2004年にもなって、今更FLATBACKERはないだろ!?、と我ながら思うんですが、久し振りにCD棚から引っぱり出したが最後。こうなったら取り上げるしかないよな、うん‥‥
多分このサイトを観てる若い子の中で、このバンドを知ってるって人は九割九分いないと思いますが‥‥だからこそ、ね。改めてこのバンドと初めて出会った時の衝撃について、語ってみようかな、と思いまして。もう20年近くも前の話ですよ‥‥
FLATBACKERというバンドの特異性は、結局2004年になった今でも、特に目を見張るものがあると思います。所謂「ジャパメタ」の範疇で語られることの多い彼らですが(後に渡米し、KISSのジーン・シモンズのプロデュースで「E.Z.O」と改名して普通のハードロックやってましたからね)、このメジャー・ファーストアルバム「戦争 -ACCIDENT-」はそういった枠に収まらない、とにかく普通のヘヴィメタルやハードロックではなかったわけですよ。そう、前例がなかったから扱い難かった。何時だってそうですよ。DEAD ENDだって、そのサウンドが進化していけばいく程「もうHM/HRじゃない」と敬遠されていったわけですから‥‥
ぶっちゃけ、彼らはGASTANK辺りと同じ枠に括られるべき存在だったのかもしれません。が、そこに至るまでの時間が足りな過ぎたり、周りの環境がよくなかったり‥‥等々。理由はいくらでも考えられますが、まずいきなり大手のメジャーと契約してしまったことがいけなかったのかな、と。彼らはメジャーデビュー前に「皆殺し」と題されたデモテープを'84年頃に発表しています。自分がこの音源を聴いたのは随分後になってからなんですが、このデモテープにあった残虐性だったりアナーキーさが、このメジャー盤ではかなり抑えられてるんですよね(そう、これでもかなり抑えられてるんだわ)。それは「言葉使い/表現の問題」だったり、デモ特有の生々しさだったり、そういったものが削ぎ落とされてしまったからなんでしょうけど‥‥
じゃあ、このメジャー盤がそんなに劣るものなのかというと、全然そんなことはないわけで。だって俺、中学生の頃初めてこのアルバムを聴いた時、「なんじゃこりゃ!?」ってひっくり返ったもん(いや、マジで)。「これってハードロックなの? メタルなの??」って自問自答しつつも、結局答えは出ず。けど聴けば聴く程ハマっていく自分がいてね‥‥ムシャクシャした時、部屋の窓全部閉め切って、大音量で聴いたね、これを。当時、ちょっと複雑な家庭事情だったもので、かなりアレだったんですが、そんな鬱憤を晴らすのにこのアルバムやMETALLICAやSLAYERなんかをよく聴いた記憶が。けど、それらスラッシュバンドとも全然違う色を持った存在だったわけで。
スピードメタル、スラッシュ、パンク、ハードコア‥‥そういった要素全てを飲み込んだのが、この「戦争 -ACCIDENT-」というアルバムであり、同時にそれこそがFLATBACKERの持ち味だったんだよね。誰にも似てない・真似出来ないボーカル、単純にカッコいいギターリフ、ソロになるとメロディアス且つクレイジーに暴れまくる、そしてボトムをしっかり固めるリズム隊。歌詞は今聴くとさすがに恥ずかしさ炸裂なんだけど、あの当時はどのジャンルもこんな感じだったよなぁ‥‥とか妙に思い出に浸ったり。とにかく攻め、攻め、攻めの1枚。ミディアムヘヴィの曲でも守りに入ることなく、ひたすら攻め。"なだれ" って曲が収録されてるけど、正にそんな印象を受ける楽曲ばかり。スピード感ある曲でも、雪崩が目の前に迫って来てるのにスローモーションでそれらの光景が見えているような、恐怖感と高揚感と冷静さが同居するサウンドとでもいいましょうか。爽快感とかそういった類の世界とはかけ離れた、この世のドロドロ・ギトギトした面をそのまま歌詞/サウンドにしたのがFLATBACKER。だからこそ、惹かれたのかな‥‥
リリースから20年近く経ったけど、そんなに古くさく感じなかったのが意外だったなぁ。そりゃサウンド・プロダクションとか歌詞の細部に'80年代特有の匂いを感じるものの、曲の格好良さとか全体のイメージなんかはむしろ今の方がしっくりくるんじゃないかな、なんて思うんですが‥‥勿論、今では彼らよりもハードで、コアで、完成されたバンドは腐る程いるわけですが‥‥そう、未完成だったからこその格好良さがここに残されてるわけですよ。
いあぁ、マジで今の10代、20代前半の子達がどういった反応を示すのか、気になるよな。
最後に。ボーカルとドラムはバンド解散('90年頃)後にLOUDNESSに加入、暫く一緒に活動してましたが、'90年代末にLOUDNESS自体がオリジナルメンバーで復活したため、脱退。ドラムはその後ANTHEMに加入、現在に至ります。ベースは‥‥現在、FLATBACKER ~ E.Z.Oが所属していたレコード会社、ビクター・エンターテイメントでA&Rとして普通に働いています。しかも「くるり」の担当だったりするわけですが‥‥ギターは渡米したまま、現地でグリーンカードを取得、音楽以外の仕事をしているという噂です。
さぁ、世のくるりファン、是非聴いてみて!(嘘だから! 普段くるり聴いてるような子が聴いたら絶対に引くからね! そんな音だからね! 注意してね!!)
▼FLATBACKER『戦争 -ACCIDENT-』
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