FASTER PUSSYCAT『WHIPPED!』(1992)
1992年8月4日にリリースされたFASTER PUSSYCATの3rdアルバム。日本盤は同年8月25日発売。
「House Of Pain」のシングルヒット(全米28位)も手伝い、前作『WAKE ME WHEN ITS'S OVER』(1989年)は最高48位まで上昇し、全米で50万枚以上を売り上げるヒット作に。1990年には所属レーベルElektra Recordsの創立40周年を記念したコンピレーションアルバム『RUBAIYAT: ELEKTRA'S 40TH ANNIVERSARY』に、カーリー・サイモン「You're So Vain」のカバーを提供するなどして、注目を集めました。
そんなヒット作から3年の歳月を経て届けられた今作。プロデューサーには前作から引き続きジョン・ジャンセン(CINDRELLA、BANG TANGO、LOVE/HATEなど)を迎えたことから「前作の延長線上にあるのかな?」と思いきや……1992年という時代に完全に“乗った”テイストの異色作に仕上がっています。
骨太サウンドをベースにした、スリージーでいかがわしいハードロック色は健在なのですが、そこに時代といいますか、グランジ的なオルタナテイストも散りばめられており、前作以上にダークでモノトーンな雰囲気が強まっています。シングルカットされたオープニングを飾る約7分の対策「Nonstop To Nowhere」といい「The Body Thief」といい、それ以前の彼らとは若干雰囲気が異なることは一聴しておわかりえしょう。
その後もダークさの強い「Jack The Bastard」などはあるものの、ファンキーながらも底抜けに明るいわけではない「Big Dictonary」や「Madam Ruby's Love Boutique」、従来の路線を若干ダークにした「Only Way Out」、グルーヴィーなロックンロール「Maid In Wonderland」、アーシーなミディアムバラード「Friends」(かのニッキー・ホプキンスがピアノで参加)といった前作の流れを汲む楽曲も健在。暗さは気になるものの、これはこれでカッコいい。というか、リリースから30年経った今聴くと、一周回って全然アリなことに気付かされます。リリース当時は「ああ、変わってしまった……」と数回しか聴かなかったんだけど。
1stアルバム(1987年)収録の「Babylon」のサンプリングなどを取り入れたインタールード「Cat Bash」を経て、終盤はファンキーなベースラインがぐいぐい引っ張る「Loose Booty」、1990年に亡くなったアンドリュー・ウッド(Vo/MOTHER LOVE BONE)へ捧ぐサイケデリックなバラード「Mr. Lovedog」、ダーク&ファンキーな「Out With A Bang」で締め括り。久しぶりに聴いたけど、以前ほど印象が悪くなかったのが面白かったです。
EXTREMEというよりは1990年前後のAEROSMITH的なファンキーさを取り入れたハードロックと、ALICE IN CHAINSなどを思わせるダークなグランジを絶妙にミックスすることで、このバンド本来の持ち味が若干薄れてしまっているのは惜しいですが、1枚のハードロックアルバムとしては平均点超えの内容ではないでしょうか。ただ、前2作にあったようなキラーチューンが存在せず、最初から最後までふわふわしたまま聴き終えてしまうのが難点ですが。
チャート的には前作を大きく下回る全米90位を記録したものの、1993年にエリック・ステイシー(B)が脱退。新たなメンバーを加えてツアーを継続するものの、同年にはバンド解散を発表することになります。
▼FASTER PUSSYCAT『WHIPPED!』
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