FUZZBUBBLE『FUZZBUBBLE』(2000)
日本盤すら出てないこのバンドのことを知ってる人は、よっぽどのパワーポップマニアか、REDD KROSSのコアなファンか、あるいはバンドの関係者か何かでしょうね‥‥って位、ここ日本では無名に等しいバンド、それがこのFUZZBUBBLEなのではないでしょうか?
アメリカはロングアイランド出身の4人組。'90年代中盤から活動していたそうで(当初は3人組だった)、実は彼等、ここ日本では'98年に一度、大ヒットしたサントラアルバムで紹介されてるんですよ。ハリウッド版「ゴジラ」を覚えていますか? あのサントラ盤にFUZZBUBBLEの"Out There"(今回紹介するファーストアルバムにも収録)が収録されているんですね。確か当時も俺、「おっ、FOO FIGHTERSみたいなイキのいいバンドが現れたなぁ」って思ったはずなんですよ。けど、当時の彼等‥‥かのショーン・パフィ・コムズ(所謂「パフ・ダディ」ですね)のレーベル所属で、しかもエグゼクティブ・プロデューサーにはそのパフィの名前がしっかりと載ってるし。当初、パフィのレーベル「BAD BOY ENTERTAINMENT」が最初に契約したロックバンドという触れ込みだったのですが(実際、そのサントラのライナーノーツにもそう書かれているし)、その後彼等が同レーベル(配給はアリスタなので‥‥BMG系列ですね)から音源をリリースした、という話は伝わってきていません。ま、早い話が契約解除されたんでしょうね‥‥その後、ますますヒップホップやR&Bがチャート上で幅を効かせ、ロックは肩身の狭い身分に成り下がってしまいましたからね、ことアメリカでは‥‥
丁度去年の今頃でしょうか、よく利用する某WiLDHEARTS系バンドをメインに扱うCD屋さんでこのアルバムが紹介されていたんですね。で、その時はまさかそのゴジラに参加してたバンドだとは思いもしませんで‥‥俺の心を惹いたのは、「WiLDHEATSばりの爆走振り、ENUFF Z'NUFFばりのバブルガム・パワーポップ、そして豪華なゲスト&制作陣」というようなポップ‥‥で、音聴かずに迷わず購入。そしたら大当たりだった、と。とにかくね、パワーポップファン、FOO FIGHTERS辺りのギターロックが好きな人なら買って間違いなし。パワフルで、そのくせ甘い。コーラスもしっかりしてるし、ボーカルの声質もハスキーでモロ好み。曲のタイプも疾走系パワーチューンからBEATLES系のバブルガムポップ、CHEAP TRICK辺りがやるサイケなアコースティック調ナンバーとか、ファーストの頃のJELLYFISHが好きな人なんかも気に入ると思います。
製作陣の豪華さ‥‥ま、ここにはパフィは参加してませんが(当たり前です、無名のインディーレーベルからのリリースですから)、プロデュースにはかのMIKE CLINK(GUNS N'ROSESの諸作プロデュースで超有名ですね)、ミックスにはそのJELLYFISHやWEEZERを手掛けたJACK JOSEPH PUIGが当たっています。もうこれだけでアメリカンロックファン、そしてパワーポップファンには生唾モノなんじゃないですか? 更にゲストなんですが‥‥近年再結成し、5月には初来日も果たす(是非行きたいです!)BANGLESのスザンナ・ホフス、'99年に亡くなったREDD KROSSのエディ・カーゼル、元JELLYFISHのロジャー・マニングといったパワポマニアにはたまらないメンツがギターやキーボードやそれと判るコーラスで参加しちゃってます。ねっ、これだけでもかなり興味深いでしょ?
肝心の曲ですが、これが全然B級っぽくなく、逆に「何でこれがインディークラスなの?」って程のメジャー感たっぷりな音。ま、元々これをそのまま先のパフィのレーベルから出す予定だったらしいんだけど、やはり契約切られたか何かで、結局インディーズからのリリースになったみたい。サウンドプロダクションにメチャクチャ金がかかってるのは聴いてもらえば判ると思いますが‥‥多分これ、あと5年早かったらもっと違った評価を受けてたんだろうね。ここ日本でも「FOO FIGHTERSに続け!」とか「アメリカから現れたポストWiLDHEARTS」といった触れ込みで「BURRN!」辺りで紹介されてたかも。いや、「rockin'on」でも何ら問題ないけど。'00年のDECKARDもそうだったけど(ま、彼等は元々イギリスのバンドで、アルバムもメジャーからのリリースだったけどね)、日本未発売だったがために、完全に無視されてしまった良質なバンド、まだまだいるはずなんですよね‥‥勿論、このFUZZBUBBLEもそのうちのひとつ。絶対にもっと知られるべきバンドですよ。
疾走感ある"Bliss"で幕を開け、続く"Boomerang"は初期のハードロック調だった頃のENUFF Z'NUFFみたいだし、3曲目"Don't Let It Get You Down"はBEATLES調のバブルガムポップ、アコースティックナンバー"Ordinary"は他のパワポバンドにも退けを取らない程の独特さを持ったナンバーだし、"Zero Superstar"はCHEAP TRICKやワイハー系辺りの疾走パワーポップチューンを彷彿させるし、"Big Time Nowhere"や"Out There"はポップでヘヴィでアッパーな、文句なしにかっけーナンバーだし、スザンナ・ホフスがコーラスで参加した"When It Stops Raining"もホント切なくて、それでいて風変わりなバラードナンバーだし、"Wonderwoman"は決してFOO FIGHTERSに負けてない疾走パワーチューンだし、最後の"Real World"なんて彼等が何から影響を受けたのかがよ~く判る感動的な1曲だし‥‥って、全曲紹介しちゃったよ。ねっ、捨て曲なさそうでしょ? とにかく全10曲、曲順にしろバランスにしろバラエティさにしろ文句なし。サウンドのクオリティも悪くないし、演奏や歌・コーラスも絶品。これでジャケットさえセンス良ければねぇ‥‥いや、これ以上多くは望めまい。肝心の中身が最高なんだからさ。
実はこのアルバム、2000年にリリースされたものなんですよね。レコーディング自体は'98~'99年に行われたらしいんですが‥‥ってことは、REDD KROSSのエディが最後に参加したレコーディングらしいんですよ‥‥いやよく判らないけど。1曲目"Bliss"でリードギターを弾いてるそうなんですが‥‥それと判る人、いますか? さすがに俺、そこまでコアなREDD KROSSファンじゃねぇしなぁ‥‥
そういやぁ、先のゴジラのサントラ、FOO FIGHTERSも参加してたんですよねぇ。他にも今は亡きBEN FOLDS FIVEとかGREEN DAYとか。SILVERCHAIRもか。この辺が好きな人も文句なしで気に入ってもらえると思いますよ。CD屋で見かけたら、是非手にしてみてください。で、余裕があったら買ってみてくださいね。あ、パワポファンで未聴の人は無条件で購入すること!
最後に‥‥10曲目が終わった後にシークレットトラックが入ってるんですが‥‥何やらパフ・ダディ云々って歌ってるような気がしないでも‥‥これ、何て歌ってるんですかね? 是非聞き取りたいもんだわ。
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