カテゴリー「Gary Moore」の8件の記事

2021年5月 1日 (土)

GARY MOORE『HOW BLUE CAN YOU GET』(2021)

2021年4月30日にリリースされたゲイリー・ムーアの18thアルバム。日本盤は海外に先駆け、同年4月28日に発売。

2011年2月6日、58歳という若さでこの世を去ったゲイリーが生前最後に発表したオリジナルアルバムは、2008年発売の『BAD FOR YOU BABY』でした。その後、数々の未発表ライブ音源が制作されてきましたが、未発表スタジオ音源で構成された“新作”は今作が初となります。

本作に収録された楽曲の録音時期はそれぞれ異なるようで、クレジット(プロデューサーやレコーディング参加メンバー)から推測するに大半の楽曲が『BACK TO THE BLUES』(2001年)期にレコーディングされ、ドラムのループやプログラミングを多用した「Looking At Your Picture」のみおそらく90年代後半に制作されたものなんじゃないでしょうか。この曲のみ、プロデュースがゲイリー&イアン・テイラーという90年代の諸作品によく見られた連名ですし(ほかの楽曲はゲイリーとクリス・タンガリーディスのプロデュース)。

収録曲は全8曲と少なめですが、6〜7分台の楽曲が半数を占めるためトータル44分という、フルアルバムとして成立するボリューム。その内容も、これまでライブ音源でしか聴くことのできなかったフレディ・キング「I'm Tore Down」のスタジオテイクや、『OLD NEW BALLADS BLUES』(2006年)収録のエルモア・ジェイムス「Done Somebody Wrong」の別テイク(おそらく『OLD NEW BALLADS BLUES』制作よりも前に収録されたテイク)、アルバムタイトルにも用いられたB.B.キング「How Blue Can You Get」といったブルースのカバーソングや、『CORRIDORS OF POWER』(1982年)リマスター盤に追加収録された「Love Can Make A Fool Of You」の別アレンジバージョン(同曲はもともと坂上忍に提供されたもので、のちに浜田麻里もカバー)、アイルランドのチャリティアルバム提供曲で本人名義の作品には未収録だった「Living With The Blues」、そして「Parisienne Walkways」「Still Got The Blues」などの名曲にも匹敵する泣きのバラード「In My Dreams」などのオリジナル曲など、過去のブルースアルバムと肩を並べる仕上がりとなっています。

とにかく、先行配信された「In My Dreams」や「Love Can Make A Fool Of You」「Living With The Blues」といった泣きのバラードナンバーの仕上がりが本当に素晴らしく、なぜこれらが今まで未発表だったのかが不思議に思えてきます。こういった楽曲(およびリアレンジ)は手癖で書けるよ、手癖で弾けるよってことだったのかもしれませんが、結局我々が彼に望むプレイや楽曲ってこういう泣きメロのスローナンバーだった気がするんですよね。そういった意味では、本作は楽曲のバランス、ボリューム含めベストと言えるものであり、亡くなってから10年経った今こうした作品が届けられたことでよりフラットに楽しめるのではないでしょうか。

いわゆる没後の未発表曲集ではあるものの、問答無用のニューアルバムとして成立する本作。後ろ向きで懐古主義な1枚ではありますが、もはや叶わぬ夢を叶えてくれたという意味では非常に貴重かつ重要な作品ではないでしょうか。8曲に絞られたのか、これ以上発表するに値するテイクはなかったのかはわかりませんが、おそらくこれが正真正銘最後の“ニューアルバム”だと思うので、心して向き合いたいと思います。

 


▼GARY MOORE『HOW BLUE CAN YOU GET』
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2020年11月22日 (日)

GARY MOORE『AFTER HOURS』(1992)

1992年3月上旬にリリースされたゲイリー・ムーア通算9作目のスタジオアルバム。日本盤は同年3月下旬に発売。

前作『STILL GOT THE BLUES』(1990年)でブルース路線へと移行し、全英13位/全米83位という好成績を残すことに成功したゲイリー。続く本作でもその路線を踏襲しつつ、前作では過半数をカバー曲が締める中、今作では全11曲中カバーは4曲と3分の1にまで絞り込んでいます。

楽曲自体は前作でのスタイルをより自然な形に、かつディープに踏み込んだアレンジでまとめこまれており、完成度としては前作を超えるものがあるのではないでしょうか。ゲイリー自身もこのスタイルでの自分の光らせ方を重々に把握したようで、ロック&ソウルな「Cold Day In Hell」を筆頭に、「Still Got The Blues (For You)」の延長線上にある「Story Of The Blues」、B.B.キングをゲストに迎えたジャジーな「Since I Met You Baby」などで歌心あふれるボーカルと、“いかにも”な泣きまくりギタープレイを響かせています。もうね、気持ちいいったらありゃしない。

思えば前作ではストレートな「Moving On」や盟友ジョージ・ハリスンによる「That Kind Of Woman」、比較的ロック寄りの楽曲も含まれていましたが、あの時点では完全に振り切るまでは気持ち的な余裕がなかったのかもしれません。と同時に、ブルースの名曲カバーを多数用意することで、そのカラーをより強めようとした。いわば実験的な1枚だったわけです。

ところが、今作では前作で得た手応えをそのままオリジナル曲で昇華。かつ、自分らしさを満遍なく散りばめることにも成功し、早くもブルースロック期の頂点へと到達するわけです。「Separate Ways」のような名バラードを前にしたら、もうこちらとしてもお手上げ状態ですよ。さらに、続く「Only Fool In Town」でののたうちまわるようなギタープレイのカッコよさ。それも素晴らしすぎるったらありゃしない。

そういえば、ブルースカバーが本作では少ないという話。実はシングルのカップリング用には本編未収録のカバーも多数用意されており、録ることは録っていたんだなと。ただ、オリジナル曲の充実度がそれを優ってしまったことで、こういう配分になったのでしょうね。後年リリースされたリマスター盤には、「Woke Up This Morning」といった有名曲や「Once In A Blue Mood」といったインストナンバーも追加されており、この『AFTER HOURS』期のセッションの裏側をより深く知れるのではないでしょうか。

こういった充実ぶりが、全英4位という結果につながったのも納得です。そして、ゲイリーはブルース期を総括するようなライブアルバム『BLUES ALIVE』(1993年)を経て、ジャック・ブルース(Vo, B)&ジンジャー・ベイカー(Dr)という元CREAM組と新バンドBBMを結成。よりディープな世界へと足を踏み入れていくことになります。(以下、BBM『AROUND THE NEXT DREAM』レビューへと続く)

 


▼GARY MOORE『AFTER HOURS』
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2020年3月 2日 (月)

BBM『AROUND THE NEXT DREAM』(1994)

1994年5月中旬にリリースされた、BBM唯一のオリジナルアルバム。日本盤は海外から1ヶ月遅れの、同年6月中旬に発売されました。

BBMはBRUCE BAKER MOOREの略で、ジャック・ブルース(Vo, B)、ジンジャー・ベイカー(Dr)、ゲイリー・ムーア(Vo, G)というメンバー3人の苗字の頭文字を取ったもの。90年代に入ってから『STILL GOT THE BLUES』(1990年)、『AFTER HOURS』(1992年)とブルースにどっぷり浸かっていたゲイリー・ムーアが、1993年にジャック・ブルースのバースディライブにゲスト参加したことをきっかけに元CREAM組と邂逅。ゲイリーとしては自身のルーツである伝説的バンドCREAMの面々と一緒にバンドを組む最高の機会を手にし、一方のジャック&ジンジャーからすると「いつまで経ってもエリック・クラプトンが乗り気じゃないCREAM再結成を、それに匹敵する若い才能とともに限りなく近い形で実現することができる」わけで、まあWin-Winな関係だったことが伺えます。

アルバムは全10曲中6曲をゲイリー&ジャックのタッグで制作(一部楽曲にはジャズの系譜にあるキップ・ハンラハンの名前も)で、「Naked Flame」「Wrong Side Of Town」の2曲がゲイリー単独で書いたもの、残り2曲はブルースのカバー(「High Cost Of Loving」「I Wonder Why (Are You So Mean to Me?)」ともにアルバート・キングで知られる楽曲)となっています。

プロデューサーはゲイリーの諸作を手がけてきたイアン・テイラー。なんとなくこの流れから、本作が『STILL GOT THE BLUES』や『AFTER HOURS』の延長線上にあることが想像できることでしょう。実際、アルバムで展開されているサウンド、楽曲はまさにそういったスタイルにあるもの。ですが、ゲイリーはあくまで“バンドのギタリスト”に徹し、ボーカルの大半をジャックが担当している。そこへんはCREAMというレジェンドに対するリスペクトも大きかったのではないでしょうか。オープニングの「Waiting In The Wings」や「Glory Days」なんて、ゲイリーというよりはCREAMのそれですものね。

かと思うと、「Where In The World」のようなCREAMともゲイリーとも異なる(ある意味では両者っぽいですけどね)、毛色の違う新境地ナンバーも含まれている。続く「Can't Fool The Blues」はゲイリーのブルースアルバムに含まれていても不思議じゃない仕上がりで、ここではゲイリーが思いっきり歌いまくっている。「Naked Flame」で聴けるボーカルも味わい深くて、個人的には好印象です(ゲイリー作ですがジャックが歌っているジャジーな「Wrong Side Of Town」も最高です)。

「I Wonder Why (Are You So Mean to Me?)」ではこのトリオらしいヒリヒリした演奏を堪能できますが、全体的にはこれを超えるような緊張感は皆無。むしろ、最初に聴いたときは「……ユルすぎない?」と不満を感じたほどでした。それはCREAMとの比較のみならず、ゲイリーの過去作との比較も含めて。きっとこれが1994年にゲイリー・ムーアという“若造”がジャック&ジンジャーというレジェントに立ち向かうギリギリのラインだったんでしょうね。

歌の比率が低いぶん、ゲイリーのギターは非常に濃厚さを増しており、なかなか聴き応えがあると思います。なので、ゲイリーのアルバムの延長で聴けば間違いなく楽しめるはず。間違っても「CREAMの再現」なんてハードルを高くしないように。

なお、BBM自体は同作を携えたショートツアー後に空中分解。2002年には本作のリマスター&エクスパンド盤が発表されていますが、そちらにはアルバム未収録の「Danzer Zone」「The World Keeps On Turnin'」「One Day」やデモ音源などが楽しめます。この中でも「One Day」は出色の出来で、のちにゲイリーのベストアルバムにも収録されたほど。「Still Got The Blues」にも通ずる泣きのバラードで名曲度が高いものの、アルバム本編から漏れたということはジャック&ジンジャーとやるべき曲ではなかったのかもしれませんね。

 


▼BBM『AROUND THE NEXT DREAM』
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2018年11月26日 (月)

GARY MOORE『WILD FRONTIER』(1987)

1987年3月にリリースされた、ゲイリー・ムーア通算6作目のスタジオアルバム。前作『RUN FOR COVER』(1985年)はゲイリーのほか、グレン・ヒューズ(B, Vo)、フィル・ライノット(B, Vo)とシンガーが3人混在する形で制作され、アルバムとしての内容は良かったものの統一性が若干薄いような印象を受けました。とはいえ、フィルとのデュエット曲「Out In The Fields」のヒットや、本作リリース後にフィルが急逝したこともあって、ファンの間では忘れられない1枚になったのもまた事実です。

そんな、多くのミュージシャンが参加した前作から一変、今作はゲイリーのほかニール・カーター(Key)、ボブ・デイズリー(B)という旧友たちの3人でスタジオ入り。ドラムトラックはすべて打ち込みで臨み、同郷のヒーローであったフィル・ライノットを追悼するかのように故郷・北アイルランドと向き合った、“ルーツ回帰”的な1枚に仕上がりました。

前作でのメロウさがより強まった本作は、そこにケルト民謡などアイリッシュであることのアイデンティティが加わることで、それまでの作品とは一風変わったスタイルが築き上げられています。オープニングの「Over The Hills And Far Away」のメインフレーズなんて、まさにそれですよね。続く「Wild Frontier」のギターフレーズもエモーショナルさが増し、より日本人の琴線に触れるものがあったのではないでしょうか。事実、僕もリリース当時この2曲を聴いて完全にノックアウトされたひとりですから。

コージー・パウエルのアルバムに収録されていた「The Loner」のカバーでは、ゲイリーの濃厚なギタープレイを思う存分堪能できますし、EASYBEATSのカバー「Friday On My Mind」は本作の中でも比較的ポップな作風でちょっと浮いてる感があるものの、これはこれとして楽しめるのではないでしょうか。

ケルティックなカラーを内包しつつもエネルギッシュなハードロックが展開される「Thunder Rising」、「Out In The Fields」の流れを汲むアップチューン「Take A Little Time」といったメタリックな楽曲もありつつ、アルバムを締めくくるのは「Over The Hills And Far Away」とともにこのアルバムを象徴するようなスローナンバー「Johnny Boy」。これまでのゲイリーの作風を考えると異色であることは間違いないのですが、アーティストとしてここで再スタートを切れた……そういう受け取り方もできるのではないでしょうか。ここからブルース路線へと傾倒していくことを考えると、その起点は間違いなく本作だったと言うことができるはずです。

とはいえ、この名盤中の名盤にも欠点があります。それは、1曲1曲の録音レベル(音圧)がバラバラなこと。「Over The Hills And Far Away」や「Thunder Rising」の音圧の低さといったら……そこだけが残念でなりません。

なお、本作は何度かの再発を経て、現行のCDには「Over The Hills And Far Away」や「Wild Frontier」の12インチバージョンも追加収録。これらでは、原曲にはないギタープレイも含まれているので必聴かと。かつ、本作リリース当時に本田美奈子に提供した「the Cross -愛の十字架-」のセルフカバー「Crying In The Shadows」も収録されており、ゲイリーらしい泣きメロを楽しめるはず。本田美奈子バージョンと聴き比べてみるのもよいかと。

ちなみに本作、イギリスでは初のTOP10入り(最高8位)を記録。シングルも「Over The Hills And Far Away」(全英20位)を筆頭に、「Wild Frontier」(同35位)、「Friday On My Mind」(同26位)、「The Loner」(同53位)、「Take A Little Time」(同75位)と計5曲のヒットが生まれており、名実ともに代表作と言える1枚ではないかと思います。



▼GARY MOORE『WILD FRONTIER』
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2018年11月25日 (日)

V.A.『MOORE BLUES FOR GARY: A TRIBUTE TO GARY MOORE』(2018)

2018年10月リリースの、ゲイリー・ムーアのトリビュートアルバム。アルバムジャケットにあるように、ゲイリーの諸作品やライブに参加してきたベーシスト、ボブ・デイズリーが中心となって制作された本作には、ニール・カーター(Key)やドン・エイリー(Key/DEEP PURPLE)、エリック・シンガー(Dr/KISS)、グレン・ヒューズ(Vo)に加え、元SKID ROW(「Youth Gone Wild」じゃないほう)のブラッシュ・シールズ(Vo)といったゲイリー・ムーアと馴染み深い面々、ゲイリーの実子であるガス・ムーア(Vo)とジャック・ムーア(G)のほか、豪華ゲストプレイヤーが多数参加しています。

そのメンツもジョン・サイクス(G)やダニー・ボウズ(Vo/THUNDER)、スティーヴ・ルカサー(G/TOTO)、ジョー・リン・ターナー(Vo)、リッキー・ウォリック(Vo/BLACK STAR RIDERS)、スティーヴ・モーズ(G/DEEP PURPLE)、デーモン・ジョンソン(Vo, G/BLACK STAR RIDERS)、ダグ・アルドリッチ(G/THE DEAD DAISIES)などなど。とにかく、無駄に豪華です。

選曲的にはブルースに傾倒した『STILL GOT THE BLUES』(1990年)以降の作品にこだわることなく、初期の『BACK ON THE STREETS』(1978年)から『VICTIMS OF THE FUTURE』(1983年)、『WILD FRONTIER』(1987年)の楽曲も収録。ボブ・デイズリー自身が関わっていることもあってか、『POWER OF THE BLUES』(2004年)という晩年の作品から3曲も選ばれていることがちょっと意外でした。

基本的にはどの曲もゲイリー独特の粘っこいギターフレーズを活かしつつ、オリジナルを尊重しながら随所に自身の個性を取り入れていく手法で、またボブが中心となって制作していることもあって統一感も強く、この手のトリビュートアルバムとしてはかなり水準の高いもののように思います。HR/HM系ギタリストが多く参加しているものの、各自そこまで出しゃばることもないので、本当に気持ちよく楽しめる1枚です。

やはり本作最大の聴きどころは、久しぶりにシーン復帰を果たしたジョン・サイクス参加の「Still Got The Blues (For You)」になるかと。ゲイリーからの影響も大きく、彼と同じTHIN LIZZY(=フィル・ライノット)にもお世話になった関係もあり、そりゃあもうディープなソロを聴かせてくれています。まあこの曲自体、基本的にメインフレーズの繰り返しになるのでそこまでアドリブを効かせることは難しいのですが、特に終盤のソロはサイクスらしいもので、フェイドアウトせずにこのままずっと聴いていたい!と思わせられるはずです。

で、この曲を歌うのがTHUNDERのダニー・ボウズというのが、また最高。思ったよりも感情抑え気味ですが、それがギターのエモーショナルさに拍車をかけているように感じました。うん、これ1曲のために購入してたとしても無駄じゃないと思います。

個人的にはこのほか、リッキー・ウォリックが歌い、スティーヴ・モーズがギターを弾く「Parisienne Walkways」、グレン・ヒューズが最高のボーカルパフォーマンスを聴かせる「Nothing's The Same」、思ったよりもゲイリー・ムーア色の強いダグ・アルドリッチのプレイが印象に残る「The Loner」、デーモン・ジョンソンが歌って弾いてと大活躍の「Don't Believe A Word」あたりがお気に入り。もちろん、そのほかの曲も文句なしに良いです。

来年の2月で、亡くなってから早8年。ゲイリー・ムーアというギタリストがどんな存在だったか、改めてロック/ブルース/HR/HMシーンに与えた影響をこのアルバムから振り返ることができたら、と思います。彼の名前しか知らないという若いリスナーにこそ聴いてほしい1枚です。



▼V.A.『MOORE BLUES FOR GARY: A TRIBUTE TO GARY MOORE』
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2018年2月17日 (土)

GARY MOORE『STILL GOT THE BLUES』(1990)

1990年春にリリースされた、ゲイリー・ムーア通算8作目のオリジナルアルバム。活動後期のブルース路線を確立させた記念すべき1枚であり、実は彼のソロアルバム中もっともヒットしたアルバムのようです。本作はイギリスでダブルプラチナム、アメリカでもゴールドディスク認定。特にアメリカでは最高83位と唯一トップ100入り。実はシングル「Still Got The Blues (For You)」も全米97位と、アメリカで最大のヒット曲なのでした。

前々作『WILD FRONTIER』(1987年)でアイルランド民謡を取り入れたスタイルが高評価を獲得したかと思えば、続く『AFTER THE WAR』(1989年)ではより雑多なハードロックを展開したゲイリー・ムーア。実は前作の時点でこのブルース路線は表出し始めており、「The Messiah Will Come Again」のカバーはそのきっかけになった1曲ではないかと思うのです。

で、本作。ブルースとはいっても、そこはハードロックギタリスト観点でのブルースということで、サウンド的には“ブリティッシュビート経由のブルースロック”という表現がもっとも適切かもしれません。例えばエリック・クラプトンあたりのブルースカバーと比べれば、その音は非常に派手でダイナミック。確かに『AFTER THE WAR』までのゲイリーのプレイと比較すれば地味ではあるのですが、だからといって悪いわけではない。むしろ、彼がこの路線に活路を見出した意味がこういった“味を求める”プレイ、その1音1音にしっかり刻み込まれているように感じられます。だからこそ「Still Got The Blues」「Midnight Blues」などで聴ける泣きのソロプレイには、ぐっと惹きつけられるものがあるのです。

CD収録曲全12曲(アナログは全9曲)中、往年のブルースナンバーのカバーは6曲。残り6曲のうち1曲がジョージ・ハリスン「That Kind Of Woman」のカバー(もともとジョージがエリック・クラプトンに提供した楽曲。本作のカバーではジョージもスライドギターやコーラスで参加)で、5曲が書き下ろしブルース/ブルースロックナンバーとなります。オープングの「Moving On」の疾走感強めなロックンロールや「Texas Strut」のブギー感は、ブルースをベースにしたロックということで厳密にはブルースとは言い難いのかもしれませんが、こういった楽曲があることでHR/HMリスナーにもとっつきやすさがあったと思うのです。事実、本作リリース当時18歳だった僕もこのバランス感のおかげですんなり入っていけましたしね。

また、随所に導入されているブラスサウンドもカッコいいったらありゃしない。「Oh Pretty Woman」や「King Of The Blues」のゴージャスさは、確実にこのブラスセクションのおかげでしょう。かと思えば、「As The Years Go Passing By」では色気あるサックスの音色に続々してしまいますし(同曲でのドン・エイリーによるハモンドオルガン、ニッキー・ホプキンスのピアノも最高ったらありゃしない)。

そしてなにより、ゲイリーのボーカル。ここまで艶やかな歌を聴かせる人だったかと、リリース当時は驚かされたものです。まあそれまでのハードロック路線では、声を張り上げて歌うことが多かったですからね。エモーショナルな楽曲はもちろんのこと、若干トーンの落ち着いた「As The Years Go Passing By」や「Midnight Blues」あたりでのボーカルワークは、地味だけどなにげに本作のハイライトのひとつだと思っているのですが、いかがでしょう。

ラストの「Stop Messin' Around」までまったくダレることなく、適度な緊張感を保ったまま楽しめる1枚。特に『WILD FRONTIER』や『AFTER THE WAR』あたりの作品ではバンドアレンジと打ち込みサンドが混在していたことで、統一感が若干足りないという難点がこのでは完全に解消されているのですから。まあ、できたらこのスタイルでハードロックアルバムをもう1枚聴きたかった、なんて贅沢な不満も当時は持ちましたが、今となってはそれすら叶わないわけですからね……。

年に数回、思い出したかのように深夜、音量小さめでまったり聴きたくなる。そんな大切な1枚です。今年も2月に入り、「ああ、そろそろゲイリー・ムーアの命日(2月6日)だな」なんてことも思い出し、珍しく連日聴いております。



▼GARY MOORE『STILL GOT THE BLUES』
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2017年2月 6日 (月)

GARY MOORE『AFTER THE WAR』(1989)

本日2月6日は、2011年に急逝したゲイリー・ムーアの命日だったんですね。先ほどTwitterに流れてきたつぶやきで知りました。それで、今朝から彼の諸作をいろいろ引っ張り出して聴いているのですが……せっかくだから1枚選んで、急遽取り上げてみようかと思った次第です。

ゲイリー・ムーアが遺した名作群の中からどれか1枚選べと言われると、非常に悩みどころでして……80年代の作品はどれも好きなものばかりですし、そんな中でもやっぱり『WILD FRONTIER』(1987年)は群を抜いてお気に入りだけど、同じくらい『STILL GOT THE BLUES』(1990年)も好き。さて困ったぞと悩んでいると、iTunesで上記2作の間に挟まれた1枚のアルバムに目がいったわけです。それが今回紹介する『AFTER THE WAR』です。

本作は1989年初頭にリリースされた、通算7作目のオリジナルアルバム。前作『WILD FRONTIER』である種ひとつのピークを迎えたゲイリーが、新たなるステージであるブルースサイドへと移行する前に見せた過渡期的側面と言えなくもない本作は、彼がハードロックギタリストとして音楽と向き合った最後の作品と受け取ることもできます。事実、タイトルトラック「After The War」や「Speak For Yourself」、オジー・オズボーンをボーカルにフィーチャーした、当時のLED ZEPPELIN劣化コピーバンドを皮肉った「Led Clones」、名曲「Out In The Fields」、VAN HALENばりのハードブギー「This Thing Called Love」、陽気なハードロック「Livin' On Dreams」「Ready For Love」と、本作以降のアルバムではなかなか聴くことのできないタイプのオリジナル楽曲をたっぷり楽しむことができます。どこか洗練された感があるのも、本作の特徴かもしれませんね。

と同時に、本作には次作『STILL GOT THE BLUES』への布石も用意されています。それがロイ・ブキャナンのカバー「The Messiah Will Come Again(メシアが再び)」。リリース当初はアナログ盤に未収録だったこの曲、それ以前のアルバムに収められたインストナンバーと比べるとプレイスタイルもよりブルージーになっており、これがあったからこそ『STILL GOT THE BLUES』へとすんなり入っていけたという人も少なくないのではないでしょうか。

と同時に、前作『WILD FRONTIER』でみせた母国アイルランドへの強い思いも、「Blood Of Emeralds」や、THIN LIZZYのカバー「Emerald」などで再び表現されています(アルバム冒頭とエンディングに収められたインスト「Dunluce (Part 1)」および「Dunluce (Part 2)」もその流れですよね)。そういう意味では本作、過渡期というよりも過去数年の集大成かつ新たなステップへの序章と捉えたほうが健全かもしれませんね。リリースから28年も経っていて正直驚きましたが、その魅力を再認識してほしい1枚です。

ちなみに本作のレコーディングには、同作のツアーに参加するもすぐに脱退してしまったコージー・パウエル、名手サイモン・フィリップス、エルトン・ジョンやケイト・ブッシュとの共演でも知られるチャーリー・モーガン、そして「Emerald」の原曲でも叩いているTHIN LIZZYのブライアン・ダウニーと複数のドラマーが参加しています。ほぼ打ち込みで表現された『WILD FRONTIER』と比べたら非常に肉感的ですし、ライブが見えてくる音像ですよね。さらに2002年以降に流通しているリマスター盤に追加収録されたライブテイクでは、のちにKISSに加入するエリック・シンガーが叩いているようです。そのへんのプレイの違いを聴き比べてみるのも、面白いかもしれませんね。



▼GARY MOORE『AFTER THE WAR』
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2016年8月26日 (金)

「一番好きなHR/HMギターソロ」について考える(80年代〜90年代前半編)

仕事の合間だけど、現実逃避ついでに「一番好きなギターソロ」について考えてみた。あくまで主観だが、HR/HMにおけるギターソロはライブで一緒に「口ギターソロ」ができる、つまり口ずさめるものがベストだと思ってる。

最初に思いつくのはやっぱりオジー・オズボーン「Mr.Crowley」だろうか。適度に速弾きしていて、かつ口ずさめるメロディ。これ以上速くても、音数が多くてもダメ。だって弾けないもん。俺が。

そういう意味じゃEUROPE「The Final Countdown」もベスト候補。いや、こっちはシンセのメインリフのほうが印象的か。シンセのフレーズは口ずさんでも、ギターソロを口ずさむことは少な……いや、そんなことはなかった。口ずさむ。好き。

主メロ自体がリフ?なゲイリー・ムーア「Wild Frontier」も、個人的には「Mr.Crowley」と同じくらい好きな楽曲&ソロ。結局、こういうマイナーコードで泣きのメロを持つ楽曲が好きんなんだろうな。ザ・日本人。

泣きメロかつ「誰もが知ってるフレーズの引用」というドーピング感満載のACCEPT「Metal Heart」は反則。これこそ全力で日本人泣かしにかかってるだろと。

「Mr.Crowley」と同じくらい重要かつベストだと思ってるのが、KISS「Detroit Rock City」。あのクソシンプルなのに最強なツインリードは、この先何百年も語り継がれるべきだと思う。結局「コピーできそうだけどちょっと難しい」くらいの、あの絶妙なレベル感が自分の求めるギターソロなのかもしれない。あと、長すぎてもダメ。2分とか続いちゃうようなのはね、覚えられない。

……ってよくよく考えたら70年代じゃん、「Detroit Rock City」。却下却下。代わりにKISSのコピーバンド始めた頃にやってた「Crazy Crazy Nights」を挙げとく。このコンパクトだけど印象に残り、口ずさめて適度なテクニックが凝縮されてるというのは非常に重要。そういう意味じゃBON JOVIのこの時代の楽曲はほとんどこれに当てはまる。選ばないけど。

もうちょっとヘヴィな方面についても。

METALLICA「One」は随所にソロが登場するけど、後半の畳み掛けるようなソロパートは難しいながらも覚えやすいメロディがちゃんと備わっているし、この手のバンドのものとしてはベストクラスなんじゃないかなと。

逆にMEGADETH「Tornado Of Souls」までいくと、ちょっとやりすぎ感が。もちろんこれは個人的なさじ加減の問題だけど。リスニング的にはMEGADETHのほうだけど、「コピーしたくなる」という点においてはMETALLICAかなと。なかなか共感しづらいだろうけど。

PANTERAのギターソロも実はすごくメロウなものが多くて、個人的にはリフ以上に推していきたいと思ってる要素。スローな曲はもちろんなんだけど、「Mouth For War」はあのリフとグルーヴにこのソロが乗るから最強なんだと。

最後に国内のバンドからも。

80年代半ばに青春時代を過ごした人なら、きっと誰もがコピーをしたんじゃないだろうかっていうLOUDNESSから選ぶならば、やっぱり「Crazy Doctor」だろうか。「In The Mirror」も捨て難いけど。って、どっちも弾けないんだけど。

で、結局最後はEARTHSHAKER「More」に行き着くと。この呪縛から逃れられないんだな、あの時代に10代を過ごしてしまった者は。でもイントロのアルペジオのほうが印象深い? かもしれない。

以上10曲。KISS以外は結局泣きメロなんだな。わかりやすいぞ自分。

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