DUB WAR『WESTGATE UNDER FIRE』(2022)
2022年8月5日にリリースされたDUB WARの3rdアルバム。日本盤未発売。
1999年に一度解散し、2014年にドラマーを除くオリジナルメンバー3名で復活。フロントマンのベンジー・ウェッブ(Vo)がSKINDREDと並行して活動を続けていることもあり、以前ほど精力的な活動は期待していませんでしたが、まさかオリジナルアルバムが届けられる日が来るとは……驚きです。
オリジナルアルバムとしては前作『WRONG SIDE OF BEAUTIFUL』(1996年)から約26年ぶりの新作。2016年にリリースされた新曲「Fun Done」「Making A Monster」(後者は「Mary Sheley」に改名)、今年発表されたリード曲「Blackkk Man」を含む全13曲で構成されており、うち2曲「War Inna Babylon」「Stay Together」はカバー(前者はMAX ROMEO AND THE UPSETTERS、後者はアル・グリーン)となっています。
また、久しぶりの新作ということもあり、各曲に多彩なゲストが参加しており、「War Inna Babylon」には元THE BEATのランキング・ロジャー(Vo/2019年3月に逝去)、「Art Of War」にはスパイク・T.スミス(Dr/MEMORIAM)、「Reveal It」にはロイ・マイヨルガ(Dr/STONE SOUR、HELLYEAH、MINISTRY)、「Bite Back」にはデイヴ・チャヴァッリ(Dr/ILL NINO、TERROR UNIVERSAL)、「Crying Clowns」にはジェイミー・ミラー(Dr/BAD RELIGION)&マイキー・ドリング(G/SNOT)、「Get Back Up」にはマイク・ボーディン(Dr/FAITH NO MORE)、「Celtic Cross」にはタナー・ウェイン(Dr/IN FLAMES)がそれぞれ客演。再結成時に初参加となったマイキー・グレゴリー(Dr)は13曲中約半数の7曲のみに参加で、本作ではゲストミュージシャン扱いなので現在はバンドから離れているようです。
彼ららしいラガメタルの要素は随所に散りばめられていますが、本作はそれ以上にハードコアパンクとメタルの色を強めたミクスチャーロック然としたスタイルが印象に残ります。過去の彼らのイメージはしっかり残されているものの、SKINDREDなどでの経験もしっかり活かされており、単に懐かしいミクスチャーというよりは現代的にレベルアップしたものに仕上がっているのではないでしょうか。
とにかく、どの曲も非常にキャッチーでダンサブルでアグレッシヴ。26年前には先鋭的に感じられたこのスタイルも現在までに何周もしたことで「ごく当たり前のもの」として成立している。そういった意味での革新性は皆無ですが、時代が彼らに追いついたと同時に、この混迷の時代に彼らが復活し新作を制作した意味がしっかりと理解できる1枚だと感じました。
個人的には中盤から後半にかけての「Bite Back」や「Coffin Lid」「Crying Clowns」「Get Back Up」あたりのタフでグルーヴィーなスタイルが好み。あと、「Stay Together」のカバーもDUB WARらしい味付けが感じられて好印象でした。ジャンルの壁がなくなった今だからこそ、より幅広い層に届いてほしい1枚。この新作を機に、過去の2枚にまで到達することができたら、この新作は大きな意味を持つのではないでしょうか。
▼DUB WAR『WESTGATE UNDER FIRE』
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