2001/11/16

FIGHT『WAR OF WORDS』(1993)

今回のテーマは「モダンヘヴィネス/ラウドロック好きにもアピールするHM/HR」ということで、元JUDAS PRIESTのボーカリスト、ロブ・ハルフォードがバンド脱退後に結成したFIGHTの、'93年に発表したファーストアルバム「WAR OF WORDS」を取り上げたい。

正直、今回のテーマで取り上げるべき作品は山程ある。今後、第2弾、第3弾としてこのテーマを続けると思うが、まず最初に「ヘヴィメタルの象徴」というべきシンガーが何故モダンヘヴィネス路線へと進んでいったのか‥‥この辺を考えてみると、非常に面白いのではないだろうか?

'90年秋にJUDAS PRIEST史上('90年当時)最もアグレッシヴな作品「PAINKILLER」をリリース、起死回生を果たした。若手メタルバンド(MEGADETHやPANTERA等)とツアーに回ったり「OPERATION ROCK'N'ROLL」というパッケージツアーではALICE COOPERやMOTORHEAD等と全米をサーキットしたりして、約1年近くに及ぶ長期ツアーを成功させた。

'92年頃、とある映画のサウンドトラックにロブはPANTERAのメンバーをバックに"Light Comes Out Of Black"というモダンヘヴィネス寄りの楽曲を発表。同じ頃、PRIESTはファストナンバーを集めたベスト盤の制作に乗り出す‥‥のだが、どこでどうなったか、'93年に入ってロブがソロアルバムを作っていること、そしてそれがバンド「FIGHT」へと変化していくこと、更にPRIEST脱退へと繋がっていく。

そうして出来上がった作品が、この「WAR OF WORDS」というアルバム。先のPANTERAとの共演を思い浮かべる、非常に当時のモダンヘヴィネス勢に影響を受けた作品となっている。勿論、そうはいってもそこはメタルゴッドの事、冒頭からいきなりハイトーンボイス炸裂の"Into The Pit"からスタートし、そのままノリのいい名曲"Nailed To The Gun"へと流れていく(この2曲は最近のHALFORDのツアーでも演奏されているので、自分のキャリアの中でも残すべき名曲だという思いがあるのだろう)。その後は、ミディアム~スローテンポの重い曲が大半を占める。

'90年代前半のロックシーンを支えたのは、METALLICAやPANTERAといったメタル寄りのラウドロック勢と、NIRVANAやPEARL JAM、SOUNDGARDEN、ALICE IN CHAINSといったシアトルからのグランジ組だったのはご存じだろう。'90年前後までのロックシーンを支えてきたHM/HRバンドは時代遅れとなり、次々と契約を切られるか、音楽性のシフトチェンジを強いられる。そんな中、IRON MAIDENを脱退したブルース・ディッキンソンはソロになって「SKUNK WORKS」というグランジ・プロジェクトを始めたり、再結成したDOKKENはDOORS的な色合いを見せつつも、実はPEARL JAMのHM版だったという復活を遂げる(しかもそこそこ成功してしまう)。MOTLEY CRUEはボーカルが代わったことをいいことに、「DR.FEELGOOD」から大衆性を薄めたハードコアなヘヴィロックを我々に打ち出す‥‥そう、一時代を築いたメタルバンド達は皆、生き残る為に必死だったのだ。

しかし、このロブの音楽的進化(あえてこう呼ばせてもらう)には、そういう「必死さ」「切羽詰まり感」があまり感じられなかった。むしろ「PAINKILLER」を更に一歩押し進めた/モダンにしたような魅力さえ見え隠れする。これはコアなPRIESTファンには否定されそうだが‥‥もしロブがPRIESTを脱退していなかったら、あの時期にJUDAS PRIESTは「WAR OF WORDS」に比較的近い作風のモダンヘヴィネス系アルバムを作っていたのではないだろうか?その後のPRIESTが「PAINKILLER」という名作から7年も経ってから「JUGULATOR」という、時代遅れスレスレのモダンヘヴィネス系アルバムを発表したことからも、そのことが伺えるような気がしてならない(逆に「JUGULATOR」というアルバムは、発表があと3年早かったらきっと名盤と呼ばれていたのかもしれない)。

ロブという人は、周りのブレイン(パートナー)さえしっかりしていれば、かなりの実力を発揮するアーティストだと思うのだ。PRIESTしかり、FIGHTのファーストしかり、今回のHALFORDしかり。しかし、FIGHTはセカンドアルバム「A SMALL DEADLY SPACE」をリリース後に空中分解してしまう。ファーストでのイニシアティヴを握っていたのがロブ本人で、周りの若手メンバーはそれをサポートする形で出来たのがあの名盤だった。しかし、セカンドではそれが逆転してしまった気がする。若手が引っ張る形でロブはそれに自分の色をつける‥‥結果出来たのが、ヘヴィでスロウな曲が中心の、訴えるものが少ない中途半端な作品だった。その後ロブは、トレント・レズナー(NINE INCH NAILS)のレーベルからTWOというバンドでデビューするものの、ここでもボブ・マーレットという人間が出しゃばったため、どの層に訴えているのかが不明の中途半端な1枚を残して解散となる(ここのギタリストが、後にMARILYN MANSONに加入することとなるジョン・5だということはご存じだろうか?)ロブ自身にそういうモダンロックへの憧れのようなものが強くあるのだと思うし、「TURBO」でシンセギターを導入したり、「RAM IT DOWN」「PAINKILLER」で早い曲を多めに入れたりスラッシュ寄りになったりという時代感覚は、ロブのみならず他のPRIESTのメンバーにも兼ね備わってるものなのかもしれない。ただ、それが若手よりもちょっとだけずれているだけで(笑)。いや、その「ズレ感覚」が結果オーライとなって、名作を作ってこれたのだと思うのだが。

昨今のヒップホップ寄りモダンヘヴィネスとは違うが、PANTERAやその手のハードコアな路線が好きな人に、間違いなくアピールする作品だと思う。個人的にはPRIEST脱退後のロブの仕事の中ではHALFORDのファーストとどっこいどっこいで好きな作品だ(音楽性が違うため、どっちの方が好きとは選べない)。



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投稿: 2001 11 16 04:15 午後 [1993年の作品, Fight, Judas Priest] | 固定リンク