2018年5月26日 (土)

FIREHOUSE『3』(1995)

90年代初頭のグランジムーブメントによりメジャーシーンから一気に駆逐された、80年代後半から90年前後にデビューしたHR/HMバンド。そんな中、1990年にメジャーデビューしながらも90年代後半までかろうじて生き残ったのが、今回紹介するFIREHOUSE。彼らはデビューアルバム『FIREHOUSE』が全米21位、200万枚を超えるセールスを記録し、続く2ndアルバム『HOLD YOUR FIRE』(1992年)も全米23位、50万枚以上も売り上げまずまずの成功を収めています。

前作から約3年ぶりとなる3rdアルバム『3』は、グランジムーブメントもひと段落し始めた1995年4月に発売。アルバム自体は最高66位と過去2作には及びませんが、シングルカットしたバラード「I Live My Life For You」は全米26位とスマッシュヒットを記録。過去の名バラード「Love Of A Lifetime」(全米5位)、「When I Look Into Your Eyes」(全米8位)にも匹敵する1曲となり、ピュアHR/HMに厳しい時代を生き抜いたわけです。

では、アルバム時代もそんなピュアHR/HMなのかと言われると……グランジの影響が少なからず感じられる1枚なのです。

オープニングの「Love Is A Dangerous Thing」こそダイナミックなハードロックで、過去2作の作り込まれた作風とは異なる、時代に合わせたかのような生々しいサウンドメイキングでリスナーを良い意味で驚かせてくれます。が、続く「What's Wrong」は受け取り手によっては評価の分かれる、グランジ的なヘヴィチューンで別の意味で驚かせてくれるのです。このリフの刻み方は完全に“あっち側”の“それ”ですもんね。

でもね、アルバムの流れで聴くとそこまで悪くない……むしろ良いアクセントになっているんじゃないでしょうか。だって、“いかにも”な“それ”はこれ1曲だけなのですから。

そのほかの楽曲は、過去2作とはまた違ったタイプのアメリカンハードロック。とはいえ、聴けばそれがFIREHOUSEの楽曲だとちゃんとわかるものに仕上げられているのだから特に問題なし。「Trying To Make A Living」とか「Temptation」みたいなミドルテンポの楽曲は以前の彼らにもあったタイプだし、「Two Sides」は日本人が好みそうなメロを持った歌謡メタル系な1曲だしね。「I Live My Life For You」のほかにも「Here For You」「No One At All」というアコースティックバラードもあるし、HR/HMファンには「Get A Life」といったアップチューンも存在する。

あれ、もしかして過去2作よりも良いんじゃね?と感じる人も少なくないんじゃないでしょうかね。事実、僕は彼らの初期3作中で本作がもっとも好きなんですよね。サウンドの質感や楽曲のバラエティ含め、非常に好みのど真ん中を突いてくるので(1stアルバムは楽曲こそ完璧だけど、あのサウンドメイキングがどうにも苦手で)。

グランジの影響下にあるメタルやその色を取り込んで生き残ろうとしたバンドの作品は、当時こそクソだの邪道だのとバカにされましたが、あれから20年以上経った今だからこそひとつのHR/HM作品としてしっかり評価してもいいんじゃないか。そう思う今日この頃です。



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投稿: 2018 05 26 12:00 午前 [1995年の作品, Firehouse] | 固定リンク

2017年3月16日 (木)

FIREHOUSE『FIREHOUSE』(1990)

WARRANTと同じく、ギリギリHR/HMブームの恩恵を受けることができたのが、1990年に本国デビューを果たしたアメリカの4人組バンドFIREHOUSE。彼らのデビューアルバム『FIREHOUSE』は同年8月にリリースされましたが、結成自体はその前年1989年のこと。意外とトントン拍子でデビューまでこぎ着けたんですね。つまり、ライブでの生え抜きということではなく、単純に楽曲が認められたということなのかもしれません。

ところが、ここ日本でのCDデビューはそこから半年以上経った1991年4月のこと。そう考えると、デビュー時のFIREHOUSEはそこまで好待遇というわけではなかったのかな。それに、本国と日本での推し曲のタイプがここまで違うか?というのも興味深いバンドだったし。日本ではマイナーメロHR「All She Wrote」がシングルカットされ、本国ではアーシーさも感じられるアメリカンロック調の「Don't Treat Me Bad」をシングル化。アルバムジャケットも海外盤の“美女が放火すると言わんばかりに火のついたマッチ棒を持つ”デザインから、日本オリジナルのもの(メラメラと燃える炎の中にメンバー4人のシルエットを浮かび上がらせたもの)に変更されています。

で、日本デビューと前後して「Don't Treat Me Bad」はBillboardチャートぐいぐい上昇して、全米19位という記録を残します。これが正しい選択だったということなんでしょうね。ちなみに「All She Wrote」ものちにアメリカでシングルカットされましたが、58位と低調な結果で終わっています。

続く2ndシングルは名バラード「Love Of A Lifetime」。この曲が全米5位という大ヒットとなり、アルバムも最高21位、計200万枚を売り上げる、デビュー作としては上出来な結果を残します。

「Don't Treat Me Bad」のようにアコースティックギターをうまく取り入れた土着的な楽曲は、この時点ではFIREHOUSEの軸ではなかったのですが、のちの“アンプラグド”ブームと結びついてアコースティックアルバムを出すまでにつながっていきます(これが形となるにはもう数年かかるのですが)。が、やはりこのバンドの強みは「All She Wrote」や「Overnight Sensation」で聴ける繊細なメロと、「Rock On The Radio」「Snake & Tumble」「Don't Walk Away」などで味わえるワイルドでダイナミックなハードロックサウンドだと思います。その2面性をしっかり使い分けることができるからこそ、「Don't Treat Me Bad」や「Love Of A Lifetime」のような楽曲が映えるわけです。

また、C.J.スネア(Vo)のクセの強いハイトーンボイス、ところどころで自己主張しまくりなビル・レヴァティー(G)のギタープレイも、個性の強さのわりに曲の邪魔をしていない。それどころか、曲の良さに拍車をかけているんだから、さすがとしか言いようがないわけです。本当、(WARRANTとは別の意味で)よくできたデビューアルバムだと思います。



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投稿: 2017 03 16 12:00 午前 [1990年の作品, Firehouse] | 固定リンク