PAPA ROACH『EGO TRIP』(2022)
2022年4月8日にリリースされたPAPA ROACHの11thアルバム。日本盤未発売。
前作『WHO DO YOU TRUST?』(2019年)から3年3ヶ月ぶりの新作。近年の彼らにしては比較的長めのスパンですが、とはいえその間にメジャーデビュー作『INFEST』(2000年)収録曲をスタジオライブで再現したアルバム『20/20』(2020年)やベストアルバム第2弾『GREATEST HITS VOL. 2: THE BETTER NOISE YEARS 2010-2020』(2021年)といったアイテムもあったので、実は毎年何かしら作品を発表しているんですよね。
さて、オリジナル作品として久しぶりとなった今作はNew Noize Records移籍第1弾アルバム。ミクスチャーロック/ニューメタル路線へと回帰した過去2作の延長線上にありながらもミクスチャー色をより強めた、躍動感に満ちた1枚に仕上がっています。ロックバンドというスタイルにこだわることなく、曲によっては打ち込みやループを使用。FEVER 333のジェイソン・エイロン・バトラー(Vo)やラッパーのスエコをフィーチャーした「Swerve」や続く「Bloodline」、「Stand Up」あたりは完全にニューメタルの枠から飛び越え、モダンなラップコア、あるいはモダンポップ寄りのテイストを強めており、そのフットワークの軽さは相変わらずだなと感心させられます。
その一方で、タイトルトラック「Ego Trip」や「Unglued」、アルバム冒頭を飾る「Kill The Noise」などではロックバンド然としたアンサンブルを提供しますが、その質感や音像はかなり現代的なもので、往年のニューメタルとは一線を画するものと言えるでしょう。しかし、それこそが常に“時代と添い寝”してきた彼ららしくも映り、ラップパートが近作よりも多く感じられるあたりも「この時代にどんな音が求められているか?」と読み取った結果なのかもしれません。
しかし、「この時代にどんな音が求められているか?」と「この時代にPAPA ROACHにどんな音が求められているか?」は似て非なるもので、今の彼らにここまで“行き切った”音をリスナーは求めているのかどうかは少々疑問です。作品自体の完成度は非常に高く、最初から最後まで安心して楽しめるものの、そこに関しての乖離が少々気になってしまうんですよね。特にロックが求められていないアメリカにおいて、本作はチャート的にも惨敗しましたし(Billboard 200では過去最低の115位)。
すべての楽曲が2〜3分程度というコンパクトさは前作同様、楽曲のバラエティ豊かさも相変わらず幅広いものがあり、彼らならではのミクスチャー感が思う存分味わえる本作は、日本のロックリスナーにこそ伝わってほしい1枚かもしれません。そんな作品が日本リリースされていないという不幸もありますが、まずはサブスクを通じて少しでも広まってほしいと願っています。
▼PAPA ROACH『EGO TRIP』
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