FM『SYNCHRONIZED』(2020)
2020年5月22日にリリースされたFMの11thアルバム(再録アルバム『Indiscreet 30』を含めると12作目)。日本盤は同年5月20日発売。
当初は4月10日のリリースを予定していた本作ですが、コロナ禍の影響などもあり発売が1ヶ月強遅れることになりました。中には半年以上遅れて発売されるケースも少なくないので、彼らの場合はラッキーだったのかもしれません。
『ATOMIC GENERATION』(2018年)からほぼ2年という短いスパンで届けられた本作。基本的には前作の延長線上にある作風で、90年代の彼ららしいブルージーなテイストを含むブリティッシュハードロックに、80年代のハードポップ/AOR調のテイストを散りばめた非常に聴きやすい……言い方が正しければ、“産業ロックよりのブリティッシュハードロック”という安定感の強い大人なサウンドを聞かせてくれます。
オープニングを飾るタイトルトラック「Synchronized」からして、往年の懐かしい香りが漂うメロディとサウンドに思わずニンマリしてしまうリスナーも少なくないはず。続く「Superstar」もAOR寄りの聴きやすいハードロックだし、ソウルフルさの増したミディアムナンバー「Best Of Times」なんてAOR期のBAD COMPANYみたいだし。かと思えば、渋みの強いバラード「Ghost Of You And I」では適度な打ち込みを導入しつつも、THUNDERなどに通ずる“枯れ”感と“泣き”の要素を華麗に演出。そして、「Broken」はイントロでこそ80年代AORっぽいシンセリフを響かせるも、歌が入るとブルースロックそのもの。
なんだこれ。派手さは皆無だけど、ジワジワと効いてきて気持ちいいじゃないか。
後半もこの流れを踏襲した楽曲が並び、とても2020年の新曲とは思えない「Change For The Better」を筆頭に古き良き時代のロック/ハードロックの世界へと我々を引きずり込んでくれるのです。「Walk Through The Fire」のイントロなんて、80年代半ばを通過したMTV世代なら思わずニヤッとしてしまうはずですよ(笑)。
スティーヴ・オーヴァーランド(Vo, G)による、程よい温度感のボーカルもこの“大人なハードロック”にぴったりだし、良い意味で我々の予想を裏切らないボーカルパフォーマンスで良曲たちをさらに一段高いクオリティにまで昇華させてくれる。これ、地味っちゃあ地味だけど、実は相当な技量がないとできないことだと思うんです。超一流ミュージシャンたちによる、破綻のない完璧な(ソフトな)ハードロック。いやこれ、完全に褒め言葉ですから。
あと、楽曲のクオリティが間違いなく前作以上。『ATOMIC GENERATION』も素晴らしい作品ではあったけど、もうちょっと派手さがあった気がするんですよ。でも、ここには無駄な装飾は一切存在せず、必要最小限の要素だけで構築することで無駄にクオリティの高さが際立つ。ここからも、ソングライターとしての才能とともに表現者/プレイヤーとしての技量の高さが抜きん出ていることが伝わるはずです。
リリースされていることは知っていたけど、コロナのバタバタでなかなか手を伸ばせなかった本作。なぜ半年も放ったらかしにしてしまったんだろう……と自戒の意味も込めて……この傑作、みんな聴きやがれ!
▼FM『SYNCHRONIZED』
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