GAMMA RAY『SIGH NO MORE』(1991)
1991年9月21日にリリースされたGAMMA RAYの2ndアルバム。日本盤は同年10月19日発売。
カイ・ハンセン(G, Vo/当時ex. HELLOWEEN)のソロプロジェクトとして始動した前作『HEADING FOR TOMORROW』(1990年)のレコーディングですが、その後ライブを行うためにバンド編成へと移行。カイ、ラルフ・シーパース(Vo)、ウヴェ・ヴェッセル(B)、ディルク・シュレヒター(G)、ウリ・カッシュ(Dr)という布陣で日本を含むツアーを成功させます。
そのままの編成で、早くも次作レコーディングに突入。新たなプロデューサーにHELLOWEENでお馴染みのトミー・ニュートンを迎え、HELLOWEENの延長線上にあった前作とな異なるタッチでアルバムを仕上げています。それもあってか本作はリリース当時、問題作として賛否が分かれたことをよく覚えています。
アルバムのオープニングをミディアムヘヴィな楽曲「Changes」からスタートさせるというのも異色っちゃあ異色です。しかしこの曲、約6分の曲中で徐々にテンポを上げていくというドラマチックな構成で、何度も聴き返すうちにこういう幕開けもアリなんじゃないかと思わされます。そこから、いかにもカイ・ハンセンらしい「Rich & Famous」へと続き、従来の路線(といっても、まだ2ndアルバムなんですけどね。笑)を取り戻していきます。
そのまま疾走感の強いメタルチューン「As Time Goes By」でテンションがさらに高まっていくと、若干ファンキーなノリを持つミディアムヘヴィの「(We Won't) Stop The War」で空気が変わり、王道メタルバラード「Father And Son」でアルバム前半のクライマックスを迎えます。あれ、ヘヴィメタルアルバムとしてはすごく綺麗な流れじゃないですか。誰だよ問題作とか言ったの!
アルバム後半は、本作からのリードトラックとしてMVも制作されたドラマチックなミドルヘヴィナンバー「One With The World」から開始。そうか、日本では「Rich & Famous」がシングルカットされたけど、海外ではこの曲がリード曲だったから、前作でファンになったリスナーから疑問を持たれたのかな。僕は初めてこの曲を聴いたときから好きだったし、このMVを観て「2ndアルバムを聴かないと」と思ったクチです。ひねくれてますかね。
そこからアップチューン「Start Running」で再びギアが入るも、リフでひたすら引っ張るAC/DC〜ACCEPTタイプのハードロック「Countdown」で再びテンポダウンし、ヘヴィな大作「Dream Healer」で後半のクライマックスを迎えます。この1曲のためだけに本作を聴いてもいいんじゃないか?ってくらい、この『SIGH NO MORE』を代表する1曲ですし、初期GAMMA RAYのスタイルがここでひとつ完成したんじゃないか、という気もします。そして、アルバムラストを飾るのはIRON MAIDENをはじめとするブリティッシュHR/HMからの影響が強い「The Spirit」。この2曲の流れは、確かにそれまでのHELLOWEEN〜『HEADING FOR TOMORROW』の流れからすると異色かもしれませんが、こういう実験に取り組めたのも前作で得た手応えが大きかったから。そう言った意味でも、本作はカイ・ハンセンというアーティストの表現の幅を一気に広げるきっかけとなった、重要な1枚と言えるでしょう。
そんな作品だからこそ、賛否の声が大きいのもわかります。しかも、本作がHR/HMにとって大きな転換期となった1991年に発表されているという点も、そういう気運に拍車をかけたのかもしれません。しかし、リリースから30年経った今聴いてみると、実はよく練り込まれたHR/HMアルバムであることに気づかされる。これがあったから、続く『INSANITY AND GENIUS』(1993年)で開き直ることができた(笑)わけですからね。
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