FRANZ FERDINAND『HITS TO THE HEAD』(2022)
2022年3月11日にリリースされたFRANZ FERDINANDのコンピレーションアルバム。日本盤は同年3月8日に先行発売。
2003年9月にシングル「Darts Of Pleasure」でDomino RecordingsからデビューしたFRANZ FERDINANDにとって、今年はデビュー20年目。これまでに発表した5枚のアルバムはすべてUKチャートTOP10入り(本国スコットランドでは前作TOP3入)を記録したほか、アメリカでも5作品中4作がTOP40入り、かつ2作はTOP10入りを果たすなど、20年近くにわたり成功を収め続けているバンドの、最初の20年を総括する“グレイテスト・ヒッツ”がこの20曲入りアルバムなわけです。
収録曲の内訳は1stアルバム『FRANZ FERDINAND』(2004年)から5曲、2ndアルバム『YOU COULD HAVE IT SO MUCH BETTER』(2005年)から4曲、3rdアルバム『TONIGHT: FRANZ FERDINAND』(2009年)から3曲、4thアルバム『RIGHT THOUGHTS, RIGHT WORDS, RIGHT ACTION』(2013年)から4曲、5thアルバム『ALWAYS ASCENDING』(2018年)から2曲、今作のために制作された新曲2曲という妥当な配分。ほぼすべてがシングルカットされた楽曲ですが、中には「Outsiders」(『YOU COULD HAVE IT SO MUCH BETTER』収録曲)のようにシングル化していない楽曲も含まれており、バンドのこだわりが伝わってきます。
「日本ではソニーから流通していた初期3作の楽曲はなんとなく耳馴染みがあるけど、最新作はそこまで聴いていない」というリスナーも、もしかしたら少なくないかもしれません。そんな方にとっては現時点での最新作『ALWAYS ASCENDING』から2曲、そして前々作『RIGHT THOUGHTS, RIGHT WORDS, RIGHT ACTION』から4曲も含まれていることで、「最近の曲も意外と良いじゃん」と気づいてもらえることでしょう。そう、『TONIGHT: FRANZ FERDINAND』を境にイギリスや本国スコットランドでは大きなヒットは生まれていないんですが、アルバム自体は毎回チャート上位に記録していることもあり、海外ではまだまだ根強い人気を保っているんです(もちろん、ここ日本でもアルバムリリースのたびに必ず1〜2度はフェスや単独公演で来日していますしね)。
どうしても「Take Me Out」や「Do You Want To」のようなキャッチーなヒット曲に耳がいってしまいがちですが、このバンドの魅力はむしろそれ以外の楽曲でにじませるストレンジなポップセンス。かつてSPARKSのメンバーとFFSなるスーパーバンドを結成したこともあるくらい、同バンドからの影響も随所に感じられる存在で、それは最新作に至るまで常に維持されている。いや、むしろ作品を追うごとにそのマニアックな作風は濃くなっていき、それと同時に初期から備わっているポップさにもより磨きがかかっている。そういった意味では、本作のために用意された新曲「Curious」「Billy Goodbye」から現在進行形で深化し続けているFRANZ FERDINANDの“今”が伝わるはずです。
初期からのファン、初期しか知らないリスナー、近作で彼らのファンになったライト層、そしてこのベスト盤で初めてFRANZ FERDINANDに触れるビギナー。本作はそういったさまざまな層の最大公約数を満足させてくれる1枚になるはずです。全20曲で70分というボリュームも、バンドの歴史をおさらいする上では適度なものですし、恭順もバンドの歴史に沿ってリリース順に並べられているので、気構えることなく楽しむことができるはずです。
▼FRANZ FERDINAND『HITS TO THE HEAD』
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