2018/01/15

FEAR FACTORY『DEMANUFACTURE』(1995)

FEAR FACTORYが1995年初夏にリリースした通算2枚目のスタジオアルバム。当時のHR/HMシーンはPANTERAを起点とするグルーヴメタルと、KORNなどのブレイクにより勃発したラップメタルに二分され、旧来のスラッシュメタルや王道スタイルは“オールドスークル”、あるいは時代遅れとして見放されていた時期した。

そんな中、そのどこにも属さないFEAR FACTORYはインダストリアルミュージックなどの要素を取り入れ、正確無比なビートの上でスラッシーなギターリフが刻まれ、さらに暴力的でどこか冷たさを持つボーカルが乗るという新たなスタイルを確立。その回答が、本作『DEMANUFACTURE』で示されていることは間違いないでしょう。

レイモンド・ヘレーラ(Dr)が生み出す機械的なドラミングはどこか打ち込み的で、どこか冷たさを感じさせる。なのに、聴いていると気持ち良くなってくる。そこにディーノ・カザレス(G)のヘヴィなギターリフが乗ることでモダンメタルの色合いが増すのですが、効果的に用いられるデジタルサウンドやシンセの音色、インダストリアルノイズなどの装飾により同時期に活躍したどのバンドとも違うカラーを打ち出すことに成功。バートン・C・ベル(Vo)のボーカルもただデスボイスでがなるだけでなく、淡々とメロディを歌ったりもする。そのどこか非人間的で感情を排除した歌唱法が先の機械的なビート&正確に刻まれるギターリフと相まって、より機械的な要素が強まるわけです。

この『DEMANUFACTURE』はコンセプトアルバムであり、機械文明に対する人間の怒りや闘争が描かれています。曲間がつながった大作志向ではないものの、歌詞で綴られている世界観はすべてひとつのテーマに沿って表現されているので、ぜひ国内盤(現在廃盤状態ですが)の対訳などを目にしつつ聴いてもらえるといいんじゃないかと。

本作の基盤となるのは、先にも書いたような機械的でひんやりしたモダンメタルなのですが、それ以外にも個性的な楽曲が多く含まれています。例えば「New Breed」あたりはのちのTHE MAD CAPSULE MARKETSに通ずるものが感じられるし(この曲名をバンド名にそのまま用いた国内バンドもいますし)、「Dog Day Sunrise」(80年代に活動したイギリスのメタルバンド、HEAD OF DAVIDのカバー)や「A Therapy For Pain」あたりからはゴシックメタルの香りもする。かと思えば「Body Hammer」のビートはエフェクトがかけられてマシンビートみたいで、MINISTRYとの共通点も見受けられる。いやいや、本当に面白い。

これが20数年前のアルバムなんだと考えると、いかに彼らが挑戦してきたサウンドが時代を先取りしたものだったかが伺えるのではないでしょうか。とにかく、今聴いても十分にカッコいいし、大きなブームは作れなかったかもしれないけど、いろんな形でフォロワーを生み出したという意味では、本作は90年代のメタルシーンを語る上で絶対に外せない1枚だと思います。



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投稿: 2018 01 15 12:00 午前 [1995年の作品, Fear Factory] | 固定リンク

2018/01/14

SOULFLY『SOULFLY』(1998)

1998年春にリリースされた、マックス・カヴァレラ(元SEPULTURA)による新バンドSOULFLYのデビューアルバム。SEPULTURAを実質追い出されたマックスは、そのSEPULTURAの直近作『ROOTS』(1996年)で試みたトライバルなヘヴィロックをさらに進化させた音楽をこのバンドで表現。つまり、傑作と言われる『ROOTS』の直系の続編と呼べる内容が本作ということができるわけです。

プロデュースは『ROOTS』と同じくロス・ロビンソンが担当。この頃にはKORNでひと山当て、さらにLIMP BIZKITのデビュー作なども当てて知名度を高めたあと。そのロス・ロビンソンとマックス本人の人脈もあり、本作にはFEAR FACTORYのバートン・C・ベル&ディノ・カザレス、LIMP BIZKITのフレッド・ダースト&DJリーサル、DEFTONESのチノ・モレノ、SKINDREDのベンジー・ウェッブなどヘヴィ/ラウドロックシーンの著名アーティストたちがゲスト参加しています。

オープニングの「Eye For And Eye」のアグレッシヴさに、本作は『ROOTS』以上に激しいアルバムになるんじゃないか?とワクワクすることでしょう。「Tribe」「Bumba」のようなトライバルなビートを用いた楽曲もあれば、「First Commandment」のようにダンサブルな楽曲もある。そしてバンド名を冠した「Soulfly」では民族音楽に接近したインストゥルメンタルナンバーを楽しめる。確実に『ROOTS』の延長線上にあるのですが、そことは違う香りもする。

例えば『ROOTS』がヘヴィさという点に重きを置いたとするならば、この『SOULFLY』はもうちょっと軽やかさが重視されているように感じます。それはテンポ的なこともそうだし、リズムの取り方ひとつにしても『ROOTS』にはないものを感じる。もちろんマックス以外のメンバーが違うんだから、そのへんが変わってくるのは当たり前の話なのですが、ここからまた新しい何かが始まる。そういう変化の兆しを強く実感させる序章的作品集なのかもしれません。

事実、本作を起点にSOULFLYはさらなる変化を遂げていきますし、気づけばSEPULTURAとは異なる道を進み始めていた。一方のSEPULTURAも新たなシンガーを得たことで以前とは異なる道を歩み始める。良い意味で、誰ひとりとして『ROOTS』を引き継ごうとしていない。つまり視点を変えると、マックスにとって本作は『ROOTS』を引きずりつつも決別しようとしている、そんな転換期の1枚とも受け取ることができるわけです。

『ROOTS』が出来すぎたアルバムだっただけに、そこからどう進化させていくか。その問いかけとひとつの回答が、このアルバムの中に示されているのではないでしょうか。リリースから20年経った今、このアルバムを聴くと改めてそんなことを考えてしまいます。



▼SOULFLY『SOULFLY』
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投稿: 2018 01 14 12:00 午前 [1998年の作品, Deftones, Fear Factory, Limp Bizkit, Sepultura, Soulfly] | 固定リンク

2016/01/10

祝ご成人(1995年4月〜1996年3月発売の洋楽アルバム20枚)

新成人の皆さん、おめでとうございます。昨年度に初めて実施したこの企画、今回も新成人の皆さんが生まれた年(学年的に1995年4月〜1996年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れがある作品を20枚ピックアップしました。どれも名盤ばかりなので、もし聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にお手にしてみてはいかがでしょうか。とは言いながらも大半が名盤中の名盤なので、聴いたことがあるものばかりかもしれませんが。

並びはすべてアルファベット順です。(2015年の新成人編はこちら


Alice in Chains『Alice in Chains』(Amazon)(レビュー

Ben Folds Five『Ben Folds Five』(Amazon

Björk『Post』(Amazon

Blur『The Great Escape』(Amazon

Bon Jovi『These Days』(Amazon)(レビュー

The Chemical Brothers『Exit Planet Dust』(Amazon

Fear Factory『Demanufacture』(Amazon

Foo Fighters『Foo Fighters』(Amazon)(レビュー

The Fugees『The Score』(Amazon

Garbage『Garbage』(Amazon

King Crimson『Thrak』(Amazon

Oasis『(What's the Story) Morning Glory?』(Amazon

Pulp『Different Class』(Amazon

Queen『Made in Heaven』(Amazon)(レビュー

Red Hot Chili Peppers『One Hot Minute』(Amazon)(レビュー

Reef『Replenish』(Amazon

Sepultura『Roots』(Amazon)(レビュー

The Smashing Pumpkins『Mellon Collie and the Infinite Sadness』(Amazon

Teenage Fanclub『Grand Prix』(Amazon

The Wildhearts『P.H.U.Q.』(Amazon)(レビュー


残念ながらセレクトから漏れた作品も多いです。以下ざっと候補を羅列します。

Alanis Morissette『Jagged Little Pill』
Anthrax『Stomp 442』
The Beatles『Anthology 1』
The Boo Radleys『Wake Up!』
Bruce Springsteen『The Ghost of Tom Joad』
The Charlatans『The Charlatans』
D'Angelo『Brown Sugar』
David Bowie『Outside』
In Flames『The Jester Race』
Michael Jackson『HIStory: Past, Present and Future, Book I』(レビュー
Nine Inch Nails『Further Down the Spiral』
Ozzy Osbourne『Ozzmosis』(レビュー
Paul Weller『Stanley Road』
The Rentals『Return of the Rentals』
Ron Sexsmith『Ron Sexsmith』
Sonic Youth『Washing Machine』
Supergrass『I Should Coco』
Terence Trent D'Arby『Terence Trent D'Arby's Vibrator*』
Terrorvision『Regular Urban Survivors』
Underworld『Second Toughest in the Infants』(レビュー
White Zombie『Astro-Creep: 2000』

こうやって振り返ると、1995年から1996年初頭ってブリットポップの最盛期だったんですね。1995年3月にはElasticaやGeneのアルバムも発表されてるし、1996年後半になるとKula Shakerの1stもリリースされますし。やっぱり1995年夏のBlur vs Oasisの直接対決がピークでしたね、いろんな意味で。

あ、Underworldをあえて選外にしたのは、日本盤のリリースが1996年6月だったから。海外では3月発売ですが、その後の「Born Slippy」のヒットなど含めて考えると、このアルバムは1996年から1997年の作品かなと思いまして。来年はマストかな。

メタルの世界はグランジがひと段落したものの、ポストグランジ的サウンドのバンドが増えつつあり、前年からのMotley Crue、Dokkenの失敗など、あまり芳しくない状況でした。そんな中、1994年のKornデビューを機にグルーヴ感のあるヘヴィロックが台頭し始めます。前年デビューのMachine Headもその1つですね。Sepulturaは前作『Chaos A.D.』でのシフトチェンジから、ブラジル音楽のルーツを取り入れた傑作『Roots』で活動のピークを迎えるのも、1996年初頭のお話。Fear Factoryのようなデジタル要素を取り入れたヘヴィバンドも人気を集め始めたのも印象に残ってます。同時期に国内ではTHE MAD CAPSULE MARKETSが『4 PLUGS』をリリースしたのも、海外の動きとリンクしていて興味深いです。

ちなみに日本国内ではこの頃、ブルーハーツの解散(6月)やUP-BEATの解散(8月)、光GENJI(光GENJI SUPER5)の“卒業”(9月)、Winkの活動停止(96年3月)といった出来事がありました。いわゆるTKサウンドがチャートを席巻し、MY LITTLE LOVERやglobeがデビューしたのもこの頃でした。

投稿: 2016 01 10 12:00 午前 [1995年の作品, 1996年の作品, Alice in Chains, Ben Folds, Björk, Blur, Bon Jovi, Chemical Brothers, The, Fear Factory, Foo Fighters, Fugees, The, Garbage, King Crimson, Oasis, Pulp, Queen, Red Hot Chili Peppers, Reef, Sepultura, Smashing Pumpkins, Teenage Fanclub, Wildhearts, The, 「20年前」] | 固定リンク