2018年2月19日 (月)

ERIC CLAPTON『JOURNEYMAN』(1989)

エリック・クラプトンが1989年11月に発表した、ソロ名義で通算11枚目のオリジナルアルバム。前2作を手がけたフィル・コリンズから、大御所ラス・タイトルマンにプロデューサーを変更して制作された最初のアルバムで、重厚なハードロックから彼のルーツであるブルース、さらにはAORにも通ずる大人の色香漂うモダンなポップロックまで、まるでそれまでのキャリアを総括するかのようにバラエティに富んだ、非常に聴き応えのある1枚に仕上がっています。

とはいえ本作はクラプトン単独書き下ろし曲が皆無で、大半が職業作家による楽曲やジョージ・ハリスン書き下ろし曲「Run So Far」(ジョージは同曲のレコーディングにも参加)、さらにはエルヴィス・プレスリー「Hound Dog」やレイ・チャールズ「Hard Times」といったスタンダード曲のカバー、ボ・ディドリー「Before You Accuse Me」のブルースカバーなどで締められています。そんな中でクラプトンはソングライティングにおいて、シングルカットもされたミック・ジョーンズ(FOREIGNER)との共作「Bad Love」、当時は若手ブルースギタリストとして頭角を現し始めていたロバート・クレイとの共作「Old Love」の2曲に携わったのみ。

じゃあクラプトン色が薄いのかといわれると、実はそんなこともなく。ギタープレイはもちろんのこと、ボーカルワークでも存在感の強さを証明しています。実際、本作はセールス的にも成功を収めており、「Bad Love」はここ日本でもCMソングに起用されて馴染み深い1曲となっています。

また、本作に収録された楽曲が過去のソロ曲やCREAM〜DEREK AND THE DOMINOS時代の名曲たちと混ざり合ったときの自然さときたら……本作に続いて発表されたライブアルバム『24 NIGHTS』(1991年)でもこの『JOURNEYMAN』からの楽曲が軸になっていることからも、本作はクラプトンの80年代後半以降における代表作のひとつになったことが伺えるのではないでしょうか。

他人が書いた曲とはいえ、重厚なハードロック「Pretending」やソウルフルなバラード「Running On Faith」、産業ロックテイストのミドルナンバー「No Alibis」は良曲と呼べるし、特に前2曲は当時のライブにおいても重要な役割を果たすキラーチューンだったと思います。また、フィル・コリンズがドラムで参加した疾走感の強い「Bad Love」、ライブでは終盤にエモーショナルなギターソロが長尺で展開される「Old Love」、のちの“アンプラグド”でおなじみとなる「Before You Accuse Me」と、印象深い楽曲が満載。「Hard Times」での“枯れ”感や「Lead Me On」で聴かせるアダルト感も、のちの「Tears In Heaven」や「Change The World」に通ずるものがあるのではないでしょうか。

クラプトンのソロ作というとどうしても70年代の諸作品をまず最初に挙げる傾向が強いですが、80年代育ちの自分としてはそこに本作も付け加えたいと思うくらい、大好きな1枚です。この当時のクラプトンを深く知りたければ、本作と先のライブ盤『24 NIGHTS』、そしてメガヒット作『UNPLUGGED』(1992年)の3作品を聴けば間違いないはずです。



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投稿: 2018 02 19 12:00 午前 [1989年の作品, Eric Clapton, George Harrison] | 固定リンク

2018年2月18日 (日)

GEORGE HARRISON『CLOUD NINE』(1987)

ジョージ・ハリスンが1987年11月に発表した、通算11枚目のソロアルバム。本作からは「All Those Years Ago」(1981年/全米2位、全英13位)以来となるヒットシングル「Got My Mind Set On You」(全米1位、全英2位)、「When We Was Fab」(全米23位、全英25位)が生まれ、アルバム自体も全米8位、全英10位のヒット作となりました。特にアメリカではセールス100万枚を突破し、これは1970年の大作『ALL THINGS MUST PASS』に次ぐ記録となります。

アルバムとしては前作『GONE TROPPO』(1982年)から5年もの間隔が空いていますが、実際その当時のジョージは音楽業界からなかば引退状態にあったとのこと。ですが80年代後半からマドンナ主演映画『上海サプライズ』への楽曲提供をはじめ、1988年にジェフ・リン、ボブ・ディラン、トム・ペティ、ロイ・オービソンと覆面バンドTRAVELING WILBURYSを始動させたあたりから音楽活動が本格化。TRAVELING WILBURYSで活動をともにしたジェフ・リンをプロデューサーに迎え、新たなソロアルバムを制作することになるのでした。

本作は僕が積極的に洋楽を聴き初めてから初めてのジョージのソロアルバム。リアルタイムで亡くなった報道と立ち会ったジョン・レノンや、大きなヒットこそなかったものの常に新作を提供し続けたポール・マッカートニーと比べ、どうしても影の薄い“FAB 4”のひとりがジョージでした(あれ、もうひとりは……)。

そんなですから、初めて「Got My Mind Set On You」を聴いたときは、正直グッときたことを覚えています。いや、別にビートルズをリアルタイムで聴いてきた世代でもないですし、70年代のジョージの活躍も知らない世代でもない、完全な後追いの小僧ですよ。だけど、そんな僕でも「ああ、ジョージが帰ってきた!」なんて思ってしまうほど、この極上のポップチューンは当時16歳だった自分の胸に響きまくったわけです。

アルバム自体もブルージーな「Cloud 9」やビートルズ時代を彷彿とさせるアレンジの「This Is Love」「When We Was Fab」「Someplace Else」があったり、ゲストプレイヤーとしてエリック・クラプトンやエルトン・ジョン、リンゴ・スターなどが参加していたりと、とにかく豪華。いわゆる“パブリックイメージとしてのジョージ・ハリスン”と“にわかファンがなんとなく思い浮かべる「ビートルズのジョージ」”を見事に具現化したサウンド&アレンジには、さすがジェフ・リン!と思わずにはいられません。ホント、この人が舵取りをしなかったらこんなアルバムにはならなかったんでしょうね。

まあ、そのへんもあって本作が旧来のファンからは叩かれる対象になっているのも理解できます。が、本作がジョージ生前最後のオリジナルアルバムとなってしまった今となっては、そんな物言いはどうでもよく。やっぱり誰がなんと言おうと、よくできたポップ/ロックアルバムだと思うのです。

それ以前の作品と比較すれば、確かにジョージのカラーは若干薄めです。が、本作がなかったらのちの「Free As A Bird」も「Real Love」もなかったんだろうなと考えると、やはり彼のキャリア上重要な1枚であることには間違いありません。

まあとにかく、一度はそういった雑音をシャットアウトして、本作と向き合ってみることをオススメします。高1の秋、自分が初めてこのアルバムと向き合ったときみたいに。



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投稿: 2018 02 18 12:00 午前 [1987年の作品, Eric Clapton, George Harrison] | 固定リンク

2018年2月17日 (土)

GARY MOORE『STILL GOT THE BLUES』(1990)

1990年春にリリースされた、ゲイリー・ムーア通算9作目のオリジナルアルバム。活動後期のブルース路線を確立させた記念すべき1枚であり、実は彼のソロアルバム中もっともヒットしたアルバムのようです。本作はイギリスでダブルプラチナム、アメリカでもゴールドディスク認定。特にアメリカでは最高83位と唯一トップ100入り。実はシングル「Still Got The Blues (For You)」も全米97位と、アメリカで最大のヒット曲なのでした。

前々作『WILD FRONTIER』(1987年)でアイルランド民謡を取り入れたスタイルが高評価を獲得したかと思えば、続く『AFTER THE WAR』(1989年)ではより雑多なハードロックを展開したゲイリー・ムーア。実は前作の時点でこのブルース路線は表出し始めており、「The Messiah Will Come Again」のカバーはそのきっかけになった1曲ではないかと思うのです。

で、本作。ブルースとはいっても、そこはハードロックギタリスト観点でのブルースということで、サウンド的には“ブリティッシュビート経由のブルースロック”という表現がもっとも適切かもしれません。例えばエリック・クラプトンあたりのブルースカバーと比べれば、その音は非常に派手でダイナミック。確かに『AFTER THE WAR』までのゲイリーのプレイと比較すれば地味ではあるのですが、だからといって悪いわけではない。むしろ、彼がこの路線に活路を見出した意味がこういった“味を求める”プレイ、その1音1音にしっかり刻み込まれているように感じられます。だからこそ「Still Got The Blues」「Midnight Blues」などで聴ける泣きのソロプレイには、ぐっと惹きつけられるものがあるのです。

CD収録曲全12曲(アナログは全9曲)中、往年のブルースナンバーのカバーは6曲。残り6曲のうち1曲がジョージ・ハリスン「That Kind Of Woman」のカバー(もともとジョージがエリック・クラプトンに提供した楽曲。本作のカバーではジョージもスライドギターやコーラスで参加)で、5曲が書き下ろしブルース/ブルースロックナンバーとなります。オープングの「Moving On」の疾走感強めなロックンロールや「Texas Strut」のブギー感は、ブルースをベースにしたロックということで厳密にはブルースとは言い難いのかもしれませんが、こういった楽曲があることでHR/HMリスナーにもとっつきやすさがあったと思うのです。事実、本作リリース当時18歳だった僕もこのバランス感のおかげですんなり入っていけましたしね。

また、随所に導入されているブラスサウンドもカッコいいったらありゃしない。「Oh Pretty Woman」や「King Of The Blues」のゴージャスさは、確実にこのブラスセクションのおかげでしょう。かと思えば、「As The Years Go Passing By」では色気あるサックスの音色に続々してしまいますし(同曲でのドン・エイリーによるハモンドオルガン、ニッキー・ホプキンスのピアノも最高ったらありゃしない)。

そしてなにより、ゲイリーのボーカル。ここまで艶やかな歌を聴かせる人だったかと、リリース当時は驚かされたものです。まあそれまでのハードロック路線では、声を張り上げて歌うことが多かったですからね。エモーショナルな楽曲はもちろんのこと、若干トーンの落ち着いた「As The Years Go Passing By」や「Midnight Blues」あたりでのボーカルワークは、地味だけどなにげに本作のハイライトのひとつだと思っているのですが、いかがでしょう。

ラストの「Stop Messin' Around」までまったくダレることなく、適度な緊張感を保ったまま楽しめる1枚。特に『WILD FRONTIER』や『AFTER THE WAR』あたりの作品ではバンドアレンジと打ち込みサンドが混在していたことで、統一感が若干足りないという難点がこのでは完全に解消されているのですから。まあ、できたらこのスタイルでハードロックアルバムをもう1枚聴きたかった、なんて贅沢な不満も当時は持ちましたが、今となってはそれすら叶わないわけですからね……。

年に数回、思い出したかのように深夜、音量小さめでまったり聴きたくなる。そんな大切な1枚です。今年も2月に入り、「ああ、そろそろゲイリー・ムーアの命日(2月6日)だな」なんてことも思い出し、珍しく連日聴いております。



▼GARY MOORE『STILL GOT THE BLUES』
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投稿: 2018 02 17 12:00 午前 [1990年の作品, Gary Moore, George Harrison] | 固定リンク