FIREHOUSE『HOLD YOUR FIRE』(1992)
1992年6月16日にリリースされたFIREHOUSEの2ndアルバム。日本盤は同年6月13日に先行発売。
「Don't Treat Me Bad」(全米19位)、「Love Of A Lifetime」(同5位)、「All She Wrote」(同58位)といったヒットシングルを複数生み出し、アルバム自体も最高21位/ダブルプラチナム(200万枚)を記録したデビューアルバム『FIREHOUSE』(1990年)から1年10ヶ月ぶりの新作。世の中が湾岸戦争を機に不景気に突入し、それ以前はメインストリームにいたHR/HMからグランジなどのオルタナティヴロックへと注目が移る中、新人ハードロックバンドとしては大健闘したのではないでしょうか。
そんなヒット作の恩恵を受け、まさに“二匹目のドジョウ”を狙い同じプロダクションで制作された2作目。プロデューサーも引き続きデヴィッド・プラッター(DREAM THEATER、NIGHT RANGER、ARCADEなど)が担当し、このバンドらしい良質なUSハードロック感が追求されています。
例えば、「Don't Treat Me Bad」でのポップさは「Sleeping With You」(全米78位)に、「Love Of A Lifetime」での王道バラードは「When I Look Into Your Eyes」(同8位)、「All She Wrote」でのマイナー感が強い正統派ハードロック感は「Reach For The Sky」(同83位)へとアップデートされている。グランジ全盛期ということもあり、シングル的には前作ほどのヒットは叶いませんでしたが、それでも楽曲の良質さもあってこの時代のわりには好成績を残したのではないでしょうか。
アンセム感の強いアリーナロック「Rock You Tonight」、グルーヴィーなハードロック「You're Too Bad」や「Get In Touch」、パーティ感の強い「The Meaning Of Love」や「Mama Didn't Raise No Fool」、1992年という時代を考えると若干古臭さが否めない80's USハードロックな「Talk Of The Town」など、正統派で王道感の強いハードロックは、リリースがあと5年早かったらバカ売れしていたんだろうなと思わせるものばかり。ですが、これを1992年という“HR/HM暗黒時代”に発表したことに意味があったわけで、当時はNIRVANAやPEARL JAM、ALICE IN CHAINSと並行して聴いていた記憶があります。グランジの「グ」の字も感じられないほどに清々しいサウンドは、気分転換にはちょうど良かったのかな。
そして、アルバムラストを飾るのが前作にはなかったタイプのマイナーバラード「Hold The Dream」。楽曲のタイプ的には「Reach For The Sky」や「Hold Your Fire」の流れを汲むものですが、その手の作風を泣きのバラードに置き換えることで、非常に新鮮な印象を受けたことをよく覚えています。この曲のおかげで、ちょっとだけダークでしっとり終えられたのは1992年という時代ならだったんでしょうかね。前作の延長線上にありながらも、ここで一捻りしてくれたおかげで単なる焼き直しで終わらずに済んだと思います。
DREAM THEATER『IMAGES AND WORDS』(1992年)同様、ここでもデヴィッド・プラッター特有のペタペタしたドラムサウンドが(よくも悪くも)クセの強さを発揮。若干好き嫌いが分かれてしまいそうな気もしますが、大きい音で聴くと意外としっくり来るものがあるので、スマホなどイヤホンで聴くよりもスピーカーを通じて爆音で聴いてみることをオススメします。
▼FIREHOUSE『HOLD YOUR FIRE』
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