GARBAGE『NO GODS NO MASTERS』(2021)
2021年6月11日にリリースされたGARBAGEの7thアルバム。日本盤未発売。
新作アルバムとしては前作『STRANGE LITTLE BIRD』(2016年)から実に5年ぶり。その間に「No Horses」(2017年)や、X(X JAPANではなく、ロス出身のパンクバンド)のジョン・ドゥ&エクシーン・セルベンカをフィーチャーした「Destroying Angels」(2018年)といったアルバム未収録の新曲を発表しています。
初期から一貫した“インダストリアル経由のオルタナティヴロック”は本作でも健在。オープニングを飾る王道チューン「The Men Who Rule The World」を筆頭に、シャーリー・マンソン(Vo)の気怠いボーカルが乗った瞬間に「あ、GARBAGEの新曲だ!」と納得できる楽曲がずらりと並びます。デジタルパンクとまでは言わないものの、適度な疾走感を伴ったエレクトロテイストのガレージロック/パンクロックや、トリップホップ経由のムーディなミディアムチューン、尖った装飾が施されているものの実はエヴァーグリーンなポップチューンなど、リスナーが彼らに求める要素はすべて詰め込まれているように感じます。
一方で、時代に沿った変化や進化、革新的な要素といったものはあまり感じられず。80年代のNEW ORDERやDEPECHE MODEを起点に、90年代のグランジやトリップホップを通過し、そのまま2000年代へと突入したものの、以降はほぼ固定されたスタイルを維持し続けているように思うのですが、このバンドの場合これでいいのかもしれません。もちろん、質感的にはモダンに仕上げられているので、古臭く感じるようなことは皆無なのですが。
まあとにかく。近作の中でも楽曲の作り込み度が非常に高く、何度聴いても飽きがこない。1作目『GARBAGE』(1995年)を除いて、彼らのアルバムって数日聴き込むと「しばらくいいや」と思えてしまうものが多かったのですが、今作に関しては今のところそれもなさそう。過去のいろんな作品の要素が随所に散りばめられているものの、実は今作って原点回帰でもあるのかな、という気がしてきました。思えば昨年でデビュー25周年(!)。途中、活動を止めた時期もありましたが、彼らがここまで長く続いていることって意外と奇跡なのかもしれませんし。
昨今の不安定な世相が反映された切れ味鋭い歌詞といい、バンドのあるべき姿を取り戻したように映るこのアルバム。しばらくGARBAGEのアルバムを聴いていないというリスナーにこそ、手にしてもらいたい1枚です。
なお、本作のCD限定盤およびデジタル版には、アルバム未収録曲8曲を収めたボーナスディスクが付属。こちらには先の「No Horses」や「Destroying Angels」に加え、デヴィッド・ボウイ「Starman」、パティ・スミス「Because The Night」の各カバーや、ブロディ・デイル(THE DISTILLERS)をフィーチャーした「Girls Talk」、ブライアン・オーバート(SILVERSUN PICKUPS)参加の「The Chemicals」など、過去にリリースされたアルバム未収録楽曲などをまとめて楽しむことができます。ちょっとしたコンピレーションアルバムとしても通用する内容なので、アルバム本編の合間に聴くことで双方より長く楽しめるはずです。
▼GARBAGE『NO GODS NO MASTERS』
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