FLOTSAM AND JETSAM『BLOOD IN THE WATER』(2021)
2021年6月4日にリリースされたFLOTSAM AND JETSAMの14thアルバム。日本盤未発売。
新たなドラマーにケン・メアリー(HOUSE OF LORDS、IMPELLITTERI、BAD MOON RISINGなど)を迎えた前作『THE END OF CHAOS』(2019年)発表後の2020年秋、今度はマイケル・スペンサー(B)が脱退。代わりに2016年、2019年のツアーでサポート参加したビル・ボディリー(CONTRAIAN、INHUMATUS、TOXIKなど)が正式加入することとなりました。
2年4ヶ月というスパンで届けられた本作は、内容的にも評価的にも大成功を収めた前作『THE END OF CHAOS』を見事な形でフォローアップする良作。テクニカルなスラッシュメタルというよりはパワーメタル的要素が強まった前作の流れを汲む作風は、間違いなく多くのHR/HMリスナーから好意的に受け入れられるはずです。
エリック“AK”ナットソン(Vo)のパワフルなハイトーンボーカルは、前作ではブルース・ディッキンソンっぽいなと感じられたものの、今作ではどことなくジェフ・テイト(ex. QUEENSRYCHE)にも似た癖が見受けられます。仰々しいメロディアス・パワーメタルにはこの歌唱が非常に似合っており、スピード感の強い冒頭4曲(「Blood In The Water」「Burn The Sky」「Brace For Impact」「A Place To Die」)はもちろんのこと、地を這うようなケン・メアリーのツーバスドラムが気持ちよく響くミディアムナンバー「The Walls」、ダーク&プログレッシヴなパワーバラード「Cry For The Dead」のような曲でこそこの歌唱が映えるのですよ。最高ったらありゃしない。
また、ギタリスト2人(マイケル・ギルバート&スティーヴ・コンリー)のプレイもツボを押さえたメタリックなもので、先の「The Walls」では冒頭&エンディングにドラマチックなツインリードを入れてくるもんですから、知らず知らずのうちに拳を高く掲げちゃってますよね。「Too Many Lives」の冒頭にフィーチャーされた不穏なツインリードから、激烈ヘヴィリフへと続く構成もカッコよすぎます。
もはやスラッシュメタルバンドというよりは王道ヘヴィメタルバンドへと先祖返りしたと言えなくもない、現在のFLOTSAM AND JETSAM。この進化はどこか80年代末以降のMETAL CHURCHと重なるものがありますが、一度見つけた進路を、信念を持ち続け走りる様は今のFLOTSAM AND JETSAMのほうが一枚上手かも。第一、ここまでの良作を2作連続で届けてくれているのですから、最高ったらありゃしない(二度目)。
そんな全HR/HMファン必聴の1枚が、今回日本リリースの予定がないというのも寂しいものです。まあ、昨今の事情を考えれば致し方ないのかもしれませんが……。だからこそ、もっと多くの人たちの間で大々的に評価されてほしい1枚です。
▼FLOTSAM AND JETSAM『BLOOD IN THE WATER』
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