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カテゴリー「George Lynch」の16件の記事

2021年8月27日 (金)

GEORGE LYNCH『SEAMLESS』(2021)

2021年8月20日にリリースされたジョージ・リンチのソロアルバム。日本盤は同年8月18日先行発売。

もはや何作目のソロアルバムか正確にはわかりませんが(企画盤は編集盤も多いですからね)、ソロ名義による正式な作品としては『SHADOW TRAIN』(2015年)以来約6年ぶり。今作はオール・インストゥルメンタル作となっており、全曲オリジナル曲によるインスト盤はキャリア初、クラシックの名曲をカバーしたインスト盤『ORCHESTRAL MAYHEM』(2010年)を数に入れると実に11年ぶりのインストアルバムとなります。

とはいえ、本作は「キャリア初のインストアルバム」と謳っているので、カバー中心の『ORCHESTRAL MAYHEM』はカウントに含まれないようです。ホント、このへんのカウントが面倒で面倒で……(苦笑)。

常に複数のプロジェクト/バンドに携わり、年間数作をリリースするジョージですが、今作では自身のセルフプロデュースのもと、ジミー・ダンダ(Dr)、エリック・ルイゼル(B)の3人でレコーディングを実施。ジョージのパブリックイメージにあるフラッシーな“カミソリギター”プレイは皆無で、比較的落ち着いた雰囲気の曲調に合わせて、ムーディーかつ(それなりに)テクニカルなプレイを聴かせてくれます。

序盤の「Quiver」「Cola」「TJ69」を筆頭に、本作は全体的にミドルテンポの楽曲で占められています。「Death By A Thousand Lick」や「Sharks With Laser Beams」のようなアップチューンもあるにはあるのですが、全体を覆う空気は先のミドルテンポ曲が圧勝。「この感じ、どこかで似たようなのを聴いたことがあるな?」と思いながらアルバムに触れていたのですが、気づきました。ジェフ・ベック『GUITAR SHOP』(1989年)です。あちらはギター、ドラム、シンセという編成でしたが、こちらはヘヴィメタルギタリストらしく、シンプルな3ピースで攻める。だけど、やろうとしていることは非常に『GUITAR SHOP』的かなと思いました。そういえば最近のリンチ翁、ベックを意識したプレイスタイルに近づいていますものね。年齢もあるのかな(そりゃ今年の9月28日で67歳ですしね)。

要所要所ではそれなりに速いプレイも聴かせてくれるものの、そっちがメインになることはなく、あくまで味付け程度といった配分かな。それよりは音色含め雰囲気モノで聴かせるプレイに徹している印象が強い。「Octavia」や「Falling Apart」あたりにはアコギもフィーチャーされていますが、それもバランス的にはほんの一部。あ、「Falling Apart」はぜひ歌入りで聴きたかったな。THE END MACHINEあたりでやったら、DOKKENにも匹敵する良曲に仕上がると思うんですが。

というわけで、特にインストだからと新しいことに挑戦するのではなく、今のジョージの特色と、これまでに書いてきた曲のテイストを凝縮した、いかにも“らしい”内容。ファンなら申し分ないでしょうけど、それにしてもちょっと刺激が弱いかな。やっぱりこの人は華のあるフロントマンの横で思いっきり弾いてこそだな、と再認識させてくれた貴重な1枚でした。

 


▼GEORGE LYNCH『SEAMLESS』
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2021年4月17日 (土)

DOKKEN『TOOTH AND NAIL』(1984)

1984年9月13日にリリースされたDOKKENの2ndアルバム。日本盤は同年11月28日発売(当初はアナログのみ。CDは1985年初出)。

言わずと知れたDOKKENの代表作。1983年前後から勃発したUSメタルの波に乗って、RATTMOTLEY CRUEらとともに“ヘアメタル/グラムメタル”(日本では各バンドの活動拠点を差してL.A.メタルとも)シーンの立役者として人気を獲得し、アルバムは全米49位のスマッシュヒットに(100万枚を超えるセールス)。「Into The Fire」「Just Got Lucky」のラジオヒットに加え、パワーバラード「Alone Again」はBillboardチャート最高64位まで上昇しました。

前作『BREAKING THE CHAINS』(1981年/1983年)ではベースを、のちにRATTに加入するフアン・クルーシエがプレイしていましたが、本作のレコーディングから正式にジェフ・ピルソンが加わり、バンドの黄金期がここから始まることになります。ジェフはソングライティング面でもすべての楽曲に携わっており、B級臭濃厚だった前作からメジャー感が少し強まった作風へとスケールアップさせることに成功。また、演奏面ではジョージ・リンチ(G)のプレイヤーとしての個性が一気に開花し、「Tooth And Nail」のように1分以上におよぶギターソロをフィーチャーするなど、ギターバンドとしての独自性もここで印象付けることに成功しました。

そういったプレイヤー陣の強い個性に負けじと、線の細い歌声のドン・ドッケン(Vo)も哀愁味強めのメロディを絶妙な形で表現。この楽器隊とのアンバランスさこそ、実はDOKKENの魅力なんですよね。「Tooth And Nail」や「Don’t Close Your Eyes」「Turn On The Action」などのファストチューンでは頑張ってハイトーンを響かせたりするものの、ポップな「Just Got Luck」やメロウな「Into The Fire」、泣きのバラード「Alone Again」でこそ活きるドンの個性。それが、シングルヒットへとつながっていったのでしょう(次作『UNDER LOCK AND KEY』(1985年)での「In My Dreams」はそのもっともたる例では)。

楽曲、アレンジ、メロディアスさとハードさのすべてがバランスよく突出した『UNDER LOCK AND KEY』、完全なるギター・オリエンテッド・アルバムの『BACK FOR THE ATTACK』(1987年)と、その後洗練されていくDOKKENですが、本作は最初の“攻め”が具体化された、いわゆるヘヴィメタルのステレオタイプ的側面がもっとも強く表現された1枚。日本でいうところの“L.A.メタル”がもっとも具体的な形で示されており、RATTの『OUT OF THE CELLAR』(1984年)、MOTLEY CRUE『SHOUT AT THE DEVIL』(1983年)QUIET RIOT 『METAL HEALTH』(1983年)などとあわせて聴くべき歴史的名盤です。

 


▼DOKKEN『TOOTH AND NAIL』
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2021年4月16日 (金)

THE END MACHINE『PHASE 2』(2021)

2021年4月9日にリリースされたTHE END MACHINEの2ndアルバム。

DOKKENジョージ・リンチ(G)、ジェフ・ピルソン(B)、ミック・ブラウン(Dr)に現WARRANT、元LYNCH MOBのロバート・メイソン(Vo)と結成したTHE END MACHINEは、2019年3月にデビューアルバム『THE END MACHINE』を発表。しかし、アルバム発表後にミックがミュージシャンを引退したことから、新たにミックの実弟スティーヴ・ブラウンが加入(兄弟だけあって、見た目がそっくり!)。本作は新体制での第1弾アルバムとなります。

とはいえ、前作でもソングライティングに携わっていたのはジョージ/ジェフ/ロバートの3人。この軸が変わらなければ、そのスタイルに大きな変化は生じないはず。そういう思いで接した本作、間違いなく前作の延長線上にある“80年代のDOKKENの後継的存在である正統派ハードロックアルバム”でした。

全12曲(うち1曲がオープニングSE)で55分前後という尺は前作とほぼ一緒で、1曲あたり5分前後で構築されたメロディアスなハードロックがずらりと並ぶ。メロディラインもDOKKEN時代にあった(良い意味での)煮え切らなさを若干含むもので、そういった要素が哀愁味にもつながっているように感じられる。コーラスワークもどことなくDOKKEN的で、このへんのセンスはジェフによるものが大きいのでしょうか。速い曲もミディアムテンポもパワーバラードも、すべて平均点以上の仕上がりで安心して楽しめる。

演奏に関しても、すべてにおいてそつなくこなされている感が強い。ジョージのリフやソロワークに関してですが、若干「手癖で収めてないか?」と思えるフレーズも少なくないものの、トーンなどはここ数年のジョージ関連の作風との統一感も感じられる。あえてDOKKEN的なものに寄せるのではなく、あくまで今の彼ならではのスタイルでこの80年代的王道ハードロックを奏でる。THE END MACHINEにはそういった面白味もあるのかな?と、今回改めて感じました。

ロバートが歌っていることで、LYNCH MOBとDOKKENの中間という印象も否めませんが(どっちもジョージが参加しているので間違いではないけど)、LYNCH MOBよりは全体的に“曇った”感が強いので、そういう点ではDOKKENの後継的存在というのが正解なのかも。ただ、初期DOKKENのような尖ったプレイやストロングスタイルの突出した楽曲が見当たらないのが、本作のマイナスポイント。「Blood And Money」や「Dark Divide」「Prison Or Paradise」「Shine Your Light」といった軽く平均点超えの楽曲も豊富な、高品質な1枚だけど、1曲だけでもそういう“尖り”が感じられたら、さらに印象が違ったんだろうなあ……まあ、今のジョージ・リンチにそこを求めるのは酷かもしれませんが。

……なんてことを言っているとドン・ドッケンが歌うよりはマシ」という声が脳内のどこかから聞こえてきそうですが(苦笑)、まだジョージがこういったサウンド/バンドにチャレンジしてくれる事実を、今は素直に楽しみたいと思います(そして、ありがとうジェフ・ピルソン)。

 


▼THE END MACHINE『PHASE 2』
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2021年2月13日 (土)

GEORGE LYNCH & JEFF PILSON『HEAVY HITTER』(2020)

2020年12月18日にリリースされたジョージ・リンチ&ジェフ・ピルソンのカバーアルバム。日本盤(輸入盤に帯を付けた仕様)は同年12月23日に発売されています。

DOKKEN時代の盟友であり、最近はT&NやTHE END MACHNEで活動をともにするジョージとジェフ。本作ではジェフのプロデュースのもと1950〜2000年代の非HR/HM曲を中心にセレクトされています。カバーの内訳は以下のとおり(カッコ内の年数は原曲リリース年)。

01. One Of Us [ジョン・オズボーン/1995年]
02. You Got The Love [RUFUS & CHAKA KHAN/1974年]
03. I Feel The Earth Move [キャロル・キング/1971年]
04. Ordinary World [DURAN DURAN/1993年]
05. Music [マドンナ/2000年]
06. Apologize [ONEREPUBLIC/2007年]
07. Nowhere To Run [MARTHA & THE VANDELLAS/1965年]
08. Kiss [プリンス/1986年]
09. It's The End Of The World As We Know It (And I Feel Fine) [R.E.M./1987年]
10. Champagne Supernova [OASIS/1995年]
11. Lucille [リトル・リチャード/1957年]

これらの楽曲をジョージ(G)、ジェフ(B)、ブライアン・ティッシー(Dr)というT&Nまんまのメンツで演奏し、その大半をウィル・マーティンというニュージーランド出身のシンガーが歌唱。「You Got The Love」でマーク・トリエン(BULLETBOYS)、「It's The End Of The World As We Know It (And I Feel Fine)」にてジェフがそれぞれボーカルを担当しています。また、「It's The End Of The World As We Know It (And I Feel Fine)」ではFISHBONEのアンジェロ・ムーアもオルガンでゲスト参加しております。なかなかとっ散らかったメンツですね(笑)。

選曲はまあ置いておいて、アレンジや演奏ですが……某氏は本作を酷評しておりましたが、そこまで言うほどか?と。原曲の良さはそのままに、しっかりジョージらしくハードロックしていて聴きやすく、個人的にはかなり好印象な1枚なのですが。ウィル・マーティンのクセのない歌唱が「I Feel The Earth Move」「Nowhere To Run」といったソウルフルな楽曲でまったく活きていないという難点はあるものの(「Kiss」はこれで正解だけど)、逆に「Ordinary World」や「Music」のような現代的なポップソングにはぴったり合っているのでプラマイゼロといったところでしょうか。そんな中で、マーク・トリエンがいい味出してます。全部マークが歌ったら……とも考えたけど、マークが歌う「Champagne Supernova」とかまったく想像できないので、これで正解だったのでしょうね。

とにかくアレンジと演奏がかなり高得点です。最近のジョージ関連の作品は比較的ハズレが少ないですが、そこにジェフという気心知れた仲間かつプロデューサーとしてもそれなりの実力を発揮する方が携わったことで、平均点以上の仕上がりになった。もうこれ、今後は全部ジェフにプロデュースしてもらえよと思ってしまうのは間違っているのでしょうか(笑)。

某氏は自分が以前のように歌えないやっかみですよね。早くお経ボーカルから脱してほしい……と脱線してしまいましたが、本作は原曲を知るリスナーはもちろん、知らないHR/HMリスナーでもジョージ・リンチの新作として存分に楽しめるはずです。

 


▼GEORGE LYNCH & JEFF PILSON『HEAVY HITTER』
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2020年9月 2日 (水)

LYNCH MOB『WICKED SENSATION REIMAGINED』(2020)

2020年8月28日にリリースされたLYNCH MOBの9thスタジオアルバム。日本盤は海外に先駆けて8月26日に発売されました。

本作は同バンドのデビューアルバム『WICKED SENSATION』(1990年)リリース30周年を記念して、ジョージ・リンチ(G)、オニィ・ローガン(Vo)という当時のメンバーがブライアン・ティッシー(Dr)、ロビー・クレイン(B)という現リズム隊とともに『WICKED SENSATION』を再解釈・再録音した1枚。当時の全12曲がオリジナル盤どおりの曲順で収録されているのですが、今のジョージらしいレイドバックしたギタープレイや、30年前は新人だったオニィの貫禄ある今の歌声がフィーチャーされた、“同じアルバムなのに新感覚で楽しめる”内容に仕上がっています。

30年前のLYNCH MOBはDOKKENから離れたジョージが盟友ミック・ブラウン(Dr)とともに「本当はこういうことをDOKKENでやりたかったんだけど、ボーカルが使えなさすぎてできなかったんだよ!」というくらい派手でヘヴィなサウンドが前面に打ち出されていて、それに応えようとオニィもハイトーンでただひたすらがなっているような印象でした(だが、それが良かったですが)。が、30年経った今のLYNCH MOBの印象は“大人”。オープニングを飾る「Wicked Sensation」なんてギターの歪みが薄れてカッティング重視のプレイに移行したこと、ルーズなリズムや中音域で歌うボーカルと相まって、ファンキーなラテンロックの香りすら感じられる。原曲のイメージが強すぎるためか、最初こそ違和感が否めませんが、何度か聴き込んでいくうちに慣れてきて、「これはこれでいいじゃない」と納得できるんだから不思議なものです。

続く「River Of Love」もグッとテンポを落として、アダルトな雰囲気を醸し出す。まさに大人のハードロックといった印象。全編そんな感じでリテイクしているのかと思えば、もともとミディアムテンポだった「Hell Child」は疾走感あふれるファストチューンへと生まれ変わっていて、原曲よりさらにカッコよくなっている。「Dance Of The Dogs」は原曲と同じテンポ感、同じ雰囲気ですが、確実に前のバージョンよりも良くなっているから、本当に不思議です。

個人的には「No Bed Of Roses」がシャッフルビートで再構築されているのがお気に入り。原曲はパワーバラード風だった「Through These Eyes」も、今作ではアコギ1本をバックに歌うシンプルなアレンジに生まれ変わっていますし。音圧的にも楽曲の作風的にも全体のトーンが統一されていたオリジナル盤と比べて、リメイク盤は多彩さに満ち溢れた作りになっているあたりに、バンドとしての成長を大いに感じます。

唯一文句をつけるとしたら、ラストの「Street Fightin' Man」。DOKKEN時代の名インストナンバー「Mr. Scary」をモチーフにしたこの曲だけでも、リフ含めジョージの豪快なパワープレイを味わいたかったなあ。まあ、ここで聴けるカッティングワークも嫌いじゃないですけどね。

原点にして集大成のような本作。実は、LYNCH MOB名義での制作はこれが最後になるとのことで(理由は昨今問題視されている差別的なワードを使ったバンド名。LYNCH MOBはジョージの周りに集まる仲間たちという意味でしたが、「公開処刑に集まる群衆」と捉えることもできる)、メンバーは変わらず新しい名前で活動を継続していくようです。残念ですが、これだけ聴きごたえのあるリメイクアルバムが作れるんだから、ジョージの今後に対しては特に不安視していません。このメンツでのオリジナル作品にも期待しています!

 


▼LYNCH MOB『WICKED SENSATION REIMAGINED』
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2020年1月30日 (木)

DIRTY SHIRLEY『DIRTY SHIRLEY』(2020)

ジョージ・リンチ(G)とディノ・イェルシッチ(Vo, Key)が新たに立ち上げたプロジェクト、DIRTY SHIRLEYが2020年1月下旬に発表したデビューアルバム。日本盤は同年2月中旬リリース予定。

ジョージ・リンチといえば、現在のメインバンド(?)LYNCH MOBのほかKXMTHE END MACHINESWEET & LYNCH、そして今も稼働しているかわからないけどULTRAPHONIX、オリジナルメンバーでのDOKKEN、さらにはソロ名義での活動と、とにかく多岐にわたる活躍をしているアーティスト/ギタリストです。すでに65歳とかなりの高齢にも関わらずこの精力、正直頭が下がります。ですが、どの作品も似たり寄ったりに落ち着いてしまうのが玉に瑕。フロントマンであったり共演者の個性が強ければ強いほど、そっち側にも引っ張ってもらえるので差別化できるものに昇華できているのですが(SWEET & LYNCHとかね)……どうしてもミドルテンポ中心で、ジャムセッションの延長線上にある長尺で単調な楽曲ばかりで、しかもアルバムとなるとそれが10〜13曲も詰まっていて60分を軽く超える作品ばかり。さすがに2、3回聴いてしばらく放置みたいな作品も少なくはありません。

では、今回のDIRTY SHIRLEYはどうなのでしょう? 答えは「YES」でもあり「NO」でもあると。つまり、最高とは言い難いけど、平均点はクリアできているかなというところでしょうか。

楽曲のタイプとしてはブルースやソウルをベースにしたハードロックが軸になっており、ここ20年くらいのジョージ・リンチの方向性そのものかなと。楽曲も大半が5分を超えるもので、ボーナストラックを含む全12曲中6分超えが4曲……あれ、思ったほど多くないかも?

バンドアンサンブルは確かにジャムセッションの延長線上にあるスタイルで、曲によってはそれが良い方向に作用しているものも少なくありません(もちろん、中には退屈なものもありますが)。

で、ここからが本題。歌メロが思った以上に良い。これはディノ・イェルシッチというANIMAL DRIVE、TRANS-SIBERIAN ORCHESTRAなどで活躍する“歌える”シンガーの手腕によるものが大きいのかな。ハスキーで高音もしっかり出る歌唱法はブルースフィーリングとソウルフルさがしっかり備わったもので、それっぽい“なんちゃって”シンガーとはまったく異なるもの。普通に歌ったら単調になりがちなメロディも、この人の声と節回しで歌われることによってどこか特別なものに聞こえてくるのだから、不思議なものです。

ちょっと違うかもしれないけど、デヴィッド・カヴァーデイルとグレン・ヒューズを足して2で割ったような? そんな雰囲気が漂っているんですよね。なもんだから、彼が歌うとどの楽曲も第3期DEEP PURPLEっぽく聞こえてくるという……え、そんなことない?

アルバム中盤の「Siren Song」や「The Voice Of A Soul」といった楽曲の完成度はなかなかのものがあり、バンドとしてのバランス感が非常に整った楽曲だと思いました。あと、本編ラストに収められたアコースティック・サイケナンバー「Grand Master」も良い味を出しています。この曲も完全にボーカリストに助けられていますよね。

うん、ジョージが最近関わったプロジェクトの中では非常に良い部類に入る1枚だと思います。特にここ最近の作品は平均点以上出せているのかなと。ただ、本作はまだ“処女作”という雰囲気も感じられるので、本当の意味でスタイルが固まるのは2作目以降かなと。もちろん、ちゃんとプロジェクトが継続すればの話ですけどね(笑)。最近のジョージは風呂敷を広げすぎて、たたむことまで気が回っていないようなので……うん、継続を希望します!

 


▼DIRTY SHIRLEY『DIRTY SHIRLEY』
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2019年12月14日 (土)

KXM『CIRCLE OF DOLLS』(2019)

2019年9月中旬に発表されたKXMの3rdアルバム。日本盤は同年11月上旬にリリース。

ダグ・ピニック(Vo, B/KING'S X)、ジョージ・リンチ(G/LYNCH MOB、ex. DOKKEN)、レイ・ルジアー(Dr/KORN)という異色のトリオバンドも、気づけば結成から6年が経過。デビューアルバム『KXM』(2014年)から次作『SCATTERBRAIN』(2017年/日本未発売)まで3年以上もの歳月を要しましたが、今回は2年で完成までこぎつけています。何事もやる気があるのは良いことです(主にジョージに、でしょうけど)。

さて、このバンド。過去2作は正直曲がそこまで魅力的ではありませんでした。良く言えばジャムセッションをもとに作られたグルーヴ重視の楽曲で固められている、悪く言えば日本人には大味すぎて平坦に聞こえてしまう。ぶっちゃけ、日本人じゃなくても後者の意見のほうが多かったんじゃないかという気がしています(特に1stアルバムはね)。

毎回12〜3曲収録されていて、トータルランニングも60分を超えている。なのに、比較的似たような楽曲ばかりで1枚通して聴くのも疲れる。前作では楽曲のバラエティが少し広がったおかげでだいぶマシになりましたけど、それでも13曲はキツイ、せめて9曲くらいで収めてくれたらというのが本音でした。

さて、本作はどうでしょう。オープニングの「War Of Words」のアッパー感にいきなりノックアウトされ、サイケデリックな「Mind Swamp」に魅せられ、パーカッシヴな「Circle Of Dolls」でノセられる。うん、掴みは成功していると思います。

4曲目「Lightning」の気怠さに少々不安を覚えますが、続く「Time Flies」で息を吹き返す。この曲、ダグの節回しといいジョージの緩急の効いたギタープレイといい、新境地なんじゃないでしょうか(ちょっと日本のV系に近いものがあるサウンドですしね)。

LYNCH MOB meets KING'S Xという表現がぴったりな「Twice」、KORNのビート感にカラフルなKING'S X節を散りばめた「Big As The Sun」など、中盤も聴かせる曲が続くけど、不思議と退屈さを感じることなくスルスル聴き進めてしまう……のですが、やっぱり9曲目「A Day Without Me」あたりからちょっとキツくなり始めます。ラストの「The Border」にちょっとだけ救われますが、正直ここらへんは蛇足感の強い曲も少なくないかなと。うん、過去イチ良かっただけに勿体ない。

やっぱり13曲って多すぎなんですよね。アルバムの輪郭がぼやけてしまっている。せっかくダグのサイケ感&ソウルフィーリングを生かした良曲が増えているだけに、それをミドルテンポの退屈な曲で帳消しにしてしまうのだけは本当にいただけない。ジョージのプレイも激しいものからいぶし銀の味わい深いものまでいろいろ楽しめるんだから、作った曲を全部詰め込むんじゃなくてせめて最長10曲まで絞ってほしいな。

それこそ、「A Day Without Me」「Wild Awake」「Shadow Lover」あたりを削って50分前後のアルバムとしてまとめたらこのバンドの評価、もっと上がると思うんだけどねえ。

 


▼KXM『CIRCLE OF DOLLS』
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2019年4月10日 (水)

THE END MACHINE『THE END MACHINE』(2019)

DOKKEN〜現LYNCH MOBジョージ・リンチ(G)が、ジェフ・ピルソン(B)、ミック・ブラウン(Dr)という元DOKKEN組と、元LYNCHE MOB〜現WARRANTのロバート・メイソン(Vo)と新たに結成したバンドTHE END MACHINE。彼らのデビューアルバムが2019年3月に発表されました。

ジョージ、ジェフ、ミックの3人は80年代末にDOKKEN離脱後にも一緒にバンドを組むなんて話があったし、それ以降も何度かそういった噂が上がったり実際に動いたこともありました。事実、T & Nは当初この3人で進めていたプロジェクトでしたしね(2012年のアルバム『SLAVE TO THE EMPIRE』ではブライアン・ティッシーが半分くらい叩く結果に)。

そんな3人が2016年のDOKKENオリメン期間限定復活を経て、改めて結成したのがこのバンド。シンガーには先のT & Nのアルバムにも1曲のみ参加していたロバートを迎えたことで、“ちゃんと歌えるシンガーの入ったDOKKEN”を期待したファンも少なくなかったはずです(“ちゃんと歌える”云々は、今のドン・ドッケンに対する嫌味ですが。笑)。

だけど、不安要素もありました。それは、最近のジョージが完全にレイドバックしたスタイルであること。それはギタープレイ然り、作る楽曲然り。マイケル・スウィートSTRYPER)とのSWEET & LYNCHは別として、KXMULTRAPHONIXなんて完全に趣味の域ですからね。もちろんそれらの作品も決して悪くはないのですが、80年代のフラッシーなプレイときらびやかなメロディを持つ楽曲をどうしても期待してしまうオールドファンも少なからずいるわけでして。自分も毎回、上記のような作品に対して「うん、今回も良いんじゃないかな。だけど……」と複雑な気持ちで接してきただけに、今回のTHE END MACHINEにも過剰な期待はせずに接することにしました。

で、いざ触れたこのアルバム。思った以上にDOKKEN路線に近いものの、ロバートが参加したLYNCH MOBの2作目『LYNCH MOB』(1992年)をより大人にした雰囲気……つまり、今のジョージそのもの(笑)な音でした。期待しすぎていなかったぶん、スッと入っていけたし、思っていた以上に楽しめた自分がいました。オープニング「Leap Of Faith」こそミディアムヘヴィの“いつもどおり”な作風でしたが、2曲目「Hold Me Down」や5曲目「Ride It」で若干BPMを上げてくれたのはよかったかなと。それ以外はほぼブルージーなミディアムヘヴィやスローナンバーばかり。全11曲で56分とかなり長尺なのも最近のジョージの作品と同傾向で、すべてを楽しむにはちょっとした覚悟が必要かもしれません(苦笑)。

好きな人はとことん楽しめる、けど80年代の幻影を追い続ける人にはキツい。聴き手のスタンスによって評価が二分する作品かもしれません。実際、80年代というよりは90年代的ですしね。あ、そうか。90年代の再結成DOKKENが好きならちょっとは……楽しめる……かも?

僕は思っていた以上にリピートしているので、意外と気に入っているのかもしれません。若いリスナーにこれがどう響くのかは正直疑問ですし、頭の固いオッサンたちからは駄作扱いされるでしょうけど、それでも自分はこれはこれとして支持したいなと。だって、そこまで悪いアルバムじゃないですしね。

 


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2019年3月14日 (木)

LYNCH MOB『LYNCH MOB』(1992)

1992年4月(日本では5月)にリリースされた、LYNCH MOBの2ndアルバム。デビューアルバム『WICKED SENSATION』(1990年)から1年半という比較的短いインターバルで発表されましたが、実はその間にボーカリストがオニー・ローガンからロバート・メイソンへと交代するというハプニングが発生しています。そういう人事異動があったからこそ、早く“次”を見せたかったのかもしれませんね。

オニーは決してテクニカルなシンガーではなかったけど、1stアルバムで表現されていたアグレッシヴなハードロックには最適だったと思います。しかし、新人ということもあってか、パワーで押し切るだけといった武器の少なさも見え隠れしていました。実際、初来日公演を観たときもそのへんの未熟さが露呈し、評価は微妙かな……と思いましたし。

ところが、2代目シンガーのロバートは(同じく無名ながらも)どんなタイプの楽曲でも無難にこなすタイプ。良く言えば器用、悪く言えば突出した個性に欠ける。なもんで、このアルバムも最初に聴いたときは『WICKED SENSATION』ほどのパンチが感じられませんでした。

しかし、ジョージ・リンチ(G)にとってはようやく「エゴを出しすぎず(ドン・ドッケン)、未熟さの感じられない(オニー)プロフェッショナル」なシンガーを手に入れられたわけで、なもんだから楽曲の幅も一気に広がっている。攻撃性は若干影を潜め、ギターも曲によっては少し引っ込むことを覚え始めました(笑)。

が、このバランス感が本当に絶妙で、よくやくここで“バンド”になれたのかな、と今聴くと感じるわけです。でなければ、ブラスセクションをフィーチャーした歌モノ「Tangled In The Web」やムーディーな「Dream Until Tomorrow」のような楽曲はやれなかったと思いますし。

いや、本当にどの曲もよくできているんですよ。オープニングの「Jungle Of Love」からして前作の路線をより洗練させ、そこにEXTREME的な“ハネ”を加えた新しさがあったり、「Heaven is Waiting」なんてDOKKENでもやれそうだし、前作にはなかったアップチューン「I Want It」もあるし。さらに、QUEENのカバー「Tie Your Mother Down」まである(タイミング的にフレディ・マーキュリーへのトリビュートなんでしょうか)。全10曲、非常にバランスが良くて、構成も練られている。ブルース色が減退したのも大きいのかな。この洗練された感にDOKKENでいうところの3rdアルバム『UNDER LOCK AND KEY』(1985年)に近いものがあると思うのは僕だけでしょうか。

チャート的にも前作の全米46位に次ぐ最高56位を記録。グランジ勢が台頭し始めたタイミングとはいえ、なかなか検討したと思うんです……なのに、このアルバムで一度解散するんですよね(苦笑)。その後、ジョージとミック・ブラウン(Dr)はDOKKEN再結成に参加することになるわけです。



▼LYNCH MOB『LYNCH MOB』
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2018年9月 4日 (火)

ULTRAPHONIX『ORIGINAL HUMAN MUSIC』(2018)

相変わらず次々に新しいバンド/プロジェクトを立ち上げる多作振りを発揮中のジョージ・リンチ。今度はLIVING COLOURのシンガー、コリー・グローヴァーと新たなバンドULTRAPHONIXを結成、今年8月に初のアルバム『ORIGINAL HUMAN MUSIC』をリリースしました。

メンバーはジョージ、コリーのほか、スタジオセッションなどで活躍するクリス・ムーア(Dr)、ファンクバンドWARやデイヴ・ロンバード(元SLAYER、現SUICIDAL TENDENCIES)とのトリオバンドPHILMなどでしられるパンチョ・トマセリ(B)の4人。このバンド、もともとはコリーではなくFISHBONEのアンジェロ・ムーア(Vo)と別の名前でライブを行っていたはずですが……まあ細かいことは気にしないことにしましょう。

ジョージがここでやりたかったことは、上のシンガー変遷とリズム隊のカラーからもわかるように、ハードロックとファンクの融合。ソウルフルだけどハードロック的なコリーのボーカルと、適度にグルーヴィーでタイトなリズム隊、その上でジョージが好き放題弾きまくるという、ファンならなんとなく想像できてしまう構図が、このアルバムの中で展開されているわけです。ここまで聴く前から内容がイメージできてしまうアルバム……さすがジョージ・リンチ。

さて、ジョージのプレイですが、思っていた以上にユルいです。リフもそこまでメタリックではないし、印象に残るものも少ない。ただ、ソロになるといきなりハメを外すんですよ。その落差が面白い。まあ、特に目新しいことはやってないですし、近年のジョージそのものかなと。

楽曲自体はコリーが歌ってることもあって、どこか LIVING COLOUR的。ただ、残念ながらヴァーノン・リードみたいな変態チックなプレイはありません。その“制御された狂気”こそがジョージそのものなんでしょうけど、これはこれで悪くない。個人的にはジョージのほかのバンド(特にKXM)よりは楽しめたかな。

プレスリリースでは、このバンドが目指す方向性について「初期RED HOT CHILI PEPPERS meets JUDAS PRIEST & KING CRIMSON」と記されていますが……後者2つの色、弱くない? KING CRIMSONなんて本編ラストの「Power Trip」ぐらいじゃ(ていうか、まんまなアレンジですけど)……まあ、本人がそう言ってるんだから、そうなんでしょう。たぶん、ライブではそういった要素が強まるんだろうなと、前向きに考えておきます。

このボーカルに対して、もっとメタリックなリフをバシバシぶつければよかったのに、といのが本作に対しての唯一の不満。それ以外は想定内であり、ジョージ・リンチのファンとしては心を広く持っているほうなので、純粋に楽しめる作品でした。



▼ULTRAPHONIX『ORIGINAL HUMAN MUSIC』
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