2017/05/11

FLEETWOOD MAC『TANGO IN THE NIGHT』(1987)

FLEETWOOD MACというと、僕らの世代にとっては「昔『噂』というアルバムがアメリカでバカ売れしたポップグループ」という程度の印象しかなく、いわば「ロックやポップスの教科書に載るような、過去の偉人」的な扱いでした。しかし、ちょうど中学生の頃にスティーヴィー・ニックスが『ROCK A LITTLE』(1985年)を発表し、そこから「Talk To Me」「I Can't Wait」といったシングルヒットが生まれたことから当時よく耳にしていました。当然アルバムもレンタルで聴いた記憶があります。

そのスティーヴィーがFLEETWOOD MACの一員だということ、そして当のFLEETWOOD MACが1987年にアルバムをリリースするということをなんとなく把握しており、そんな中リリースされたのが彼らにとって通算14枚目のアルバム『TANGO IN THE NIGHT』でした。

先行シングル「Big Love」の、バンドサウンドというよりもどこかデジタル色の強い作風はもはや当時の流行なので今さら批判するつもりはありません。この軽快な楽曲が全米チャートTOP10入りし、MVをよく目にするようになったことで興味を持ち、結果アルバムを聴くきっかけをくれたのですから。

そもそもスティーヴィーがボーカルのはずなのに(という当時の認識)、この「Big Love」では男性(リンジー・バッキンガム)が歌い、スティーヴィーは吐息の掛け合いのみ。どういうこと?と思いながらアルバムを聴くと、さらにクリスティン・マクヴィーという3人目のシンガーまで存在することを知る。アルバムはリンジーの歌う「Big Love」から始まり、スティーヴィーがメインボーカルの「Seven Wonders」、クリスティンが歌う「Everywhere」と曲ごとにシンガーが入れ替わる体制だったのです。しかも曲調もシリアスなものからユルいポップスまで、リードシンガーによってソングライターが変わるわけですから、曲調もさまざま。なんとなくオムニバスアルバムを聴いてるようで、ひとつのバンドの作品を楽しむという感覚は皆無だった気がします。

ただ、当時高校生だった自分には(そしてMTVで育った世代にとっては)この作風は意外と良かったのかもしれません。事実、このアルバムを当時何度もリピートしたわけですから。先の冒頭3曲はシングルカットされ、それぞれヒットを記録。さらにクリスティンが歌う「Little Lies」もトップ10ヒット、リンジーが歌う「Family Man」も小ヒットとなり、結果として「ヒットシングルのコンピレーションアルバム」と呼ぶにふさわしい内容になってしまったのですから。

もちろんそれ以外にも80年代的なドラムビートを軸にした、どこか宗教的なカラーの「Caroline」、ヘヴィさを前面に打ち出した「Tango In The Night」、歪みの効いたギターが気持ち良いアップチューン「Isn't It Midnight」、スティーヴィーの嗄れた歌声とアコースティックギターの音色の相性抜群な「When I See You Again」、本編ラストを飾る軽やかなポップチューン「You And I, Part II」など良曲が豊富。ポップさを軸にしつつも、哀愁味あふれるリンジーのギターをフィーチャーした楽曲も多く、そのへんも聴きどころのひとつかなと。

先日、リリース30周年を記念したデラックス盤が発売され、久しぶりに本作を聴き返してみたら、思いのほか今の自分でも楽しめる内容だったので、ここで取り上げてみようかと思った次第です。個人的にはデラックス盤のアルバム未収録曲や各曲のデモトラックも存分に楽しめました。ちなみに日本盤は5月24日発売ですので、対訳や解説も楽しみたい人はもう少しの辛抱。



▼FLEETWOOD MAC『TANGO IN THE NIGHT』
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投稿: 2017 05 11 12:00 午前 [1987年の作品, Fleetwood Mac] | 固定リンク