非常に複雑怪奇なもの。カオティックハードコアとでも呼べばいいのでしょうか。単なる暴力的なエクストリームサウンドというよりも、どこか知的さがにじみ出た、まさしくカオスな世界観が展開されています。

パットン先生のボーカルはFAITH NO MORE以上に振り切れたものもあれば、そこから一転して冷静さを感じさせるものもあり、FAITH NO MOREやパットン関連作品愛好家なら一発で気にいるはず。ロンバードのドラムもオープニングの「Seizure And Desist」からツーバス&ブラストビート全開(この曲のボーカルオーケストレーションも最高)。SUICIDAL TENDENCIES『WORLD GONE MAD』(2016年)でのプレイよりも、SLAYERでパンキッシュな楽曲を叩くときのプレイに近いイメージと言えば共感いただけるでしょうか。要するに、ひたすらカッコイイということです。思えばパットンとロンバードは過去にFANTOMASでも活動をともにしたことがあるので、相性は悪くないんでしょうね。

ギターやベースに触れずじまいですが、決して空気なわけではないですよ。このドラムにこのベース、このギターという絶妙なプレイを聴かせてくれていますし。ただ、ここにパットン先生の声が乗ると……全部持っていっちゃうんですよね。それだけアクが強いというか唯一無二というか。まぁまずは、頭を空っぽにして楽しんでください。アレンジがどうだとか、この曲のここがこうだとか、BAUHAUS「Bela Lugosi's Dead」のカバーのアレンジがどうだとか、そういう小難しいことは数回無心で楽しんだあとにでも。ね?



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投稿: 2017 08 17 12:00 午前 [2017年の作品, Dead Cross, Faith No More, Slayer, Suicidal Tendencies] | 固定リンク

2017/07/11

FAITH NO MORE『ANGEL DUST』(1992)

FAITH NO MOREでどのアルバムが一番好きか?と尋ねられたとき、意外と意見が割れるんじゃないかなという気がしていて。どの作品で初めて彼らに触れたかも大きい気がするんですが、僕の場合は大ヒットした『THE REAL THING』(1989年)から入ったものの、実はその次の4thアルバム『ANGEL DUST』が一番気に入っているんですよね。

1992年6月に発表された本作は、シングル「Epic」の大ヒット(全米9位)によってミリオンヒットとなった『THE REAL THING』に続くアルバムで、マイク・パットン(Vo)がバンドに加わってから通算2枚目のスタジオ作品です。プロデューサーマット・ウォレスとバンドという、前作とまったく同じ布陣。前作が予期しなかったヒットを記録しただけに、プレッシャーもかけられたんじゃないかと想像しますが……いざ完成した本作は、その後の“やりたい放題”ぶりを予見させる内容で、非常にバランス感に優れた1枚ではないかと思います。

無駄にメジャー感があってキャッチーな楽曲が多かった『THE REAL THING』と比較すると、そのへんのカラーは若干抑え目。シングルカットされた「Midlife Crisis」や「A Small Victory」、「Everything's Ruined」あたりは確かにメジャー感こそあれど、派手さは皆無。そこに加えてシリアスかつヘヴィな「Land Of Sunshine」や「Caffeine」、どこか間の抜けたイメージの「RV」、複雑怪奇なハードコア「Malpractice」、“オペラ座の怪人+ファンク+キッズコーラス”と支離滅裂ながらもカッコいい「Be Aggressive」など、非常にクセの強い楽曲がずらりと並ぶのですから。ミクスチャーだなんだと新しい音楽に触れて喜んでいた前作のノリを期待して本作に手を出したら、次々に邪悪なキャラクターが飛び出すパンドラの箱を開けてしまった……そんな体験ができるはずです(笑)。

思えばFAITH NO MOREにHR/HMテイストが強く感じられたのは、本作までなんですよね。それは、本作を最後に脱退したギタリスト、ジム・マーティンのプレイによるものが大きいのかなと。その後バンドに加わり、再結成にも参加するジョン・ハドソンと比べると、無駄に派手ですからね(見た目含め)。

ちなみに本作、チャート的にはFAITH NO MOREのキャリアで唯一全米10位内に達したアルバム(最高10位)。実は『THE REAL THING』って、11位止まりなんですよ。ただ、順位的にはそんなに変わらないけど、セールス的には『THE REAL THING』が100万枚、本作『ANGEL DUST』は50万枚とシングルヒットの有無で差が出てしまったようです。

なお、再発盤には追加収録されてますが、本作リリースからしばらくしてバンドはライオネル・リッチーが在籍したCOMMODORESの名曲「Easy」のカバーをシングルリリース。こちらは全米58位という中ヒットを記録しています。前作ではBLACK SABBATH「War Pigs」を取り上げていた彼らが、次作でCOMMODORESをセレクトしたというのも面白いし、こっちのほうが本来の彼らのセンスなんでしょうね(本気とも冗談とも取れる微妙なラインが)。



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投稿: 2017 07 11 12:00 午前 [1992年の作品, Faith No More] | 固定リンク

2004/10/17

とみぃ洋楽100番勝負(60)

●第60回:「Epic」 FAITH NO MORE ('89)

 レッチリよりも先に、恐らく「オルタナ」と当時呼ばれていたジャンルの中で一番最初に成功したのが、このFAITH NO MOREだったんじゃないでしょうか。ブレイク自体は1990年に入ってから、シングルとしてこの "Epic" という曲が全米チャートのトップ10入りしちゃったもんだから‥‥当然名前は雑誌で目にしてたので知ってたけど、曲を聴いたのはこの曲のPVを目にしたときが初めてでね。

 何だろ、これは‥‥ラップパートがあって、けどヒップホップとも違う。イントロの壮大な感じと、ビッグなギターリフ。完全にヘヴィメタルしてるギターソロ、判りやす過ぎるポップなサビ。そしてあの意外なエンディング‥‥明らかに今まで自分が接してきたジャンルとは違うものだと、すぐに理解できたけど‥‥よく判らない「凄さ」は確かに伝わってきたのね。でも、この1曲じゃ不十分だった。

 後でレンタルしてアルバムを聴いてみたら‥‥普通のハードロックあり、フュージョンぽい曲あり、ヘヴィなナンバーあり、泣きのバラードっぽいのあり、更にBLACK SABBATHのカバーあり‥‥で、結局何がやりたいの? 凄いんだろうけど、どうにもピンとこなくてね。"Epic" が凄過ぎたのかな‥‥

 ってずっと思ってたのよ、この曲を初めて聴いてから2年くらい。確かにステージでの奇行にはいろいろ惹かれるものがあったけど(脱糞するなよステージ上で)、音楽的にはね‥‥

 けどさ。俺の中でそれがやっと追いついたのが、続く「ANGEL DUST」ってアルバムが出た時。ここで俺の中で初めて重要なバンドに格上げされた気がします。

 明らかに、あの曲はいろんな切っ掛けだったんだよね。俺にとっても、そして当時の音楽シーンにとっても。この曲がヒットし出した頃から、世のハードロックやヘヴィメタルは過渡期に向かっていったからね。



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投稿: 2004 10 17 12:00 午前 [1989年の作品, Faith No More, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2003/06/26

THE DILLINGER ESCAPE PLAN with MIKE PATTON『IRONY IS A DEAD SCENE』(2002)

アメリカが誇る変態テクニカル・ラウド集団、THE DILLINGER ESCAPE PLANが奇才マイク・パットン(元FAITH NO MORE、現FANTOMAS等)を迎えて制作したEP。昨年夏、フジロックに出演した際には新ボーカリストを含んだ編成になっていたものの、このEPはそれ以前に録音されたもの。何故新編成になってから(リリースは昨年秋)リリースすることにしたのかは判らないけど、これは世に出すべき音源ですよ。つうかこれ読む前に、まず先に音を聴いて欲しいよ。絶対に言葉が出なくなるから。

マイク・パットンが過去、どういう音楽をやってきたか、そして彼のパーソナリティが如何に複雑かを知ってる人なら、このEPでやってることも何となく想像が付くと思いますが、更にその上を行ってますよ実際。俺、DILLINGER ESCAPE PLANというバンド自体、昨年のフジロックで初めて知ったのですが(結局観れなかったんだけど)、「EPITAPH」所属なのね。「EPITAPH」っていうと、BAD RELIGIONとかRANCID、OFFSPRINGといった'90年代前半のアメリカンパンク・ムーブメントを支えたバンドが所属するレーベルっていうイメージが強いんだけど、こういうバンドもやってるのね。

とにかくこのバンド、凶暴なんだけど知性を感じさせるのね。度を超す程凶暴で狂ってるんだけど、そんな中に一瞬だけインテリジェンス‥‥知的さからくる冷たさを感じさせるのね。そういうキチガイ・サウンドに、あのマイク・パットンのボーカルが乗るんだから‥‥ねぇ。特定のバンド名は敢えて出さないけど‥‥これ聴いちゃったら、やれ○○だの何だのって言ってられないんじゃないの? 結局はみんなニューメタルだよな、と。

勿論ね、このバンド自体もメタルの影響が強いんですよ。マイク・パットンだってそうだと思うんだけど(‥‥違ったかな??)、そういうのを上手く消化しつつ、更に違った地平というか、更に高い地点に到達しようとしてるんだよね。それも無意識に。いや、無意識さを装って実は計算しまくりか。そんなイメージもあるな、この組み合わせ。

1曲目"Hollywood Squares"が始まった途端に異空間。いきなりキチガイ100人が詰まった満員電車の中に放り込まれたような状態に陥るわけですよ。次に何が起きるか全く想像がつかない、かなり怖い、けどちょっとドキドキ、みたいな?(いやドキドキはしないか)演奏テクや展開もハンパじゃないし、何よりもマイクの歌いっぷり、これがもうね‥‥ホントにひとりで歌ってるの!?って疑いたくなる程多彩。勿論FAITH NO MORE時代からのことなんですが、ここでのマイク、正しく「水を得た魚」状態だよね。ヘヴィメタルやハードコアからの影響を感じさせつつ、ところどころにプログレやジャズ、映画のサントラ的な要素も見受けられる。何て言うか‥‥いろんな色を感じさせるんだけど、そのどれもが自分自身を強く主張しすぎて他者を潰し合って結局何色なのか判らないような状態になっちゃう‥‥そんな感じ(どんな感じだよ)。とにかく凄すぎ。それ以上語れないよ(いや語ってるし)。

そういえば、このアルバムにはダンス系好きにはたまらない山場があるんだった。そう、APHEX TWINの名曲"Come To Daddy"のカバーをやってるんですよ! しかもバンド演奏で! マイク・パットンの歌入りで!! これがねぇ、原曲の雰囲気を見事に残しつつ、完全な変態ハードコアソングへと生まれ変わってるのね。きっとリチャードも涅槃で喜んでるはず(いや死んでないし)。そういうひねくれた喜び方しそうだもんな、あの人‥‥このユニットにこのカバー、ここまで合致した組み合わせもそうはないでしょう。'80年代ヒット曲で一山当てるような安パイでお茶を濁すようなことせずに、こういう冒険して欲しいよね、もっと。

本当ならこの編成でのライヴってのも観てみたかったんだけど、後任ボーカルグレッグもかなりのキチガイらしいので(人伝で聞いただけですが)、そろそろリリースされるであろうフルアルバムに期待大ですね。



▼THE DILLINGER ESCAPE PLAN with MIKE PATTON『IRONY IS A DEAD SCENE』
(amazon:海外盤CD

投稿: 2003 06 26 08:25 午前 [2002年の作品, Dillinger Escape Plan, The, Faith No More] | 固定リンク