FEAR FACTORY『THE INDUSTRIALIST』(2012)
2012年6月5日にリリースされたFEAR FACTORYの8thアルバム。日本盤は同年5月30日に先行発売。
ディーノ・カザレス(G)が復帰して制作された『MECHANIZE』(2010年)から2年4ヶ月ぶりの新作。前作はバートン・C.ベル(Vo)、ディーノ、バイロン・ストラウド(B)、ジーン・ホグラン(Dr)という布陣で制作されたものの、バイロンとジーンが相次いで脱退。新メンバーとしてマット・デヴリーズ(B)、マイク・ヘラー(Dr)が加入するものの、次作のレコーディング自体はバートンとディーノの2人体制で進められました。
もともと正確無比でマシーナリーなリズムセクションが魅力のFEAR FACTORYですが、本作ではそのドラムトラックをすべてプログラミング(打ち込み)で対応。よって、機械的な冷徹さがより極まる結果となり、前作でのスペーシーかつエクストリームな作風がより強まった内容に仕上がりました。
オープニングトラック「The Industrialist」の長く仰々しいイントロダクションにジラされつつ、いざリズムセクションが入ってくるとそのひんやりとしたマシーンビートとザクザクしたギターリフに心をエグられ、バートンのパワフルなボーカルに感情を奪われる。これぞFEAR FACTORYと言える王道の1曲ではないでしょうか。
以降は緩急を付けつつ、いかにも彼ららしい楽曲が続きます。インパクトという点においては1曲目以降はどんどん弱まっていく気もしますが、「God Eater」のような“NINE INCH NAILS meets インダストリアルメタル”みたいなフックの効いた曲も含まれており、衝撃度は前作よりも若干劣るかもしれませんが、視野を広くしてみると“ポストパンクを通過したインダストリアル/オルタナティヴメタル”の良質な作品と受け取ることもできるのではないでしょうか。
機械的なビートならではの軽さと、低音よりも中音域を強調したギターサウンドが織りなす、王道ヘヴィメタルとは一線を画する質感は「これぞオルタナティヴメタル」と呼べるもの。実はメタルメタルした音が苦手なリスナーにも受け入れられる可能性を秘めた1枚ではないでしょうか。個人的にはFEAR FACTORY究極のアルバムとして挙げたい傑作です。
▼FEAR FACTORY『THE INDUSTRIALIST』
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