FOREIGNER『4』(1981)
1981年7月2日にリリースされたFOREIGNERの4thアルバム。
1977年にアルバム『FOREIGNER』でデビューして以降、リリースした3作のアルバムすべてがアメリカでマルチプラチナム(1stと3rdアルバム『HEAD GAMES』は現在までともに500万枚、2ndアルバム『DOUBLE VISION』は700万枚)という快挙を成し遂げたFOREIGNER。80年代に突入して最初のアルバムとなる本作では、チャート的にも初の全米1位を獲得したほか、「Urgent」(全米4位)、「Waiting For A Girl Like You」(同2位)、「Juke Box Hero」(同26位)、「Break It Up」(同26位)、「Luanne」(同75位)とヒットシングルを連発します。
このうち「Waiting For A Girl Like You」は10週連続2位という快挙なのか不名誉なのかわからない記録を樹立し、1982年の全米年間チャートで19位にランクインしました(ちなみに、このタイミングの1位はオリヴィア・ニュートン・ジョン「Physical」とHALL & OATESの「I Can't Go For That (No Can Do)」でした)。こういったヒットもあり、アルバム自体も全米で600万枚以上を売り上げる、キャリア2番目のセールスを誇る代表作となりました。
前作でのロイ・トーマス・ベイカーから、新たにプロデューサーにロバート・ジョン・マット・ラングを迎えて制作された本作。すでにマット・ラングはAC/DCの『HIGHWAY TO HELL』(1979年)、『BACK IN BLACK』(1980年)で名声を得ており、このFOREIGNERのアルバムと同タイミングにはDEF LEPPARDの2ndアルバム『HIGH 'N' DRY』(1981年)も発売されています。要は、プロデューサーとしてノリにノッた時期の1枚ということです。それもあってなのか、本作のサウンド面はバンドとして非常に脂の乗った演奏/アレンジを楽しむことができるのです。
しかし、バンドとしては初期メンバーのイアン・マクドナルド(G, Sax)とアル・グリーンウッド(Key)が脱退し、ルー・グラム(Vo)、ミック・ジョーンズ(G, Key)、リック・ウィルス(B)、デニス・エリオット(Dr)の4人編成になってしまったタイミング。そんなタイミングにトーマス・ドルビー(Synth)をはじめとするゲストプレイヤーを多数迎えることで、核となる4人で作り上げる“ロックバンドFOREIGNER”の真骨頂と、トーマス・ドルビーのシンセプレイ/アレンジを全面に打ち出した当時の最新テクノロジーを駆使することで、“(1981年当時の)ロックの未来”が味わえる1枚が完成したわけです。
前作までの流れを汲む豪快なハードロック「Night Life」から始まる本作。同曲や「Juke Box Hero」「Luanne」「I'm Gonna Win」など陽気なアメリカンロック的側面を強調した楽曲がある一方で、欧州風の湿り気が感じられる憂いのハードロック「Break It Up」「Girl On The Moon」、シンセを前面に打ち出したバラード「Waiting For A Girl Like You」、ニューウェイヴの延長線上にありながらもハードロック的色合いを維持した良曲「Urgent」など、とにかくヒットチャートに優しい耳馴染みの良い“産業ハードロック”がズラリと並びます。どれも完成度の高い楽曲ばかりなので、そりゃ当時ラジオでかかりまくるわけで、それがセールスにもつながるのも納得。
2022年の耳で接すると、トーマス・ドルビーの奏でるシンセの音色は時代を感じずにはいられませんが、少なくとも80年代前半の耳にはこれこそが最新かつ未来の音であり、ハードロックバンドがこうしたテクノロジーを率先して取り入れたことは衝撃だったのではないでしょうか。この数年後にVAN HALENが「Jump」という名曲でチープなシンセサウンドを導入したことで、また時代は変化するのですが(あれはあれで大発明なんですけどね)、この時代にリアルタイムでこのアルバムに触れていたら間違いなく僕も「……未来見えた!」と興奮していたことでしょう。残念ながら、僕が本作に触れずのは80年代半ばのこと。3、4年でテクノロジーが次々と進化するタイミングだったので、この時期に聴いてもすでに若干の古さがありましたが。
ちなみに、現在流通しているCDおよびストリーミング版の本作にはボーナストラックとして、「Juke Box Hero」「Waiting For A Girl Like You」の“Nearly unplugged version”と称したアコースティックバージョンを追加収録。こちらは1999年に録音されたものなので、ルー・グラムの声の老いを感じずにはいられません(涙)。
▼FOREIGNER『4』
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