FIVE FINGER DEATH PUNCH『AFTERLIFE』(2022)
2022年8月19日にリリースされたFIVE FINGER DEATH PUNCHの9thアルバム。日本盤未発売。
全米8位を記録した8thアルバム『F8』(2020年)から2年半ぶりの新作。前作発表前後にはコロナ禍に突入してしまい、ヨーロッパツアー以降は足止めを喰らってしまった彼ら。クリス・ケール(B)にインタビューしたタイミング(2月下旬)は日本でもその影響が強くなり始めた頃でしたが、現地にいたクリスはそのへんの状況が疎かったことをよく覚えています。
『F8』から8ヶ月後には、Better Noise Music移籍前の音源および未発表曲で構成されたベストアルバム第2弾『A DECADE OF DESTRUCTION VOLUME 2』(2020年)が早くも発売されますが、チャート的には最高130位と大きな成功を収めることができませんでした。そして時を同じくして、しばらくツアーから離れていたジェイソン・フック(G)がバンドを正式に脱退し、それまでジェイソンの代役を務めてきたアンディ・ジェイムズが正式加入することがアナウンスされました。2018年には初代ドラマーのジェレミー・スペンサーも脱退しており、ここ2作は連続してメンバーチェンジが起こってしまっています。
そんなピンチを経て制作された今作は、2作目『WAR IS THE ANSWER』(2009年)からすべての作品を手がけたケヴィン・チャーコ(オジー・オズボーン、PAPA ROACH、DISTURBEDなど)が引き続きプロデュースを担当。もは鉄壁の組み合わせであると同時に、多少マンネリにならないかとの危惧もあったのですが、そんな心配無用の1枚に仕上がっています。
基本路線はここ数作の延長線上にあるメロディアスなモダンメタルなのですが、楽曲のバラエティ豊かさやが過去イチと言えるほどカラフルで、かつそういった楽曲群の配置(曲順)も非常に計算されたものがある。結果として、彼らの全カタログ中もっともスムーズに聴けて楽しめる内容になっています。
オープニングを飾る「Welcome To The Circus」の王道スタイルはもはや手垢の付いたものかもしれませんが、それでもキャッチーなメロディと相まって最後まで楽しく聴けてしまう。続くタイトルトラック「AfterLife」では彼ららしい“枯れた”要素を織り交ぜたミドルテンポのニューメタル、さらに「Time Like These」は前作で試みた実験と初期からの男臭さをミックスした哀愁味溢れるミディアムバラード。この3曲だけでもかなり変化に富んでいますが、さらに4曲目に前のめりなアップチューン「Roll Dem Bones」で攻めまくり。このビート感、気持ちいいったらありゃしない。
その後ごっついビート感で聴き手を打ちのめすヘヴィチューン、デジタル要素を前面に打ち出したインダストリアルチックなメタルナンバー、90年代のグルーヴメタルを現代的に消化したノリの良い曲、スロー/ミディアムでじっくり聴かせる曲と振れ幅の大きな流れで、リスナーのハートを掴んで離しません。後半に入るとバラード寄りの楽曲が増えることで「ちょっとヤワになった?」と感じる方もいるかもしれませんが、個人的にはそんな印象皆無で(メロディアスなこともあって、よりそう感じてしまうのかな?)、最初から最後まで緊張の糸が途切れることなく楽しめましたし、何度リピートしても飽きることもまったくありません。
前作のようにデラックス版のみボーナストラック収録みたいな追加要素も皆無で、全12曲/47分トータルバランスもベスト。確かに初期〜中期にあった“えげつないヘヴィさ”は薄まってしまったものの、これを先の「ヤワになった」と受け取るか、あるいは「バンドとしての成熟」と受け取るかで評価も大きく変わるのかな。個人的には間違いなく後者であり、現時点での彼らの入門編に最適な1枚だと断言しておきます。
▼FIVE FINGER DEATH PUNCH『AFTERLIFE』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / 海外盤カセット / MP3)