QUEEN『QUEEN FOREVER』(2014)
2014年11月にリリースされた、QUEENのコンピレーションアルバム。CD1枚ものとCD2枚組の2仕様が流通しており、本稿では2枚組エディションについて触れていきます。
本作はクイーンの“ラブソング”に焦点を当てた作品集で、新たな未発表曲/テイクが加えられたことで大きな注目を集めました。当初本作について、ロジャー・テイラー(Dr, Vo)は「ブライアン・メイ(G, Vo)と新たなQUEENのアルバムを制作する」と発言していましたが、それはのちに「フレディ・マーキュリー(Vo)や、すでに引退したジョン・ディーコン(B)が参加した80年代の音源を用いて、新たにギターとドラムを追加した『MADE IN HEAVEN』(1995年)と同じ方式の未発表曲」を含むコンピ盤であることが明らかになります。
本作のために準備された新曲/未発表テイクは3曲。アルバムのオープニングを飾る「Let Me In Your Heart Again」は『THE WORKS』(1984年)のセッションから、これまで未完成だった楽曲を新たに完成させたもの。フレディのボーカルパフォーマンスも本チャン作品と何ら差を感じさせない完成度で、そこに80年代以降のQUEENらしい厚みのあるダイナミックなバンドサウンドが重ねられています。確かにこれは『THE WORKS』や、それ以前の『THE GAME』(1980年)に収録されていても不思議じゃない1曲です。
続く「Love Kills」は、1984年にフレディがソロシングルとして発表した楽曲。もともとは映画『メトロポリス』のためにジョルジオ・モロダーとともに制作したディスコ調の楽曲でしたが、ここではバラード調にリアレンジされています。レコーディングクレジットにはジョン・ディーコンの名前も見つけられるので、おそらく『MADE IN HEAVEN』制作時のアウトテイクではないでしょうか。原曲のキラキラ/ピコピコ感のイメージが強いだけに、最初こそ違和感が残りましたが(曲後半にその名残が感じられます)、それって『MADE IN HEAVEN』でのリテイク曲を初めて聴いたときと同じ印象なんですよね。慣れれば「こういう曲」と納得するんでしょうけど、そこまでいくにはだいぶ時間がかかりました(苦笑)。
3曲目の「There Must Be More To Life Than This」はフレディのソロアルバム『MR. BAD GUY』(1985年)収録曲のQUEENバージョンなのですが、これがちょっと複雑でして。もともとこの曲、QUEENのアルバム『HOT SPACE』(1982年)収録曲として制作されたものでしたが、なぜかお蔵入り。そこからマイケル・ジャクソンが1983年に制作予定だったデュエットアルバムの候補としてQUEEN側から提供され、マイケルのボーカルもレコーディングされたものの、『THRILLER』(1982年)の爆発的ヒットの影響などもあって制作中止に。最終的にフレディが自身のソロアルバムに自身のソロバージョンとして収録することで、世の中に初めて放たれます。
で、今回ここに収録されたのはその幻の“QUEEN feat. MICHAEL JACKSON”バージョン。フレディの声に並ぶと、マイケルの存在感も多少弱まってしまうといいますか、のちのマイケルほどのオーラがやや感じられないといいますか。完成バージョンというよりはデモに近い状態だったのかもしれませんね。その音源を、かのウィリアム・オービットがミックスすることで、本作にて日の目を見たわけですから、聴けただけありがたいのかもしれませんね。
以降はおなじみのQUEENナンバーが目白押し。“ラブソング”という括りなので、バラードに限らずさまざまなタイプの人気曲/隠れた名曲が30曲以上にわたり詰め込まれています。いわゆるグレイテストヒッツ・アルバムに飽き飽きしているQUEENリスナーにとっては意外な選曲も少なくないので、個人的にも長きにわたり愛聴しているコンピ盤のひとつです。
なお、日本盤のみボーナストラックとして「Teo Torriatte (Let Us Cling Together)」を追加収録。とはいえ、2枚組バージョンはインストの「Forever」で綺麗に締めくくられるので、多少蛇足のように感じられます。1曲でも多く聴きたいというリスナーは日本盤でもいいかもしれませんが、個人的には「Teo Torriatte (Let Us Cling Together)」なしの海外盤およびデジタル盤でも十分な気がします。
2021年でフレディ没後30周年。今年はこの手の発掘モノはリリースされませんでしたが、きっと来年はいろいろ続きそうな予感です。
▼QUEEN『QUEEN FOREVER』
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